多くの中小企業では、省エネ機器を導入する際に費用負担を軽減したいと望んでいます。
その理由として費用負担が軽減されることで、省エネ機器の導入ハードルが低くなり、投資資金の回収期間も短縮されるからです。
本記事では、省エネ機器導入時に利子補給金を受け取れる「省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金」について詳しく解説します。
利子補給金の対象設備や申請方法、他の補助金との併用ルール、自治体独自の省エネ補助金についても紹介しています。
利子補給金の概要を理解し、省エネ機器導入における適切な判断に役立つ情報を得ることができるでしょう。
新たな省エネルギー設備・機器導入補助制度の概要
省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金は、省エネ設備の新設・増設に際して利用する融資の利子補給を行う制度です。
この制度を活用することで、事業者は省エネ設備導入時の資金調達における負担が軽減され、投資資金の回収期間を短縮可能です。
利子補給率は最大で1%、利子補給期間は最大で10年間であり、補給金の支給は年2回行われます。
ここでは、省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金に関する以下3つのポイントについて説明します。
出典:事業概要パンフレット
制度の目的:省エネルギーと環境対策の推進
省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金の目的は、省エネ投資と環境対策の推進です。
民間事業者が省エネ設備・機器を導入する際の資金調達における負担を軽減することで、省エネ投資を促進します。
また、国は、省エネ投資の推進により、「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」に基づく約6,200万klの省エネ実現を目指しています。
「参照」
2030年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)|経済産業省 資源エネルギー庁 p.15
新規融資 公募要領(四次公募)|一般社団法人 環境共創イニシアチブ
補助対象者:企業を対象にした支援
省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金は、国内で事業活動を営む法人または個人事業主で、指定金融機関が融資を行う以下のいずれかの要件を満たす事業が対象です。
(1)エネルギー消費効率が高い省エネ設備を新設もしくは増設する事業
(2)省エネ設備を新設もしくは増設し、エネルギー消費原単位が1%以上改善される事業
(3)データセンターのクラウドサービス活用やEMSの導入等による省エネ取り組みに関する事業
(1)(2)の要件が対象となるのは省エネ設備の新設や増設であり、既存設備の更新は対象外となりますので、ご注意ください。
利子補給の対象となる事業は、国内においてエネルギー管理が一体で行われる特定の工場または事業場とされています。
また、利子補給対象事業における契約や発注は2023年4月3日以降である必要があります。(ただし、過年度に採択された対象事業については、この制限は適用されません。)
「参照」
新規融資 公募要領(四次公募)|一般社団法人 環境共創イニシアチブ p.6
事業概要パンフレット
対象設備・機器: エネルギー効率が高い機器への更新
利子補給の対象は、以下の条件をすべて満たす高いエネルギー消費効率を有する省エネ設備・機器です。
- 兼用や将来の用途、または予備設備などでない
- 中古品ではない
- 法令で規定された安全基準などを満たしている
高いエネルギー消費効率を有する省エネ設備の具体例としては、トップランナー制度の基準を満たす設備が挙げられます。
この場合、各対象品目で規定された「基準エネルギー消費効率基準」を達成していることが条件です。
なお、トップランナー制度の対象品目に該当する設備は、32品目あります(2023年11月25日時点)。
該当設備は、以下のとおりです。
- 乗用自動車
- エアコンディショナー
- 照明器具
- テレビジョン受信機
- 複写機
- 電子計算機
- 磁気ディスク装置
- 貨物自動車
- ビデオテープレコーダー
- 電気冷蔵庫
- 電気冷凍庫
- ストーブ
- ガス調理機器
- ガス温水機器
- 石油温水機器
- 電気便座
- 自動販売機
- 変圧器
- ジャー炊飯器
- 電子レンジ
- DVDレコーダー
- ルーティング機器
- スイッチング機器
- 複合機
- プリンター
- ヒートポンプ給湯器
- 交流電動機
- 電球
- ショーケース
- 断熱材
- サッシ
- 複層ガラス
また、トップランナー制度の対象品目に該当しない場合であっても、エネルギー消費効率が高い設備は対象となることがあります。
一世代前のモデルと比較して、エネルギー消費効率がわずかでも向上していることが条件です。
「参照」
機器・建材トップランナー制度について|経済産業省 資源エネルギー庁
利子補給金ハンドブック|一般社団法人 環境共創イニシアチブ p.4
補助金額と申請方法について
省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金制度の補給金額の計算方法や申請方法について、事前に理解しておくことが重要です。
ここでは、以下3つのポイントについて説明します。
補助金の計算方法:効率や導入費用に基づく支援
