住宅エコリフォーム推進事業を利用した補助金制度の紹介!事例や金額などまとめ

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住宅のエコリフォームに対して、最大35万円の補助金を提供するのが、国土交通省が実施する「住宅エコリフォーム推進事業」です。リフォームに必要となる多額の費用を削減することで、住宅の省エネ化を推進するのが事業の狙いです。

今回の記事では住宅エコリフォーム推進事業の概要に加え、補助金の申請に必要な情報やリフォームの成功事例も解説します。本記事を通じて、効率よく住宅のリフォームを行う方法を理解しましょう。

目次

令和5年度住宅エコリフォーム推進事業の概要

住宅エコリフォーム推進事業では、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。事業の目的や補助の対象となる工事や導入設備の性能基準を確認しましょう。

事業の目的と国交省の取り組み

住宅エコリフォーム推進事業は、カーボンニュートラルの実現に向けた重要な一歩として位置付けられており、国土交通省が取り組みを主導しています。事業の狙いは、既存の住宅をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)レベルまで改修し、エネルギー収支を実質的にゼロ以下にすることです。

ZEHは家庭で使用するエネルギー量と太陽光発電などで創出されるエネルギー量を等しくさせ、年間のエネルギー消費をゼロ以下に抑える住宅です。大気中のCO2総量を増加させないため、環境に優しいと考えられています。

夏は涼しく冬は暖かい、快適な室内環境を維持しながらエネルギーの大幅な削減を目指すのが住宅エコリフォーム推進事業です。

参照:知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~新しい省エネの家「ZEH」|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁

補助対象となるリフォーム工事と性能基準

補助対象となるのは「省エネ診断」とZEHを可能にする「省エネ設計等、省エネ改修」です。省エネ診断は、工場などの施設でのエネルギー使用状況や設備の運転状態を調査し、その結果に基づいて効果的な省エネ対策を提案するサービスです。

省エネ診断では設備の更新だけでなく、追加費用を伴わない運用改善策も検討されます。例えば、エネルギー関連データや設備図面の確認、現場での運転状況の観察などです。診断後は、調査結果をまとめた報告書を受け取れます。具体的には、以下の内容に関する報告がなされます。

  • エネルギー使用の分析結果
  • 具体的な省エネ方法の提案
  • 省エネのポテンシャル
  • コスト削減額
  • 投資回収期間
  • 実施方法と留意点

参照:省エネルギー診断の概要と主な提案項目 p.6~11

省エネ設計等、省エネ改修では以下の要件を満たす必要があります。

分類要件補助対象工事
全体改修断熱等性能等級5、一次エネルギー消費量等級6を達成BELS等の第三者評価認証取得再生可能エネルギー導入不要断熱等性能等級5、一次エネルギー消費量等級6にする改修工事構造補強工事型番登録製品の利用は不要
建替え断熱等性能等級5、一次エネルギー消費量等級6を達成BELS等の第三者評価認証取得再生可能エネルギー導入不要建替えであることの証明書類提出断熱等性能等級5、一次エネルギー消費量等級6にする建替え工事型番登録製品の利用は不要
構造補強工事断熱等性能等級5、一次エネルギー消費量等級6にする改修工事と併せて実施改修後の適合基準(以下①~③のいずれか)に適合する必要あり①木造建築物の必要な壁量等の基準に適合②耐震等級3に適合③構造計算による安全性確認改修工事と併せて実施する構造補強工事
部分改修工事全体改修の要件に適合しない場合複数の開口部についてZEH仕様基準を満たす改修工事必須工事と併せて実施する高効率化工事※

※例:エコキュート・エコジョーズ・蓄電池・LED照明など

参照:令和5年度 住宅エコリフォーム推進事業について 国土交通省 p.4~8

ZEHの具体的な基準については、以下の表に記載しています。屋根や天井、床など各箇所において基準値が定められているため、詳細はこちらのPDF p.11~17を確認してください。

