再生可能エネルギーには、太陽光や風力、水力と様々な種類がある中、それぞれ創出できるエネルギーの量には違いがあります。再生可能エネルギーだけに限らず、石炭やガス、原子力など、一定の燃料から創出できるエネルギー量には差が出てくるのです。ある特定の燃料が創出するエネルギーの割合のことを、発電効率といいます。

今回は、再生可能エネルギーの発電効率の考え方や計算方法について解説していきます。今後の再エネ運用において、ぜひお役立て下さい。

再生可能エネルギーの発電効率とは?

発電効率とは、簡単にいうと「一定のエネルギーからどれくらいの電気に変換できるのか」を表した数値のことです。発電効率は電気変換効率とも呼ばれていて、「電気に変換できる量 = 発電量が多い」ほど発電効率は高くなります。つまり、発電効率が高いほど、一定の熱エネルギーから作れる電気の量が多くなるということです。

発電効率が高くなるほど、当然ながら設備利用率はコスト比率も高くなる傾向にあります。では、発電効率についてもっと詳しく見ていきましょう。

エネルギーを電気に変換する仕組み

再生可能エネルギーや火力発電、原子力発電と様々な方法で電気が作られています。電気をつくる燃料として使われるのは、太陽の光、風や水、石炭、ガス、原子力と異なりますが、燃料がそのまま電気として使えるわけではありません。燃料からエネルギーを得て、電気に変換する必要があるのです。変換する時に、どれくらいの比率で変換が可能なのかを発電効率・変換効率という数値で表します。

エネルギーから電気ができる仕組み

出典:野球と電気エネルギー – Power Academy

風力発電では、力学ともいわれる運動エネルギーを電気へと変換します。石油・石炭を燃焼させた熱エネルギー、水か落ちる勢いを使う位置エネルギー、化学反応を利用する電池エネルギーなどそれぞれのエネルギーを、変電装置や発電設備を使って消費可能な電気エネルギーへと変換する仕組みになっているのです。

厳密にいうと太陽光発電は光エネルギーから化学反応を起こさせて、電池エネルギーに変換した後で電気エネルギーを創出します。

変換するタイミングで、どれくらいの電気がつくれるかは、燃料とするエネルギーの種類や変換方法などによって変わってくるわけです。言い換えると、発電効率から、1kWの電気をつくるのに太陽光がどれくらい必要なのか、水力ならどれくらい必要なのかがわかります。

参照:発電効率とは – コトバンク

参照:太陽電池の原理 変換効率とは – 産総研

Kyosera 太陽光発電の仕組み 
https://www.kyocera.co.jp/solar/support/topics/system/

再生可能エネルギーの発電効率比較

発電効率は、投入した燃料(リソース)が持つエネルギーから、どれくらいの割合で電気に変換されたのかを「%パーセンテージ」で表します。例えば、太陽光の発電効率が20%とだとすれば、光エネルギー100に対して20%が電気に変換できたという意味です。ここでは、再生可能エネルギーやその他の発電方法の発電効率を比較していきます。

発電効率比較一覧(グラフ)

発電方式別の発電効率を一覧にまとめました。

電力の種類発電方式発電効率・変換効率
水力発電水が落ちる(流れる)勢いでタービンを回して発電80%
天然ガス複合発電ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて発電55%
火力発電(蒸気発電)石炭、石油等を燃焼蒸気で発電43%
ガスタービン発電ガスでタービンを回して発電35%
原子力発電ウランの熱エネルギーで蒸気タービンを回して発電33%
風力発電風力でタービンを回して発電30~40%
太陽光発電光エネルギーを電池に集積して発電20%
地熱発電地熱蒸気でタービンを回して発電10~20%
バイオマス発電タービン方式またはガス燃焼方式20%
※東京電力・関西電力のデータをもとに作成

参照:水力発電の概要 ・各種発電方式別にみたエネルギー変換効率 – 関西電力

参照:太陽光発電の返還効率とは – 東京電力エナジーパートナー

水力発電の発電効率が最も高く80%です。水力で発生する位置エネルギーの大半が電力に変換できるというこです。次に数値が高いのが天然ガスの複合方式となり、高い順に火力発電、原子力と続きます。再生可能エネルギーの中で発電効率が最も高いのが風力で30~40%です。そして、太陽光、地熱、バイオマスが投入したエネルギーの20%となります。次に、再生可能エネルギーの発電効率の特徴を比較していきます。

