
低圧の系統用蓄電池(低圧蓄電所)とは、出力50kW未満で電力網に直接つながり、需給調整市場で「調整力」を売って収入を得る小さな蓄電所です。2026年度から低圧の受電点で計測する設備も需給調整市場の全商品に参加できるようになり、出力49.9kW・容量200kWh前後の設備をアグリゲーターが束ねて入札する形が基本になっています。
本記事は、低圧の系統用蓄電池(低圧蓄電所・低圧蓄電池、出力50kW未満・49.9kW級)について、仕組み・収益・費用・土地・手続き・リスクを2026年10月時点の公表資料に基づいて1本にまとめた総合ガイドです。個別の論点は各章末の関連記事で詳しく解説しています。この記事は低圧の系統用蓄電池 総合ガイドとして随時更新します。
目次
- 低圧の系統用蓄電池とは何か
- なぜ2026年に低圧が注目されているのか
- 高圧の蓄電所と何が違うのか
- どうやって収益を得るのか
- 費用はいくらかかるのか
- どんな土地が必要か
- 運転開始までの手続きと期間
- アグリゲーターは何をするのか
- リスクとルール見直しの動き
- 買う前に何を確認すべきか
- よくある質問
- まとめ
- 出典
低圧の系統用蓄電池とは何ですか
低圧の系統用蓄電池とは、家庭や工場の中ではなく電力網(系統)に単独でつながり、出力50kW未満のため電柱から低圧(200V)で受電できる蓄電池です。
自ら電気を使うことはなく、電力網に対して充電と放電の働きを提供し、その対価を受け取ります。出力が50kW未満であれば高圧受変電設備(キュービクル)が要らず、小さな土地で設置できます。一般的な構成は次のとおりです(解説ブック低圧編、2026年10月)。
| 項目 | 一般的な目安 |
|---|---|
| 出力/容量 | 49.9kW/200kWh前後(約4時間分) |
| 主な設備 | 蓄電池ユニット、パワーコンディショナ(PCS)、EMS(運用制御)、遠隔監視の通信機器、連系盤・計器 |
| 必要な土地 | 約40〜150㎡(約12〜45坪) |
| 運転開始までの期間 | 申込みからおおむね6か月〜1年 |
| 運用の担い手 | アグリゲーターに入札と制御を委託する |
関連記事:低圧蓄電所とは何か、なぜ低圧蓄電所は49.9kWなのか、家庭用蓄電池との違い
なぜ2026年に低圧の系統用蓄電池が注目されているのですか
2026年度から、低圧の受電点で計測する設備も需給調整市場の全商品に参加できるようになったためです。
需給調整市場は2021年に始まりましたが、低圧の設備の参加は2026年度に全商品で認められました。一次調整力には、低圧の蓄電池などを束ねて参加する「オフライン枠」があり、低圧蓄電所の主な参加先になっています。
調整力の需要も大きく、2025年度の一次調整力は北海道・中国・四国を除くエリアで募集量に対して4〜9割以上の調達不足でした(EPRX「2025年度の取引実績について」、2026年6月)。2026年度は募集量の見直しなどで不足は縮小していますが、蓄電池が中心的な担い手であることは変わりません。加えて、低圧は接続検討を経ずに契約申込みに進むのが一般的で、高圧より早く連系できる点も注目される理由です。その結果、低圧の申込みは2026年8月末で約2,800件・約13万kWに増えたことが国の審議会で報告されています(次世代電力系統WG、2026年10月)。
関連記事:低圧蓄電所の申込み約2,800件、一次調整力のオフライン枠とは、一次オフライン枠とは
低圧と高圧の系統用蓄電池は何が違うのですか
低圧は投資額と土地が小さく連系までの期間が短い一方、参加できる市場が限られ、容量あたりの単価は割高になります。
| 項目 | 高圧(2MW・8MWh級) | 低圧(49.9kW・200kWh級) |
|---|---|---|
| 投資額 | 5.6〜7.0億円(完成品の公表事例) | 2,000万円台〜(設備・工事。土地と工事費負担金の扱いは案件ごと) |
| 土地 | 約1,000㎡以上 | 約40〜150㎡ |
| 接続の手続き | 事前相談→接続検討(3か月)→契約申込み | 接続検討を経ず、契約申込み後の技術協議で判断されるのが一般的 |
| 保証金 | 2026年4月から負担金見込額の10% | この制度変更の対象外 |
| 期間 | 18〜24か月 | 6か月〜1年 |
| 参加できる市場 | 一次〜三次調整力、卸電力、容量 | 一次調整力が中心。容量市場は単独では対象外 |
| 容量あたりの単価 | 割安 | 割高 |
高圧(2MW級)
- 約1,000㎡以上の土地
- 接続検討と保証金が必要
- 運転開始まで18〜24か月
低圧(49.9kW級)
- 約40〜150㎡の土地
- 接続検討を経ないのが一般的
- 運転開始まで6か月〜1年
2026年10月時点の一般的な目安。解説ブック低圧編・高圧編による。
関連記事:高圧蓄電所と低圧蓄電所の違い、低圧蓄電所には接続検討も保証金もない、低圧蓄電池は容量市場に出られない?
