低炭素社会を実現させるために注目を集めている「グリーン電力証書」という言葉をご存知でしょうか。これは、証書に記載のある電力は、環境に配慮されて生成されたため、一般的な電力よりも価値があることを証明するためのものです。この証書を購入することで、自社の二酸化炭素排出量を低減したとみなすことができます。
非常に便利ですが、「どのようにグリーン電力証書を購入したらいいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。この記事では、グリーン電力証書の購入方法について詳しく解説していきます。グリーン電力証書購入の参考となれば、幸いです。
グリーン電力証書とは?
グリーン電力証書は、環境にやさしい方法で作られた電力の価値を示す証明書です。消費者や事業者は、この証書を購入することで、自社で使用している電力が環境にやさしい電力であると公言できます。
また、グリーン電力証書は、環境にやさしい方法で作られた電力の価値の部分を証書として売買することも可能です。このシステムをグリーン電力証書制度と言います。この制度を通じて発電業者は、グリーン電力の価値を売ることができ、一方、消費者はその価値を購入することができます。
このシステムの適正な運用を支えるため、「グリーン電力証書発行ガイドライン」が制定されています。このガイドラインは、証書の発行や取引の手続き、内容などを明確にするものです。日本エネルギー経済研究所とグリーンエネルギー認証センターにより、制定されました。グリーン電力証書の発行事業者については、こちらに詳しい記載があります。あわせてご覧ください。
そもそもグリーン電力とは、一体どのような電力なのでしょうか。グリーン電力は、電力としての価値の他に、「環境にやさしい」という付加価値(環境価値)を持つ電力のことです。この環境価値を作り出すためには、化石燃料ではなく、再生可能エネルギーを利用する必要があります。
再生可能エネルギー
代表的な再生可能エネルギーについて簡単に説明します。
太陽光発電
太陽光発電は、太陽のエネルギーを太陽電池で電気に変える方法です。太陽電池の導入が徐々に進んでおり、発電のコストもだんだんと安くなっています。今後は、技術の進化や支援策により、さらにコストが下がると予想されています。
風力発電
風力発電は、風のエネルギーを電気に変える方法です。風力発電は、変換効率が高く、風エネルギーの約40%を電気に変換することができます。それにも関わらず、日本での普及率はあまり高くありません。これは、導入できる地域が限られているからです。風力発電のさらなる普及のためには、日本の気象や地形の特性に合わせた風車の開発が欠かせません。
バイオマス発電
バイオマス発電は、植物や動物などの生物資源からエネルギーを得て、発電する方法です。この方法の大きなメリットは、未使用の植物や動物の廃棄物など、さまざまな種類のバイオマスをエネルギーとして使えることです。二酸化炭素の排出量を削減しつつ、不要なものをエネルギー源として活用できるため、注目を集めています。
中小水力発電
中小水力発電は、小さな河川や農業用水などの小さな高低差を使って1,000kW以下の発電をする方法です。従来の水力発電のように大きなダムなどの施設は不要なため、水資源が豊富な日本に適性の高い再生可能エネルギーとして、今後の普及が期待されています。
地熱発電
地熱発電は、地中の熱エネルギーを蒸気や熱水として取り出し、それでタービンを動かして電気を作ります。この方法の特徴は、昼夜や天気に関係なく安定して発電できることです。そのため、長期的な電力供給が見込めます。
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グリーン電力証書の購入方法とは?
