多くの中小企業や小規模事業者が、独自のECサイトの構築を模索しています。IT導入補助金を活用することで、ECサイト構築費用が軽減されます。
ただし、補助の対象となる企業や経費、具体的な事例などについての詳細を知りたい事業者も多いでしょう。
本記事では、IT導入補助金の概要や対象企業、申請から補助金受給までの流れについて詳しく解説します。さらに、補助金の具体的な活用事例やECサイト構築に関連する他の補助金制度についても説明します。
IT導入補助金に関する理解を深めることで、ECサイト構築や脱炭素化などの具体的な取り組みを推進することができるでしょう。
今回の記事は脱炭素に関わる記事ではありせん。
IT導入補助金でECサイト構築!最大450万円の支援を活用しよう
IT導入補助金を活用すれば、ITツールや会計ソフト、ECソフトなどを導入する際に補助金を受けることができます。これにより、ITツール等の導入に伴う負担が軽減され、省エネ化や脱炭素化など他の取り組みも推進しやすくなります。
IT導入補助金の補助金額は最大450万円(※)であり、事業のデジタル化を速やかに実現することが可能です。
ここでは、2023年度のIT導入補助金に関する概要や対象企業、補助金額について説明します。
※複数社連携による導入を除く
参照:IT導入補助金2023後期事務局|IT導入補助金とは
IT導入補助金2023年度の概要と対象企業
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が生産性向上などの目的で対象となるITツールの導入を支援するための補助金です。ITツールの導入費用だけでなく、相談対応のサポート費用やクラウドサービスの利用料も補助金の対象となります。
5つの補助枠が設けられており、最大で450万円の補助金を受けることが可能です。補助金の活用により、ITツールの導入に伴うコストが軽減され、投資資金の回収期間を短縮することができます。
IT導入補助金の対象者は、以下のとおりです。
■中小企業の場合 ※資本金または従業員が基準以下である場合が対象となります。
業種・組織形態 | 資本金(資本金または出資の総額) | 従業員(常勤) |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア、情報処理サービス、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車や航空機用タイヤ、チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
■小規模事業者の場合
業種・組織形態 | 従業員(常勤) |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
ECサイト構築やリニューアルにおける補助対象事業
IT導入補助金には、補助対象が異なる以下の5つの枠が設けられています。
補助枠 | 内容 |
通常枠(A・B類型) | 課題やニーズに適したITツールの導入にかかる経費の一部が補助されます。 |
セキュリティ対策推進枠 | サイバー攻撃などによるリスクを軽減する目的で支援が行われます。 |
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型) | 受発注ソフトや会計ソフト、決済ソフト、ECソフトの導入にかかる経費の一部が補助されます。 |
デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型) | インボイス制度に対応した受発注システムの導入にかかる経費の一部が補助されます。 |
デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型) | 複数の事業者が生産性の向上などを目的に、連携してITツールやハードウェアを導入する際にかかる経費の一部が補助されます。 |
例えば、デジタル化基盤導入類型では、次のソフトウェアやハードウェアの導入にかかる経費の一部を補助します。
■ソフトウェア
- 会計ソフト
- 受発注ソフト
- 決済ソフト
- ECソフト
■ハードウェア
- パソコン
- タブレット
- POSレジ
- モバイルPOSレジ
- プリンター
- スキャナ
- 複合機
- 券売機
これらの導入費用の補助を受けることで、ECサイトの構築やリニューアルにかかるコストを削減できます。
参照:
IT導入補助金2023後期事務局|デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
補助金額と支給率:最大450万円を受け取る方法
