
低圧の系統用蓄電池(低圧蓄電所)の利回りは、「出力×単価×約定したコマ数」で年間売上を出し、アグリゲーター手数料や充電の電力費などを差し引いたうえで、土地や工事費負担金を含めた投資額で割って求めます。
本記事は低圧の系統用蓄電池(低圧蓄電所・低圧蓄電池、出力50kW未満・49.9kW級)の利回りを自分で計算する手順を、売上、費用、分母の3段に分けて説明します。制度の全体像は低圧の系統用蓄電池 総合ガイドにあります。
低圧蓄電所の売上はどう計算しますか?
売上は「出力49.9kW×1年17,520コマ×平均の約定単価×約定率」で計算します。
需給調整市場は1日を30分×48コマに分け、1年で17,520コマ(30分×48×365日)になります。取引されるのは電力量ではなく、指令に応じて出力を増減できる能力(ΔkW)で、単位は円/ΔkW・30分です。
- 売上49.9kW×17,520コマ×単価×約定率
- 費用を引く手数料・充電費・保守・保険・税など
- 分母を揃える土地と工事費負担金を含めた投資額
- 指標にする表面・実質利回り、IRR、回収年数
売上から何を差し引きますか?
手数料、充電の電力費、保守・監視、保険、固定資産税、地代、劣化と撤去の費用を差し引きます。
| 費用 | 内容 |
|---|---|
| アグリゲーター手数料 | 収益の10%前後。計算の基礎が売上か運用益かを確認する |
| 充電の電力費 | 待機と応動で失う電力量を買い足す費用。年100万円台になることがある |
| 保守・監視 | 定期点検、遠隔監視、通信費、電気主任技術者の外部委託 |
| 保険 | 火災、機器故障、事業中断、賠償 |
| 固定資産税(償却資産) | 標準税率1.4% |
| 地代 | 借地の場合 |
| 劣化と撤去 | 容量の劣化、機器の更新、運用終了時の撤去・処分 |
表面利回りと実質利回りはどう違いますか?
表面利回りは売上÷投資額、実質利回りは費用を引いた後の額÷投資額で、両者は大きく違います。
案件の資料に利回りが書かれているときは、どちらの数字かを最初に確かめます。売上だけで計算した数字は、充電の電力費や手数料を含んでいません。
分母の投資額には何を入れますか?
土地と工事費負担金を入れているかを揃えます。
設備と工事だけを分母にすると、同じ売上でも利回りが高く見えます。比べる案件どうしで、土地・負担金・税込か税抜かを揃えてから計算します。IRR(内部収益率)と回収年数で比べる場合も同じです。
前提の数字はどう置けばよいですか?
単価と約定率を複数置き、上限価格で組まないのが基本です。
- 一次調整力の上限価格は2026年9月1日から10.00円/ΔkW・30分で、7.21円までの段階的な引き下げ方針も示されています(EPRX、2026年7月)。
- 90%を超える約定率は、楽観的な前提であることが多いとされます。
たとえば平均の約定単価を10円・7円・5円・3円の4通り、約定率を90%と70%の2通りで置くと、出力49.9kWの年間売上は約787万円から約184万円までの幅になります。この幅の下のほうでも費用を払って残るかを見ることが、利回りの数字を読むときの基本です。
検算の詳しい手順は蓄電所の利回り表示を検算する、売上の試算は低圧蓄電所の売上試算ツールで確かめられます。
まとめ
- 売上は49.9kW×17,520コマ×単価×約定率で計算します。
- 売上から手数料・充電費・保守・保険・固定資産税・地代・劣化と撤去を差し引きます。
- 分母に土地と工事費負担金を入れ、上限価格ではなく複数の単価で試算します。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 株式会社タンソーマンGX「系統用蓄電池 投資の基礎解説ブック 低圧編」(2026年10月) 第3章・第6章
- 電力需給調整力取引所(EPRX)「需給調整市場のΔkW上限価格について」(2026年7月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。