一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)は、国内における省エネ設備の導入を普及させるために最大15億円の補助金を提供しています。
補助率も最大3分の2と高いため、一般的なエアコンよりも高性能なパッケージエアコンなどの先進的な設備の導入も可能です。
今回の記事では、省エネ補助金の1種である「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」を解説します。
本記事を読むことで以下の事項を理解できるでしょう。
- 省エネ補助金の概要
- メリット・デメリット
- 対象事業者
- 全体の流れ
- 提出書類と申請方法
- 審査基準・審査通過のコツ
- 補助金交付後の義務
- 活用事例
- 申請時の失敗例
省エネ補助金とは?
省エネ補助金とは、省エネを進めるために経済産業省が実施している経済的なサポートのことです。
具体的には、以下の8種類があります。
- 省エネルギー投資促進に向けた支援補助金
- 省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金
- 中⼩企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業
- 中小企業等に対するエネルギー利用最適化推進事業費補助金
- ⾼効率給湯器導⼊促進による家庭部⾨の省エネルギー推進事業費補助⾦
- 住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業費補助金
- AI・IoT等を活用した更なる輸送効率化推進事業費補助金(準備中で公募書類等なし)
- 脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム
各補助金の概要や補助内容を以下の表にまとめました。(画像をタップしてご確認ください)
「参照」
各種支援制度 | 省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト
新規融資 公募要領
ご案内チラシ
令和5年度「省エネ最適化診断」サービス約款
交付申請等の要件について
次世代ZEH+(建売住宅)実証事業
2023年度「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」に係る公募について | 公募 | NEDO
省エネ補助金は以下の2種類です。
- 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金
- 省エネルギー投資促進支援事業費補助金
さらに省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金は3つの事業区分に、省エネルギー投資促進支援事業費補助金は2つの事業区分に分類されます。
それぞれの概要を以下の表に記載しました。(画像をタップしてご確認ください)
※1. 下限額は100万円、(C)指定設備導入事業のみ30万円
※2.非化石化とは化石燃料の代わりに水素やバイオマスを燃料に使用すること(詳細はp.60~63)
※3.中小企業者等の投資回収年数が7年未満の場合は3分の1以内、中小企業者等以外の投資回収年数が7年未満の場合は4分の1以内
「参照」
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.8
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金 公募要領 p.7
省エネ補助金のメリット
省エネ補助金は、環境に優しい経営を目指す企業にとって有益です。
省エネ補助金には、以下3つのメリットがあります。
- 環境への配慮
- 初期投資の軽減
- 技術革新の促進
環境への配慮
省エネ設備は従来よりも高いエネルギー効率を持っているため、消費エネルギー量の削減が可能です。
具体的な設備として、LED照明や高効率の暖房冷房システム・製造機械などが挙げられます。
消費エネルギー量を削減することで化石燃料の消費量が減少し、CO2排出が抑制されます。
工業セクターや大規模な商業施設においては、設備導入の効果はより大きなものとなるでしょう。
セントラル・タンクターミナル株式会社が実施した省エネ診断によると、省エネ設備の導入で年間72tものCO2削減につながることが明らかとなっています。
初期投資の軽減
省エネ補助金は省エネ設備や技術の導入にかかる費用の一部を負担するため、企業は初期費用を抑えられます。
省エネ設備の導入は最新技術である場合、高額な投資が必要になることが一般的です。
投資には設備の購入費用に加え、設置や設定のための工事費、メンテナンスの費用なども含まれます。
したがって、省エネ設備を導入を考えている企業もなかなか実行に移せないのが現状です。
しかし補助金を活用することで、省エネ技術の導入を経済的に手が届きやすくします。
さらに補助金を利用することで、企業は自社負担だけでは導入が難しい高価格帯の先進的な設備や技術にも手が出せるようになります。
先進的な設備や技術はエネルギー効率の向上だけでなく、生産性の向上や運用コストの長期的な削減にも寄与します。