IT導入補助金の補助枠ごとの補助金額と補助率は、次のとおりです。
補助枠 | 補助率 | 補助金額 |
通常枠(A・B類型) | A類型:1/2以内 | A類型:5万円以上150万円未満 |
B類型:1/2以内 | B類型:150万円以上450万円以下 | |
セキュリティ対策推進枠 | サービス利用料の1/2以内 | 5万円以上100万円以下 |
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型) | ソフトウェア等:①3/4以内 ※1②2/3以内 ※2 | ソフトウェア等:①50万円以下 ※1②50万円超350万円以下 ※2 |
ハードウェア:1/2以内 | パソコン、タブレット等:10万円以下レジ、券売機:20万円以下 | |
デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型) | 中小企業・小規模事業者等:2/3以内 | 350万円以下 |
その他の事業者等:1/2以内 | 350万円以下 | |
デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型) | 基盤導入経費:①3/4以内②2/3以内 | ①50万円以下×構成員数 ※3②50万〜350万円×構成員数 ※3 |
消費動向等分析経費:2/3以内 | 50万円以下×構成員数 ※3 | |
その他経費:2/3以内 | 200万円以下 ※4 |
※1.導入ツールが1機能以上の場合
※2.導入ツールが2機能以上の場合
※3.基盤導入経費と消費動向分析経費の補助金の合計額は最大3,000万円
※4.上限額は「(基盤導入経費+消費動向等分析費)×10%×(補助率2/3)」または200万円のどちらか小さい金額
2023年度の申請スケジュールと締切
2023年度IT導入補助金の最終公募回の申請スケジュールと締切は、以下のとおりです。
受付開始 | 2023年8月1日 |
締切日 | 2024年1月29日 17時 |
交付決定日 | 2024年3月8日(予定) |
事業実施期間 | 交付決定〜2024年8月30日 17時 |
事業実績報告期限 | 2024年8月30日 17時 |
各補助枠で、申請開始から締切日までの受付回数が異なります。
補助枠 | 最終締切 |
通常枠(A・B類型) | 10次締切分 |
セキュリティ対策推進枠 | 10次締切分 |
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型) | 17次締切分 |
デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型) | 7次締切分 |
デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型) | 5次締切分 |
2023年度のIT導入補助金については、受付開始から最終締切日までの募集期間が約6ヶ月間で設定されています。また、締切から交付決定までの所要期間は、約1ヶ月から1ヶ月半程度です。事業実施期間は、交付決定日から約5〜6ヶ月程度となります。
締切日当日は17時をもって受付が終了いたしますので、申請時間に十分な注意が必要です。
なお、2024年度のIT導入補助金については、現在公募期間が未公表です。公募期間に関する情報は公式サイトで公表されますので、補助金を検討している場合は、定期的に確認することをおすすめします。
申請手続きから受給までの流れを徹底解説
IT導入補助金を申請するには、公募要領の確認やgBizIDアカウントの取得、そしてSECURITY ACTIONの宣言が必要です。また、IT導入支援事業者と連携して交付申請書の作成や提出、事業実績報告などを行う必要があります。これらの手続きを実施しなければ、補助金の受給が難しくなりますので注意してください。
申請手続きから補助金の受給までの流れを理解しておくことで、計画的な進行が可能となります。また、注意点についても理解できるため、対策を講じやすくなるでしょう。
以下では、IT導入補助金の申請手続きから受給までの流れを詳しく解説します。
IT導入補助金の申請方法と必要書類
IT導入補助金の手続きは、電子申請を通じて行います。また、申請の前にはgBizIDアカウントなどの取得が必要です。申請までの手順は、以下のとおりです。
流れ | 内容 |
1.補助金の詳細を確認 | IT導入補助金の条件や補助金額、対象設備などを確認します。また、交付規程や公募要領を読み、詳細を理解します。 |