建築物の種類構造開口部の熱貫流率(U値)外皮の熱貫流率(U値)充填断熱工法の熱抵抗(R値)外・内張断熱工法の熱抵抗(R値)
戸建木造1.9~2.30.17~1.010.7~6.90.7~6.3
鉄骨造0.9~3.7
鉄筋コンクリート造0.09~1.26特記事項なし0.6~12.3
共同木造1.9~2.90.28~2.540.1~4.40.1~3.7
鉄骨造0.3~3.1
鉄筋コンクリート造0.18~2.54特記事項なし0.1~5.3

参照:令和5年度 住宅エコリフォーム推進事業について 国土交通省 p.11~17

申請から補助金交付までの手続きの流れ

住宅エコリフォーム推進事業の申請から補助金交付までの流れを確認しましょう。重要なのは、電子申請システムで利用するアカウントの取得です。

申請方法と利用可能な予算の確認

事業者登録を完了させた後、補助金の交付申請へと進みます。申請は電子申請システム「jGrants」を通じて行われるため、アカウントの取得が必要です。アカウント作成のためには、法人共通認証基盤として機能する「GビズID」への事前登録が求められます。登録には、印鑑証明書や申請書の郵送が必要です。

GビズIDへの登録はデジタル庁のWebサイトから行えますが、発行には時間がかかることがありますので、余裕を持って手続きを行いましょう。申請に不備がある場合は事務局から差戻しの指摘があるため、指示に従って修正を行い、再申請してください。

書類の提出は、jGrantsのマイページから可能です。事務局から送信されるメールに記載されたURLからログインし、必要な書類をアップロードしましょう。提出書類には補助対象事業費内訳書や共同実施規約、立地条件や耐震工事に関する書類などが含まれます。書類はPDF形式で添付する必要があるため、注意が必要です。

参照:令和5年度 住宅エコリフォーム推進事業申請・補助様式【交付申請】 – 住宅エコリフォーム推進事業実施支援室

住宅エコリフォーム推進事業の利用可能な予算については、以下の表を確認してください。

補助対象補助額の計算方法補助率補助額備考
全体改修・建替え全体改修:省エネ改修工事費×補助率
建替え:省エネ改修工事費相当額×補助率
省エネ診断:3分の1
省エネ設計等、省エネ改修:40%
5万~35万円※以下のうち、低い額を適用
①実際の工事費×補助率②補助上限額
部分改修開口部や躯体、設備の各部分については、以下①と②の低い方を補助額とする
①モデル工事費×補助率②実際の工事費×補助率
開口部・躯体・設備の合計と補助上限額のうち低い額を適用
設備の効率化工事は、断熱化工事の実際の工事費と同額以下

※省エネ診断のみの場合、下限額が1万円となる

参照:令和5年度 住宅エコリフォーム推進事業について 国土交通省 p.19~20

支援事業者の登録状況と対応範囲

住宅エコリフォーム推進事業には「登録事業者」の制度が設けられています。登録事業者とは、住宅エコリフォーム推進事業の交付申請を完了し補助金を受け取った住宅事業者のことです。

2023年12月13日時点で、2,472の登録事業者が承認されています。事業者の一例として、10社を以下の表で紹介しています。登録事業者がどのような業務に対応できるのかを確認してください。

事業者名本店の所在地事業者種別リフォーム所属団体許認可の有無電話番号またはホームページ
株式会社クロセアルミ住建広島県リフォーム事業者(設計・工事)所属なし建設業082-382-1740
ヒロタデザイン事務所福岡県リフォーム事業者(設計・工事)、設計事務所(診断・設計)無しホームページ
拓建福岡県建築事業者(診断・設計・工事)、リフォーム事業者(設計・工事)ホームページ
株式会社プレザントワークス大阪府建築事業者(診断・設計・工事)、リフォーム事業者(設計・工事)、買取再販事業者(設計・工事)リノベ協建設業、宅建ホームページ
株式会社ホームメンテサポート広島県建築事業者(診断・設計・工事)、リフォーム事業者(設計・工事)所属なし建設業ホームページ
株式会社ジョン石橋ビルダーズ東京都リフォーム事業者(設計・工事)RECACO03-3417-1908
岡田住建高知県建築事業者(診断・設計・工事)、リフォーム事業者(設計・工事)所属なし無し090-4974-0606
百武ガラス店北海道その他090-3891-4496
有限会社中井工務店兵庫県建築事業者(診断・設計・工事)建設業078-431-6002
和田工務店株式会社熊本県建築事業者(診断・設計・工事)、リフォーム事業者(設計・工事)096-443-3596

