脱炭素経営の取り組みの中で、省エネと並んですぐに着手できる活動に、グリーン電力の活用があります。
グリーン電力の活用は、すぐに効果がでやすく、脱炭素経営の初期の取り組みとしてメリットが大きいです。
ですが、長期的に見た際にデメリットも存在します。

本記事では、グリーン電力の基本的な知識からその利用メリットまで、分かりやすく解説していきます。

グリーン電力とは?

グリーン電力とは、太陽光や風力、バイオマス(生物資源)などの、再生可能エネルギーにより発電された電力のことを指します。

石油や石炭などの化石燃料を用いる火力発電は、発電時にCO2を排出しますが、太陽光などの再生可能エネルギーを用いるグリーン電力は、発電時のCO2排出がほとんどありません。

そのため、自社の購入している電力を火力発電由来のものから、グリーン電力に切り替えることで、現状の設備や生産プロセスを変えずに、すぐにCO2排出削減を行うことが可能になります

全ての電力を切り替えるのではなく、一部の電力を切り替えるだけでも大きな成果を出すことが可能です。
例えば、以下のような企業で導入実績があり、実際に大きな効果をあげています。

清水建設株式会社
建設大手の清水建設は、全国の12工事現場でグリーン電力を導入し、2020年度のグリーン電力使用量が3.1GWh、これによるCO2削減効果は約1,500tとなったと発表しています。

これは、スギ林の年間CO2吸収量に換算すると約170ha分、一般家庭の年間CO2排出量に換算すると約550世帯分に相当する数字です。

参照:https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2021/2021007.html

アサヒビール株式会社
ビールメーカー大手のアサヒビールでは、主力製品である「アサヒスーパードライ」の全工場での製造に、グリーン電力を使う取り組みを行っています。

アサヒビールはこの取り組みを2009年から開始し、2020年までに約102,000tのCO2削減を実現しています。

参照:https://www.asahibeer.co.jp/news/2020/0306_1.html

グリーン電力証書の仕組み

このグリーン電力を活用すると、グリーン電力証書という制度を利用することが可能になる点も、企業にとって大きな魅力になります。

グリーン電力証書とは、グリーン電力が持つ「環境付加価値」を証書化し、取引可能な形にしたものです。
グリーン電力のような、再生可能エネルギーにより発電された電気は、電気そのものの価値に加え、化石燃料削減やCO2排出削減等の「環境付加価値」も同時に持っているといえます。

これを電気そのものと切り離し、証書化して取引可能な形にしたのが「グリーン電力証書」というわけです。

グリーン電力証書を購入する事業者は、発電設備を持たなくても、証書に記載された電力量(kWh)相当分のグリーン電力を利用したことになり、その分に相当するCO2排出量を削減したことを公的に証明できます。

グリーン電力証書を購入する費用は、グリーン電力の発電業者に還元され、発電事業者のさらなる設備の運営・増強等に繋がります。
このようにして、グリーン電力証書の取引が活発化すれば、それだけ国内の脱炭素化が促進される仕組みになっています。

グリーン電力を利用するメリット

それでは、改めてグリーン電力を利用するメリットを考えていきましょう。
グリーン電力の利用によるメリットは主に以下の3つが考えられます。

メリット①CO2排出量削減

グリーン電力を利用する直接的なメリットとして、すぐにCO2排出量の削減が可能な点があげられます。
国内の企業で、事業活動に使用している全てのエネルギーを、再生可能エネルギーのみで賄っている企業は、現時点で0に等しいと考えられますので、全ての企業に該当するメリットと言えます。

一部の化石燃料由来の購入電力を、グリーン電力に切り替えるだけで、置き換えた分のCO2排出が即座に可能になります。

メリット②設備投資や生産プロセスを変更

さらに、グリーン電力の大きなメリットは、設備投資や生産プロセスの変更などが不要な点です。

この点においては、グリーン電力の利用は、省エネ並みにすぐに着手することが可能で、かつ利用量によっては、省エネよりも大幅にCO2排出量の削減を行うことが可能になります。

メリット③国内の脱炭素経営を促進できる

またグリーン電力の利用による、間接的なメリットとして、国内のグリーン電力の開発促進ひいては、国内の脱炭素化の促進に寄与できる点があります。

グリーン電力を利用する事業者は、利用を公的に証明する「グリーン電力証書」を購入することができます。

証書の購入に支払われた資金は、グリーン電力の発電事業者に還元されますので、さらにグリーン電力の開発が進むことになり、それが世の中の脱炭素化に貢献することに繋がるのです。

グリーン電力の課題

良いことが多いグリーン電力ですが、やはりデメリットや課題もあります。
デメリットとしては、将来的な供給リスクがあげられます

国内の再生可能エネルギーの供給量は、現在の国内のエネルギー消費量の3分の1程度と算出されています。
グリーン電力は、再生可能エネルギーの需要が増えるにつれて、価格の高騰や供給制限などが起きる可能性が考えられます。

また、グリーン電力の購入は純粋なコストであり、自社の脱炭素経営への投資にはなりません。

そういった点でも、グリーン電力の利用に過度に依存するのはリスクともいえます。
そのため、並行して再生可能エネルギーの自家発電の導入などを計画に進めていき、エネルギー自給率を高める取り組みも重要になります。

グリーン電力を利用するメリット・デメリット

メリット・すぐにCO2排出削減効果が期待できる・設備投資や生産プロセスの変更が不要・国内のグリーン電力の開発促進に寄与できる
デメリット・将来的な取り合いのリスクがある・価格高騰や供給制限のリスクがある・自社の脱炭素経営への投資にはならない

まとめ

ここまで、グリーン電力の基本的な知識や、利用するメリットについてご紹介してきました。

特に脱炭素経営の初期フェーズにおいて、グリーン電力の利用はメリットが多く、ぜひ検討したい取り組みになります。
メリットとデメリットをよく理解したうえで、有効利用できるよう、計画的に利用を進めていきましょう。

著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。