近年、持続可能な開発目標(SDGs)という言葉が多くの場面で取り上げられています。
簡単に言えば、世界中の人々がよりよい暮らしを送るための取り組みのことです。

しかし、日本がSDGsでどんな取り組みをしているのか、知らない方も多いです。

そこで、今回の記事では、日本のSDGs取り組みの現状と、その未来像を分かりやすくお伝えします。

また、日本の大手企業がどのような活動を展開しているのか、そしてSDGsを無視することが企業にとってどんなリスクを持つのかについても詳しく解説します。

今回の記事を通じて、SDGsの日本の取り組みを理解する手助けとなれば幸いです。

日本でのSDGsの取り組み3選

日本ではSDGsに向けて、さまざまな取り組みが行われています。
今回は、次の三つの分野での取り組みを紹介します。

  • 防災
  • 保健
  • 気候変動

参照:日本政府の取組 | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

日本におけるSDGs①防災分野の取り組み

SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」が、防災に関わる目標です。

日本はSDGsへの取り組みとして、防災分野の取り組みに力を入れています。
日本が多くの自然災害を経験してきた国として、その知識と技術を世界と共有し、人々の命と財産を守るためです。

具体的に日本は、2015年に仙台で第3回国連防災世界会議を主催しました。
この会議で、2030年までの国際的な防災の方向性を示す「仙台防災枠組」が策定されました。
日本はこの枠組みの共同議長国として中心的な役割を果たしました。

参照:仙台防災枠組(仮訳)

同時に国内の取り組みとして「仙台防災協力イニシアティブ」を発表しました。

このイニシアティブの中で、2015年から2018年の4年間に4万人の人材を育成し、40億ドルの資金協力を提供するという大きな目標を掲げ、その目標は2018年末に達成されました。

さらに、日本はSDGsの中でも、災害リスクの管理や防災が重要な位置づけられていることを受け、防災対策を国際的に推進しています。

特に、2019年から2022年の4年間で、洪水などの対策を通じて少なくとも500万人の人々を支援する計画が実行されました。
さらに、2019年と2020年の2年間で、80か国の防災計画の策定や改定を支援も行いました。

これらの取り組みを通じて、日本は世界の防災のリーダーとしての役割を果たしており、SDGs達成に向けての国際的な貢献を続けています。

日本の防災技術や知識は、今後も世界中の人々を守るために重要な役割を果たすことでしょう。

日本におけるSDGs②保健分野の取り組み

保健分野は、SDGs3つ目の目標「すべての人に健康と福祉を」と深い関係があります。
日本は、高い医療技術やノウハウを活かし、海外に日本式の医療拠点を構えています。

こうして、各国の医療水準を向上させることで、より多くの人が健康に暮らせる世界を目指しているのです。
具体的には、人材の育成や制度の整備などを通じて、日本の先進的な医薬品や医療機器、医療サービスを世界に広めようと努めています。

また、日本の民間企業や大学、研究機関の知見を活かし、あまり注目されない熱帯病などの感染症に対する新薬の開発や供給をサポートしています。

これまで治療が難しかった病気に対しても、新しい治療法の開発や普及が進むことが期待されます。

それに加えて、途上国の研究機関と日本の研究機関が協力し、SATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)を通じて共同研究を進めています。

これにより、新しい医療技術や知見の共有、そしてイノベーションの推進も期待されています。
紹介した取り組み以外にも、様々な取り組みを行っています。
詳しくは、下記URLからご確認ください。

参照:平和と健康のための基本方針

日本におけるSDGs③気候変動の取り組み

気候変動は、現代の国際社会における最も重要な課題の1つです。
SDGsの目標13にも「気候変動に具体的な対策を」が掲げられています。

世界的に見ても、1995年から毎年、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が開催されたり、2015年に「パリ協定」が採択されたり、気候変動を抑えるための取り組みが積極的に行われているのがよく分かります。

日本では、2030年までに2013年度と比べて26%の温室効果ガスの排出削減を目指しています。
さらに、2021年には、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を設定しています。

2030年までの排出削減目標も2013年度と比べて46%削減、さらには50%削減を目指すと表明しています。

このように、日本は温室効果ガスの排出削減やカーボンニュートラルの達成を目指して、積極的な取り組みを続けています。

これらの取り組みを通じて、日本は気候変動問題への対応をリードし、国際社会における責任を果たそうとしています。

参照:日本政府の取組 | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

SDGsに取り組む日本の未来はどうなるのか?

日本がSDGsに向けて取り組みを続けると、どうなるのでしょうか。
考えられるのは、次の3つの未来です。

  • 環境にやさしいエネルギーの供給
  • 国民の健康と福祉の向上
  • 質の高い教育の提供

環境にやさしいエネルギーの供給

日本は自然災害が多い国ですが、再生可能エネルギーの導入と普及により、安定したエネルギー供給が実現されるでしょう。
太陽光や風力など、様々なエネルギー源が組み合わされるためです。

国民の健康と福祉の向上

高齢化が進む日本ですが、持続可能な医療体制や健康を維持できる制度の整備がさらに進み、老若男女が安心して暮らせる社会が実現すると考えられます。
すべての国民が豊かな生活を送れるでしょう。

質の高い教育の提供

日本の教育システムは、SDGsの取り組みを通じてよりよくなることが期待されます。
特に、男女平等や多様性を尊重する文化が今以上に根付くため、すべての子どもたちが等しく高品質な教育を受け取れる環境が整備されるでしょう。