2.gBizIDプライムアカウントの取得 | 補助金の申請には、事業者向けの共通認証システムgBizIDプライムのアカウントが必要です。オンライン申請(個人事業主のみ)の場合は即時発行され、書類郵送の場合は約1週間でアカウントが発行されます。 |
3.SECURITY ACTIONの実施 | 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の宣言を行います。 |
4.みらデジ経営チェックの実施 | 中小企業庁の「みらデジ経営チェック」を実施します。デジタル化への取組状況や課題を確認できます。 |
5.ITツールの選定 | 導入するITツールやECソフトなどを選定します。 |
交付申請に必要な書類は、次のとおりです。
法人 | 履歴事項全部証明書 ※3ヶ月以内発行分法人税の納税証明書(その1またはその2)※直近分 |
個人事業主 | 運転免許証か運転経歴証明書、または住民票 ※3ヶ月以内発行分所得税の納税証明書(その1またはその2)※直近分確定申告書 ※直近分 |
※通常枠(A・B類型)の場合
参照:
IT導入補助金2023後期事務局|交付申請の手引きp.8〜11
審査基準と採択率を上げるポイント
IT導入補助金の主な審査項目は、以下のとおりです。
審査項目 | 内容 |
事業面からの審査項目 | 経営課題を把握し、改善に向けて具体的な問題意識があるかどうか導入予定のITツールの機能や効果が、企業の現状や課題分析、将来計画と適合しているかどうか継続的な生産性向上や成長に向けて、社内横断的なデータ共有や分析などを実施しているかどうか |
計画目標値の審査項目 | 労働生産性の向上率 |
政策面からの審査項目 | 生産性の向上や働き方改革などを検討し、国が推進する関連事業に参加・取り組んでいるかどうか国が推進するセキュリティサービスを選んでいるかどうか賃上げに取り組んでいるかどうか(※1.2)※1.事業計画期間において給与支給総額を年率平均1〜1.5%以上増加など※2.事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上 |
※通常枠(A・B類型)の場合
審査は原則として提出された書類に基づいて行われます。したがって、内容に相違や不足がないかを事前に確認することが重要です。不備が見つかった場合、事務局から訂正を求められることがありますので、速やかに対応するようにしましょう。
また、クラウド製品やインボイス制度対応製品などのITツールを選択するなど、加点対象となる取り組みも用意されています。加点対象の取り組みを実行することで、採択率が向上する可能性があります。
参照:
IT導入補助金2023後期事務局|通常枠(A・B類型)公募要項 p.22.23
審査の加点項目
主な加点項目は、以下のとおりです。
- 地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認を得ている
- 申請時で地域未来牽引企業に選ばれていて、経済産業省に「目標」を提出している
- ITツールとしてクラウド製品やサイバーセキュリティお助け隊サービス、インボイス制度対応製品を選定している
- A類型で、以下の要件をすべて満たす事業計画を決めて従業員に表明している
・事業計画期間に給与支給総額を年平均1.5%以上増加
・事業計画期間に最低賃金を地域別最低賃金のプラス30円以上にする
- B 類型で、事業計画期間に最低賃金を地域別最低賃金プラス50円以上にする
- 「健康経営優良法人2023」に認定されている
- 「地域 DX 促進活動支援事業」の支援コミュニティ・コンソーシアムから支援を受けている
- 介護保険法に基づくサービスを提供し、介護職員等特定処遇改善加算を取得・運営している
- 申請時点で、以下のいずれかに該当する
・女性活躍推進法に基づく認定を受けている、もしくは従業員数が100人以下で、「女性の活躍推進企業データベース」に行動計画を公表している
・次世代法に基づく認定を受けている、もしくは従業員数が100人以下で、「一般事業主行動計画公表サイト(両立支援のひろば)」に行動計画を公表している
※通常枠(A・B類型)の場合
これらに該当する場合、加点され、採択率が向上する可能性があります。
参照:IT導入補助金2023後期事務局|通常枠(A・B類型)公募要項 p.22.23
審査の減点措置
主な減点措置は、以下のとおりです。
- IT導入補助金2022のデジタル化基盤導入類型で交付決定を受けた事業者
- IT導入補助金2023でデジタル化基盤導入類型および商流一括インボイス対応類型で申請している、もしくは交付決定を受けた事業者
※通常枠(A・B類型)の場合