参照:登録事業者一覧 – 住宅エコリフォーム推進事業実施支援室

申請期間と受付窓口の情報

住宅エコリフォーム推進事業の申請に関しては、事業者登録の受付期間が令和5年4月28日から12月15日です。交付申請の受付期間は令和5年5月26日から令和6年1月19日まで設定されており、完了実績報告の受付期間は令和5年6月23日から令和6年2月29日までとされています。

一方、グループ提案の公募期間は令和5年4月28日から6月6日までと短期間で設定されており、採択通知は6月中旬に行われます。優先的に予算が確保される期間は、令和5年5月26日から10月31日までとなっています。

しかし、令和5年度の補助金については申請額が予算の上限に達したため、交付申請の受付は終了しています。7月3日17時51分以降に提出された申請については、受付対象外となるため、注意が必要です。

申請に関する問い合わせは「住宅エコリフォーム推進事業実施支援室」が対応しており、問い合わせは月曜日から金曜日(祝日、年末年始を除く)、9:30から17:00(12:00から13:00を除く)の間に行えます。記録保持のために、事業に関する質問や相談はメールにて行いましょう。

電話番号E-mail
03-6803-6684info@ecoreform-shien.jp

参照:

【重要】住宅エコリフォーム推進事業の交付申請の受付を終了いたしました – 住宅エコリフォーム推進事業実施支援室

令和5年度 住宅エコリフォーム推進事業について 国土交通省 p.28

住宅エコリフォーム推進事業とZEHの関連性

住宅エコリフォーム推進事業とZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)との関連性について、住宅の断熱性とカーボンニュートラルの観点から説明します。

断熱性能の向上

住宅エコリフォーム推進事業における重要な要素の一つが、断熱性能の向上です。ZEHの実現を目指し、2050年カーボンニュートラルの目標達成に向けた施策として、断熱性能の高い住宅の普及が重要視されています。

家庭で使用するエネルギーの削減量と太陽光発電などによるエネルギーの創出量を等しくすることで、1年間のエネルギー消費を実質的にゼロ以下にすることがZEHの目標です。実現のためには住宅そのものの断熱性を向上させ、空調の使用を抑える必要があります。つまり、環境に優しいだけでなく、月々の光熱費の節約にもつながるのです。

さらに、断熱性能が高い住宅は室温を一定に保つことが容易になるため、夏は涼しく冬は暖かい環境を提供できます。実際、断熱改修による健康への影響に関する研究では、改修後に居住者の最高血圧が低下し、心電図の異常所見やコレステロール値の基準超過者が減少することが確認されています。

参照:報道発表資料:住宅内の室温の変化が居住者の健康に与える影響とは?調査結果から得られつつある「新たな知見」について報告します<br>~断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告(第3回)~ – 国土交通省

しかし、住宅の断熱性向上を実現させるには、既存の住宅に対する改修・補習が欠かせません。そこで国土交通省は、2025年度までに住宅の省エネ基準への適合義務化、断熱施工技術の向上、新築に対する支援措置を通じて、断熱性能の底上げを図ることを計画しています。さらに、2030年までには省エネ基準をZEH・ZEB基準の水準に引き上げる目標も設定しています。

住宅における断熱性能の向上は、住宅エコリフォーム推進事業とZEHの普及における中心的な要素です。エネルギー効率の向上だけでなく、経済性の向上や居住者の快適性、健康性の向上に貢献しています。

参照:

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について – 省エネ住宅 | 家庭向け省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト

カーボンニュートラル目標

日本では、2050年までにカーボンニュートラルを目指しています。環境省によると、カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことです。具体的にはCO2などの温室効果ガスの排出量から、植林や森林管理などにより吸収されるCO2量を差し引いた総量をゼロにすることを指しています。

参照:カーボンニュートラルとは – 脱炭素ポータル|環境省

カーボンニュートラルの背景

カーボンニュートラルを目指す背景には、2018年10月のIPCC特別報告書の内容があります。気候変動による影響を抑制するためには、2050年前後を目途に世界のCO2排出量をプラスマイナスゼロにすることが必要だと報告されたのです。