水力発電の発電効率の特徴

水力発電は、おもに河川や貯水池の水を高い位置から低い位置に落ちる位置エネルギーを利用して発電します。水力がタービンを回すことで電気ができる仕組みです。水が自然に落ちる力を利用するため、発電効率は80%と高くなる傾向にあります。発降雨量に恵まれた日本では、古くから使われている発電方法で、近年では農水用地や工業廃水を利用する小型の小水力発電が注目されています。

風力発電の発電効率の特徴

風力発電は、風の運動エネルギーがブレードを回すことで、電気をつくります。風車の直径が大きくなるほど、発電効率も高くなり、国内では直径80メートル(大型航空機)に匹敵する規模の風力発電があります。ブレードにもプロペラ型・オランダ型など種類があり、最高時には発電効率50%を超えるものもあります。平均的には30~40%となり、国土が狭い日本では海洋に設置する洋上太陽光が盛んです。

太陽光の発電効率の特徴

太陽光発電は、電池の役割をする太陽光パネル(モジュール)に光が集まることで電気をつくります。日本の場合、1平方メートルあたり1kWの光エネルギーが基準です。1kWの光エネルギーから何%が電気に変換されるのかによって、変換効率が表示されています。太陽光発電の変換効率の算出方法には、国際基準があり世界共通の測定方法が使われています。

パネルの種類ごとに異なる変換率

現在の発電効率は20%程度でも、著しいペースで向上していることが特徴で、米国の国立再生エネルギー研究所(NREL)の調査では、2020年の時点で、最高47.6%の変換率が記録されています。パネルの種類によって格差があり、20%~30%の変換率が最も多くなります。SHARPは群を抜いて上位にランクインしており、Panasonic、Toshiba、LG、First Solar、Trina Solar、Canadian Solarなど比較的に高効率を記録しています。最新のものほど変換率は高くなる傾向にあるようです。

参照:太陽光発電の返還効率とは – 東京電力エナジーパートナー

参照:Best Research Cell Efficiency – NREL

地熱発電の発電効率の特徴

地熱発電は、マグマなど地下の熱から高温の水や水蒸気でタービンを回して発電します。世界有数の火山国である日本は、膨大な地熱源を有するのですが、まだ開発途上にあることが地熱発電のデメリットです。地下のマグマは1,000度以上あるにもかかわらず、発電装置で摘出できる水や水蒸気の温度が低いことや、コストがかかる点が課題です。発電効率は10%~20%で、今後の研究開発が期待されています。

関連記事はこちら:再生可能エネルギーの発電量はどれくらいか?

太陽光の発電効率の調べ方・計算方法

再生可能エネルギーの発電効率は、まず何を熱源とするのか、どんな設備機器を使うのか、エネルギーの種類や発電方法によって異なります。どのように調べるのか、自分でも計算できるのか、ここでは太陽光発電を例に挙げて、調べ方や発電効率の計算方法をご紹介していきます。

発電効率の調べ方

太陽光の場合、発電効率を調べる一番わかりやすい方法は、利用する設備機器の製品名・型番で調べる方法です。購入前であれば、業者やメーカーに問い合わせできます。パンフレットにも記載されています。購入後は、カスタマーサービスに問い合わせたり、製品名・型番でネット検索すれば簡単です。

通常は以下のような商品情報が太陽光パネルには添付されています。

  • モデル名 → パネルの製品名・ブランド名
  • 発電効率 → 変換効率(2022年以降は17%~20%が平均的)
  • 最大出力 → 最大に発電した場合の電力量
  • サイズ → パネル1枚あたりの寸法
  • 重さ → パネルの重量
  • 保証期間 → メーカー保証の有無や適用期間

