地球温暖化は今、世界中で深刻な問題として取り上げられています。温室効果ガスの増加が原因で、もし放置されると海面上昇で国や地域が水没する危険性も考えられます。そこで、温暖化の対策として「再生可能エネルギー」「グリーン電力」が注目されています。これらは、温室効果ガスの中でも特に多い二酸化炭素をほとんど排出しないため、環境に優しいエネルギー源として期待されています。

では、「グリーン電力」と「再生可能エネルギー」の違いは何なのでしょうか。簡単に言うと、再生可能エネルギーは、太陽や風といった自然の力を利用したエネルギー全般を示します。一方、グリーン電力は、再生可能エネルギーから得られる電気のことを指します。この記事では、これらの違いについて詳しく解説していきます。

再生可能エネルギーとは?

まずは、再生可能エネルギーについて説明します。再生可能エネルギーは、文字通り「再び生まれ変わる」エネルギーのことです。つまり、使ってもなくならない、自然から絶えず供給されるエネルギーのことを指します。太陽を例に挙げましょう。太陽は毎日昇るため、太陽から得られるエネルギーは絶えることがありません。これを発電に利用したものが、「太陽光発電」です。

私たちが主に利用している石油や石炭などのエネルギーは、「非再生可能」な資源です。しかし、再生可能エネルギーは、その名の通り再生し続けるので、繰り返し利用することができます。さらに、再生可能エネルギーの利点として、環境への負担が少ない点が挙げられます。化石燃料を使用すると、大気中に二酸化炭素などの温室効果ガスが排出されます。しかし、再生可能エネルギーは、温室効果ガスの排出が少ない、またはゼロであるため、地球温暖化の対策としても期待されています。

それでは、再生可能エネルギーには、どのようなものがあるのでしょうか。代表的な5つの再生可能エネルギーについて解説をしていきます。

太陽光発電

太陽光発電は、太陽の光を電気エネルギーに変換する発電方法です。具体的には、太陽の光を特別な板、ソーラーパネルというものに当てることで、ソーラーパネル内の太陽電池が電気を生み出します。しかし、ソーラーパネルの中では、一体何が起こっているのでしょうか。

太陽電池の中には2つの特殊な材料、半導体というものがあります。太陽の光がこれに当たると、電気の流れが生まれます。詳しく説明すると、光を受けることで半導体の1つがプラスの力を持ち、もう1つがマイナスの力を持ちます。このプラスとマイナスの間で、電子という微小な粒子が動き、その動きによって電気を起こしているというわけです。

この太陽光発電の良い点は、太陽の光を使うので、特別な燃料がいらず、ソーラーパネルを置くだけで電気が得られる点です。そのため、家の屋根やビルの壁など、さまざまな場所で使われるようになっています。さらに、技術が進むことでコストも下がると期待されているため、さらなる普及が期待されています。

水力発電

水力発電は、水の流れの力を使って電気を作る方法です。高い場所にためた水を低い場所へ流すことで、水車やタービンを回し、電気を生み出します。この方法の最大のメリットは、太陽光や風のように天候の影響を受けず、安定して電気を供給できる点です。日本は長い間、この方法での発電を行ってきました。

以前は、ダムを利用した「ダム式発電」が主流でしたが、最近では小規模な場所で発電を行う「中小水力発電」が注目されています。これは、小さな河川や農業用の水、さらには上下水を利用して発電します。特に大きなダムを建設する必要がないため、さまざまな場所で導入が進められています。

日本は水の豊富な国です。山や川が多い地域は、水力発電に適しています。これらの地域で、中小水力発電の導入が進むことで、日本全体のエネルギー供給がさらに強化されることが期待されています。

バイオマス発電

バイオマス発電は、廃棄物や植物を原料にして電気を作り出す方法です。具体的には、家畜の糞尿、木のくず、トウモロコシやサトウキビといった植物などを使います。この原料を燃やすことで熱を生み出し、その熱を使ってタービンを動かし、電気を生成します。この方式は、一般的な火力発電の方法に似ています。

「でも、バイオマスを燃やすと二酸化炭素が出るのでは?」と思うかもしれません。しかし、この発電方法は「カーボンニュートラル」として知られています。これは、植物が成長する過程で吸収した二酸化炭素と、発電の際に排出する二酸化炭素がほぼ同量であるとされるからです。したがって、大気中にある二酸化炭素の総量が増えるわけではありません。そのため、バイオマス発電は環境に優しい再生可能エネルギーの1つとして認識されています。

バイオマスには多くの種類があり、それぞれの地域で利用できる資源に応じて活用されています。例えば、農業が盛んな地域では農作物の残りや家畜の糞尿、森林の多い地域では木のくずが利用されることが多いです。こうしたバイオマスの利用は、二酸化炭素の排出を抑えるための大きな手助けとなっています。