参照:IT導入補助金2023後期事務局|通常枠(A・B類型)公募要項 p.22.23
IT導入支援事業者との連携でスムーズな申請を
IT導入補助金の交付申請は、IT導入支援事業者と共同で作成・提出します。申請者は「申請マイページ」を利用し、IT導入支援事業者は「IT事業者ポータル」を通じて手続きを行います。
具体的な申請情報の入力手順は、以下のとおりです。
手順 | 内容 |
1.申請者が必要情報を入力 | 申請者が基本情報や財務情報、経営情報などを入力し、必要書類を添付します。 |
2.IT導入支援事業者が入力情報を確認 | IT導入支援事業者は、申請者が入力した情報を確認します。その後、担当者情報や計画数値、導入するITツールの情報を入力します。 |
3.申請者が要件などを確認 | IT導入支援事業者が情報入力後、申請者が申請要件の確認や賃金情報の入力を行います。 |
4.SMS認証・提出 | 申請者はSMS認証による本人確認を完了させ、事務局へ交付申請を提出します。 |
※通常枠(A・B類型)、セキュリティ対策推進枠、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の場合
IT導入支援事業者と連携して申請を進めることで、円滑な手続きが期待できます。不明点があれば、支援事業者や事務局に問い合わせができます。
交付申請は締切日が設けられているため、事前に確認しておきましょう。
参照:IT導入補助金2023後期事務局|交付申請の手引きp.7
交付決定から実際に受給までの手続き
交付申請が完了し、事務局から交付決定の通知を受けた後に、導入するITツールの発注や契約手続きを進めます。交付が決定される前に手続きを行った場合、補助金の対象外となる可能性があるため注意が必要です。
ITツールの発注や契約手続き後の流れは、以下のとおりです。
流れ | 内容 |
1.事業実績報告 | 事業者は「申請マイページ」から、実績報告に必要な情報を入力し、関連する証憑を添付します。主な入力項目は、営業利益や人件費、減価償却費などです。その後、事業実績報告が作成され、IT導入支援事業者が内容を確認して必要情報を追加入力します。最終確認が行われた後、事業者は事務局に対して事業実績報告を提出します。 |
2.補助金交付 | 事業実績報告が完了すると、補助金額が確定します。確定した補助金額は「申請マイページ」から確認可能です。内容確認後、補助金が交付されます。補助金の上限額は補助枠によって異なりますので、申請前に確認が必要です。通常枠(A・B類型):最大450万円セキュリティ対策推進枠:最大100万円デジタル化基盤導入類型:最大350万円商流一括インボイス対応類型:最大350万円複数社連携IT導入類型:最大3,000万円 |
3.事業実施効果報告 | 「申請マイページ」から必要な情報を入力し、事業の実施効果報告を期限内に提出します。 |
参照:
IT導入補助金2023後期事務局|事業実施・実績報告の手引き p.8
必見!IT導入補助金を活用した成功事例
補助金を申請する前に、活用事例を確認することが重要です。実際にIT導入補助金を活用した事例を知ることで、補助金導入後の成果や効果を具体的に理解できます。
また、他の事業者の活用方法から、自社の取り組みに関するヒントを得られる可能性があります。
以下では、IT導入補助金を活用してECサイトで売上を大幅に伸ばした企業や、小規模企業の活用方法について見ていきましょう。
ECサイト構築で売上を大幅に伸ばした企業
IT導入補助金を活用してECサイトを構築し、売上を大幅に伸ばした企業や新たな収入源を生み出した企業があります。
ECサイト構築に関する補助金の活用事例は、以下のとおりです。
業界・業種 | 経営課題 | 補助金活用事例と成果 |
製造業 (生菓子製造) | 震災等の影響で需要が減少日持ちする新商品の開発過去にECモールに出店するも収益や取得データに不満 | 補助金を活用して自社ECサイトを立ち上げECサイト経由の受注ができるようになり受付業務が効率化若手社員が新商品の開発や販路について積極的に提案し、写真撮影やSNS発信も担当 新規顧客の獲得に成功し、ECサイトの月間売上が約8倍に増加しました。また、購買データを基にした詳細な顧客分析も可能になっています。社員は自らがECサイトの運営やSNS発信などを担当しており、これが社員のモチベーション向上に寄与しています。 |
卸売業 | メインの顧客はレジャー関連施設の飲食店コロナ禍によりレジャー関連施設の来場客が減り売上も減少ECサイト運営に関するノウハウが不足 | 補助金を活用して自社ECサイトを立ち上げ大手ECサイトにも出店「中小企業デジタル化応援隊事業」も活用して専門家からアドバイスを受ける 自社ECサイト立ち上げから1年で月商400万円を達成しました。専門家からのアドバイスも受け、売上は着実に増加しています。同時に、従業員の雇用とモチベーションの維持にも寄与しています。 |