省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金の利子補給率は最大1%です。
具体的には、金融機関からの融資利率に応じて、以下の補給率が適用されます。
融資利率 | 補給率 |
1.1%以上 | 1% |
0.1%以上1.1%未満 | 貸付利率から▲0.1% |
0.1%未満 | 0% |
利子補給金額の計算方法は、以下のとおりです。
利子補給金額=(A×B)/365×C
A:対象となる融資の単位期間(6ヶ月)における融資残高
B:対象となる融資の単位期間(6ヶ月)における融資残高が残っている日数
C:利子補給率
また、利子補給金の補給期間は最長10年で、融資期間が導入設備の法定耐用年数以内である必要があります。
※利子補給金の予算額を公募総額が上回る等の場合、上記計算により求めた利子補給金額を下回ることがある
※利子補給金額は小数点以下は切り捨て
※1事業あたりの交付対象融資額の上限は100億円
「参照」
新規融資 公募要領(四次公募)|一般社団法人 環境共創イニシアチブ p.9
利子補給金ハンドブック|一般社団法人 環境共創イニシアチブ p.3
申請書類と提出方法:必要書類を揃えて申請
利子補給金の申請には、融資計画書の提出が必要です。
融資計画書は、事業者と指定金融機関が共同で作成し、指定金融機関が提出します。
融資計画書を作成する際、以下の条件を満たすか確認が必要です。
- 国の補助金と併用していない
- 利子補給対象事業における契約や発注は2023年4月3日以降である
- 交付方針決定の通知前に金融機関と融資契約を結んでいない
- 融資期間が導入設備の法定耐用年数以内で、元金均等返済で完済される金銭消費貸借契約である
- 兼用や将来の用途、または予備設備などでない
- 中古品ではない
- 法令で規定された安全基準を満たしている
- 補助対象者の要件(1)〜(3)のいずれかを満たす
- 補助対象者の要件(2)で申請する場合は環境共創イニシアチブに事前相談をしている
- 1事業あたりの交付対象融資額が上限100億円を超えていない
- 対象事業の実施場所はエネルギー管理が一体で行われる特定の工場または事業場である
「参照」
利子補給金ハンドブック|一般社団法人 環境共創イニシアチブ p.7
申請受付期間と審査プロセス:期間内に申請を行い、審査結果を待つ
利子補給金の申請受付期間は、環境共創イニシアチブの公式サイトで告知されています。
令和5年分の受付期間は、以下のとおりです。
公募 | 受付期間 |
1次公募 | 2023年5月26日~6月23日 |
2次公募 | 2023年6月30日~8月10日 |
3次公募 | 2023年8月18日~9月29日 |
4次公募 | 2023年10月6日~11月10日 |
※2023年11月25日時点
利子補給金を希望する場合は、受付期間内に指定金融機関と共同で作成した融資計画書を提出する必要があります。
ただし、予算額に達した場合は受付期間中であっても融資計画書の受付が終了となる可能性がある点にご注意ください。
また、申請から審査、および交付決定通知までのプロセスは、以下のとおりです。
- 融資計画書の作成 ※指定金融機関と共同
- 融資計画書の提出 ※指定金融機関が提出
- 申請内容の修正 ※修正依頼があった場合
- 交付方針決定通知書の受領
参照:利子補給金ハンドブック|一般社団法人 環境共創イニシアチブ p.6
導入事例と効果について
利子補給金を活用して省エネ設備を取り入れることで、さまざまなメリットが期待できます。
しかし、導入後には効果の検証を行うことが重要です。
以下では、補助金を利用して省エネ設備を取り入れることで得られるメリットや、導入後の効果検証について説明します。
成功事例:省エネルギー設備・機器導入の効果を実感
利子補給金を利用して省エネ設備を取り入れれば、初期費用を軽減できます。
金融機関の融資の利子に対して最大1%の補助が出ることで、設備投資費用の回収期間が短縮されます。
資金面の課題により省エネ投資に踏み切れない事業者にとって、大きな支援となるでしょう。
さらに、省エネ機器の導入により環境へ配慮ができ、経費の削減や生産性の向上が期待されます。
また企業のイメージが向上し、対外的な信頼構築に寄与するでしょう。
効果測定方法:導入前後のエネルギー消費量や燃料費の比較
省エネ設備を導入した後、その効果を測定することは非常に重要です。
導入前後のエネルギー消費量や燃料費を比較することで、導入によるメリットを視覚的に確認することができます。
省エネ設備導入後の効果検証を行うことは、コスト削減にも寄与するでしょう。
「参照」
省エネの進め方と現場で役立つ着眼点|経済産業省 関東経済産業局
省エネの進め方と省エネ診断事例|一般社団法人省エネルギーセンター
補助制度を活用するための注意点
省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金の注意点を事前に理解しておくことで、採択される可能性が高まります。
また、設備導入後も省エネに大きく寄与するでしょう。
ここでは、以下の2つのポイントについて説明します。
助成金の重複受給に関する制限:他の補助制度との併用ルール
省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金は、国からの他の補助金との併用は認められません※。
また県や市が提供している独自の補助金についても、その財源が国庫の場合は併用が認められないため、ご注意ください。
※国からの補助金は、負担金、利子補給金、および補助金適正化法第2条4項第1号で規定された補助金、同項第2号に該当する資金を含む