風力発電

風力発電は、風の力を使って電気を作る方法です。風が吹くと、風車が回ります。でも、風車が回るのは風の力だけでなく、風車の内部にある「増速機」という装置のおかげでもあります。この装置が風の力をさらに強めて、大きなエネルギーを生み出します。そして、そのエネルギーを発電機で電気に変えるのです。

風力発電は、海沿いや高原、山間部など、風がよく吹く場所で特に利用されています。日本の多様な気象条件や地形の特徴を考慮して、新しい風車の技術やデザインの開発が進められています。これにより、風力発電の普及がさらに進んでいくと考えられています。

地熱発電

地熱発電は、地下の熱を利用して電気を作る方法です。地下深くにあるマグマは、非常に高い熱を持っているため、周りの水を蒸発させることができます。その蒸気を使ってタービンを回し、発電を行っているのです。地熱発電には、「フラッシュ発電」と「バイナリー発電」という主に2つの方法があります。

フラッシュ発電は、かなり高温な蒸気を使ってタービンを動かします。一方、バイナリー発電は、比較的低温の蒸気を利用します。普通、低温の蒸気だけではタービンは動きませんが、バイナリー発電では特別な液体「ペンタン」を使って蒸気を作り出します。これにより、低い温度でも発電ができるようになります。

地熱発電の最大の利点は、天気や時間帯に関係なく、安定して電気を供給できる点です。そのため、火山活動の多い地域や地下の熱が豊富な場所において、地熱発電は特に有効です。日本をはじめ、アイスランドやフィリピン、ニュージーランドなどの地域で積極的に導入されています。

参照:再生可能エネルギーとは

関連記事はこちら:再生可能エネルギーのメリット・デメリットとは?分かりやすく解説

グリーン電力とは?

続いて、「グリーン電力」について解説をしていきます。グリーン電力とは、自然のエネルギーを利用して作られる電気のことです。具体的には、太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱などの「再生可能エネルギー」を使用して電気を生成します。再生可能エネルギーとは、資源が無限に存在し、何度も使えるエネルギーのことです。

特に強調したいのは、再生可能エネルギーでの発電は、環境に悪影響を与える温室効果ガスや、地球温暖化の大きな原因である二酸化炭素をほとんど出さないことです。そのため、グリーン電力は、「環境価値」が非常に高いとされています。

引用:グリーン電力証書システムとは?

さらに、この「環境価値」は「グリーン電力証書」として売買することも可能です。この証書を持っていれば、一般的な電気の利用と組み合わせることで、グリーン電力を使用しているとみなされます。これにより、購入者自身も環境にやさしい活動をサポートすることができるのです。

関連記事はこちら:グリーン電力証書の購入方法とは?詳しく解説

関連記事はこちら:グリーン電力証書の会計処理は?事例とともに解説

再生可能エネルギーとグリーン電力の違いとは?

それでは、再生可能エネルギーとグリーン電力の違いについて解説します。再生可能エネルギーは、自然のエネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を指します。特徴は、二酸化炭素の排出が少ない、またはゼロという点です。一方、グリーン電力は、再生可能エネルギーを利用して作られた環境への負担が少ない電力のことです。

つまり、再生可能エネルギーは「自然の力を利用したエネルギー全般のこと」であり、グリーン電力は「再生可能エネルギーから得られる電気のこと」です。これが両者の違いです。

まとめ

再生可能エネルギーは、太陽光や風力など自然の力を利用したエネルギーを意味します。それに対してグリーン電力は、再生可能エネルギーを利用して作られた電力のことです。再生可能エネルギーは二酸化炭素の排出の心配がほとんどないため、化石燃料に代替するエネルギーとして大きな期待が寄せられています。それを利用したグリーン電力も同様です。

環境問題への対応として、温室効果ガスである二酸化炭素の排出を大幅に抑えることができる再生可能エネルギーの導入とグリーン電力の推進は、今後ますます重要になってきます。だからといって、いきなり再生可能エネルギーを導入したり、グリーン電力に切り替えたりするのは難しいと思います。

そこで、自社の二酸化炭素排出量を把握するところから環境問題への対応を始めてみてはいかがでしょうか。下記リンクより、簡単に、そして無料で排出量の計算ができますので、ぜひ一度お試しください。
参照:タンソチェック【公式】 -CO2排出量算定削減サービス

著者のプロフィール

川田 幸寛
小学校教員として、カーボンニュートラルや脱炭素に関する授業を行った経験がある。子どもたちが理解できるように、専門用語を分かりやすく、かみ砕いて説明することを心がけた。この経験を活かし、脱炭素化の重要性を広く伝えるために、誰にとっても理解しやすい記事を作成している。