事業再構築補助金(グリーン成長枠)では、企業の脱炭素化に最大で1.5億円の補助金が交付されます。
人材育成に係る費用も経費の対象となるのも特徴の1つです。

今回の記事では、事業再構築補助金(グリーン成長枠)の概要や補助金額、補助率に加えて、以下の事項も解説します。

  • メリット・デメリット
  • 対象事業者
  • 全体の流れ
  • 提出書類と申請方法
  • 審査基準と採択のコツ
  • 補助金交付後の義務
  • 採択の事例
  • 申請時の失敗例

本記事を通じて、申請に必要な準備や採択のコツを理解しましょう。

事業再構築補助金(グリーン成長枠)補助金とは?

事業再構築補助金は、2021年に中小企業庁が開始した補助金事業です。

事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響で経済が大きく変化したことで、日本の企業が「ポストコロナ」や「ウィズコロナ」といった新しい時代に適応できるように支援するための制度です。

需要の回復が難しい状況にある企業に対して、事業の根本的な再構築を促すことを目的としています。

参照:事業再構築補助金とは | 事業再構築補助金

事業再構築補助金には、以下の8種類があります。

名称概要補助金額補助率
成長枠成長分野への大胆な事業再構築に取り組む事業者を支援2,000~7,000万円中小企業:2分の1中堅企業:3分の1
グリーン成長枠研究や技術開発・人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題解決に取り組む事業者を支援 4,000万~1.5億円中小企業:2分の1中堅企業:3分の1
卒業促進枠成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者をさらに支援成長枠・グリーン成長枠に準じる中小企業:2分の1中堅企業:3分の1
大規模賃金引上促進枠成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、大規模な賃上げに取り組む事業者をさらに支援3,000万円中小企業:2分の1中堅企業:3分の1
産業構造転換枠国内市場の縮小等の構造的な課題に直面している事業者を支援2,000~7,000万円中小企業:3分の2中堅企業:2分の1
物価高騰対策・回復再生応援枠業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者、 原油価格・物価高騰等の影響を受ける事業者を支援1,000~3,000万円中小企業:3分の2中堅企業:2分の1
最低賃金枠最低賃金引上げへの対応が難しい事業者を支援500~1,500万円中小企業:4分の3中堅企業:3分の2
サプライチェーン強靱化枠海外で製造する部品 等の国内回帰を進め、 国内サプライチェーンの強靭化・地域産業の活性化に取り組む事業者を支援~5億円中小企業:2分の1中堅企業:3分の1

参照:事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業) p.5~14

今回の記事では、グリーン成長枠について解説します。
グリーン成長枠には「エントリー」と「スタンダード」の2種類あります。

項目エントリースタンダード
補助金額(中小企業者等)従業員数20人以下: 100万円~4,000万円
従業員数21~50人: 100万円~6,000万円
従業員数51人以上: 100万円~8,000万円
100万円~1億円
補助金額(中堅企業等)100万円~1億円100万円~1.5億円
補助率中小企業者等: 1/2 (大規模な賃上げ※の場合は2/3)
中堅企業等: 1/3 (大規模な賃上げ※の場合は1/2)
補助事業実施期間交付決定日から14か月以内※延長可能
補助対象経費建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費など

※事業終了時点で事業場内最低賃金+45円と給与支給総額+6%を満たすこと

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.14~15

事業再構築補助金(グリーン成長枠)のメリット

事業再構築補助金(グリーン成長枠)のメリットは、以下の3つです。

高額な経済支援

事業再構築補助金のグリーン成長枠では、高額な経済支援が特徴です。
中小企業の場合、最大で1億円までの補助を受けられますが、中堅企業では1.5億円までの補助が可能となっています。

中小企業と中堅企業は、以下のように定義されています。

中小企業者資本金または従業員数が業種に応じて定められた基準以下製造業、建設業、運輸業は3億円または300人以下、小売業は5,000万円または50人以下など
中堅企業等資本金または出資総額が10億円未満、または従業員数が2,000人以下の法人特定の組合や法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.10~13

企業が大規模な賃上げを実施する際には、補助率が引き上げられる点も注目すべきです。
中小企業では補助率が通常の2分の1から3分の2に、中堅企業では3分の1から2分の1に増加します。

