脱炭素」と「省エネ」の違いはご存知でしょうか。環境問題が問題視されるようになってから、日常的にも耳にするようになった2つの言葉です。

「脱炭素と省エネについて、なんとなくは理解しているけど詳しくは分からない」

「どちらも再生可能エネルギーを活用したりするみたいだけど、何が違うのだろう?」

「省エネのためにできることはあるだろうか?」

この記事を読むことで、これらの悩みを解決することができるでしょう。さらに、事業者ができる省エネ方法についても紹介しています。ぜひ参考にし、省エネに取り組んでください。

脱炭素とは?

脱炭素とは、二酸化炭素や温室効果ガスの排出量を削減、または排除することです。二酸化炭素は、地球温暖化などを深刻化させて、気候変動を引き起こします。さらに、海面上昇や生物多様性の減少などの問題の原因にもなっています。これらの問題を解決するための手段として、脱炭素化が世界中で進められているのです。

日本でも、2050年度までにカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量の収支をゼロにすること)を目指すと宣言しており、地方自治体や大手企業だけではなく、中小企業も脱炭素に向けた取り組みを徐々に行い始めています。

脱炭素化の取り組みは、エネルギー、交通、産業など、さまざまな分野で行われています。例えば、再生可能エネルギーの利用拡大、化石燃料の使用制限、エネルギー効率の向上、電気自動車の普及、森林保全などです。このように、多岐わたる取り組みが進められています。

環境省のホームページでも詳しく説明されていますので、あわせてご覧ください。

参照:カーボンニュートラルとは

関連記事はこちら:カーボンニュートラルとは?意味や企業の取り組み、SDGsとの関係まで解説

省エネとは?

省エネとは、「省エネルギー」の略称で、エネルギーの消費を抑える行為やそのための取り組みを指す言葉です。具体的には、エネルギー効率の良い機器を使用したり、無駄な電力使用を減らしたりすることなどが省エネの取り組みに該当します。省エネに取り組むことで、エネルギーにかかるコストを削減ができるだけではなく、地球温暖化の防止や資源の有効活用にもつながります。

省エネの取り組みは、個人の生活レベルから企業のビジネス活動、国や地域の政策まで、幅広い範囲で行われています。例えば、家庭では省エネ型の家電製品を選んだり、エアコンの設定温度を適切に管理したりすることが省エネにつながります。一方、企業では、省エネ型の設備を導入したり、EMG(エネルギーマネジメントシステム)を導入したりすることで大規模なエネルギー消費の削減を行っているところが多いです。これについては、後ほど詳しく紹介します。

参照:省エネって何?

脱炭素と省エネの違いとは?

ここまで脱炭素と省エネについて簡単に説明してきました。どちらも地球温暖化やエネルギーに関わりがあることが理解できたかと思います。では、脱炭素と省エネの違いは一体、何でしょうか。一言で説明すると、「省エネは、脱炭素における取り組みの1つ」ということです。

まず、脱炭素は、二酸化炭素や他の温室効果ガスの排出をゼロにするという考え方のことです。そのためには、化石燃料の使用を減らし、太陽光や風力、地熱、水力といった再生可能エネルギーの活用を増加させることが求められます。一方、省エネは、エネルギーの使用を効率的にする考え方のことです。そのためには、LED照明や高性能な空調の導入などのエネルギー効率の高い技術を利用したり、電気を使わない時間を作るなどのエネルギー消費を抑えたりすることが重要になります。

省エネによりエネルギーの使用量が減少するということは、それだけ化石燃料の使用と二酸化炭素の排出も減少するということです。つまり、省エネを行うことで、脱炭素につながるということになります。

事業者ができる省エネ方法とは?