報告を受けて、日本の菅総理が2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。2021年4月には、2030年度までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減する目標を設定し、実現に向けた取り組みを積極的に行っています。

カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの一つが、住宅エコリフォーム推進事業です。住宅・建築物の2030年に向けた目標は、新築住宅・建築物においてZEH・ZEB基準の省エネ性能を確保し、新築戸建住宅の60%に太陽光発電設備を導入することです。2050年にはZEH・ZEB基準の省エネ性能確保に加えて、再生可能エネルギー導入の一般化も目標に掲げています。

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)は、ZEH同様に住宅のエネルギー消費量とエネルギー創出量を等しくし、CO2排出を抑える住宅のことです。ZEHが一般的な住宅を対象としているのに対し、ZEBはオフィスや学校、工場などを対象としている点が両者の違いです。

参照:ZEBとは? | 環境省「ZEB PORTAL – ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ゼブ)ポータル」

カーボンニュートラル実現に向けた取り組み

国や地方自治体等の公的機関はカーボンニュートラルの実現に向けて、省エネ対策と再生可能エネルギー導入の拡大に率先して取り組んでいます。国民や事業者の意識・行動変革も重要視しており、省エネ性能の高い住宅の利用や情報提供による啓発なども行っています。

具体的な省エネ対策として、住宅の省エネ基準への適合義務化や技術力を向上させる支援、省エネ基準適合を条件とした新築に対する支援措置を計画中です。2030年までには、省エネ基準をZEH・ZEB基準の水準に引き上げることを目標としています。例えば、建築物の省エネ法に基づく誘導基準の改訂や、住宅トップランナー制度の強化などです。

トップランナー制度とは商品されている製品のうち、エネルギー消費効率が最も良いものを「トップランナー」に定める制度のことです。製造業者はトップランナーの水準に近い製品を作るように努力する必要があります。断熱材やサッシ、複層ガラスなど住宅に欠かせない建材もトップランナー制度の対象となっています。

参照:エネルギー消費機器製造事業者等の省エネ法規制 | 事業者向け省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト

また、既存の住宅や建築物に対しても省エネ改修を促進する必要があり、耐震改修との組み合わせや、地方自治体との連携による支援拡充が考えられています。省エネ性能表示の義務付けや既存ストックに対する省エネ改修の推進は、住宅エコリフォーム推進事業において重要な要素です。

2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みは、住宅・建築物分野における省エネ性能の向上と再生可能エネルギー導入の拡大に焦点を当てています。国や地方自治体の率先した取組み、国民・事業者の意識変革、技術革新、そして政策的な支援が不可欠です。住宅エコリフォーム推進事業は、取り組みの中心的な役割を果たすことが期待されています。

参照:脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方の概要 p.1~2

エネルギー消費を抑える設備の選定と設置方法

住宅エコリフォーム推進事業では、以下の設備を補助の対象としています。一定以上のエネルギー消費削減効果のために、各設備に特定の要件が設定されています。詳細は、以下の表をご確認してください。

工事種別要件等
太陽熱利用システム強制循環式で「JIS A4112:2020」の太陽集熱器相当以上の性能蓄熱槽がある場合は「JIS A4113:2021」の太陽蓄熱槽相当以上の性能
電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯器電気式ヒートポンプとガス補助熱源機のシステム年間給湯効率(JGKAS A705)が102%以上
ヒートポンプ給湯機(エコキュート)「JIS C9220:2018」に基づく年間給湯保温効率または年間給湯効率が3.0以上(寒冷地仕様は2.7以上)※
潜熱回収型石油給湯機(エコフィール)油だき温水ボイラー:連続給湯効率94%以上石油給湯機:直圧式モード熱効率81.3%以上、貯湯式74.6%以上※
潜熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)給湯暖房器:給湯部熱効率94%以上給湯単能器、ふろ給湯器:モード熱効率83.7%以上※
浴室シャワー水栓「JIS B2061:2017」の節湯形水栓相当以上の機能を有する節湯水栓※2
高断熱浴槽「JIS A5532:2011」の高断熱浴槽相当以上の性能※3
燃料電池システム(エネファーム)一般社団法人燃料電池普及促進協会(FCA)の登録機器リストに登録されている製品
蓄電池定置用リチウム蓄電池で、令和4年度以降に一般社団法人環境共創イニシアチブに登録・公表されている蓄電システム
LED照明工事を伴う設備

