脱炭素経営を目指すという事は、2050年の社会や経済を見通すことでもあります。

気象災害や海面上昇などの地球環境の変化や、再生可能エネルギー資源の地理的分布などが、事業活動の地理的優位性のルールを一変させる可能性があります。

本記事では、脱炭素経営を目指す上での、立地の見直しの重要性と、考慮すべきポイントを、わかりやすく解説していきます。

立地を考え直す理由について

脱炭素経営に取り組むという事は、2050年の事業活動を考えることとイコールです。

30年後に、自社が事業活動を継続できているという、サステナビリティの視点で考えた際、事業の活動拠点の立地について、改めて考えなおすことは、非常に重要になります

なぜなら、2050年の事業を取り巻く環境は、現在と一変している可能性が極めて高いからです。気象災害や海面上昇により、地理的リスクの種類や分布は大きく変わり、これまで安全とされていた地域も、災害リスクが高い地域になっている可能性があります。

また、再生可能エネルギー資源は、生産に地理的な影響を強く受けるため、その分布は特定の地域に偏在する可能性もあります。

このように、自社の災害リスクや再生可能エネルギーの供給リスクについて、改めて客観的に見直し、今後の設備投資や更新、拠点の新設や移転などのプロジェクトは、災害回避やエネルギー資源の確保などを見越した、長期的な立地計画を立てる必要があるのです。

再エネ・災害回避の視点で立地を見直していく

それでは、具体的にはどのような視点で、立地計画を考えれば良いのでしょうか。大きな視点としては「再生可能エネルギーの確保」と「災害回避」の2点について、その優位性をとれる立地はどこか、という視点で考えていくことが重要です。

再生可能エネルギーの確保

現在、国内のエネルギーの多くは火力発電でまかなわれており、全国に点在する火力発電所により、地理的な優位性はあまりないといえます。

しかし、再生可能エネルギーが主力なエネルギーに置き換わった世界では、地理的な優位性がはっきりと現れる可能性があります。

まず太陽光発電を主力エネルギーにする場合は、日照時間の長い地域と短い地域では、確保できるエネルギー量に大きな差がでます。この差は、そのまま事業活動の差に繋がってしまいます。

自社工場に太陽光パネルを設置し自家発電をする場合、工場の立地によって生産性に大きな差がでる可能性が高いのです。

また、他の再生可能エネルギーであっても同様で、風力発電や地熱発電など、将来の主力エネルギー源として期待される再生可能エネルギーも、地理的な制約を大きく受けます。

このような、再生可能エネルギーの分布を考慮した立地計画が重要になってきます。

自然災害の回避

昨今、世界各地でCO2削減の取り組みが行われている中にあっても、気温上昇や海水面の上昇は進行しており、国内においても豪雨や洪水災害が頻発している状況にあります。

今後もこれら気象災害の増加は不可避な状態であり、特に河川の氾濫や土砂崩れ、高潮の被害などはこれまで以上にリスクが高まっていくと考えられます。

これまで国内における、災害リスクの評価においては、地震や火山の噴火など、日本特有とも言えるリスクが中心でした。

それよりも高確率かつ高頻度で発生する可能性のある、異常気象による自然災害は、いまや最も無視できない立地リスクとなっています。

国土交通省がだしているハザードマップなどを活用し、災害リスクを考慮した立地計画を策定するようにしましょう。

南海トラフ地震について

国内における自然災害の回避という視点で、立地リスクを検討した場合、必ず考慮するリスクが「南海トラフ地震」です。

南海トラフ地震は、日本の太平洋側にある海洋プレートの境界線付近を震源域として、2050年までに高い確率で発生すると考えられている巨大地震です。西日本の太平洋側を中心に、地震や津波による甚大な人的・物的被害が発生すると予想されています。

立地リスクを考えた場合、関東から九州にかけての太平洋側は、特に津波のリスクが大きいと考えられ、沿岸部の工場地帯などは、立地リスクが高いエリアとして慎重な立地計画が求められます。

まとめ

ここまで脱炭素経営を目指す上での、立地の見直しの重要性と考慮すべきポイントについてご紹介してきました。

事業拠点の立地は、様々な視点からの経営判断が求められる事項ですが、2050年に向けた持続可能な事業活動を考えた場合、再エネ確保や災害回避の視点を軽視することは、非常に高いリスクを伴うことを理解しておく事が大切です。

著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。