高額な経済支援を受けて、企業はカーボンニュートラルの実現に大きな一歩を踏み出せるのです。

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.14~15

環境問題への取り組み

事業再構築補助金のグリーン成長枠を利用することで、企業は環境問題への取り組みと経済成長の両立が可能です。

グリーン成長枠はグリーン成長戦略に沿った事業展開として廃棄物の削減、再生可能エネルギーの活用などの取り組みを支援します。

環境への配慮は社会的評価を高め、企業のイメージ向上にも寄与するでしょう。
環境問題への積極的な取り組みは、企業の長期的な成長と持続可能な社会を推進する重要な要素となります。

人材育成への投資

事業再構築補助金のグリーン成長枠は、企業の人材育成にも役立ちます。
人材育成は、企業の競争力を高めるうえで重要です。

グリーン成長枠を利用することで、従業員のスキルアップに必要な投資を行えます。

グリーン成長枠のエントリーでは、従業員の5%以上が年間20時間以上の人材育成を受けることが要件として求められます。
スタンダードになると、要件が従業員の5%から10%以上の従業員に拡大されます。

育成に必要な研修費用や教育訓練費、講座の受講費用を補助金でカバー可能です。

従業員の能力を高めることで、業務効率の改善やイノベーションの促進につながるため、将来的にはコスト削減や新技術の開発などのリターンを生む可能性を秘めています。

参照:事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業) p.7, 17

事業再構築補助金(グリーン成長枠)補助金のデメリット

事業再構築補助金(グリーン成長枠)には環境保全・人材育成などのメリットがありますが、デメリットも考えられます。

申請の手間

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の申請は、事業者にとって手間と時間を要するものです。
事業計画の作成は認定経営革新等支援機関と協同で行うため、確認に時間がかかる場合もあります。

電子申請システムを使用して申請を行う必要があり、GビズIDプライムアカウント の取得をしなけれななりません。
アカウントの発行には約1週間程度の期間が必要となります。

任意ではあるものの、申請前には事務局が実施する説明会への参加も求められています。

申請は電子申請システム操作マニュアルに従って慎重に行う必要があるうえに、申請者自身が申請内容を理解し確認することが必須です。

さらに申請が完了した後も審査結果の通知や公表、補助金交付候補者の義務などの手続きは続きます。

補助金の申請には計画策定やアカウント作成などの手間がかかり、申請後もやるべきことがあるため、事業者に負担を与えるかもしれません。

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.34~36

成果目標のプレッシャー

事業再構築補助金(グリーン成長枠)には達成しなければならない目標があり、事業者へのプレッシャーとなるおそれがあります。

具体的には補助を受けた事業の終了後3~5年の間に付加価値額、または従業員一人あたりの付加価値額を年率平均5.0%以上増加が達成必須の目標です。

企業の成長と発展を目指す一方で、達成が難しい目標となる可能性もあります。

グリーン成長戦略に沿った取り組みも欠かせません。
少なくとも1年間の研究開発や技術開発、さらには従業員の5~10%以上に年間20時間以上の人材育成を実施することが目標に含まれます。

事業終了後の3~5年間で給与支給総額を年率平均2%以上増加させることも目標の1つです。

事業再構築補助金(グリーン成長枠)は成長の機会を提供しますが、達成が必須とされる目標が設定されており、目標を満たせない場合は補助金を返還が求められる場合もあります。

参照:事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業) p.7

事業完了後の責任

事業再構築補助金(グリーン成長枠)では、事業が完了した後にも果たさなければならない責任が複数あります。
具体的には事業完了後30日以内、または補助事業の完了期限日までに補助事業実績報告書を提出する必要があります。

期限内に報告書が提出されない場合、交付決定の取り消しが行われる可能性があります。

事業が完了した年度後、5年間(計6回)は事業化状況・知的財産権等の報告書の提出が必要です。
報告が行われない場合は、補助金の交付取消や返還を求められることがあります。

