はじめに

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、サステナブルや脱炭素の取り組みを始める企業も多く存在します。

今回は事業として「デジタルメディア運営」「企業・自治体向けサステナビリティ・サーキュラーエコノミー支援事業」を実施している、ハーチ株式会社の編集者、戸沼さまにインタビュー取材を行いました。

インタビュアー:medidas株式会社 山本

デジタルメディアを運営している背景とは

山本:ハーチ株式会社での戸沼さまの業務内容について、お伺いできればと思います。

戸沼様:社内では複数のオウンドメディアを運営してまして、全部で9つあるのですが、その中の「ソーシャルグッド」という分野で「IDEAS FOR GOOD」というメディアの編集長をしております。

「IDEAS FOR GOOD」https://ideasforgood.jp/

「IDEAS FOR GOOD」では自分自身で記事を書くのはもちろん、いろんなライターの方が、国内、海外問わず関わっております。
編集長として記事を編集したり、日々のコンテンツを企画したり、あとはイベントを企画したりしています。

山本:ありがとうございます。現在、編集長をされていて記事の編集やイベント企画もされているのですね。

戸沼様:そうです。また、全体的なメディアの方向性としてテーマの企画や、毎週振り返りをしてどのような記事を今週どれだけ公開してそれはどうだったか、といったようにチームで方向性を決めています。

山本:はい。ありがとうございます。ここからですね、デジタルメディア事業を含む貴社の事業についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

戸沼様:デジタルメディア運営事業に関しては、先ほどの通りでいろんなテーマでオウンドメディアを持っています。「IDEAS FOR GOOD」の場合だとソーシャルグッドというテーマではあるんですが、他には「金融投資のメディア」があったり、「英語学習のメディア」があったり、「サステナブルな旅」に特化したメディアがあったりさまざまなテーマで運営しています。

社会でも役立ち、影響もあるようなテーマを選んでデジタルメディアの運営をしています。
そのデジタルメディア運営で複数の企業様とコラボレーションしており、たとえば記事広告であったり、1からオウンドメディア立ち上げたい企業様に向けた支援をすることもあります。

また、サステナブルなテーマで発信していきたい企業様にブランディングのスタートとなる支援をしており、運営目的や発信する情報をヒアリングして、メディアを運営していくことで具体的な取り組みに近づけていきます。

社会的影響度の高い「法人」へサステナブル事業を展開

山本:ありがとうございます。個人や企業さま両方に事業を展開されているのですね。

戸沼様:私がメインで関わっているIDEAS FOR GOODではチームが2つあります。私が所属しているメディア運営チームと、もう一つBusiness Design Labチームというものがあり、ビジネスチームの方では企業の中のサステナビリティ転換を支援していく事業を行なっています。

ビジネスチームでは企業さまが、もっとサステナブルに取り組みたい、もっと会社のなかでサステナビリティの認知を高めたいというニーズをいただき、CSR担当者の方だったりとか新規事業担当者の方だったり、関心のある部署の方を対象にしています。

具体的には、ワークショップを開催したり社内の研修をしたり、オウンドメディアの立ち上げを一から支援したりするものです。

企業さまとプロジェクトを一緒に進めていき、社内でサステナブルに関する展示会を企画することもあります。

例えば、サステナブルな商品を日々紹介しているのでそのグッズを集めた何かミュージアムというかショーケースみたいなものをオフィスの中に作り、社員の方に向けたサステナブルな文化の浸透のお手伝いをすることもあります。

そういう感じで大きなことで言うとその一緒に、そのこの企業がサステナブルな方向に向かっていくためのお手伝いっていうのが大きなものになりコンサルも含まれています。

ほかにも、サーキュラーエコノミーに特化したCircular Economy Hubではオランダの大使館の方々と一緒に連携してイベントを企画したり、横浜を拠点にサーキュラーな活動を行うCircular Yokohamaなどでは、海外から視察団が来るときのアテンドをしたりとか、して、企業や自治体向けてイベントを開催しています。

また企業の方と実際にイベント運営を一緒にやったり、ツアー運営を一緒にしています。

山本:ありがとうございます。サステナブル分野といっても幅広くご支援されているのですね。

戸沼様:個人の方に向けて発信してることがデジタルメディアの中では多いんですけどもそういった支援事業の中では完全に企業向けで行なっています。

個人より、もっと大きな影響力を持った組織や会社に対してアクションのサポートをしていけたらなと思っており、法人向けの事業にも取り組んでいます。

会社自体は小さなチームで、従業員も30人ほどなのですが、メディアごとのプロジェクトや、複数メディア横断のプロジェクトに合わせて社内でチーム編成をしております。

問題だけでは不安が募る。解決策も同時に提案

山本:これまで事業内容についてお伺いしましたが、SDGs事業を始められたきっかけはあるのでしょうか?

