日本では固定買取制度と呼ばれているFITとは、「Feed in Tariff」を略したもので、国が長期契約にて電気を買い取る制度のことをいいます。

再生可能エネルギーを推進するための支援策で、1978年に米国で始まりました。

その後、2000年には脱原発を目指すドイツで、本格導入されました。

日本でも2009年に開始され、2012年より法律として制定されています。

固定買取制度(FIT)の仕組み

固定買取制度では「太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス」と5つの再生可能エネルギーの導入にあたって、要件を満たした場合、国が10年~20年にかけて創出した電力を買い取る仕組みになっています。

再生エネルギーの種類や、出力規模によって適用される固定価格・年数が異なってきます。

2023年度の固定買取価格(太陽光発電)
出典:再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度 – 経済産業省

導入年度によって、買取価格や要件は異なり、経済産業省と調達価格等算定委員会がKWHあたりの買取価格を設定・発表します。

価格の設定は、再生可能エネルギー設備の平均導入コストや電力の市場取引価格、入札価格が参考とされています。

固定買取制度のイメージ
出典:再生可能エネルギーの固定買取価格制度とは – 東京電力

電気を買い取るのは国ですが、実際に契約して売電するのは電力会社です。

売電は、再生可能エネルギー設備に接続された配送電を介して、電力会社の計器メーターによって計測されます。

そして、各自の銀行口座に振り込まれる流れとなっています。

導入側は、全量売電(全量を買い取ってもらう)余剰売電(余った分を買い取ってもらう)から選択することが可能です。

固定買取制度の原資は、再エネ賦課金です。

再エネ賦課金とは「電力を利用するすべての個人・法人に義務づけられている」再エネ促進のための料金です。

再エネ賦課金によって成り立っているのがFIT制度の特徴です。

参照:資料・パンフレットFIT・FIP制度 – 資源エネルギー庁

関連記事はこちら:再生可能エネルギーの固定価格買取制度「FIT制度」とは

固定買取制度のメリット

いったん定められた固定価格は、10年~20年の契約で変わることはありません。

買取価格が10年間下がり続けたとしても、導入時の価格がFIT終了まで約束されます。

固定買取価格は、早期での契約が有利となります。

理由としては、導入コストの低下や再生可能エネルギーの普及拡大に伴って、年々下がる傾向にあるからです。

出典:令和4年度以降の調達価格等に関する意見 – 調達価格等査定委員会

電力取引市場の価格変動の影響受けないため、一定以上の売電収益が得られることが、固定買取制度のメリットとなっています。

また、FIT適用の発電量は最優先で送電されます。

概ねの売電収入が見込めることから、導入コストの回収時期の目安が立つなど、投資リスクを軽減し安定した運用が実現しやすい点も大きな利点です。

固定買取制度のデメリット

買取制度のデメリットは、買取価格が現状の電気料金の単価を下回っていることです。

FIT制度が発足した当初は、導入コストと買い取り価格が高額でした。

2009年の固定買取価格は48円/kWh、当時の電気料金の平均単価は17.87円です。

電気を買うよりも売った方が利益になるということで、売電を目的に太陽光発電の導入が著しく加速しました。

出典:2023年6月電気料金 – 資源エネルギー庁

2023年度の買取価格は10円~16円、電気料金の平均単価は27円~33円、売電よりも消費電力に再生可能エネルギーを使った方が有益であることがわかります。

固定買取制度は、以前ほどモチベーションにつながらないのが現状です。

加えて、FIT以外での電力買取価格は7.5円~8.5円が相場です。

FIT終了後の余剰電力の運用方法が、懸念材料の1つだといえます。

FIT終了後の選択肢

固定買取制度は、10kW未満の場合で10年、10kW以上の場合で20年です。

太陽光発電の耐用年数はメーカーによりますが、25年30年と言われています。

FITが終了した場合の選択肢は大きく3つあります。

  1. 新電力会社に買い取ってもらう(新電力のほうが買取価格は高め)
  2. 100%の電力を消費電力に回す(蓄電池、EVなど)
  3. PPAやクレジットで運用する(買取価格はプロジェクトよる)

FIT制度の買取価格の低下から、近年では、売るよりも「貯める」「使う」方向でコスト削減を狙う企業が増えています。

参照:制度に関してよくあるご質問 – 資源エネルギー庁

各国の再エネ導入状況

固定買取制度(FIT)を導入する国は、世界で100以上に及び、再生可能エネルギーの導入が進んでいます。

2023年の時点で、世界の電源構成のうち最も多いのが石炭35%、次に再生可能エネルギー29.3%です。

総エネルギーの約3分1を占めるまでに、再生可能エネルギー市場は成長しているのです。

世界の電源構成比率
出典:Electricity Generation Mix – Renewable Energy Institute

アジア、欧州、米国と国別の再エネ導入比率は、ブラジルが91%で最も高く、次いでデンマークが84%カナダとスウェーデンが70%、ドイツが45%、英国が44%です。

米国・日本はまだ低比率でそれぞれ23%、22%に留まっていますが、これから成長していくと思います。

各国の電源構成比率
出典:Electricity Generation Mix – Renewable Energy Institute

導入比率には差があるものの、世界全体で見れば明らかに再生可能エネルギーの規模は拡大傾向にあります。

同時に開発が進められているのが、廃棄される太陽光電池や各種部材のリサイクル活用です。

インジウム、ガリウム、リチウムなどのレアアース素材は、生産量や生産国が限られているため、1つの再エネにこだわらないエネルギーミックスが注目されています。

関連記事はこちら:再生可能エネルギー世界ランキング・国別【最新版】

固定買取制度の課題と対策

固定買取制度とはまったく異なる方法で、電気を売買できるFIP制度が、ドイツ・米国など欧米を中心に拡大しています。

FIP制度とは、「Fip in Premium」のことで、 電力の市場価格にプレミアム価格を追加して、電気小売事業者が買い取る制度のことです。

今後は、蓄電池にて消費電力や緊急用途の比率を向上させたり、FIP制度で売電収入を得るなど、固定買取制度のみに依存しない方法が運用効率を高めるキーワードになると思います。

著者のプロフィール

Takasugi
Takasugi
太陽光発電・蓄電池等を専門とする住宅設備会社での勤務歴10年。再エネの専門知識からエネルギー系の株式投資と記事執筆を開始する。エネルギー専門の投資家兼ライターとして独立して7年。過去にNY、ロンドンの移住歴あり、国内・海外メディアを駆使した情報収集が強み。