日本企業の取り組み事例

ここからは各企業の取り組み事例について、解説していきます。
主な企業様に関しては、下記3社でピックアップさせていただきました。

  • パナソニック株式会社
  • 富士通株式会社
  • 積水ハウス株式会社

参照:気候変動対策をリードする日本の企業1|外務省

パナソニック株式会社

パナソニック株式会社は、「パナソニック環境ビジョン2050」を中心に、持続可能な社会実現に向けた取り組みを行っています。

具体的には、CO2排出量がゼロとなる工場の建設を進めているほか、省エネ性を高めた製品の開発も行っています。
製品使用時の電力消費を抑えることで、環境負荷の軽減を目指しています。

また、パナソニックは再生可能エネルギーの導入にも取り組んでいます。
太陽光発電や蓄電池を用いて、自社でのエネルギーの生産・利用を進めています。
さらに、水素エネルギーを活用した環境にやさしい燃料電池の開発も積極的に行っています。

これらの活動を通じて、人々の暮らしをより豊かにしつつ、環境負荷を低減する未来の実現に貢献しているのです。

参照:サステナビリティ – パナソニック ホールディングス

富士通株式会社

富士通株式会社も、会社独自の目標である「FUJITSU Climate and Energy Vision」を掲げて、SDGsに向けた取り組みを行っています。
この目標は、2050年までに自社のCO2排出量をゼロにすることです。

例えば、AI(人工知能)やIoT(インターネットを利用してデータ収集や自動制御などを行う技術・システムのこと)といった最先端のICT技術を利用して、運輸・交通分野でのエネルギー消費を抑える取り組みや、製造業における省エネ技術の開発を進めています。

さらに、気候変動による自然災害から人々を守るために、防災関連の緊急速報システムを導入するなどの適応策も取り入れています。

参照:環境 : 富士通

積水ハウス株式会社

積水ハウス株式会社は、住宅の企画から設計、施工、監理まで幅広く手掛ける企業としてよく知られています。
しかし、環境への意識の高さについてご存知の方は少ないでしょう。

SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」に向けて、積水ハウスは積極的な取り組みを進めています。

2016年度における積水ハウスの新築販売のうち、74%がZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)でした。
ZEHとは、エネルギーの供給量と消費量が同じ住宅のことを指し、環境への負荷を減らす目的で設計されています。

この環境にやさしい住宅であるZEHを、2013年から2017年3月までに、28,195棟も建設しました。

それだけでなく、2009年から2016年の間に導入したCO2排出を削減する住宅は、年間で30万トンのCO2排出を削減したと試算されています。

CO2は気候変動の大きな要因だと考えられているため、30万トンのCO2削減は、SDGsへの大きな貢献だと言えるでしょう。

さらに、積水ハウスは2050年までに、住宅の建設から解体までの過程で排出されるCO2をゼロにすることを目標としています。
このような取り組みは、日本が目指す脱炭素社会の実現に向けて、大きな役割を果たすと期待されています。

参照:【公式】家・住まいのことなら積水ハウス|住宅・ハウスメーカー

SDGsに取り組まない企業の末路

日本はもちろん、世界中でSDGsに向けた取り組みが行われています。
それでは、もし、SDGsにまったく取り組まない企業があるとすれば、その企業はどのような末路をたどることになるのでしょうか。

ここからは、SDGsに取り組まない企業が直面するであろう、3つのリスクを紹介します。

  • 企業ブランドの低下
  • 投資家や株主評価の低下
  • 企業の競争力の低下

企業ブランドの低下

SDGsの取り組みを行わない場合、企業ブランドが低下するリスクが考えられます。
近年、消費者は商品やサービスだけでなく、その背後にある企業の価値観や社会的責任を評価するようになっています。

SDGsへの取り組みを無視する企業は、こうした社会の期待に応えることができないため、ブランドの評価が低下する可能性が高まります。

投資家や株主評価の低下

また、投資家や株主からの評価も低くなる可能性があります。
ESG投資という、環境・社会・ガバナンスの観点から企業を評価する投資が増加している現在、SDGsに取り組む姿勢を示す企業は、投資家にとっても大きな魅力となっています。

逆に、取り組みを無視する企業は、投資のリスクとして捉えられてしまうかもしれません。
そのため、資金調達の際に企業にとって不利な条件が提示されるか、そもそも投資を受けられなくなる可能性も考えられます。

企業の競争力の低下

SDGsの取り組みを行わないことにより、企業の価値や投資家からの評価が低下すると、最終的には企業の競争力も落ちてしまうでしょう。
つまり、業績が悪化するというわけです。

そのため、長期的に見ると、SDGsに対応できない企業は、市場での存在感を失い、業界からの撤退や倒産などの厳しい運命を迎えるかもしれません。

まとめ

今回は、日本のSDGsの取り組みを防災、保健、気候変動からいくつか紹介しました。

SDGsの取り組みが進むと、日本は環境にやさしいエネルギーの普及、国民の健康と福祉の向上、質の高い教育の提供などを実現できるでしょう。

特に、気候変動の取り組みは地球を守るために欠かせません。
SDGsの取り組みの取っ掛かりとして、自社のCO2排出量の算定から始めてみてはいかがでしょうか。

弊社では、無料のCO2排出量の算定サービスを提供しています。ぜひご活用ください。

著者のプロフィール

川田 幸寛
小学校教員として、カーボンニュートラルや脱炭素に関する授業を行った経験がある。子どもたちが理解できるように、専門用語を分かりやすく、かみ砕いて説明することを心がけた。この経験を活かし、脱炭素化の重要性を広く伝えるために、誰にとっても理解しやすい記事を作成している。