近年、環境問題が世界的な課題となり、企業や個人が再生可能エネルギーの導入を検討する機会が増えてきました。再生可能エネルギーは地球に与える負荷を軽減し、持続可能な社会の構築に寄与する重要な要素となっています。本記事では、再生可能エネルギーの種類、再生可能エネルギーを導入することのメリット・デメリット、再生可能エネルギー導入に関する目標についてそれぞれ解説します。

再生可能エネルギーとは

再生可能エネルギーとは、自然の循環によって再生されるエネルギー源のことを指します。これには、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどが含まれます。これらのエネルギー源は化石燃料とは異なり、無尽蔵に利用できるため、地球上のエネルギーニーズを満たすだけでなく、二酸化炭素やその他の温室効果ガスの排出量を大幅に削減することが可能です。

再生可能エネルギーの導入は、エネルギー産業に革命をもたらしています。近年の技術革新により、再生可能エネルギーのコストは低下しており、導入がますます現実的な選択肢となっています。再生可能エネルギーはエネルギーの分散供給にも適しており、地域コミュニティが自給自足的なエネルギー網を築くことができるため、エネルギーの安定供給を確保する上でも有効です。

さらに、再生可能エネルギーの導入は、地域経済の活性化や新たな雇用の創出にも寄与します。再生可能エネルギー産業は、技術的な進歩と共に急速に成長しており、多くの企業がその分野に参入しています。これにより、新しい職種や技術者の需要が高まり、地域経済にプラスの影響をもたらしています。再生可能エネルギーの導入は、単なる環境への配慮だけでなく、ビジネスにおける持続可能性や競争力を高めるための重要な要素となっています。エネルギー効率の向上やCO2排出の削減は、企業のCSR戦略やブランドイメージ向上にも寄与し、顧客やステークホルダーとの信頼関係を築く上でプラスに作用します。

再生可能エネルギーの種類

再生可能エネルギーには、地球の自然循環によって生み出されるさまざまなエネルギー源があります。ここでは、風力発電、太陽光発電、地熱発電、水力発電、バイオマス発電について詳しく解説します。

風力発電

風力発電は、風力タービンによって風の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する技術です。地上や海上に風力発電所を設置し、風がタービンの羽を回転させることで発電が行われます。風力発電は再生可能なエネルギー源であり、発電時にCO2やその他の有害物質を排出しないため、環境に優しいエネルギーとして高い評価を受けています。また、風力の豊富な地域では、持続的かつ安定した電力供給が可能です。

太陽光発電

太陽光発電は、太陽光を直接太陽電池によって電気に変換する技術です。太陽光発電は日光を利用するため、太陽の光が届く限りエネルギー供給が続きます。屋根や土地に太陽光パネルを設置し、太陽の光を利用した発電が行われます。太陽光発電は、導入コストが低下し、効率が向上しているため、多くの地域で普及しています。再生可能エネルギーの中でも特に普及が進み、個人や企業が自家消費や電力供給への貢献を行っています。

地熱発電

地熱発電は、地球の内部に蓄えられた熱エネルギーを利用して発電を行う技術です。地下に設置された地熱発電所では、地熱蒸気や地熱水を利用してタービンを回転させ、電力を生み出します。地熱発電は風力や太陽光とは異なり、天候の影響を受けず、安定して電力供給が可能です。地熱発電は地熱資源が豊富な地域で特に効果的であり、地球温暖化対策にも一定の貢献を果たしています。

水力発電

水力発電は、水の流れや高低差を利用して発電を行う技術です。ダムや水車などの施設を使用し、水の力をタービンに伝えて発電を行います。水力発電は長年にわたり使用されており、再生可能エネルギーの中では最も成熟している技術の一つです。地域の水資源によって供給が制約されることもありますが、再生可能エネルギーの中で最も多くの電力を生み出しています。

バイオマス発電

バイオマス発電は、有機性物質を燃料として使用し、発電を行う技術です。農業や林業の副産物、家庭や産業からの廃棄物、エネルギーキャンプなどがバイオマスの例です。これらのバイオマス資源を発酵、発熱、ガス化などの過程を経て燃料に変換し、発電に利用します。バイオマス発電は再生可能エネルギーの中でも多様な燃料を使用できるため、地域の資源を活用しやすい利点があります。

再生可能エネルギーを用いるメリット

再生可能エネルギーの導入は、様々な分野で多くのメリットをもたらします。環境保護への貢献、コスト削減、そしてエネルギーの独立性について、それぞれ詳しく解説します。

環境保護への貢献

再生可能エネルギーの最大のメリットの一つは、地球環境への積極的な貢献です。再生可能エネルギーは、化石燃料を使用しないため、二酸化炭素(CO2)やその他の温室効果ガスの排出を大幅に削減します。これにより、地球温暖化や気候変動の抑制に寄与し、持続可能な環境を守ることができます。また、再生可能エネルギーの導入によって、大気汚染や水質汚染といった環境問題も軽減されます。さらに、風力や太陽光などの再生可能エネルギーは、自然環境への生態系への影響が少なく、生態系の保護にも寄与します。

コスト削減

再生可能エネルギーの導入によって、企業や個人は長期的なコスト削減が実現できます。例えば、太陽光発電や風力発電は、エネルギー源が自然の恩恵に頼るため、燃料コストがかかりません。一度設置すれば、太陽光パネルや風力タービンの運転にはほとんど維持費がかかりません。これにより、エネルギーの自己生産やネットメータリング制度を活用することで、電気代を大幅に削減することができます。

また、再生可能エネルギーは政府や自治体からの補助金や税制優遇措置を受けることがあるため、導入コストの軽減にも役立ちます。さらに、再生可能エネルギーの導入は企業のCSR(企業の社会的責任)活動として評価されることがあり、ブランド価値や企業イメージの向上にも寄与します。