省エネによるエネルギー消費の削減は、脱炭素化の一助となるだけではなく、経費削減といった経済的な利益をもたらします。今回は、事業者が実施できる省エネ方法を5つほど紹介します。

  • 高性能な空調設備への切り替え
  • LED照明への切り替え
  • EMS(エネルギーマネジメントシステム)の活用
  • 製造、生産工程などの見直し
  • 再生可能エネルギーの導入

それぞれ詳しく解説していきます。

高効率な空調設備への切り替え

まずは、高性能な空調設備への切り替えを検討しましょう。省エネを含め、主なメリットは下記の5つです。

  • 省エネ
  • コスト削減
  • 脱炭素化への貢献
  • 電力供給の安定性
  • 労働環境の改善

それぞれ詳しく見ていきましょう。

省エネ

高性能な空調設備を導入することで省エネの効果が期待されます。一般的な設備と比べて、高効率な空調設備は、同じ効果を得るために必要な電力が少ないです。特に、空調設備は、エネルギー消費の中でも、非常に大きな割合を占めています。そのため、高効率な機器を使うことで、電力使用量を大幅に減らすことができます。

コスト削減

電力の消費量が減ることは、電気料金の節約につながります。高効率な設備に切り替えるための初期投資はかかりますが、その後のランニングコストは大きく減らせるので、長期的に見れば経済的な利点があります。

脱炭素化への貢献

高性能な空調設備の導入は、脱炭素化にもつながります。使用するエネルギーや電力が少なくなると、二酸化炭素の排出も減るからです。また、環境に配慮した設備を導入したことを取引先や企業にアピールすることで、ブランド力を高める機会にもなります。

電力供給の安定性

省エネにより電力需要が減少すると、電力供給の安定性が向上します。特に、日中などピーク時の電力供給に対する負担を減らせるため、安心して電力を利用できる環境を作り出すことができます。

労働環境の改善

高効率の空調設備の導入で、労働環境を改善できます。広範囲にわたる温度や湿度、空気の清潔さ、風の流れなどをより精密にコントロールできるからです。

LED照明への切り替え

続いては、LED照明への切り替えです。主なメリットは、次の3つです。

  • 省エネ
  • 長寿命
  • 環境への負担軽減

それぞれ詳しく解説していきます。

省エネ

LED照明は、白熱電球や蛍光灯などの他の種類の電球と比較して、エネルギー消費が少ないという特徴があります。そのため、より少ない電力消費で必要な明るさを得ることができます。エネルギーの大部分を熱エネルギーに変換する白熱電球などと比べると、LEDはエネルギーを効率的に光に変換することができるからです。

長寿命

さらに、LED照明は、他の電球と比べても寿命が長いです。

具体的な数字で見てみましょう。

名称一般的な寿命
白熱電球1,000~2,000時間
蛍光灯6,000~12,000時間
LED照明40,000~50,000時間

LED照明は、白熱電球と比べて約25~50倍蛍光灯と比べて約4~9倍の寿命があることが分かります。LED照明は寿命が長い分、交換の頻度が少なくなるので、維持費用を節約することができます。

環境への負担軽減

LED照明は、環境への負荷が少ないという点でも優れています。これは、使用済みのLED照明の処分が簡単で、有害な化学物質を含まないためです。例として、蛍光灯には環境に有害な水銀が含まれているのに対し、LED照明には、そういった有害物質は含まれていません。

EMS(エネルギーマネジメントシステム)の活用

EMSとは、エネルギーマネジメントシステムの略称で、エネルギーの消費状況を詳しく知り、その情報を活用して運用を改善するツールのことです。EMSの活用には、以下の3つのメリットがあります。

  • 省エネ
  • 環境保全
  • エネルギー運用の最適化

それぞれ詳しく見ていきましょう。

省エネ

EMSを導入することで、エネルギーがどこで無駄に使われているかを知ることができ、それに対する改善策を立てることが可能となります。これにより、電力や燃料などの消費量を減らすことができ、結果的にコストの削減にもつながります。

環境保全

EMSは、環境にもよい影響を及ぼします。EMSは、エネルギーの無駄を削減することで、化石燃料の使用量を減らす役割も果たすからです。これは、温室効果ガスの排出量を減らすことにもなりますので、地球温暖化の防止にもなります。

エネルギー運用の最適化

EMSは、エネルギーの利用状況を把握し、それを分析することで、より効率的なエネルギーの利用方法を提案してくれます。そして、そのエネルギー利用方法を行った結果を見て、さらなる改善を提案し続けます。このサイクルを繰り返すことで、常に最適なエネルギー利用が可能となります。