事業の成果により収益が得られたら、受領した補助金の額を上限として収益納付が求められることもあります。

単価50万円以上の機械などの取得財産は、処分制限期間内に事前の承認なしに処分したり、補助金の目的に反する使用は認められていません。

不正行為が発覚した場合、補助金の交付取消・返還、公表などの措置が取られる可能性があります。

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.45~46

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の対象企業

事業者再構築補助金(グリーン成長枠)の対象企業を2つの表にまとめました。
以下の表は、対象となる事業者の規模を示しています。

カテゴリー定義備考
中小企業者資本金または従業員数が業種に応じて定められた基準以下製造業、建設業、運輸業は3億円または300人以下、
小売業は5,000万円または50人以下など
「中小企業者等」に含まれる「中小企業者」以外の法人中小企業等経営強化法第2条第1項第6号~第8号に定める法人、
一部の法人税法別表第二に該当する法人など
従業員数が300人以下の条件を満たす非営利型法人や特定の協同組合、
公益法人等
中堅企業等資本金または出資総額が10億円未満、
または従業員数が2,000人以下の法人
特定の組合や法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人
みなし大企業大企業が所有する中小企業者等、大企業の役員が中小企業者等の役員総数の半数以上を占める場合など親会社や株主構成などにより、中小企業基本法の範囲外の事業者
みなし中堅企業直近3年分の課税所得年平均が15億円を超える中小企業者等大企業に該当しないが、中小企業基本法の範囲外の事業者
みなし同一法人親会社が議決権の50%超を有する子会社、孫会社など親会社と子会社、孫会社は同一法人とみなされるため、1社のみ申請可能

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.10~13

もう1つの表では、グリーン成長枠の対象者をまとめています。

上記に該当する事業者であり、以下の表の要件を満たす企業が事業再構築補助金(グリーン成長枠)の対象企業です。

要件グリーン成長枠(エントリー)グリーン成長枠(スタンダード)
事業再構築要件事業再構築指針の定義を満たす事業
認定支援機関要件認定経営革新等支援機関の確認(補助金額が3,000万円超は金融機関の確認も必要)
付加価値額要件補助事業終了後3~5年で付加価値額年率平均4.0%以上の増加補助事業終了後3~5年で付加価値額年率平均5.0%以上の増加
グリーン成長要件グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題解決に資する取組(1年以上の研究開発・技術開発または人材育成を含む)グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題解決に資する取組(2年以上の研究開発・技術開発または人材育成を含む)
給与総額増加要件事業終了後3~5年で給与支給総額年率平均2%以上の増加
別事業要件既に取り組んでいる補助事業とは異なる新事業であること
能力評価要件既存事業と新事業の両方を行う体制や資金力があること
補助率引上要件(希望者のみ)補助事業期間内に給与支給総額年平均6%以上増加・事業場内最低賃金年額45円以上の引上げを実現

参照:事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業) p.6~8

事業再構築補助金(グリーン成長枠)補助金の事業アイデア

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の効果的な事業アイデアを出すためには、現在の市場動向と自社の強みを深く理解することが重要です。
まずは業界内外の市場動向を分析しましょう。

分析を通じて、将来的に需要が見込まれる領域を特定します。
例えば、水素エネルギーの活用や再生可能エネルギーの利用など、現代社会のニーズに合致した分野から考えると効果的です。

そして自社の技術や知識、人材などのリソースを把握し、最大限に活用できる事業分野を考えます。
製造業ならば、再生可能エネルギー関連の製品開発などです。

事業分野を決定できたら、事業計画を立てる段階に入ります。
補助金を獲得するためには、革新的でありながら実現可能な計画が必要です。

独自性の高い技術やサービスの開発を目指しつつ、実現可能性を損なわない範囲の予算で計画を立てられると良いでしょう。
社会的な貢献と企業成長の両方を目指した事業計画の策定が鍵となります。

事業再構築補助金(グリーン成長枠)補助金の流れについて

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の大まかな流れを、以下の表にまとめました。
電子申請の準備と事業計画の策定準備は時間を要する場合が多いため、早めの実施が推奨されています。