エネルギーの独立性

再生可能エネルギーの導入は、エネルギーの独立性を高める重要な手段となります。従来の化石燃料に頼ったエネルギー供給は、資源の枯渇や地政学的なリスクによって影響を受けることがあります。しかし、再生可能エネルギーは地球の自然循環によって供給されるため、再生可能なエネルギー源が存在する限り、エネルギーの持続的な供給が可能です。

特に風力発電や太陽光発電は、地域のエネルギー自給自足に貢献するため、エネルギー供給の安定性を高めることができます。また、再生可能エネルギーの導入によって、エネルギーの分散供給が可能となり、災害時やエネルギー供給における脆弱性を軽減することも期待されます。

再生可能エネルギーを用いるデメリット

再生可能エネルギーの導入には、いくつかのデメリットも存在します。以下では、初期費用と時間、エネルギー供給の変動性、そして用地と景観への影響について詳しく解説します。

初期費用と時間

再生可能エネルギーの設備導入には、初期費用がかかることがあります。特に、太陽光発電や風力発電などの設備は高額な投資が必要となります。また、再生可能エネルギー技術の導入には計画立案や設計、施工などに時間がかかる場合があります。これらの初期費用と時間は、導入を検討する際に企業や個人にとってハードルとなることがあります。ただし、技術の進化と普及により、導入コストが低減してきており、今後の発展が期待されています。

エネルギー供給の変動性

再生可能エネルギーの導入には、エネルギー供給の変動性が付きものです。太陽光発電は天候によって発電量が影響を受け、風力発電は風の強弱によって発電量が変動します。これにより、エネルギー供給が一定しない場合があり、需要とのバランスを取りにくくなることがあります。エネルギーの変動性を解決するためには、エネルギーストレージ技術の導入やエネルギー予測技術の改善が必要となります。しかし、変動性の問題にも対策が進んでおり、スマートグリッドなどの技術を活用することで、再生可能エネルギーの安定供給が向上しています。

用地と景観への影響

再生可能エネルギー施設の設置には、一定の用地が必要となるため、土地利用に影響を及ぼすことがあります。特に、風力発電や太陽光発電では広い面積が必要となるため、農地や自然保護区などの地域に影響を与える場合があります。また、風力発電や太陽光発電所は、周囲の景観にも影響を及ぼすことがあります。これにより、地域住民や関係者からの反発を受けることがあるため、事前の調査やコミュニケーションが重要です。一方で、適切な立地選定やデザインの工夫によって、景観への影響を最小限に抑える取り組みも進められています。

再生可能エネルギー導入に関する目標

日本政府は再生可能エネルギーの導入についていくつかの目標を公表しています。ここでは、2023年度の目標、2030年までの目標、2050年までの目標の3つに分けて解説します。

2023年度の目標

2023年、日本政府は再生可能エネルギーの導入に対して積極的な目標を掲げました。2月24日の閣議で、政府は各省庁が調達する電力について、2023年度に少なくとも35%を再生可能エネルギーでまかなうことを決定しました。政府機関が電気事業者と契約する際には、再生エネの最低割合を書面に盛り込み、再生エネの積極的な活用を促す方針です。この目標設定により、政府は脱炭素の取り組みを先導し、再生可能エネルギーの導入を強化しています。

2030年までの目標

2021年10月22日に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では、日本政府は2030年までにCO2排出を2013年度比で46%削減する目標を打ち出しました。更なる挑戦として、2030年までにさらに50%のCO2削減を目指すとの方針も示されています。この計画では、菅義偉前首相が行った「2050年カーボンニュートラル宣言」を再確認し、持続可能な未来を実現するための具体的なステップが打ち出されています。

2050年までの目標

2020年10月26日、菅総理は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。これにより、政府は「グリーン成長戦略」として、経済産業省を中心に取り組んでいます。この戦略では、環境関連技術のイノベーション投資や産業競争力の強化、新産業への転換などが重要なポイントとされています。

エネルギー関連では、洋上風力発電や燃料アンモニア、水素産業、原子力産業の4分野、輸送・製造関連では自動車や蓄電池、半導体、船舶、物流、食料生産、航空機、カーボンリサイクルの7分野、そして家庭・オフィス関連では住宅、資源循環、ライフスタイルの3分野が重要視されています。特に、日本のエネルギー自給率の低さを考慮し、再生可能エネルギーの生産・利用に積極的に取り組む必要があります。

再生可能エネルギーや原子力技術の更なる開発が求められ、環境対策技術は今や「コスト」ではなく、世界レベルの競争における「武器」として考えられています。政府の取り組みと産業界の協力により、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた大きな一歩が進んでいます。

まとめ

本記事では、再生可能エネルギーの種類、再生可能エネルギーを導入することのメリット・デメリット、再生可能エネルギー導入に関する目標についてそれぞれ解説しました。2023年では政府が再生エネの最低割合を35%とし、再生可能エネルギーの導入を積極的に進める姿勢を示しています。2030年ではCO2排出削減に46%の目標を掲げ、さらなる挑戦として50%削減を目指しています。そして、2050年にはカーボンニュートラル実現を目指し、政府は「グリーン成長戦略」を推進しています。

洋上風力発電や水素産業など、エネルギー関連分野において技術のイノベーション投資が重要視されています。再生可能エネルギー導入には初期費用やエネルギー供給の変動性などのデメリットもありますが、環境保護への貢献やコスト削減、エネルギーの独立性などのメリットがあることが示されています。政府と産業界の協力により、再生可能エネルギーの普及が進むことで、持続可能な未来を実現するための大きな一歩となるでしょう。

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著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。