省エネ補助金には初期投資の障壁を下げることで、資金調達に悩んでいる企業の省エネ設備導入を促進する狙いがあるのです。
技術革新の促進
省エネ補助金は企業にとって市場競争力を保持し、成長を促すための重要な要素となります。
省エネ設備が消費エネルギーの減少によるコスト削減を実現し、その結果生じる余剰資金を新製品やサービスの開発に投資する機会を与えるためです。
新製品・サービスの提供により企業は新しい顧客層へのアプローチが可能になり、これまでの市場とは異なる需要に応えることができるでしょう。
補助金を利用した技術革新は単に経済的利益をもたらすだけでなく、企業の持続可能な成長と長期的な成功への道を開く助けとなります。
省エネ補助金を活用することは企業が新市場を開拓する機会を与え、さらなる成長を促進できるのです。
省エネ補助金のデメリット
省エネ補助金には複数のメリットがある一方、デメリットもあります。
ここでは、省エネ補助金に関するデメリットを3つ紹介します。
- 達成基準の厳格性
- 競争率の高さ
- 一時的な資金不足
達成基準の厳格性
省エネ補助金の達成基準は厳しいです。
補助金の提供を受けるためには高い省エネ効果、具体的には省エネルギー率+非化石割合増加率が30%以上などの特定の基準を満たすことが求められます。
基準を満たすことが難しい場合、企業は補助金を返還しなければならない場合もあります。
達成基準を満たすために、従業員の追加や研究開発が必要となることも考えられるでしょう。
補助金における達成基準の厳格性は、企業の財務をひっ迫する可能性があるのです。
競争率の高さ
省エネ補助金の競争率は高いです。
たとえば省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の(A)先進事業では2次公募の採択率は44.4%で、3次・4次公募においては採択事業者なしの判断を下しています。
競争が激しい場合、企業は補助金を確保するために他社よりも優れた申請書類を準備し、より詳細な計画を提示しなければなりません。
そのため専門的な知識や長い時間が必要となるため、リソースが限られている企業にとっては難しい場合があります。
さらに申請には多大な労力と時間を投資するものの、最終的に補助金を受け取れるかどうかは保証されません。
不確実性が企業の発展やプロジェクトの進行に、影響を与える可能性もあります。
省エネ補助金が持つ競争率の高さが、企業の発展に悪影響を与えることがあるのです。
一時的な資金不足
省エネ補助金における一時的な資金不足は、企業が直面するデメリットの1つです。
補助金はプロジェクトの完了後に支払われます。
最初は企業の自己資金で経費を賄う必要があるため、一時的な資金不足を引き起こす可能性があります。
補助金が支払われるまでの期間、不足資金を補填するために他の資金源を探すか、運転資金を圧迫することになるのです。
補助金の支払い構造上、企業は一時的な資金不足に陥る場合があり、財務の安定性に影響を及ぼす可能性があります。
計画段階からの十分な資金・リスク管理が不可欠です。
省エネ補助金の対象企業
省エネ補助金の対象企業を以下の表にまとめました。(画像をタップしてご確認ください)
参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.16~17
上記の企業体であることに加え、以下の条件を満たす事業者が省エネ補助金の対象者となります。
事業ごとに具体的な条件を以下の表に記載していますので確認ください。(画像をタップしてご確認ください)
「参照」
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.12~16
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金 公募要領 p.10~14
省エネ補助金の事業アイデア
省エネ補助金を活用するための事業アイデアを考案する際、自社のエネルギー使用状況を徹底的に分析することから始めましょう。
たとえば古い照明システムやエアコン、製造機械などが高いエネルギー消費の原因である場合、これらを最新のものに置き換えることが効果的なアイデアになります。
市場や業界のトレンド調査も効果的です。
自社が抱えている問題を他の企業がどのように解決しているかを調べてみると良いでしょう。
他社が成功を収めている省エネ技術や手法を参考にすることで、自社に適した新しいアプローチを見つけ出せる可能性があります。
省エネ補助金の事業アイデアを出すために重要なのは、自社のエネルギー使用状況の調査、市場・業界トレンドの調査だと言えます。
省エネ補助金の流れについて
省エネ補助金の流れは、事業が単年度か複数年度かで異なります。
それぞれの具体的な流れを以下2つの表にまとめました。
単年度事業の場合
全体の流れ | 備考 |
申請に必要な証憑書類の準備 | C・D事業の場合、3者見積もりの実施も必要 |
補助事業ポータルへの入力 | 特記事項なし |
交付申請手続き | 交付申請書などの必要書類を提出 |
申請内容の審査・採択 | 必要に応じてヒアリングを実施 |
交付決定 | 特記事項なし |
採択事業者向け事務取扱説明 | 特記事項なし |
事業開始 | 交付決定後に実施 |