全体の流れ備考
電子申請の準備申請はjGrants(電子申請システム)で行われるため、GビズIDプライムアカウントの発行が必須※取得に時間がかかる場合があるため、早めの取得を推奨
事業計画の策定準備企業の強み・弱みの分析、新事業の市場分析、
優位性の確保に向けた課題設定・解決方法、実施体制、資金計画などを検討
認定経営革新等支援機関との相談特記事項なし
公募開始特記事項なし
締切り特記事項なし
補助金交付候補者の採択特記事項なし
交付申請特記事項なし
交付決定特記事項なし
補助事業期間 設備の購入などを行う期間で、12か月または14か月
実績報告 特記事項なし
確定検査特記事項なし
補助額の確定特記事項なし
精算払請求特記事項なし
補助金の支払特記事項なし
次年度から事業計画期間フォローアップ期間は5年間で、年次報告が必要

参照:事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業) p.22~23, 25

補助金申請手続きの事前準備と必要書類

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の事前準備は、事務局が提供する説明会への参加やGビズIDプライムアカウントの取得です。

どちらも申請手続きを進めるうえで重要な役割を果たします。

申請に必要な書類は、以下の表にまとめています。
提出書類は、こちらからダウンロード可能です。

区分提出書類詳細
共通書類事業計画書PDF形式かつ、最大15ページで提出
(補助金額1,500万円以下は10ページ以内)
認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書事業計画書の確認を示す書類
決算書直近2年間の貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表を提出
ミラサポplus「ローカルベンチマーク」の事業財務情報ミラサポplusで作成した事業財務情報を提出
従業員数を示す書類労働基準法に基づく労働者名簿の写しを提出
収益事業を行っていることを説明する書類法人:直帰の確定申告書別表と法人事業概況説明書の控えを提出個人事業主:確定申告書第一表と所得税青色申告決算書の控えを提出
給与総額増加要件を満たすことを説明する書類賃金引上げ計画の誓約書を提出
研究開発・技術開発計画書又は人材育成計画書グリーン成長枠の申請に必要な計画書を提出

該当者のみ
建物の新築が必要であることを説明する書類建物を新築に係る費用を経費として計上する場合、新築の必要性に関する説明書を提出
補助率引上要件を満たすことを説明する書類大規模な賃上げを行う場合、具体的な計画書を提出
別事業要件及び能力評価要件の説明書過去に補助金を受けた事業者が新たに申請する場合の説明書を提出
リース料軽減計算書リース会社と共同申請する場合に提出
リース会社が適切にリース取引を行うことについての宣誓書リース会社と共同申請する場合に提出
連携の必要性を示す書類複数の事業者が連携して事業に取り組む場合に提出
連携体の構成員それぞれが事業再構築要件を満たすことを説明する書類複数の事業者が連携して事業に取り組む場合に提出
組合特例の要件を満たしていることの確認書組合特例を用いる場合に提出
審査における加点を希望する場合に必要な追加書類等該当者は売上高減少等に係る証明書類、再生計画等の証明書類を提出

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.56~59

申請前に確認すべき補助金の審査基準

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の審査基準は、事業の実現可能性と環境への影響力を評価するために複数の側面から構成されています。

  1. 補助対象事業としての適格性
  2. 事業化の点
  3. 再構築の点
  4. 政策点
  5. グリーン成長点

補助対象事業としての適格性

補助対象事業としての適格性が評価されます。

補助事業終了後の3~5年間で付加価値額を年率平均3.0%~5.0%以上増加させる取り組みが含まれるか、1年以上の研究・技術開発と10時間以上の人材育成が行われるかが重要です。

事業化の点

事業化の評価では、事業が市場やサービスの利用者にどのように貢献し、競争優位性を確保できるかが検討されます。
事業化計画の明確さや、適切な実施体制の有無も評価基準です。

再構築の点

再構築の点では、事業再構築の必要性が適切に認識されており、指針に沿った取り組みであるかが評価対象となります。
費用対効果の高さや、先端技術の活用、新型コロナウイルスの影響に対する強靭性も重要です。

政策点

政策点では事業が日本経済の構造転換に貢献するか、経済的な成長の可能性、V字回復に向けた投資内容、地域経済への影響などが評価ポイントです。

複数の事業者が連携して取り組む場合、協力体制も評価の対象となります。

グリーン成長点

グリーン成長点では、グリーン成長戦略に沿った事業内容であるかどうかが重要な評価基準です。
研究開発の新規性や革新性、目標の適切な設定、人材育成計画の具体性と実現可能性などが含まれます。