※1. 浴室シャワー水栓と高断熱浴槽と3つセットに限る

※2. 「ハイブリッド給湯機、エネファーム」とセット、または「エコキュート、エコフィール、エコジョーズ」と高断熱浴槽と3つセットに限る

※3. 「ハイブリッド給湯機、エネファーム」とセット、または「エコキュート、エコフィール、エコジョーズ」と浴室シャワー水栓と3つセットに限る

参照:令和5年度 住宅エコリフォーム推進事業について 国土交通省 p.28

住宅リフォーム事業の成功事例とそのポイント

住宅リフォーム事業の一例として、省エネに成功した事例と耐震や耐久性の向上に成功した事例を紹介します。エコリフォームのイメージを持つためにも、具体的にどのような取り組みがポイントとなるのかを確認しましょう。

省エネ性能が向上したリフォーム例

建物の長期利用を前提とし、区分所有者の要望に基づいた改修が行われたのが神奈川県横浜市に位置する高経年団地型マンションのリフォーム例です。1970年代に建設された4つの団地は、結露問題や断熱仕様でないことから耐震性に課題がありました。建設から35年が経過した後に管理組合が結成され、建替えではなく長期利用の方針が決定されました。

リフォームにおける成功ポイントは、以下の2つです。

長期計画検討委員会の設置と合意形成の推進

結成された長期計画検討委員会は団地再生に向けた検討を開始し、耐震診断・建物診断を実施しました。その結果、建物のコンクリートと鉄筋に重要な問題があることがわかりました。委員会では、勉強会の実施や近隣マンションの外断熱改修事例の見学会を行いました。住民や理事会のリフォームに対する意識を高めたり、知識を深めたりすることが取り組みの狙いです。

外断熱改修工事の実施・実施後の効果

居住者アンケートを実施し、最も要望の多かった結露防止対策を行うことにしました。具体的には、外壁と屋上の外断熱改修を湿式外断熱工法(EIFS)で実施しました。EIFSは建物を断熱材で覆うため、年中通して快適な室内環境を実現できるのが強みです。

参照:外断熱改修(EIFS) で快適な暮らしを! p. 4

改修後は結露が減少し、冬季の室内は暖かくなったと住民から報告がありました。電気代やガス代が削減されている点からも、住宅の省エネ性能が向上したことが理解できます。

事例からリフォームにおいて、居住者の意向の反映や診断に基づく決定、経済的な計画策定が重要であることがわかりました。外断熱改修などの省エネリフォームは、居住者の快適性とエネルギー効率を向上させるため、長期的な住宅維持において有効な手段だといえるでしょう。

参照:高経年団地型マンションの外断熱改修 (神奈川県横浜市) 

耐震や耐久性の向上につながった改修例

住宅リフォーム事業における成功事例の一つとして、「耐震ポール」の導入が挙げられます。この技術は、住宅の耐震性を高めるために開発され、その特徴と効果は多くの住宅オーナーにとって魅力的です。

耐震ポールは、住宅の周囲に金属製(鋼製やアルミ製)のポールを設置し、これを建物の2階の梁や胴差しに固定することで構造を補強します。この方法の最大の利点は、ほぼ屋外での施工が可能であり、既存の基礎に負担をかけずに施工箇所が限定される点です。通常、4~6本の耐震ポールで効果が得られ、住宅の居住者がその場にいながら施工が可能です。この点が、住宅リフォームにおける大きな利点として挙げられます。

耐震ポールのコストは、鋼製で約210万円(4本の場合)、アルミ製で約250~300万円(4~5本の場合)とされ、約35坪の住宅での施工が一般的です。工期は約10日と短く、迅速に耐震性を高めることが可能です。