低圧の系統用蓄電池はどうやって収益を得るのですか
収益の中心は、需給調整市場の一次調整力で、出力を増減できる状態で待機すること自体に支払われる対価(ΔkW)です。
需給調整市場で取引されるのは電力量(kWh)ではなく、指令に応じて出力を増減できる能力(ΔkW)です。一次調整力は周波数の変化を蓄電池自身が検知し、10秒以内に自動で出力を変えます。買い手は各エリアの一般送配電事業者で、49.9kWの蓄電池はアグリゲーターが束ねて入札します。入札は実需給の前日に締め切られ、1日は30分×48コマで取引されます。
卸電力市場の値差取りは収入の一部。容量市場は1,000kW要件があり49.9kW単独では参加できない。
売上の計算式
年間売上は「出力(kW)×約定したコマ数×平均約定単価(円/ΔkW・30分)」で求めます。1年は17,520コマ(30分×48×365日)です。出力49.9kWで計算した例は次のとおりです。
| 平均の約定単価 | 年間売上(約定率90%) | 年間売上(約定率70%) |
|---|---|---|
| 10円(2026年9月からの上限) | 約787万円 | 約612万円 |
| 7円 | 約551万円 | 約428万円 |
| 5円 | 約393万円 | 約306万円 |
| 3円 | 約236万円 | 約184万円 |
これは計算の例であり、見積りや収益の見込みではありません。手数料や充電費などの費用を差し引く前の金額です。
上限価格の推移
一次調整力の上限価格は19.51円/ΔkW・30分から、2026年3月14日に15.00円、2026年9月1日に10.00円へ引き下げられ、7.21円までの段階的な引き下げ方針も示されています(EPRX「需給調整市場のΔkW上限価格について」、2026年7月)。
上限は「最高でも」の価格で、その価格で約定するわけではない。出典はEPRX(2026年7月)。
2025年度の一次調整力の月別平均落札単価は、蓄電池が8.82〜13.52円、火力が2.05〜3.39円でした(EPRX、2026年6月)。収支は上限より低い単価で、複数の単価を置いて組むのが基本です。単価と約定率を変えた試算は低圧蓄電所の売上試算ツールで確かめられます。
関連記事:低圧蓄電所の年間売上はいくら?、一次調整力の上限価格の推移、低圧蓄電所1基の収入はどう決まるのか
低圧の系統用蓄電池の費用はいくらかかりますか
販売会社が公開している価格は1基あたりおおむね2,100万〜3,000万円で(各社の公開ページ、2026年9〜10月)、運転後は手数料や充電費などの費用がかかります。
公開価格は含まれるものが会社ごとに違うため、表面の金額だけでは比べられません。土地、工事費負担金、税、諸手続きを含むか、接続契約まで済んでいるかで、同じ金額でも別の商品になります。
- 設備と工事蓄電池、PCS、EMS、基礎、フェンス、連系盤
- 土地価格に含むか別か。購入か借地か
- 工事費負担金電力会社側の工事費。技術協議で決まる
- 税と諸手続き税込か税抜か。消防・保安・アグリゲーター初期費用
運転後に差し引く主な費用は次のとおりです。
- アグリゲーター手数料:収益の10%前後が多い。計算の基礎が売上か運用益かを確認する
- 充電の電力費:待機と応動で失う電力量を買い足す費用で、年100万円台になることがある
- 保守・監視:定期点検、遠隔監視、通信費、電気主任技術者の外部委託
- 保険、固定資産税(償却資産、標準税率1.4%)、借地の場合は地代
- 容量の劣化、機器の更新、運用終了時の撤去・処分
なお、国の「系統用蓄電システム等導入支援事業」と東京都の系統用大規模蓄電池の助成はいずれも1,000kW以上が対象で、2026年10月時点で49.9kWの系統直結の蓄電池に使える国・東京都の補助制度は公表資料で確認できません。
関連記事:低圧蓄電所の価格の中身、低圧蓄電所の運営費一覧、利回りの計算方法、低圧蓄電所の税金
低圧の系統用蓄電池にはどんな土地が必要ですか
広さは約40㎡から置けることがありますが、機器構成や離隔、搬入路によって約40〜150㎡(約12〜45坪)の幅があり、都市計画の区分や地目などの条件を満たす必要があります。
| 確認すること | 見方 |
|---|---|