戸沼様:「IDEAS FOR GOOD」創業のきっかけならお話ができるかな思います。2016年に立ち上げたのですが、当メディアの創設者の加藤は、何か社会問題を伝えるだけではない情報にフォーカスしたいなという考えが始まりでした。

例えば、テクノロジーと掛け合わせたりデザインと掛け合わせたりと、社会問題をただ伝えるだけだと結構暗い気持ちになってしまいますし、そういった報道ばっかりやるとやっぱり海外は進んでいて日本は駄目なんだとか、そういった論調になりがちです。

そういったものよりも、いろんなその社会の取り組み、むしろ良い取り組みに焦点を当てていくことで社会問題自体には興味がなくてもアートには興味あるとか、デザインなら自分はできるから興味あるとか、エンジニアだから自分はテクノロジーのこういう系だったら面白いと思える人たちがたくさんいるので、そういった方々に届けたいっていうのがあります。

いろんな面白いユニークな解決策と掛け合わせるコンセプトで「IDEAS FOR GOOD」が生まれたっていうのはありました。

山本:情報発信するだけじゃなくて、同時に解決策も提示するそういったコンセプトになるのですね。

戸沼様:そうですね。必ず社会課題と解決策とセットで発信していて、解決策になりうるアイディアも発信することによって少し希望が持てますし、問題があるだけじゃなくてそこの解決に取り組んでる人たちも紹介しています。

あとはもっと社会に不安を感じるというか絶望することが、今いろんなニュースが出ている中で多いかもしれないんですけども、そういった人たちに対して、意外とその自分の住んでいるとこだったり、自分のいる世界は、もう少し明るいものかもしれないって思ってもらえたらいいなっていうのがこのメディア創設のコンセプトにあります。

コネクションを強みにして海外の先進事例を記事にする

山本:ありがとうございます。ほかにも欧州にもチームがあるかと思いますが、そちらについてもお伺いできればと思います。

戸沼様:元々、社内ではどこに行っても仕事できる思想で、むしろ海外に出て行って良い考えを吸収したらいいよねという方針ではありました。

2020年頃に、相次いで弊社メンバーの何人かが欧州に移住したんですね。ここからヨーロッパに拠点があったらすごくいいよねという話になりました。

パリとロンドンから最初は始まって、そこから既に何人かオランダに住んでいる方とかドイツに住んでいるライターの方で、元々関わってくださっていた方々もいたので、現地で協力しながら得られた情報や視点を届けたいと思っています。

欧州から日本と違うようなこともできるんじゃないかと思い、2020年ぐらいに構想をし始めて2021年に正式に発表したっていうことになります。

山本:まだ国内とは違う取り組みや、欧州ならではの取り組みはありますか?

戸沼様:いろいろな取り組みはありますが、そこに住んでいてコネクションを持っているところが一番の強みになっていると思います。

メディア事業の中で、これまでも海外取材に行き、相手と直接会ってインタビューをするのはやってるんですけども、それ以外にも、日本のクライアント様から欧州の先進的な事例を教えてほしいみたいに言われることも結構ありますね。

例えばサーキュラーエコノミーは、今すごくいろんな企業が取り組んでいるので、サーキュラーエコノミー事例をいろいろ教えてほしいとか、建築分野ではこういった事例があるとか、現地に住んでいる人だからこそと繋がれる、リーチできる情報みたいなことを活かしてリサーチしてほしい依頼も結構ありますね。

山本:企業からのリサーチの依頼もあるのですね。

戸沼様:​​はい。リサーチした結果を、クライアントに出すこともありますし、あとは欧州チームの方で、「欧州サステナブル・シティ・ガイドブック」というのも発売してまして、欧州のそのそれぞれのサステナブルスポットっていうのもまとめたりすることもしています。