契約・発注 | 特記事項なし |
中間報告 | 着工前写真提出、口座登録の実施SIIが定める期日までに報告書を提出 |
事業実施 | 特記事項なし |
中間検査 | 特記事項なし |
事業完了 | 既存設備の撤去・補助対象となる設備の設置・検収・補助対象経費の支払いを実施 |
実績報告書の作成・提出 | 特記事項なし |
確定検査実施 | 書類検査と現地調査の実施 |
確定通知書発行 | 特記事項なし |
精算払請求書の提出 | 特記事項なし |
補助金の支払い | 特記事項なし |
補助事業の成果報告 | 事業完了の翌々年度の5月末日までに提出 |
「参照」
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.29
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金 公募要領 p.24
複数年度事業の場合(画像をタップしてご確認ください)
※1. 2年計画の場合、2年目が最終年度に該当
※2. 着工前写真提出と口座登録を行い、SIIが定める期日まで報告書を提出
※3. 既存設備の撤去・導入する設備の設置・検収・補助対象経費の支払いを実施
※4. 返還請求書を受け取ってから20日以内に実施
※5. 事業完了の翌々年度の5月末日までに実施
参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.56~57
補助金申請手続きの事前準備と必要書類
省エネ補助金の申請に必要な書類は事業ごとに異なります。
「省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金」に必要な書類はこちらからダウンロード可能です。
「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」に必要な書類はこちらから入手してください。
様式が指定されていない書類は各自で作成しましょう。
各事業で必要な書類を以下の表にまとめましたので確認ください。
表では、事業者全員に提出が求められる共通書類と該当者のみ提出が必要な書類で区別しています。
省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金(画像をタップしてご確認ください)
参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.68~70
省エネルギー投資促進支援事業費補助金(画像をタップしてご確認ください)
※ 事業を組み合わせて実施する場合のみ提出
参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金 公募要領 p.46~48
申請前に確認すべき補助金の審査基準
省エネ補助金の審査基準は、主に2つの部分「審査項目」と「評価項目」から成り立っています。
審査項目では、補助対象事業者と補助事業の内容が交付規程・公募要領の要件を満たしているかを確認します。
補助事業の資金調達や工事計画が適切であるか、事業の遂行と継続が確実であるかも評価対象です。
さらに、補助事業に必要な経費が同様の事業における相場に基づいて、算定されているかを検証します。
評価項目では計画された省エネ量、省エネ率、補助対象経費1,000万円あたりの計画省エネ量が重要な評価基準です。
非化石設備を導入する場合は、非化石使用量と非化石割合の増加率も考慮されます。
非化石とは化石燃料の代わりに、水素やバイオマスを燃料に使用する方法です。
参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.60~63
以下の条件に該当する場合は、加点評価を受けられます。(画像をタップしてご確認ください)
「参照」
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.73~75
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金 公募要領 p.51~52
窓口またはオンライン申請の方法
省エネ補助金の申請は窓口で行われます。
まず一般社団法人環境創生イニシアチブ(SII)のホームページから公募要領と補足資料を確認しましょう。
そのあとはホームページから実施計画書の様式をダウンロードし、事業計画を立案して申請書類を作成します。
次にSIIのホームページで、補助事業ポータルのアカウントを登録してください。
登録後にメールで送られてくるユーザー名などの情報を使用して、補助事業ポータルにログインします。
ポータル内で必要な情報を入力し、確認後に申請書類を出力します。
補助事業ポータルは補助事業の公募期間のみ登録可能なため、2023年11月現在はアクセス不可能です。
自由書式の書類を別途作成し、必要な添付書類を準備します。
最後に「提出書類一覧」に従って書類を整理しましょう。
郵送にあたり以下の規定を守る必要があります。
(画像をタップしてご確認ください)
※1. 補助事業ポータル入力時に番号が発行される
※2. 書類自体にインデックスをつけないこと
「参照」
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.71~72