小規模企業が最大限に活用した補助金術
多くの小規模企業がIT導入助成金を活用し、さまざまなITツールを導入しています。以下は、小規模企業におけるIT導入助成金の主な活用事例です。
業界・業種 | 経営課題 | 補助金活用事例と成果 |
生活関連サービス業(ゴルフ業) | スクール生の予約管理などを紙で行っていたイベントなどの告知をHPやLINEで行っていたがスクール生から不満の声スクール生とのコミュニケーションツールがない | 顧客ニーズや満足度を見える化するためにITツールを導入予約管理や出欠管理をIT化イベント告知などをアプリで実施スクール生が講師にチャットで質問可能 管理業務が効率化され、スクール生が3倍以上に増加しました。またスクール生の継続率が向上しています。細かいデータ分析を通じて、利用者のニーズに適した多様なコースと時間割が設定可能となっています。 |
介護業 | ケアプランの作成などを作成するために夜間・休日出社数年前にクラウド型のソフトの導入を検討したが予算の問題で断念 | 補助金によりコスト面の不安がなくなり介護業務支援ソフトの導入を決断社内でDX推進担当者を任命し、IT導入支援事業者のサポートを受けながらトラブルなくデータ移行 クラウド化によって柔軟な働き方が可能となりました。さまざまな勤務形態にも応えられるようになり、人材確保にもつながっています。 |
その他のECサイト構築に役立つ補助金制度
都道府県や市区町村など、各自治体がECサイト構築に役立つ補助金制度を導入している場合があります。IT導入補助金とは対象企業や設備、要件などが異なるため、自治体の補助金についても理解しておくことが重要です。これにより選択肢が広がり、自社に最適な補助金を活用できるようになります。
以下では、ものづくり補助金や各自治体が提供するECサイト構築に役立つ補助金について紹介します。
ものづくり補助金や地域別の補助金情報
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者がインボイスの導入や働き方改革などにかかる費用をサポートする助成金です。補助金は、生産性向上を目指す試作品の開発や生産プロセスの改善、サービス開発などにかかる経費の一部を助成します。
最大4,000万円(※)の補助金により、設備投資費用が軽減され、脱炭素化などの取り組みを促進しやすくなります。
また、都道府県や市区町村など自治体が提供しているECサイト構築に役立つ補助金制度は、以下のとおりです。
※グリーン枠の場合
自治体・補助金 | 補助金内容 |
東京都中央区「ECサイト活用補助金」 | 独自のECサイトを構築する際の経費や、モール型ECサイトを利用する際の初期登録費用が補助の対象となります。補助金の上限額は6万円です。 |
愛媛県新居浜市「新居浜市デジタル化支援事業補助金」 | 中小事業者が業務の効率化や生産性向上を目的に、ITツールを導入する際の費用を補助します。ECサイトの構築費用やモール型の出店料、ソフトウェア開発費用などが補助の対象となります。補助金の上限額は20万円です。 |
秋田県美郷町「インターネット販売販路開拓支援事業補助金」 | 中小企業や個人事業主がHP開設やECサイト構築にかかる委託費用を補助します。補助金の上限額は20万円です。 |
事業所が所在する自治体がECサイト構築に関連する補助金を提供している可能性がありますので、確認することをおすすめします。
参照:
補助金以外でECサイト経費を抑える方法
補助金以外でECサイトの構築・運営経費を抑える主な方法は、以下のとおりです。
方法 | 理由 |
本当に必要な機能だけを搭載する | ECサイトの機能を拡充するほど、導入コストが上昇することがあります。自社にとって本当に必要な機能かどうかを慎重に検討することが重要です。必要な機能だけを導入することで、余計なコストの増加を回避できます。 |
料金の安いプランを選択する | 一部のサービスでは、新規利用者向けに手頃な料金プランが提供されています。このようなプランを活用することでコストを軽減できます。 |
無料ツールやオープンソースを利用する | 社内にエンジニアなどの専門家がいる場合、無料ツールやオープンソースを活用することでECサイト構築のコストを削減できます。 |
手数料の低い決済プラットフォームを選ぶ | 決済プラットフォームによって手数料が異なります。信頼性に問題がない場合は、手数料が低い決済プラットフォームを選択することでコストを削減できます。 |