欧州サステナブル・シティ・ガイドブックhttps://bdl.ideasforgood.jp/product/sustainable-city-guide/

どのようなサステナビリティの歴史があってどんな取り組みが今すごく良いとされているのか、在住者の目線で普段いろんな人から見聞きしている情報をもとに実際に書いています。

少し前にオーストリアのウィーンっていう街のバージョンが発売されました。

これまでロンドン、パリ、アムステルダムもあわせてこれまで全部で4つが出ています。

ツアーも行なっておりパリやロンドン、アムステルダムの3カ国が特にコネクションのある都市なので、2023年6月はそこの三つの都市でいろいろな企業に視察に行くことをやりました。

https://ideasforgood.jp/2023/03/30/beyond-circularity-2023/

企画や運営のところを全て欧州在住メンバーの方でやりまして、現地のいろいろな方と協力をしながら、「もう実際に日本から来てもらって見てもらおう」というツアーを実施しました。

山本:ツアーでは、企業の方も来られると伺ったのですが大企業の担当者でサステナビリティやらないと結構まずいといったそういう思いで来られるのでしょうか。

戸沼様:今年開催のツアーに限らずですが、企業から頼まれる場合もありますし、企業の中でもそろそろやばいぞって思っている方だと、実際に海外での実践事例をもうこの目でちゃんと見ておきたい、企業の中で割と影響力のある方もいらっしゃって、少人数で現地を視察した形になります。

デジタルメディア事業で社会貢献できる仕組み「UU Fund」

山本:ありがとうございます。「IDEAS FOR GOOD」のメディアを通して「1ユーザー0.1円」を寄付するプロジェクト「UU Fund」についてお伺いさせていただければと思います。

戸沼様:はい。私達の会社でオリジナルで名付けたものなんですが、本当に書いてある通り、1ユーザーごとに、アクセス数が伸びれば伸びるほど社会に還元できるシステムがあったらいいなっていうところが、きっかけとなって生まれました。

「Publishing a Better Future.」というのがハーチの全部の軸と方針になっています。

それを叶えるために何ができるかって考えたときに、Webメディアってすごくアクセスが大事じゃないですか。いろいろなアクセスを得ることで、その露出も上がってよりお金も稼げるし、すごく大事にはしているんです。

それをさらに社会に還元していくにはどうしたらいいか考えて、いろんな慈善団体に寄付をする、メディアを通してお金を寄付をするっていう仕組みができたらいいなという考えから、このシステムが生まれました。

慈善団体にも環境のことだったりとか、あとはシングルマザーで困っている方とか、お子様の支援とかも本当にいろんな団体があります。

毎年、団体をピックアップしているんですけども、メディアを通して継続的な支援もできますし、1回取材して終わりとか、1回だけ寄付して終わりっていう関係性ではない方が、よりサステナブルなのかなと思って「UU Fund」ができました。

そうしてもうずっと毎年続いているっていう感じになります。

営利と社会還元のバランスについて

山本:ありがとうございます。御社のミッションである「Publishing a Better Future.」が何度か出てきたと思います。
株式会社のように「営利」として売り上げを目指す必要がある側面と社会に還元するバランス感覚があると思うのですが、社内でどのようなバランスや雰囲気を持っているのでしょうか?

戸沼様:このバランスってすごく難しいところだと感じています。やっぱりメディアを運営していくという会社があって、一従業員として見ていても、株式会社で社員も雇っている以上はお給料を発生させなきゃいけない側面もあるのだろうなと思います。

毎月、全社員で参加する全社会があるんですけども、そこで9つのメディアがどれくらい売り上げているのか、目標に対する達成度は割と厳しく追ってはいるんですね。

何月までにこれぐらいの売り上げ目標は持っているんですけども、同時にさっきお伝えした通り、記事を出せば出すほど社会がより良くなるようなインパクトを与える方向性にしていきたいっていうのが会社の根幹にあります。

月に1回のミーティングのときに、それぞれのメディアの中でどれだけ社会的な記事を出したかっていうのもカウントしており、売り上げとは別に、ソーシャルインパクトのあるコンテンツの配信率、という基準を設けています。