グリーン電力証書の購入の流れは、このようになっています。
- 購入先の検討
- 購入費の概算
- 発行事業者と契約
それぞれ解説します。
購入先の検討
2023年7月31日時点で、36の事業者がグリーン電力証書の発行事業者として登録しています。これらの事業者は、さまざまな販売方法を持っており、中には特定の購入者を対象とした販売を行っているところもあります。購入を検討する際は、グリーン電力証書の利用申込をすることになりますが、契約は1,000kWh単位で、最低でも1,000kWh以上の電力量を契約を求められることが多いです。
販売方法は、大きく分けて「大口受注生産型」と「小口販売型」の2つがあります。
大口受注生産型
「大口受注生産型」は、最初にグリーン電力証書を大量に購入してくれる相手を見つけてから、証書を発行する方法です。ただし、中には購入者をなかなか見つけることができず、大量の証書を在庫として抱えている事業者もいます。しかし、グリーン電力証書に有効期限はなく、いつでも販売可能なので、大きな問題はありません。
小口販売型
一方、「小口販売型」は、特定のイベントや場面での使用を想定した少量の証書を販売する方法です。例えば、コンサートやスポーツイベントでの利用を考えて、特定の地域や発電種類の電力証書を購入することができます。この方法は、消費者が購入する証書の量が少ないため、発電施設の選択に柔軟性があることが多いです。
購入費の概算
購入費の概算を行うとき、使用する電力量とその単価に基づいて計算します。具体的な計算式は、このように定義されています。
グリーン電力証書価格 =
使用予想電力量(kWh)×グリーン電力使用割合(%)×単価(円/kWh)+証書発行手数料+消費税
引用:「グリーン電力証書」購入ガイドライン p.11 グリーン電力証書の価格の考え方
また、どういった場面でグリーン電力証書を使用するのかを具体的に想定することも大切です。
イベントでの利用
例えば、イベントでグリーン電力を利用する場合、何を電力の使用範囲として考慮するかが重要です。例として、イベント準備や移動、運搬の電力も考慮するかどうかで必要な電力量が変動します。実際の電力使用量を把握するためには、イベント会場の過去のデータや使用機材の消費電力を参考にすると良いです。また、電力の計算が難しい場合は、会場や設備の管理者に確認することが推奨されます。
購入費用の目安として、数万人規模の大きな野外コンサートの1日の使用電力量は約5,000kWhで、その費用は約5万円~10万円(税抜)です。一方、数百人規模の小規模イベントでの1日の使用電力量は約1,000kWhで、費用は約1万円~2万円(税抜)です。ただし、これらの価格は太陽光を購入した場合の参考価格であり、具体的な価格は各証書発行事業者に問い合わせる必要があります。
また、イベントのPRとして、「このイベントの使用電力は100%風力発電で賄っています」といったアピールも非常に効果的です。ただし、このようにアピールをする場合は、実際の使用量よりも多めに購入すべきです。万が一、不足した場合、後で追加購入する必要があるからです。
オフィスや店舗、事業所での利用
オフィス、店舗、または事業所でグリーン電力を利用する場合、対象範囲や期間を明示することが重要です。例えば、自社のビルのみ、それとも関連施設全体を対象にするのか、また100%のグリーン電力を使用するのか、それとも50%だけをグリーン電力を利用するのかなど、これらの選択によって必要な電力量は大きく異なります。
電力利用に関する計画を立てる際は、過去の使用電力量を参考にすると良いでしょう。前年や過去の電力使用データがない場合、契約している電力会社に問い合わせることで、情報を取得できます。具体的には、昨年の同じ期間の電力使用明細を基にして、使用電力量を推定する方法が役に立つと考えられます。
具体的な費用については、中規模のビルで1日の電力使用量が約10,000kWhの場合、約10万円から18万円(税抜)が想定されます。一方、小規模のオフィスが1ヶ月間で約3,000kWhを使用する場合、約3万円から5.4万円(税抜)が想定されます。
印刷での利用
印刷のためにグリーン電力を利用する場合は、印刷機の消費電力と稼働時間をかけることで、使用電力量を計算することができます。例として、10kWの印刷機が10時間動作する場合、消費される電力は100kWhとなります。製本や折りたたみ作業の電力も考慮すると、実際には約200~300kWhが必要だと思われます。