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金 公募要領 p.49~50
規定に従って書類の整理が完了したあとは以下の住所に郵送します。
〒104-0061 東京都中央区銀座2-16-7恒産第3ビル6階
一般社団法人環境共創イニシアチブ 事業第1部
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」
〇(該当する数字を記入)次公募 交付申請書在中
省エネ補助金の受け取り方法
省エネ補助金は、報告書や検査などを経て指定した金融機関に振り込まれます。
設備の導入後に事業者は検収を行い、補助対象経費を該当機関へ支払います。
支払いは金融機関による振込みであり、割賦払いや手形払いは認められませんので注意しましょう。
新型コロナウイルスなどの影響で事業完了が遅れる場合、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)に報告しなければなりません。
その後、事業者は事業完了日から30日以内、またはSIIが定める期日のいずれか早い日までに実績報告書と補助事業の実施体制に関する資料をSIIに提出します。
税込み100万円以上の請負や委託契約がある場合は詳細(契約先の事業者名、住所、契約関係、契約金額、契約内容)も提出しましょう。
SIIは実績報告書を受理したあとに、書類検査や現地調査を行います。
問題がない場合は交付すべき補助金額を確定し、事業者に通知します。
申請通りの省エネ効果が得られない、計画していた設備が設置されていない、補助対象経費に補助事業者の自社製品の調達分が含まれる場合は補助金が交付されない可能性があります。
補助金額の確定通知を受けたあとは、精算払請求書をSIIに提出してください。
SIIが記載内容を確認し、問題がなければ補助金が支払われます。
参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.83~84
省エネ補助金の補助金交付後について
省エネ補助金が交付された後の対応は以下3つに分けられます。
- 取得財産等の管理
- 成果報告
- 交付決定の取消しや罰則への対応
取得財産等の管理
事業者は補助金で購入した設備をSIIの定める取得財産等管理台帳に記載し、適切に管理する必要があります。
導入した設備を処分制限期間内に処分する場合は、事前に一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)の承認を得なければなりません。
場合によっては、補助金の返還が求められるので注意しましょう。
成果報告
事業者は事業完了後にエネルギー使用量などのデータを収集し、翌年度の4月から3月までの省エネ実績を翌々年度の5月末日までにSIIへ報告する義務があります。
計画していた値に届いてない場合やデータを取得していなかった場合、補助金の返還が求められることがあります。
またエネマネ事業者が手続きを担当する場合は事業者と情報を共有し、同じ認識で手続きを進める必要があります。
交付決定の取消しや罰則への対応
事業者が虚偽申請や重複受給、その他関連法令や条件に違反した場合は補助金の交付決定の取消し、罰則、補助金の交付停止、経済産業省の契約からの除外、不正内容の公表などの措置が取られます。不正と疑われるような行為は避けましょう。
参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.84
省エネ補助金の審査を通りやすくするコツ
省エネ補助金の審査で重要なのは、事業における全体計画の高い完成度です。
資金調達計画や工事計画は、具体的で現実的なものである必要があります。
工事事業者の参考見積もりなどを参照し適切な経費を算定することに加え、工期の設定、必要な設備や資材の確保計画などを詳しく記載しましょう。
予期せぬ事態への対応計画も盛り込むことで、事業の継続性と遂行の確実性をアピールできます。
計画の現実性を高めることで審査員に事業の成功の可能性を認識させられるため、審査を通過しやすくなります。
さらに計画される省エネ量・省エネ率も重要な評価基準です。
審査を通過するためには、補助金を活用して実施する省エネ対策がどれだけ効果的であるかを示す必要があります。
省エネ設備の選定や導入によって、どの程度のエネルギー削減が見込めるか、具体的な数値データとともに明示できると良いでしょう。
また非化石設備の導入を計画している場合には、非化石使用量や非化石割合増加率も重要な指標となります。
事前に数値を計算し、計画の信頼性を高めることで審査委員に計画の価値を理解してもらいやすくなります。
同じくらいの規模・性能を持つ事業と比べて、どれだけ省エネ効果が高いかを示すことも審査通過のためのコツです。
参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.73~75
省エネ補助金を受け取るポイントや注意点
省エネ補助金を受け取るポイントや注意点は以下の6つです。
- 適正な申請と手続きの重要性
- 取引先との透明性の確保
- 補助金の使用における規則の遵守
- 他の国庫補助金との重複禁止