「IDEAS FOR GOOD」の場合はもう全ての記事が「ソーシャルな記事」なので100%になってるんですけども、例えば金融投資メディアだったり英語学習メディアだったりとか、あと生活に関するメディアとかいろんな分野のメディアがある中で、それでもどれだけやっていけるかっていう挑戦を各メディアのチームでやっています。

本業で株式会社としての側面も持ちつつ、サステナブルな方向にはしていきたいよねっていう全体的な風潮やそういうシステムが出来上がっていて、ハーチに新しく入ってくる方も、基本的にはサステナビリティに興味がある状態で入ってくることが多いなと思います。

サステナビリティやそういった話をすごくしやすいっていう文化はあったりしていて、会社のチャットの中でも植物性のお肉とかお魚とか、こういったものを知ってる人いますか?とか、声かけるともういろんなコメントがすごくワーッて「私はこれ食べててすごいおすすめです!」みたいなアイディアが、即座に集まったり。

生活の中で実践している人も多いですし、もうそういった文化が自然にある印象があります。

社内のCO2排出量をオフセットする取り組み

山本:株式会社そして、社会に還元するバランス感覚を絶妙なところで保たれて成り立たせるところがすごいなと感じました。ありがとうございます。

ここからは、昨今言われているような省エネや企業のカーボンニュートラルへの取り組みについてお伺いできればと思うのですが、社内で取り組まれていることはありますでしょうか。

戸沼様:私達も海外や地方で取材をすることがあって、飛行機を使うことがあるんですね。出張や取材で飛行機を使う際には、もう必ずその1年間の使ったその飛行機のCO2排出量というのを計算して、それをオフセットするのを会社でやっています。

会社の中でサステナビリティ推進チームというものがありまして、その人たちがどれくらいCO2を排出したか計算しています。

そしてオフセットをするのですが、オフセット先もそれぞれのメディアに委ねられていまして、森林組合のこの地域に貢献したいなど、会社全体でやるよりは割とチームごとに責任を持ってオフセット先を選定しています。

森林組合に電話をし、どんな取り組みしているかヒアリングをした上で、慎重に決めるっていうものを毎年やっています。

2023年6月に長野県の森林組合の方なんですけども、そこに実際に何人かの社員で訪れて、一緒に植林の手伝いをしました。ハーチがオフセットした分はこれぐらいなんだなっていうのを実際に見えるようにする取り組みを行っています。

あとはCO2排出量削減の取り組みの一つは、全社員リモートワークなこともあり、再生可能エネルギーの電力会社を自分の家で選ぶとちょっとだけ会社から手当が出るっていう仕組みがありまして、家の電気代を良い電力会社で利用できるかも重視しています。

例えばサステナブルなプランだったり、再エネプランっていうのを持っている電力会社に切り替えたりしています。

今後取り組みたい課題について

山本:ありがとうございます。事業を通して、今後取り組みたい課題などはありますでしょうか?

戸沼様:そうですね、IDEAS FOR GOODでも、基本的には特定の課題に取り組んでいくというよりは「Publishing a Better Future.」というミッション・スローガンに基づいてさまざまなトピックを建設的にカバーし、情報発信をするような運営をしていければと思っています。

最近の環境分野の取り組みでは「B Corporation」という認証を取得しました。環境活動を積極的に取り組む企業に与えられるすごく基準の厳しい認定でしたが、全社で取り組んだ事例としてあります。

山本:ありがとうございます。最後にデジタルメディア運営がハーチのミッションにどのようにつながっていると感じられますか?

戸沼様:はい、少し順番が逆かもしれないですがミッションがあって、結果としてデジタルメディア運営につながっています。グローバルかつサステナブルな情報を届けるデジタルメディア会社として今後も運営していきたいと思っています。

おわりに

今回はハーチ株式会社のデジタルメディアIDEAS FOR GOODの編集長である戸沼さまにインタビューをさせていただきました。

「Publishing a Better Future.」というミッションをもとにデジタルメディア事業で社会に貢献している具体的な内容を取材させていただきました。

ハーチ株式会社では記事を公開して、未来をよりよくする活動を行なっています。まずはメディア「IDEAS FOR GOOD」を確認してみましょう。

ハーチ株式会社様(企業HP):https://harch.jp/
「IDEAS FOR GOOD」:https://ideasforgood.jp/

著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。