さらに詳しく見ていきましょう。A3サイズの両面カラーパンフレットを6ページ、3万部印刷する場合、約1,000kWhの電力が必要で、そのコストは約1万円から1.2万円(税抜)となります。また、四六判の300ページの書籍を3万部印刷する場合には、約2,000kWhの電力が必要で、そのコストは約2万円から2.4万円(税抜)となります。
製造での利用
グリーン電力を利用して商品の製造を行う際は、機器の消費電力と稼働時間に基づく計算、または工場全体の電力使用量を基準にして使用電力量の計算を行うことが可能です。具体的には、年間の工場における電力使用量を商品の生産量で割り、1商品当たりの電力使用量を算出します。この値とグリーン電力で製造される商品数をかけることで、グリーン電力の具体的な使用量が求めることができます。
購入するグリーン電力証書の価格は、使用する電力の量や種類によって変わります。例えば、1,000枚のタオルを製造するのに必要な電力は約1,000kWhで、これにかかる費用は1万円から1.5万円(税抜)となります。なお、ここまでの概算例には、証書の発行手数料や送料は含まれていません。より正確な料金を知るためには、証書発行事業者に問い合わせする必要があります。また、大量の注文や長期契約した場合は、割引が適用されることもありますし、1,000kWh未満の電力量での取引も可能な事業者も存在します。加えて、国の会計年度をまたぐ期間に電力を使用する場合は、2通の証書発行が必要となる場合があります。
発行事業者と契約
最後は、グリーン電力証書発行事業者と契約を結びます。この段階でもグリーン電力証書の使用目的や、使用するグリーン電力量や不明確な場合は、証書発行事業者にアドバイスを求めるといいでしょう。契約にあたって、どのタイプのグリーン電力証書を希望するかなどの詳細を決定しなければなりません。その後は、業者の注文フォームに決定した情報を記入して提出します。
事業者によっては、希望の証書がなかったり、購入の最低単位が設定されていたりすることがあるため、あらかじめ確認しておく必要があります。注文が完了すると、電子データでの発電所の写真や証書のロゴが提供されます。これらは、宣伝ツールとして活用が可能なので、積極的に利用しましょう。また、支払い方法は業者や契約によって異なるので、こちらも契約前によく確認しましょう。
購入後、グリーン電力証書の環境価値を適切に伝えるためには、指定のガイドラインに従い、所有している証書の詳細や電力量を明示して説明する必要があります。この説明には、証書の使用時期や使用目的、電力量などの具体的な詳細を含めなければなりません。
記載例:「当社は、平成○○年に本社ビルにて使用した電力量の○%(△△kWh)をグリーン電力で賄っており、これにより、年間約 1 万トンの CO2排出量を削減しました。(※CO2排出係数:0.000***t-CO2/kWh)」
引用:「グリーン電力証書」購入ガイドライン p.14 STEP6.購入後の対応
また、グリーン電力証書を購入した後、それをどのように会計処理をするのかについては、こちらの記事にまとめています。あわせてご覧ください。
関連記事はこちら:グリーン電力証書の会計処理は?事例とともに解説
まとめ
グリーン電力証書の購入は、非常に簡単です。まず、自分のニーズに合わせて事業者を選びます。例えば、イベント専用で少量の証書が必要なら小口販売をする事業者、一度の購入で大量が必要なら大口受注の事業者を選択します。次は、購入費の概算を行います。想定場面に加え、グリーン電力を50%のみ使用するのか、それとも100%で使用するのかを決定しましょう。そうすることで、より正確な概算ができるようになります。
最終的に、選んだグリーン電力証書発行事業者と契約します。契約が完了すると、宣伝に使える発電所の写真やロゴが提供されます。積極手に宣伝に利用するといいでしょう。ただし、支払い方法は業者や契約内容により異なるので、契約前に確認が必要です。
グリーン電力証書の購入含め、さまざまな企業が低炭素社会の実現に向けた活動を行っています。難しそうに聞こえますが、簡単に行えるものもあります。例えば、自社の二酸化炭素排出量を調べることも大切な活動の1つです。下記リンクから、排出量を無料で調べることができます。ぜひお試しください。
参照:タンソチェック【公式】 -CO2排出量算定削減サービス
著者のプロフィール
- 小学校教員として、カーボンニュートラルや脱炭素に関する授業を行った経験がある。子どもたちが理解できるように、専門用語を分かりやすく、かみ砕いて説明することを心がけた。この経験を活かし、脱炭素化の重要性を広く伝えるために、誰にとっても理解しやすい記事を作成している。