上記5つのポイントを踏まえて申請書類を準備することで、補助金の申請が通過しやすくなるでしょう。

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.50~51

以下のいずれかに該当する事業者は、加点評価を受けられます。
該当項目がある場合は、忘れずに申請してください。

加点項目要件
売上高の減少2022年1月以降、売上高が2019~2021年同月比で30%以上減少、または付加価値額が45%以上減少している事業者
EBPMへの協力経済産業省のEBPM取組に協力する事業者
パートナーシップ構築宣言パートナーシップ構築宣言ポータルサイトで宣言を公表している事業者
特定事業者の条件特定の従業員数以下で資本金10億円未満の会社や特定の組合
サプライチェーン連携サプライチェーン内で連携して申請する事業者
健康経営優良法人認定健康経営優良法人に認定されている事業者
大幅な賃上げ実施賃上げ幅に応じて加点(給与支給総額年率平均3%以上など)
最低賃金の引き上げ事業場内最低賃金を地域別最低賃金より一定額以上引き上げる事業者
ワーク・ライフ・バランスの推進女性活躍推進法次世代育成支援対策推進法に基づく認定を受けた事業者

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.52~55

窓口またはオンライン申請の方法

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の申請は、電子申請システムを通じて行われます。
申請準備を効率的に進めるために、事務局が提供する説明会に参加しましょう。

申請時の混雑を避けるために電子申請の入力には時間がかかることを考慮し、十分な余裕を持って手続きを開始することが重要です。

申請者は申請内容を自身で理解し確認する必要があり、代理申請は認められていません。

申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要で、アカウントは申請後の手続きにも利用されます。
申請情報は審査や政策効果検証などに使用されるため、正確な情報提供が必要です。

補助金交付の候補者として採択された後は、補助対象経費の精査と交付申請も求められます。

申請は電子システムを通じて行われ、期限間近は混雑することが予測されるため、時間に余裕を持って準備を進めることが重要です。

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.35~36

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の受け取り方法

事業再構築補助金(グリーン成長枠)を受け取るには、報告書や請求書の提出が必要です。
補助を受けた事業が終了した後に事業実績報告を行い、報告に基づいて確定検査が実施されます。

確定検査を受けて補助金額が決定された後に精算払請求が行われ、最終的に補助金が支払われます。
補助金を受け取った後は、補助事業終了後5年間のフォローアップ期間が設定されており、期間中は年次報告が必要です。

補助金で購入した資産は厳格に管理され、経営状況や再構築事業の進捗が定期的に確認されます。
不正や不当な行為が発覚した場合、補助金の返還が求められる可能性があるため、注意しましょう。

法令違反があった場合には、罰則が適用されることもあります。

補助金を受け取るためには事業完了後に報告書や請求書を送り、取得した機器などの資産を適切に取り扱う必要があるのです。

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.50~51

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の交付後について

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の交付後は、いくつかの重要な義務を遵守しなければなりません。

補助金の交付を受けた事業が完了してから30日以内に、補助事業実績報告書を提出しましょう。
遅れると交付決定が取り消される可能性があります。

事業の完了後は、5年間にわたり事業化状況や知的財産権等の年次報告が求められます。
報告がない場合、補助金の返還や交付取消しといった措置が取られることもあるため、注意しましょう。