必ずしも、すべてのケースで記載されている発電効率が約束されるわけではないのですが、設備機器の発電キャパシティとして、参考にできます。発電効率が高くなるほど、1kWのパネルの単価も高くなりがちです。しかし、安価なパネルを設置しても発電効率が低ければ意味がありません。パネルの価格と発電効率とのバランスを考えることが大切です。

発電効率を計算する方法

太陽光の発電効率は、以下の方式で自分で算出可能です。

「モジュール変換効率 = 最大出力 ÷ (パネルの面積 × 1000W) × 100」

ただし、製品情報に記載されている発電効率や、上記の計算から得られる発電効率は正確な数値だとはいえません。なぜなら、実際の発電量は様々な外的・内的要因に左右されるからです。少しでも正確に発電効率を知りたい場合は、年間の発電予測量を損失係数を用いて計算する方法もあります。

年間予想発電量(kWh/年) 計算式:EP = H × K × P × 365 ÷1

  • H = 1 日あたりの平均日射量(kWh/m²/日)
  • K = 損失係数 パネルの汚れや角度によるロスなど(0.73~0.83が平均)
  • P = パネルのエネルギー容量(kW)
  • 365 = 年間の日数
  • 1 = 標準の日射強度

損失係数は個々の状況により異なります。

参照:太陽光パネル緊急導入事業 – 農林水産省

参照:日射量データベース – NEDO

諸々の事情から発電効率は変化する

実質の発電効率は、以下の諸事情に左右されます。シュミレーションの際に、それぞれの状況を考慮しておくことで、より正確な予測が可能です。

  • 気温や雨、台風などの天候
  • パネルの枚数・日射量・屋根の向きや角度
  • 利用する設備・機器の性能
  • 設備・機器の耐用年数や使用年数
  • 汚れや埃、錆び、メンテナンスの状態
  • 配電線・送電線の長さや性能

表示された(計算した)数値よりも低くなるケースもあります。ただし、状況によっては平均よりも高い数値が得られることもあり、一概にはいえません。

発電コストと設備利用率も見ておきたい

発電効率は、再生可能エネルギーの運用を検討するにあたって、あくまでもシュミレーションの参考となるデータです。実際の発電効率はシュミレーションよりは低くなるかもしれない、との認識で取り組むことでより現実的な計画が立てられます。発電効率以外に、合わせて発電コストや設備利用率からアプローチしておくことも、運用を成功させるコツです。

発電コストとは

発電コストとは、1kWhあたりのコストのことです。設備導入にかかるコスト「総費用」を計算し、「総発電電力量」で1kWhあたりのコストがわかります。「総費用」には「資本費」「運転維持費」「燃料費」「社会的費用」「政策経費」などが含まれます。ちなみに2020年度の太陽光の発電コストは平均で12.9円でした。

参照:電気をつくるには、どんなコストがかかる? – 資源エネルギー庁

設備利用率とは

設備利用率とは、設備の稼働時間に対する発電率のことです。100%稼働した場合でも、太陽光などの再生エネルギーは時間帯や天候に左右されるため、稼働率・利用率は低めになるのが特徴です。太陽光発電の場合で、年間の平均設備利用率は約12~20%といわれます。

参照:設備利用率とは – メガソーラービジネス

まとめ

ここまで見てきたように、発電効率は各自で算出することが可能ですが、複雑な計算となるうえ、天候や設備機器の状態など諸条件に左右されます。完全に正確に知ることは難しいのが現状です。従って専門業者が公開する平均データを参考にするのが一般的です。

発電効率を高めるためには、設備・機器の選定から設置場所、施工方法、コスト・維持費とあらゆる角度から比較検討しながら、高効率が期待できる方法を選ぶ必要があります。そのためにも、再エネ設備・運用における専門知識・実績を持ち、かつ信頼性が高い業者を選ぶことが何よりも重視すべきポイントです。長期の運用となるだけに、慎重にしたいものです。

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著者のプロフィール

Takasugi
Takasugi
太陽光発電・蓄電池等を専門とする住宅設備会社での勤務歴10年。再エネの専門知識からエネルギー系の株式投資と記事執筆を開始する。エネルギー専門の投資家兼ライターとして独立して7年。過去にNY、ロンドンの移住歴あり、国内・海外メディアを駆使した情報収集が強み。