製造、生産工程などの見直し

製造や生産工程の見直しは、省エネのための重要な手段です。省エネの他にも脱炭素化に貢献できるというメリットがあります。

省エネ

製造や生産工程を見直すということは、エネルギーを消費するプロセス全体を詳しく調査し、不要なエネルギー使用を見つけ出し、それをなくしていく作業です。例えば、照明や冷暖房の効率化を図ったり、エネルギー効率の高い設備を導入したりなどが含まれます。これらの導入には初期費用がかかりますが、運用コストは大きく下がるため、長い目で見たときに経済的なメリットもあります。

脱炭素化への貢献

製造や生産工程の見直すことで、エネルギー効率が向上して、炭素排出量が減少するため、脱炭素化に向けた大きな取り組みにもなります。さらに、エネルギー効率の高い企業は、顧客や投資家からの評価も高まります。

再生可能エネルギーの導入

再生可能エネルギーの導入も、省エネのために有効な手段です。再生可能エネルギーとは、太陽、風、水、地熱といった自然から得られるエネルギーのことを指します。再生可能エネルギー導入のメリットは、下記の3つです。

  • 際限のないエネルギー源
  • 総エネルギー量の減少
  • 脱炭素化への貢献

際限のないエネルギー源

太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、すべて自然から取得するため、絶えず供給される際限のないエネルギー源です。化石燃料のように、限られた量しか存在しないエネルギー源とは大きく異なります。そのため、化石燃料の利用量が増えれば増えるほど、枯渇のリスクとそれに伴う価格の高騰が経済的に大きな問題となります。しかし、再生可能エネルギーは、このような問題を心配する必要がありません。

総エネルギー量の減少

再生可能エネルギーは、化石燃料よりもエネルギーの生成が効率的であるため、必要な総エネルギー量を減らすことができます。化石燃料からエネルギーを得るには、採掘、輸送、精製、そして燃焼といった複雑なプロセスが必要です。一方、再生可能エネルギーは、自然の力を直接エネルギーに変えることができます。これにより、同じ量のエネルギーを得るために消費する全体のエネルギーが少なくなるのです。

脱炭素化への貢献

再生可能エネルギーは、自然由来のエネルギーを使用するため、化石燃料に比べて二酸化炭素の排出量が非常に少ない、あるいはゼロです。二酸化炭素を排出しないということは脱炭素化への大きな貢献となります。

関連記事はこちら:カーボンニュートラルは再生可能エネルギーで対応可能?課題から最新技術も解説

まとめ

脱炭素と省エネの違いと、具体的な省エネ方法について解説しました。「脱炭素」は二酸化炭素の排出を抑えることを目指します。これは再生可能エネルギーの使用やエネルギー利用の効率向上などを通じて達成されます。一方で、「省エネ」はエネルギーの使用量そのものを削減することを目指します。これもまた、再生可能エネルギーの使用やエネルギー利用の効率化などを通じて達成できます。

脱炭素と省エネは非常に似ていますが、その違いは、「省エネは、脱炭素における取り組みの1つ」であるということです。つまり、省エネは脱炭素の一部分であり、二酸化炭素の排出を減らす方法の1つになるということです。

そして、事業者ができる省エネの方法として、

  • 高効率な空調設備への切り替え
  • LED照明への切り替え
  • EMS(エネルギーマネジメントシステム)の活用
  • 製造・生産工程などの見直し
  • 再生可能エネルギーの導入

の5つを紹介しました。

これらの設備やシステムの導入は、初期費用がかかります。しかし、長期的に見るとエネルギー使用量の削減や化石燃料コストの抑制など、経済的なメリットがあります。現在、化石燃料が枯渇していることを踏まえると、その価格は今後さらに高くなっていくでしょう。コスト削減のためにも、今すぐ省エネや脱炭素化の取り組みを始めることをお勧めします。

脱炭素化へのスタートとして、あなたの企業が排出している二酸化炭素の量を把握することが非常に大切となります。下記ッリンクから、無料で二酸化炭素排出量を調べることができますので、今すぐ確認しましょう。

参照:タンソチェック【公式】-CO2排出量算定削減サービス

著者のプロフィール

川田 幸寛
小学校教員として、カーボンニュートラルや脱炭素に関する授業を行った経験がある。子どもたちが理解できるように、専門用語を分かりやすく、かみ砕いて説明することを心がけた。この経験を活かし、脱炭素化の重要性を広く伝えるために、誰にとっても理解しやすい記事を作成している。