目先だけをみた成り行きや積み上げの省エネでは、脱炭素化までの道のりにおいて必ず限界が来ます。
CO2排出0というゴールを見据えた、長期的な見通しを立てることが、脱炭素経営においてはとても重要です。

本記事では、エネルギー節約・削減の長期的な見通しをシミュレーションする必要性と、その方法について、分かりやすく解説していきます。

省エネで2030年「46%」削減ができるか?

企業が省エネに取り組む際に、必ずしなければいけないことが、最終目標から逆算した、長期的な削減の見通しを立てることです。
ここで重要なのは、目標から逆算してシミュレーションする点です。

日本政府は、2030年度において、温室効果ガス46%削減(2013年度比)、さらに2050年には100%削減し、CO2排出を実質0にする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しています。
そのため、企業における脱炭素経営の目標も、同じ水準を目指すことになるでしょう。

それでは、省エネだけで2030年にCO2排出量を46%削減できるのでしょうか。
その可否を判断するためには、省エネに取り組んだ場合の、2030年までのエネルギー使用量をシミュレーションする必要があります。

そのうえで、目標に間に合わないのであれば、製造プロセスの変更や設備の導入など、より思い切った省エネをする必要も出てきます。

このような対策は、導入に費用や時間もかかるため、目標年度である2030年目前になって慌てて取り組もうとしても、上手くいかない可能性が高いです。
そうならないためにも、省エネに取り組む時から、長期的な見通しを立てておくことが重要になるのです。

省エネでは100%削減は達成できない

エネルギー使用量のシミュレーションを行い、長期的な見通しを立てる中で、必ずぶつかる課題があります。

それは、2050年にCO2排出量を0にするという100%削減目標を、省エネだけでは達成できないという課題です。
これは、企業が事業活動をしている以上、エネルギー消費を0にするということは不可能だからです。

つまり、化石燃料由来のエネルギーを使用している限りは、省エネだけでCO2排出量100%削減は出来ないのです。
化石燃料由来のエネルギー利用が主流の日本においては、どこの企業であってもこの課題は抱えているはずなのです。

そのため、2050年の時点でこの目標を達成するには、再生可能エネルギーの導入が不可欠という事になります。
2050年までに、省エネと、化石燃料の再生可能エネルギーへの置き換えを並行して進める事で、CO2排出量100%削減を達成する、長期的なシミュレーションを描く必要があるのです。

事業のサステナビリティは守られているか?

ここで忘れてはいけない事が、脱炭素経営の本質的な目標は、単なるCO2削減ではなく、事業活動のサステナビリティ(持続可能性)の追及だということです。

事業活動を永続的に維持していくために、CO2排出量を削減するのであって、CO2の削減ができても、事業が他の原因によって維持できなくなっては意味がありません。

そのため、長期的なエネルギー使用量の見通しを立てる際に、併せて行いたいのが、消費している原材料についてのシミュレーションです。

特に、化石燃料の枯渇とともに生産量に大きな影響を受けるプラスチック類、同じく燃料枯渇による輸送機能の低下によるリスクがある海外から輸入されている原料、また特定の国や地域に供給エリアが偏っている原料など、事業活動のサステナビリティを脅かす可能性のある原材料のシミュレーションは重要です。

それらの原料の将来的な入手困難性を客観的に評価し、その結果を踏まえて、リスクの高い原材料は、順次切り替えていくことも重要な活動になってきます。

このように、2050年においても事業活動を継続し続けるためには、エネルギー使用量だけでなく、原材料の使用量を長期的な視点でシミュレーションしていくことが大切になります。

まとめ

ここまで、エネルギー節約・削減の長期的な見通しをシミュレーションする必要性と、その方法について紹介してきました。脱炭素経営は、企業が持続的に事業活動を維持するために取り組むものです。

そのため、目標を将来に置く必要があり、そこから逆算して取り組みの計画を立てることが、脱炭素経営を成功させる上で大切なことになってきます。

著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。