| 広さと形 | 約40〜150㎡。変形地でも機器と離隔が取れればよい |
| 都市計画の区分 | 国土交通省の通知(2025年4月)で、蓄電池は危険物を含む工作物として開発許可の対象になり得るとされ、容量による下限はない。市街化調整区域では許可基準を定めていない自治体が多い |
| 農地 | 地目と現況の両方を見る。農地転用の許可が要り、農振農用地(青地)は原則転用できない |
| 搬入路と電柱 | 2tトラックとクレーン付き車両が横付けでき、近くに電柱があること |
| 積雪・塩害・浸水 | 機器の防水高さ、海からの距離、ハザードマップの浸水想定 |
届出の面では、蓄電容量20kWh超は消防署への届出が必要で200kWhは該当します。系統用の蓄電所は事業用電気工作物として保安規程の届出と電気主任技術者の選任(外部委託可)が必要です。国土交通省通知の5条件を満たせば建築物に当たらない整理ができます。
関連記事:低圧蓄電池は何坪必要?、約40㎡から考える低圧蓄電所の用地、市街化調整区域に低圧蓄電池は置ける?、消防の届出は必要?
運転開始までの手続きと期間はどのくらいですか
申込みから運転開始まで、おおむね6か月〜1年が目安で、手続きの順序はエリアによって異なります。
- 土地の確認区分、搬入路、電柱
- 連系の申込みエリアで手順が違う
- 技術協議充電と放電を審査。負担金が決まる
- 購入・発注負担金を見てから発注
- 施工と届出消防・保安規程
- 連系・運用開始束ねに組み入れて入札
東京電力パワーグリッド管内では、小売電気事業者側での供給の申込みを起点に、電気工事店が工事内容を入力し、アグリゲーターが発電量調整供給契約を申し込む流れです。技術協議では配電線と柱上変圧器の余裕が放電と充電の両方で確認され、工事費負担金の金額もここで決まります。2026年5月15日には、同社の技術協議の依頼票に「系統からの充電の有無」「系統への放電の有無」の欄が追加されました。
関連記事:買ってから運転開始までの流れ、低圧蓄電所の申込み方法、工事費負担金とは?、技術協議とは?
低圧の系統用蓄電池でアグリゲーターは何をしますか
アグリゲーター(特定卸供給事業者)は、49.9kWの蓄電池を束ねて需給調整市場の最低入札量1MW(1,000kW)にし、入札・制御・計量・精算を担います。
49.9kWの蓄電池なら、同じエリアで21基以上、または他の設備と合わせて束ねて初めて入札できます。届出のある事業者は172社(2026年9月時点)ですが、低圧の蓄電池を実際に受託しているのはその一部です。契約は設備の所有者が自分の名義で結ぶのが一般的で、手数料の計算基礎、契約期間と解約、ペナルティ(応動が基準を満たさないときは落札価格の1.5倍)の負担、充電費の負担区分、入金時期、そのエリアで束ねが成立する見込みを書面で確認します。
関連記事:アグリゲーターが束ねて1MWで応札、アグリゲーターの選び方、アグリゲーター契約書の確認点
低圧の系統用蓄電池にはどんなリスクとルール見直しがありますか
主なリスクは、単価の下落、連系できない可能性、分割設置の規制、そして2026年10月時点で議論中のルール見直しです。
- 単価:上限価格は段階的に引き下げられており、収入は上限ではなく実際の約定単価と約定率で決まる
- 連系:配電線や柱上変圧器に余裕がなければ連系できず、充電側も審査される
- 分割設置:本来ひとつの設備を複数の低圧に分けて連系することは規制の対象で、2023年4月から系統用蓄電池も対象。隣り合う区画で設置者や土地の登記簿上の名義が同じ場合は分割と判断されやすく、判断するのは一般送配電事業者
- 機器の認証:2027年10月以降(予定)に新たに連系する低圧設備のPCSなどに、JC-STAR★1が求められる
国の審議会(次世代電力系統WG)では、2026年8月6日から、低圧の系統用蓄電池にも接続検討を求めるか、保証金や土地の権利の提出を求めるかなどの検討が始まりました。2026年10月6日には、分割設置の対策として土地の名義を確かめる期間を1年から5年に延ばす案などが議論されています。これらは2026年10月時点ではいずれも未決定です。
関連記事:低圧蓄電所のルール見直し議論、低圧の分割設置とは?、需給調整市場のペナルティとは?、JC-STARとは?