事業によって収益が得られた場合、補助金の額を上限として収益の納付も必要です。
さらに事業で取得した機器を処分する際は、事務局の承認を受けなければなりません。

補助事業に関連する会計書類は、整理して5年間は保存することが義務付けられています。
また、必要に応じて行われる実地検査への協力も不可欠です。

義務の遵守は補助金の交付を受けた事業者の責任であり、怠ると補助金の返還や交付取り消される可能性があります。

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.45~46

事業再構築補助金(グリーン成長枠)補助金の審査を通りやすくするコツ

事業再構築補助金(グリーン成長枠)において、審査基準を満たし採択されるためには補助対象事業としての適格性を満たしていることが必要です。

補助事業終了後3~5年で、付加価値額を年率平均3.0%~5.0%以上増加させる取り組みが含まれます。

他にもグリーン成長戦略の課題解決への貢献、革新的な技術や研究開発、人材育成計画の具体性と実現可能性、そして企業成長への貢献を示すことも審査を通りやすく要素です。

事業化の観点から事業を行う市場の明確化や競合他社の分析、事業化に向けた具体的な方法やスケジュールの策定が行われているかが評価されます。

事業実施のための体制や財務状況の適切さ、資金調達の方法を示すことも重要です。

再構築に当たってはSWOT分析を基にした事業再構築の必要性の認識、事業再構築指針に沿った取り組み、費用対効果の高さ、地域やサプライチェーンへの貢献、ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応した事業内容の確立が求められます。

政策的な観点からは日本経済の構造転換への貢献、先端技術の活用、新型コロナへの対応、ニッチ分野における地位の確立、地域経済への貢献が評価されます。

上記のポイントを盛り込みつつ、実行可能な事業計画を策定することで、採択されやすくなるでしょう。

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.50~51

事業再構築補助金(グリーン成長枠)を受け取るポイントや注意点

事業再構築補助金(グリーン成長枠)において、企画のみを行い実施の大部分を外注するような事業やグループ会社が実施している事業などは採択されません。

仮に事業承継を行ったとしても、承継前に実施されていた事業の継続は避けるべきです。

また実質的な労働を伴わない事業や資産運用的な性質の強い事業、公序良俗に反する事業、法令違反の恐れがある事業も採択の対象外です。

農業事業者が別の作物を栽培するだけの計画や飲食店が漁業に進出するような1次産業関連の事業も、工夫が見られない限りは補助金の対象になりません。

重複案件や国庫・公的制度からの二重受給も避けましょう。

条件を満たさない場合、補助金の交付は取消される可能性があります。
労力を割いて申請書を提出して採択されたにも関わらず、後になって欠格により交付取消とならないように注意しましょう。

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.32~33, 45~46

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の事例紹介

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の採択を受けた3つの企業を紹介します。

南海化学株式会社

南海化学株式会社は、化学品の製造販売や環境リサイクル事業を手がける総合化学メーカーです。

大手セメントメーカーからの依頼をきっかけに、高塩素クリンカーパウダー(セメントの原料)から塩素分を除去する新技術を開発する計画を立て、事業再構築補助金(グリーン成長枠)の採択を受けました。

開発する技術は、グリーン成長枠の成長戦略14分野「資源循環関連産業」と「カーボンリサイクル・マテリアル産業」の課題解決に貢献するものです。

具体的には新技術を利用して、土佐工場に脱塩設備、水処理設備、品質分析機器を設置し、「高塩素含有無機資源のセメント資源化を促進する脱塩事業」を行います。

事業で生成するセメント原料は、通常のものと比較してCO2排出量が30%少ないです。
環境への配慮として、発生する上澄み水を無害化し海洋に放出、労働安全衛生の管理やISO基準に則った研修プログラムによる人材育成も計画されています。

事業により新規事業の売上比率10.2%、平均付加価値額5.3%増を目指しています。

さらに今後の展望として、廃棄物処分業の許可を取得し、焼却灰の受け入れも計画しています。
南海化学株式会社はCO2削減と廃棄物リサイクルを推進し、持続可能な社会の実現に向けた計画を策定し、補助金の採択が決定されたのです。

参照:セメント資源リサイクル事業に新分野展開 | 採択事例紹介 | 事業再構築補助金

ポーライト株式会社

ポーライト株式会社は、自動車や家電、電動工具、冷却ファン等に使用される精密ギヤや特殊形状部品を製造しており、特に粉末冶金法による高精度の成形技術が強みです。

EV化の進展に伴い、輸送機械やエンジン部品の需要減少が予想されています。

しかし、ポーライト株式会社は固体酸化物形燃料電池(SOFC)の製造技術を活用した水電解装置(SOEC)用インターコネクタの製造計画を立て、補助金の採択者となりました。

同社の技術は、水電解装置の重要部品であるインターコネクタの製造に適しているため、効率化と低価格化が可能です。
海外市場での実績構築を経て、日本国内市場への展開を計画して、新規事業の売上比率28%、平均付加価値額58.6%増を目標に掲げています。