複数のサービスを比較検討する | 複数のサービスを比較することで、費用を抑えたサービスを選びやすくなります。 |
チャットボットを活用する | チャットボットの導入により、顧客サポートを自動化できるため、ECサイトの運営コストを削減できます。 |
よくある質問
IT導入補助金に関するよくある質問は、以下のとおりです。
ECサイト作成はIT導入補助金の対象ですか?
IT導入補助金は、ECサイト構築に関連する経費の一部も支援の対象となります。IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)では、以下の経費が補助の対象となります。
- ソフトウェア購入費
- クラウド利用費(最大2年分)
- ハードウェア関連費
- 導入関連費
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の補助金は最大350万円です。ソフトウェアはECソフトや会計ソフト、決済ソフト、受発注ソフトなどが対象となります。
さらに、これらのソフトウェアに関連する以下の費用も補助の対象です。
補助対象 | 内容 |
オプション | 機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ |
役務 | 導入コンサルティング、導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポート |
ハードウェア | パソコン、タブレット、プリンター、複合機、券売機、POSレジ、モバイルPOSレジ、スキャナなど |
IT導入補助金の活用により、ECサイト構築に伴う費用負担を軽減可能です。そのため、ECサイト導入に関する経営判断が容易になります。
また、補助金により設備投資に関する返済不要の資金調達が可能となり、脱炭素化などの取り組みも促進されるでしょう。
参照:
IT導入補助金2023後期事務局|デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
IT導入補助金2023後期事務局|公募要領 デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型) p.3
ECサイト構築費用の補助金は?
IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)は、ECサイトの構築に適用可能な助成金です。デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の補助金の上限額は最大350万円となります。
補助金額の詳細は以下のとおりです。
導入ツール | 補助率 | 補助金額 |
ソフトウェア | 3/4以内 | 50万円以下※下限なし※会計・受発注・決済・ECの機能を1つ以上備える場合 |
2/3以内 | 50万円超350万円以下※会計・受発注・決済・ECの機能を2つ以上備える場合 | |
ハードウェアパソコン、タブレットなど | 1/2以内 | 10万円以下 |
ハードウェアレジ、券売機など | 20万円以下 |
なお、他の補助枠の補助金額は以下のとおりです。
補助枠 | 補助金額 |
通常枠(A・B類型) | A類型:5万円以上150万円未満B類型:150万円以上450万円以下 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万円以上100万円以下 |
デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型) | 350万円以下 |
デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型) | 基盤導入経費:①50万円以下×構成員数 ②50~350万円×構成員数※補助率で異なる消費動向等分析経費:50万円以下×構成員数その他経費:200万円以下※その他経費の上限額は「(基盤導入経費+消費動向等分析費)×10%×(補助率2/3)」または200万円のどちらか小さい金額 |
※基盤導入経費と消費動向分析経費の補助金の合計額は最大3,000万円
参照:
IT導入補助金2023後期事務局|デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
IT導入補助金2023後期事務局|公募要領 デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型) p.3
IT導入補助金はどこから振り込まれますか?