参照:利子補給金ハンドブック|一般社団法人 環境共創イニシアチブ p.14
省エネ機器選びのポイント:高い効果を発揮する機器の選定
省エネ効果の高い機器を選択することは非常に重要です。
なぜなら利子補給金を受けるためには、トップランナー制度の基準を満たすなどエネルギー消費効率が高い機器を導入する必要があるためです。
トップランナー基準は、技術開発における将来性などを考慮して定められています。
エネルギー消費効率が高い場合、機器導入後に優れた省エネ効果も期待できます。
参照:利子補給金ハンドブック|一般社団法人 環境共創イニシアチブ p.4
各都道府県別の補助制度情報
画像入れる
国だけでなく各自治体も独自に省エネ補助金制度を導入し、事業者の省エネ化を支援しています。
さまざまな省エネ補助金の情報を収集しておくことが重要です。
以下では、主要な自治体の省エネ補助金制度や申請窓口について説明します。
地域に特化した制度の概要:各地域が独自に設定した制度の特徴
各地域が独自に設定した主な補助制度は、以下のとおりです。
【都道府県】制度名 | 補助額 |
【神奈川県】中小規模事業者省エネルギー設備導入支援補助金 | 導入費用:上限600万円 |
【大阪府】中小事業者の対策計画書に基づく省エネ・再エネ設備の導入支援補助金 | 導入・更新費用:上限300万円 |
【福岡県】福岡県中小企業等省エネ設備導入支援補助金 | 導入・更新費用:上限100万円 |
【愛媛県】省エネルギー対応設備更新等緊急支援補助金 | 更新費用:25万〜300万円 |
【山梨県】省エネ・再エネ設備導入加速化事業費補助金 | 導入費用:省エネ設備 上限300万円、再エネ設備 上限600万円 |
【兵庫県】中小事業者省エネ設備等導入支援事業補助金 | 導入・更新費用:上限100万円 |
他にも、さまざまな自治体で省エネに関する補助金制度が設けられています。
地域別の申請窓口情報:申請方法や連絡先の確認
省エネ補助金の申請窓口は各自治体で異なります。
そのため、補助金の利用を検討する際には、該当自治体の省エネ補助金の公式サイトを確認することが重要です。
参考までに上記省エネ補助金の申請窓口は、以下のとおりです。
都道府県 | 申請窓口 |
神奈川県 | 神奈川県省エネ設備補助制度 事務局 |
大阪府 | おおさかスマートエネルギーセンター(脱炭素・エネルギー政策課内) |
福岡県 | 福岡県中小企業等省エネ設備導入支援補助金 事務局 |
愛媛県 | 愛媛県中小企業団体中央会 |
山梨県 | 省エネ・再エネ設備導入加速化事業費補助金事務局 |
兵庫県 | 公益財団法人ひょうご環境創造協会 温暖化対策第1課 再生可能エネルギー相談支援センター |
必要な書類や申請手続きについても、各自治体で異なるため、早めに関連窓口に相談することをおすすめします。
よくある質問
省エネ補助金に関して、よくある質問は以下の3点です。
省エネ機器導入補助とは?
省エネ機器導入補助は、事業者が省エネ機器を導入・更新する際の費用を補助し、省エネ化を支援する制度です。
省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金など、国や自治体はさまざまな補助制度を導入しています。
LEDの補助金は2023年度も受けられますか?
2023年度でもLEDの補助金を受けることは可能です。
省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金や中小企業等経営強化による支援などを利用する方法があります。
また、東京都ではLED照明等の節電促進に対する助成金など、各自治体が独自に実施している補助金も存在します。
「参照」
省エネルギー投資促進に向けた支援補助金とは?
省エネ性能が優れた設備の更新にかかる費用を補助する制度です。
この制度は、先進事業・オーダーメイド型事業・指定設備導入事業・エネマネ事業の4つの事業を対象としています。
対象となる経費は設備費のみであり、対象設備には高効率空調・高性能ボイラ・変圧器などが含まれます。補助金の上限額は年間15億円です。
参照:省エネルギー投資促進支援事業|一般社団法人環境共創イニシアチブ
まとめ
省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金を利用することで、省エネ設備の導入コストが軽減し、投資資金の回収期間が短縮されます。
また、企業内での環境意識が高まり、同時に対外的な信頼性も向上するでしょう。
利子補給金の申請の際には、指定金融機関と共同で融資計画書の作成が必要です。
新規融資公募に関する情報は、環境共創イニシアチブ「省エネルギー設備投資利子補給金」の公式サイトで随時公表されます。
新省エネルギー設備機器等導入補助制度に関する重要用語
項目 | 説明 |
トップランナー制度 | 設備のエネルギー消費効率の策定方法。最高基準値方式に基づいており、基準値を設定した時点で最もエネルギー効率に優れた機器の数値を上回ることを目指す。 |
エネルギー消費原単位 | 製品などを生産するのに必要なエネルギー(電力、熱など)消費量の総量のこと |
2030年度におけるエネルギー需給の見通し | 2013年度から2030年度にかけて温室効果ガスを46%削減すること、さらに50%削減に向けて挑戦する上でのエネルギー需給両面での課題と見通しを示したもの |
著者のプロフィール
- タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。