取り組みは水素発電のコスト低減と普及に寄与するものであり、粉末冶金業界全体の発展にも貢献する見込みです。

将来性のある新しい産業への参入は、業界にとって重要な意義を持ち、粉末冶金業界全体が成長するきっかけとなる可能性があります。

参照:水電解装置用インターコネクタ製造に新分野展開 | 採択事例紹介 | 事業再構築補助金

DAISEN株式会社

DAISEN株式会社はプラスチック製品製造業として成形機の設計製造、金型製作、発泡樹脂製品の製造を行っています。

食品容器や新築住宅戸数の減少、プラスチック使用量の削減により、市場の需要が縮小し、新たな市場開拓と事業柱の構築が課題となっていました。

課題を解決するため、電動自動車バッテリーケースの製造と量産化を計画し、採択者となりました。

事業計画では成形加工と金型設計のノウハウを活かし、難燃性、軽量性、高強度を備えたバッテリーケースの製品化と量産化を進める予定です。

そして、専用の成形機と付帯設備を他の加工メーカーに製造・販売する計画です。
成形機から得たデータはIoTプラットフォームで集約・分析し、スマートファクトリー化を進めることで作業の効率化を目指します。

事業目標は、補助事業の終了から5年間で新規事業の売上比率16%、平均付加価値額15.2%の増加です。

DAISEN株式会社は、電気自動車バッテリー向け部材市場の開拓により、発泡樹脂業界全体を牽引し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

参照:電動自動車バッテリーケースの製造へと新分野展開 | 採択事例紹介 | 事業再構築補助金

事業再構築補助金(グリーン成長枠)が受け取れない失敗例

事業再構築補助金(グリーン成長枠)が受け取れない失敗例として、以下の2つが考えられます。

外注依存型の事業計画

補助金を受け取れない失敗例の1つは、事業実施の大部分を他社に外注または委託し、自社では企画のみを行うような事業計画を提出することです。

申請する事業者の労働が不要な事業は事業再構築の目的に合わないため、採択される可能性が低いです。

補助金は、企業自身が直接的に事業の実施に関わり、新たな価値を創造するために用いられることが期待されています。
そのため、計画の多くを外部の事業者に依存するような方法は、補助金の交付審査で不利に働きます。

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.32

既存事業の単純な拡張

グループ会社がすでに実施している事業や、再構築事業の内容が容易に実施可能な事業計画の採択してしまうことも、よくある失敗例です。

たとえば農業事業者が単に別の作物を栽培する計画や、飲食店が漁業を新たに始める計画は補助金の対象とはなりません。

事業再構築補助金は、革新的で独自性のある事業計画を推進するために設計されているためです。

そのため既存の事業の単純な拡張や、容易に実施可能な事業では補助金の採択を受けることは難しいです。
新規性と挑戦的な要素が評価の対象となり、補助金の目的に合致する事業計画の提出が必要です。

参照:事業再構築補助金 公募要領 (第11回)  p.32

まとめ

事業再構築補助金(グリーン成長枠)事業の大まかな流れは、以下の通りです。

  1. 事業計画の策定
  2. 書類提出
  3. 事業実施
  4. 完了報告
  5. 精算払請求
  6. 補助金の受領

計画策定や書類記載には時間がかかる場合もあるため、余裕を持って取り組むことが重要です。

事業再構築補助金(グリーン成長枠)の対象企業は中小企業や中堅企業などの法人で、事業完了後3~5年以内に一定以上の付加価値や給与総額の増加を目指す事業者です。

高額な経済支援を受けられる他、環境保全や人材育成ができるメリットがあります。
しかし申請に手間がかかったり、目標達成へのプレッシャーが負担となるデメリットも考えられます。

メリット・デメリットを考慮したうえで、補助金を利用すべきかどうかを判断しましょう。

著者のプロフィール

川田 幸寛
小学校教員として、カーボンニュートラルや脱炭素に関する授業を行った経験がある。子どもたちが理解できるように、専門用語を分かりやすく、かみ砕いて説明することを心がけた。この経験を活かし、脱炭素化の重要性を広く伝えるために、誰にとっても理解しやすい記事を作成している。