IT導入補助金は、事務局から補助事業者に振り込まれる仕組みです。補助金が交付されるまでの流れは、以下のとおりです。
- 公募要領などを読み、補助事業の詳細を理解
- gBizIDプライムアカウントの取得
- SECURITY ACTIONの宣言
- みらデジ経営チェックの実施
- ITツールの選定
- 交付申請の作成・提出
- ITツールの発注や契約、支払い
- 事業実績の報告
- 補助金交付
- 事業実施の効果報告
事業実績の報告が完了すると、補助金額確定の通知があり、約1ヶ月程度で補助金が交付されます。
口座情報を登録する際には、以下の点に注意が必要です。
法人の場合 | 代表者の個人口座では補助金を受けることができません。事業者が所有する法人名義の口座を登録する必要があります。 |
個人事業主の場合 | 親族名義の口座や他の法人口座では補助金を受けることはできません。事業者が所有する本人名義の口座を登録する必要があります。 |
口座情報を登録する際、通帳がある場合はその表紙と裏面を1つのファイルにまとめて提出します。インターネットバンキングで通帳がない場合は、口座情報の全項目が確認できるページを提出する必要があります。また当座口座の場合も、当座勘定照合表など、全項目が確認できる書類の提出が必要です。
参照:
IT導入補助金2023後期事務局|事業実施・実績報告の手引きp.6.45
まとめ
IT導入補助金を利用することで、ECサイト構築に関連する経費に補助金を受けることができます。補助金により、設備投資費用が軽減され、投資資金の回収期間が短縮されます。資金の制約が原因で着手できなかったECサイト構築に取り組みやすくなるでしょう。
また、ECサイト構築に伴うコストの軽減により、脱炭素化など他の取り組みも進めやすくなります。
IT導入補助金の公募期間については、公式サイトで告知されます。2024年度に補助金の活用を検討している場合は、公式サイトを定期的にチェックするようにしましょう。
ECサイト IT導入補助金に関する重要用語
項目 | 説明 |
gBizIDプライム | gBizIDプライムは、法人および個人事業主向けの共通認証システムです。gBizIDプライムのアカウントを取得することで、さまざまな行政サービスにログインできるようになります。アカウントには有効期限がないため、1度取得すれば、更新手続きなどは不要です。また、gBizIDプライムのアカウントを取得した後は、従業員向けのアカウントも取得可能です。アカウント取得には、即時発行可能なオンライン申請と、発行まで約1週間かかる書類郵送による申請の2つの方法があります。 参照:デジタル庁|gBizID |
SECURITY ACTION | SECURITY ACTIONは、事業者自らが情報セキュリティ対策を実施することを宣言する制度です。独立行政法人情報処理推進機構が運営しており、取り組みの目標に応じて一つ星と二つ星のロゴマークが提供されています。 参照:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)|SECURITY ACTION |
みらデジ経営チェック | みらデジ経営チェックは、デジタル化への適応状況や課題解決に関するヒントを得るためのサポートツールです。中小企業庁によって運営されており、無料で利用可能で、最短5分で結果が得られます。また、同業他社との比較も行うことができます。 参照:中小企業庁|みらデジ |
著者のプロフィール
- 株式会社タンソーマンGXのメディア編集長です!日々、脱炭素に関わる情報を発信しています♪