耐震ポールの特長として、外部からの補強により、間取りや通風、採光に影響を与えず、3次元的な耐力を発揮して偏心を改善し、層間変形を少なくして家屋の転倒を防止できます。また、工事費は比較的安価で、低騒音、低振動での施工が可能です。施工後の耐震性能は構造計算によって事前に明示され、お客様に安心感を提供します。

耐震ポールの導入は、30~35坪程度の標準住宅で4~5本のポールを使用することで、震度6クラスの大地震に対して家屋が倒壊しない程度の耐震性を確保できます。震度7クラスの地震に対しては、ポールの本数を増やすことや2階の補強も検討されます。

耐震ポールは、独立行政法人建築研究所の「木造住宅の耐震補強構法技術コンペ」入賞、国土交通省・(財)建築防災協会の「戸建て住宅の耐震改修工法・事例」展示、さらには「地震から命を守る」しずおか技術コンクール入賞など、多くの評価を受けています。

耐震ポールの成功事例は、住宅リフォーム事業において耐震性と耐久性の向上に大きく貢献しています。この技術は、安全性の向上だけでなく、施工の迅速さ、コストパフォーマンスの良さ、居住者の生活への影響の少なさなど、多角的な利点を持っています。そのため、これからの住宅リフォーム事業においても、耐震ポールは重要な役割を果たすことが期待されています。

参照:耐震補強方法の例 | 内閣府防災情報 p.13

住宅エコリフォーム推進事業の今後の見通し

住宅エコリフォーム推進事業における今後の動向や、事業が地域や業者に与える影響について解説します。

国交省の今後の予算や計画の動向

国土交通省は、令和5年度に住宅・建築物の省エネ対策に980億円の予算を割り当てました。しかし、2050年のカーボンニュートラル実現と2030年度の温室効果ガス46%削減(2013年度比)目標に向け、令和6年度の予算は1,225億円に増額しました。増額は、建築物分野の省エネ対策強化と木材利用の拡大を目指す国交省の積極的な姿勢を反映していると言えるでしょう。

建築物が日本のエネルギー消費量の約3割を占めていることや木材需要の約4割を占めていることから、国土交通省は建築分野における取り組みを重要視しています。例として、令和4年6月に公布された改正建築物省エネ法では、すべての建築物に対する省エネ基準の適合義務の対象拡大や、建築物における木材利用の促進を図る建築基準の合理化が盛り込まれました。

このような取り組みから、住宅エコリフォーム推進事業は今後も拡大していくことが予想されます。令和6年度の予算増額は、省エネ対策と木材利用の推進に対する国土交通省の強い意志を示しているといえるでしょう。

国土交通省の取り組みは長期的な視点から環境問題に対応し、建築物の省エネ化を促進する上で重要な役割を果たしています。住宅エコリフォーム事業は、国民のエネルギー消費削減と環境保全の両面での貢献が期待されています。

参照:

令和5年度予算概算要求概要令和5年1月国土交通省 p.23

令和6年度予算概算要求概要令和5年8月国土交通省 p.25

住宅エコリフォームの普及と地域・業者への影響

住宅・建築物の省エネ対策に割り当てられた令和5年度の予算は980億円でしたが、翌年は1,225億円に増額されることが明らかになりました。予算の増額から、住宅エコリフォーム推進事業はさらに拡大されると考えられます。事業の拡大は、地域社会や住宅関連業者にも影響を及ぼすでしょう。

住宅エコリフォームの普及は、地域のエネルギー消費を削減することにつながります。全国各地で断熱改修やエネルギー効率の高い設備が導入されると、冷暖房費の節約につながり、結果として住民の生活費の軽減にも貢献します。また、地域全体の環境負荷を減らし、気候変動対策も可能です。

住宅関連業者にとっても、エコリフォームの拡大は新しい仕事を獲得するチャンスにもなり得ます。省エネ性能に特化した建材や設備の需要が高まると、関連した改築や設備更新の仕事につながるでしょう。エコリフォームに関する専門知識や技術を有する業者は、競争力を高めるわけです。

住宅エコリフォームの普及に伴い、新たな雇用機会の創出も期待されます。リフォーム業界内での雇用が増加するだけでなく、省エネ製品の製造や販売、エネルギー効率診断など関連分野でも雇用が生み出されるでしょう。雇用の創出により、地域経済の活性化にも貢献すると考えられます。

