脱炭素経営はCO2削減への取り組みだと言えます。取り組みを効果的に進めるために知っておきたい基本式があります。本記事では、脱炭素経営において重要な基本式と、そこから見えてくる2つの活動目標について解説していきます。

脱炭素=CO2排出量削減

これまでも言及してきた通り、脱炭素とはCO2排出量を削減し0にすることです。CO2の排出削減において、まず重要になるのはCO2排出量を把握する事です。

CO2の排出計算は、化石燃料ごとに異なる排出係数を使用し求めることになりますが、少し複雑でとっつきにくい印象も受けると思います。

もう少しシンプルに考えれば、CO2排出量は、化石燃料の使用量に連動します。したがって大きく見れば、CO2の排出削減は、化石燃料の使用を適切に管理し、その削減を進めていく事だと言えます。

化石燃料の使用量(CO2排出量)の基本式

化石燃料の使用量がわかれば、CO2排出量も見えてくることがわかりました。それでは、化石燃料の使用量はどのようにして求めるのでしょうか?化石燃料の使用量は以下の基本式によって求めることができます。

化石燃料使用量=事業付加価値÷エネルギー生産性×化石燃料依存率

この基本式は3つの項目に分けて考えることが出来ます。

事業付加価値

事業付加価値とは、企業の事業活動によって生み出された製品やサービスなどの中で、企業がその事業活動自体から生み出し、付加した価値のことを指します。

例えば1万円の原料や人件費を用いて、2万円の製品を生み出した場合、事業付加価値は1万円ということになります。

エネルギー生産性

エネルギー生産性は、事業付加価値を使用したエネルギー量で割る事で導き出される指標です。

数字が大きいほど少ないエネルギーで多くの付加価値を生み出せており、反対に数字が小さいと、多くのエネルギーで少ない付加価値しか生み出せていないことになります。

化石燃料依存率

化石燃料依存率は、使用した化石燃料の量を使用したエネルギー量で割る事で導き出される指標です。

数字が大きいほど使用したエネルギーに占める化石燃料の割合が高く、反対に数字が小さいと化石燃料の割合が低いことになります。

基本式から見える取り組むべき活動目標

この基本式から、脱炭素経営で取り組むべき活動目標が2つ見えてきます。1つ目がエネルギー生産性の向上です。少ないエネルギーで大きな成果をあげれるようになれば、今と同じ事業付加価値を、今より少ないCO2排出量で生み出すことが可能になります。

2つ目が化石燃料依存率の低減です。化石燃料依存率が下がれば、今と同じエネルギー生産性でもCO2排出量を下げて高い事業付加価値を生み出すことも可能になります。

「エネルギー生産性の向上」と「化石燃料依存率の低減」の2つの活動目標が、脱炭素経営の大きな柱となります。

化石燃料使用量を減らすだけではダメな理由

では、エネルギー生産性をあげず、化石燃料依存率も下げずに、化石燃料の使用量だけを減らすとどのような問題があるのか、基本式の計算を例に考えてみましょう。

まず、エネルギー生産性を上げることなく、ただ化石燃料使用量を下げると、事業付加価値が下がってしまいます。

エネルギー生産性が1.0倍の場合(100の使用エネルギーから100の事業付加価値が生まれる状態)、化石燃料使用料を100から50に減らすと、事業付加価値も50に下がってしまいます。

事業活動のために行っている脱炭素経営により、事業付加価値が下がってしまうのは本末転倒です。
そこで、エネルギー生産性を2.0倍に上げる事で、50の化石燃料使用料でも100の事業付加価値を生み出せるようになります。

もしくは、減らした化石燃料使用量分を、再生可能エネルギーの使用に置き換える(化石燃料依存率を下げる)ことでも、事業付加価値を維持することは可能になります。

このように、ただ単純に化石燃料の使用料を減らすだけでなく、エネルギー生産性の向上と化石燃料依存率の低減にも取り組むことで、企業によって何よりも大切な事業付加価値を維持しながら脱炭素経営に取り組むことが可能になるのです。

まとめ

ここまで脱炭素経営において重要な基本式と、そこから見えてくる2つの活動目標について解説してきました。脱炭素経営の取り組みは、エネルギー生産性の向上と、化石燃料依存率の低減の2点を意識して進めていく事で、効果的に成果を出すことが可能になります。

著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。