- 事業完了後の資料保管
- 公表事項の認識
適正な申請と手続きの重要性
申請書類に不備や不足がある場合は、原則として申請は受理されません。
補助金を申請する際は、すべての提出書類に正確で偽りのない記載が必須です。
補助金は公的資金であるため不正が発覚した場合は厳しく対処され、補助金の返還や刑事罰の対象となる可能性があります。補助金に関する法律や交付規程を事前に理解し、適正に手続きを行いましょう。
取引先との透明性の確保
補助金を受ける事業に関連する取引先に不明瞭な点がある場合、一般社団法人環境創生イニシアチブ(SII)は現地調査を実施することがあります。
取引先との間で透明な契約関係を維持し、必要な協力を行うことが重要です。
補助金の使用における規則の遵守
補助金で導入した設備などの財産は、定められた処分制限期間内に処分する場合はSIIの事前承認が必要です。
違反すると補助金の返還が必要になることがあります。
またSIIは取得財産の管理状況の調査を実施する可能性もあります。
他の国庫補助金との重複禁止
省エネ補助金は、他の国庫補助金の併用はできません。
ただし税制優遇との併用は可能な場合もあります。
併用が可能かどうかは各税制の担当窓口に確認しなければなりません。
もし申請している補助対象設備を他の国庫補助金でも申請し、交付決定前に他の国庫補助金が交付された場合はSIIに連絡する必要があります。
事業完了後の資料保管
補助事業に関連する資料は事業完了から5年間は保存し、必要に応じて確認できるようにしましょう。
公表事項の認識
SIIは補助金の交付を決定したあとに、事業者名や補助事業の概要を公表することがあります。
個人や個人事業主を除き、自社の情報が公表されることをあらかじめ理解しておくことが重要です。
参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.2, 23, 67, 72
省エネ補助金の事例紹介
省エネ補助金を活用した企業の取り組みを3つ紹介します。
- 株式会社六花亭
- 株式会社東京ドーム
- 中日本ダイカスト工業株式会社
上記3社以外の取り組みにも興味のある人は、以下リンクから他41社の事例を確認できます。
参照:活用事例検索について | 令和5年度 エネルギー使用合理化等事業者支援事業 | SII 一般社団法人 環境共創イニシアチブ Sustainable open Innovation Initiative
株式会社六花亭
株式会社六花亭は北海道帯広市に本社工場を構える1933年創業の老舗製菓メーカーで、和洋菓子の製造販売と美術館運営を行っています。
この調査を基に省エネ補助金の申請を行い、効率の高い設備への更新を実施しました。
具体的には1,108台の高効率LED照明器具(153.3 lm/Wの性能値)と、4台の高性能蒸気ボイラ(性能値98%)を導入しました。
補助対象経費は6,180万円で、六花亭は一般社団法人環境創生イニシアチブ(SII)から2,060万円の補助金を受け取っています。
参照:高効率照明 初めての補助金活用で高効率照明・高性能ボイラを導入
株式会社東京ドーム
株式会社東京ドームが運営するLaQua(ラクーア)は、東京ドームシティ内に位置するエンターテインメント型複合商業施設でショップ、レストラン、アトラクション、スパなどを提供しています。
施設の省エネ対策として照明や空調設備の運用を最適化し、特に天然温泉「スパ ラクーア」があるビルでは省エネの要となる熱源管理に力を入れていました。
省エネ対策の一環として導入された設備には12台の空冷HP型冷暖切替チラー、1台の冷却塔(3セル型)、そして1台のINVターボ型熱回収チラーが含まれています。
どの設備も効率的なエネルギー利用と環境負荷の低減を目的としており、空冷HP型チラーは冷暖房両方に対応し、INVターボ型熱回収チラーは冷房と暖房の両方でエネルギー回収が可能です。
設備導入の結果、ビル全体のエネルギー使用量は年間5,621klから1076.9klの省エネ量を達成し、省エネ率は19.1%になりました。
さらに年間の削減コストは約2,082万円に達しました。
LaQuaの取り組みは商業施設における省エネと環境配慮の重要性を示す良い事例と言えるでしょう。
参照:エネマネ事業 複合商業施設の熱源を更新し、EMSによって制御。
中日本ダイカスト工業株式会社
中日本ダイカスト工業株式会社は1959年に設立されたアルミ合金・亜鉛合金のダイカスト部品製造企業で、多様なダイカストマシンを駆使した技術力の向上に努めています。
同社は令和2年度に省エネ補助金を活用して、工業炉の設備更新に着手しました。
導入した設備は1時間に150キロの物質を処理できる1台の燃焼式の低炭素溶解炉です。
エネルギー効率が高いため生産過程におけるCO2排出量を削減できます。
設備導入により、エネルギー使用量は年間58.5klから13.8klの省エネを実現し、省エネ率は23.6%に達しました。
また導入によるコスト削減は年間102万円に上ると報告されています。
さらに中日本ダイカスト工業は補助金を活用することで、省エネ投資を計画的に進め、生産性と品質の向上を図るとともに、社員の省エネ意識を高めることにも成功しています。
参照:低炭素工業炉 現場と事務部門との連携の元、計画的に工場内の省エネ化を推進