低圧の系統用蓄電池を買う前に何を確認すべきですか
利回りの数字より先に、接続の状態、価格の中身、土地の権利など12項目を書面で確かめることが重要です。
| 項目 | 確かめる内容 |
|---|---|
| 接続の状態 | 接続契約が成立しているか。工事費負担金の金額が決まっているか |
| 価格の中身 | 土地・負担金・税・諸手続きが含まれているか |
| 土地の権利 | 所有か借地か。都市計画の区分と地目 |
| 隣の区画 | 土地と設備の名義が区画ごとに分かれているか |
| 機器と保証 | メーカーと型番、保証範囲と年数、JC-STARへの対応 |
| アグリゲーター | 社名と、そのエリアで1MWの束ねが成立する見込み |
| アグリゲーター契約 | 手数料の計算基礎、期間、解約、変更の可否 |
| ペナルティの負担 | 応動の不適合や機器・通信の不具合時に誰が負うか |
| 収支の前提 | 単価、約定率、充電費、劣化率、更新費の開示 |
| 保険 | 誰が掛けて誰が受け取るか |
| 撤去 | 運用終了時の撤去・処分費用の負担者 |
| 売却 | 途中売却とアグリゲーター契約・土地契約の引き継ぎ |
関連記事:区画を比べる12項目、販売業者の選び方、よくある誤解
よくある質問
低圧の系統用蓄電池は個人でも持てますか
個人でも法人でも持てます。太陽光と同じく、法人で持って減価償却と経費を合わせて管理する形が多く見られます。
低圧の系統用蓄電池は単独で市場に入札できますか
できません。需給調整市場の最低入札量は1MWのため、アグリゲーターが同じエリアの設備を束ねて入札します。
上限価格の10円で約定し続けると考えてよいですか
よくありません。上限は最高でもの価格で、実際の約定単価はそれより低いことがあり、上限自体も7.21円まで段階的に引き下げる方針が示されています。
低圧の系統用蓄電池に補助金は使えますか
2026年10月時点で、49.9kWの系統直結の蓄電池に使える国・東京都の補助制度は公表資料で確認できません。補助金を前提にしないため、交付決定を待たずに発注や売却を決められます。
隣り合う区画を複数買えば規模を大きくできますか
隣り合う区画で設置者や土地の名義が同じ場合は分割設置と判断されやすく、規制の対象になり得ます。複数基を持つ場合は離れた場所に1基ずつ置くのが確実です。
関連記事:低圧蓄電所は個人でも買えるのか、何基か並べて持つときの注意点、補助金を前提にしない利点
まとめ
- 低圧の系統用蓄電池(低圧蓄電所)は出力49.9kW・200kWh前後の小さな蓄電所で、2026年度から需給調整市場の全商品に参加できるようになりました。
- 収益の中心は一次調整力の待機の対価で、売上は出力×約定コマ数×単価で決まり、上限価格は2026年9月から10円に引き下げられています。
- 買う前に接続の状態、価格の中身、土地の権利と名義、アグリゲーター契約を書面で確かめ、2026年10月時点で未決定のルール見直しの行方にも注意が必要です。
出力49.9kWの低圧蓄電所については、低圧蓄電所のご案内をご覧ください。
出典
- 電力需給調整力取引所(EPRX)「2025年度の取引実績について」(2026年6月)
- 電力需給調整力取引所(EPRX)「需給調整市場のΔkW上限価格について」(2026年7月)
- 資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ 資料(2026年2月・8月・10月)
- 東京電力パワーグリッド 低圧の系統連系技術協議依頼票の改定(2026年5月)
- 資源エネルギー庁「発電等設備の分割対策に関するQ&A」(2026年6月)
- 国土交通省「系統用蓄電池の開発許可制度上の取扱いについて」(2025年4月8日)
- 国土交通省「蓄電池設備を収納するコンテナの建築基準法上の取扱い」(2013年3月29日)
- 消防庁 火災予防条例(例)
- 環境共創イニシアチブ 系統用蓄電システム等導入支援事業 公募要領(2026年)/東京都 系統用大規模蓄電池導入促進事業
- 販売価格は各社の公開ページ(2026年9〜10月)
※本記事は制度と市場の一般的な解説です。個別の投資を勧めるものではありません。