地域コミュニティにおいては、エコリフォームの普及が地域住民間の協力や情報共有を促進することが期待されます。省エネに関する意識が高まることで、地域全体でのエネルギー効率化への取り組みが活発になる可能性があります。

住宅エコリフォーム推進事業の拡大は省エネルギーと環境保全の観点のみならず、地域経済や関連業界の活性化、地域コミュニティの強化にも貢献すると考えられます。

参照:

令和5年度予算概算要求概要令和5年1月国土交通省 p.23

令和6年度予算概算要求概要令和5年8月国土交通省 p.25

よくある質問

以下では、住宅エコリフォーム推進事業に関連するよくある質問と回答を共有します。事業の理解に役立ててください。

令和5年度住宅エコリフォーム推進事業とは?

2050年のカーボンニュートラル目標達成に向け、住宅の省エネ化を推進するのが住宅エコリフォーム推進事業です。事業の目的は、住宅をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)レベルの高省エネ性能へ改修することにあります。

補助対象となるのは省エネ設計等費と省エネ改修工事費の合計で、断熱化工事や効率化設備、構造補強工事が含まれます。令和6年度末までに着手された、ZEHレベルの省エネ性能を実現する改修プロジェクトが対象です。

エコリフォーム補助金とは?

エコリフォーム補助金は住宅エコリフォーム推進事業の一環として、断熱化工事、設備の効率化、構造補強工事など、住宅のZEH化に必要な改修工事に提供される補助金です。補助金は全体改修・建替え、部分改修のいずれも対象としており、省エネ改修の地域への普及促進を目指しています。

補助額の限度は一戸につき、35万円に設定されています。補助対象の費用は、経費の40%を限度に定められています。補助金は、住宅の省エネ化を促進するための重要な支援策です。

住宅エコリフォームとは何ですか?

住宅エコリフォームとは、住宅をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に改修するリフォームのことを指します。ZEHは1年間で消費するエネルギー量を太陽光発電などによるエネルギー創出で賄い、エネルギー収支をゼロまたはそれ以下にする住宅のことです。

住宅エコリフォームには、断熱性能の向上や高効率の暖房冷房システムの導入、太陽光発電システムの設置など、さまざまな改修が含まれます。エコリフォームを通じて、エネルギー消費の削減や環境保護を行い、持続可能な住環境の実現を目指します。

まとめ

住宅エコリフォーム推進事業は、住宅のZEH化に最大35万円の補助金を提供する事業です。住宅の断熱性が高まり空調の使用頻度が少なくなるため、電気代の削減にも役立ちます。

また、エネルギー創出のために太陽光発電の設備を導入することもあります。太陽光発電は、CO2を排出しない環境に優しい発電方法の1つです。より快適な住宅環境を獲得しつつ、住宅の脱炭素化も可能にするのが住宅エコリフォーム推進事業だといえるでしょう。

住宅エコリフォーム推進事業の補助金を活用し、積極的に住宅の脱炭素化を図りましょう。

住宅エコリフォーム推進事業に関する重要用語

項目説明
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)1年間で消費するエネルギー量を太陽光発電などによるエネルギー創出で賄い、エネルギー収支をゼロまたはそれ以下にする住宅
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)ZEH同様に住宅のエネルギー消費量とエネルギー創出量を等しくし、CO2排出を抑える住宅のこと。ZEHが一般的な住宅を対象としているのに対し、ZEBはオフィスや学校、工場などを対象としている。
登録事業者住宅エコリフォーム推進事業の交付申請を完了し補助金を受け取った住宅事業者のこと

著者のプロフィール

川田 幸寛
小学校教員として、カーボンニュートラルや脱炭素に関する授業を行った経験がある。子どもたちが理解できるように、専門用語を分かりやすく、かみ砕いて説明することを心がけた。この経験を活かし、脱炭素化の重要性を広く伝えるために、誰にとっても理解しやすい記事を作成している。

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総編集長
福元 惇二(フクモト ジュンジ)

タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。

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日本は先進国の中でも非常にカーボンニュートラルへの考えや脱炭素に向けた会社 の経営を疎かにしています。
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