省エネ補助金が受け取れない失敗例
省エネ補助金が受け取れない失敗例を2つ挙げ、具体的に説明します。
- 虚偽の情報提供や不正行為
- 事業の進行に関する規定違反
虚偽の情報提供や不正行為
補助金の申請書類に虚偽の情報を記載したり、不正な手段で補助金を受給しようとする行為は補助金が受け取れない主な原因の一つです。
たとえば実際には購入していない設備の購入費用を補助対象経費として申請する、または実際よりも高い金額を請求するなどの行為が該当します。
不正行為が発覚した場合には補助金の交付決定は取り消され、すでに受け取った補助金に加算金を加えた額(年10.95%の利率)を返還する必要があります。
さらに将来の補助金交付の停止や、事業者名及び不正の内容が公表されるリスクも伴います。
参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.2
事業の進行に関する規定違反
一般社団法人環境創生イニシアチブ(SII)の承認を得ずに行われた事業も補助金が受け取れない原因となります。
具体的には補助金の交付決定前に事業に必要な機器の発注や、契約を完了させてしまうケースです。
また補助金で取得した財産を処分制限期間内にSIIの承認なしに売却したり、他の目的に使用したりすることも補助金の返還が求められます。
補助金で購入した設備は補助金の交付目的に沿った適切な管理と使用が求められ、その規則を遵守しなければ補助金の返還や今後の交付停止のリスクがあります。
参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.2
これらの失敗例から学ぶべきは補助金申請・受給において、誠実さと規則の遵守が非常に重要であるという点です。
不正な行為や規定違反は、短期的な利益よりも大きなリスクをもたらし、長期的な事業の信頼性や持続可能性に悪影響を及ぼします。
まとめ
省エネ補助金とは省エネを進めるために経済産業省が実施している経済的な支援のことです。
(画像をタップしてご確認ください)
※1. 下限額は100万円、(C)指定設備導入事業のみ30万円
※2.非化石化とは化石燃料の代わりに水素やバイオマスを燃料に使用すること(詳細はp.60~63)
※3.中小企業者等の投資回収年数が7年未満の場合は3分の1以内、中小企業者等以外の投資回収年数が7年未満の場合は4分の1以内
「参照」
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.8
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金 公募要領 p.7
補助金の大まかな流れは以下の通りです。複数年度事業の場合は「8.契約」から「15.確定通知書発行」の流れを繰り返し実施します。
- 申請に必要な証憑書類の準備
- 補助事業ポータルへの入力
- 交付申請手続き
- 申請内容の審査・採択
- 交付決定
- 採択事業者向け事務取扱説明
- 事業開始
- 契約・発注
- 中間報告
- 事業実施
- 中間検査
- 事業完了
- 実績報告書の作成・提出
- 確定検査実施
- 確定通知書発行
- 精算払請求書の提出
- 補助金の支払い
- 補助事業の成果報告
提出書類は、こちらのリンクよりご確認ください。
「参照」
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 p.68~70
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金 公募要領 p.46~48
補助金の申請は窓口で行われます。
公募要領を参考に様式が指定されているものはホームページから取得し、自由形式のものは各自で準備しましょう。
書類はA4判の2穴タイプのファイル綴じ、事業者名や申請書番号などをファイルの表紙・背表紙に記載してSIIへ郵送してください。
省エネ補助金の審査で重要なのは完成度の高い事業計画です。
資金調達方法や工期・資材の確保などの詳細を具体的に記載しましょう。
補助金の交付後は、導入した設備の適切な管理や成果報告の義務があります。
怠った場合は、交付の取消しや罰則への対応を余儀なくされるので注意しましょう。
省エネ補助金の活用事例として多いのは、LED照明への切り替えや空調設備の更新です。
株式会社六花亭は108台の高効率LED照明器具と4台の高性能蒸気ボイラを導入を計画し、補助金の提供を受けています。
株式会社東京ドームも空調設備の更新に補助金が交付されています。
補助金の申請で注意すべきは、虚偽の情報提供や不正行為と規定違反です。
申請書の記載内容に誤りがある場合、原則受理されません。
また不正受給などが発覚した場合は交付額に年10.95%の利率を加えた金額の返還義務が生じます。
補助金を受け取るためにも申請前に記載内容を確認し、誠実な対応を心がけましょう。
著者のプロフィール
- 小学校教員として、カーボンニュートラルや脱炭素に関する授業を行った経験がある。子どもたちが理解できるように、専門用語を分かりやすく、かみ砕いて説明することを心がけた。この経験を活かし、脱炭素化の重要性を広く伝えるために、誰にとっても理解しやすい記事を作成している。