現代のビジネス環境では、持続可能なエネルギーの利用がますます重要視されています。環境への影響を最小限に抑える再生可能エネルギーの導入は、企業のCSR(Corporate Social Responsibility)活動やエネルギーコストの削減に向けた取り組みで注目されています。風力発電はその中でも特に効果的な再生可能エネルギーの1つとして、世界各地で導入が進んでいます。本記事では、風力発電の基本的な仕組みとそのメリット・デメリットについて解説します。

再生可能エネルギーとは

再生可能エネルギーとは、自然の自然循環によって再び生み出されるエネルギー源のことを指します。これは地球上の自然資源に依存し、持続的に利用が可能なエネルギーであり、化石燃料のように枯渇する心配がありません。再生可能エネルギーは二酸化炭素の排出量を大幅に削減し、地球温暖化や気候変動の抑制にも寄与します。

代表的な再生可能エネルギー源には、太陽光発電、水力発電、地熱エネルギー、生物質エネルギー、そして風力発電があります。これらのエネルギー源は、自然の循環プロセスや自然現象に基づいてエネルギーを生成し、持続可能な社会の実現に向けて重要な役割を果たしています。

風力発電とは

風力発電は再生可能エネルギーの中でも特に注目される発電方法であり、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を抑えることに加え、化石燃料など特別な資源を必要としないため、国内で生産が可能な重要な低炭素国産エネルギー源です。

この風力発電は、2000年以降に導入量が増加し、その成果は顕著です。2016年までに設備容量・設置基数は大幅に増え、設置基数は2,000基を超えています。また、設備要領も335.7万kW(キロワット)を記録するなど、今後もさらなる成長が期待される発電方法となっています。

風力発電の仕組み

風力発電は、風の運動エネルギーを風力タービンによって回転エネルギーに変換し、その回転を直接または増速機を介して発電機に伝送して電気エネルギーに変換する仕組みです。

風力発電の原理は古くから知られていましたが、技術の進歩により発電機や増速機といった機器が導入されることで、効率的な電気エネルギーへの変換が可能になりました。

これにより、風の運動エネルギーからより多くの電力を得ることができるようになりました。現代の風力発電では、風車の形式や風速に適した回転速度など、さまざまな条件が考慮され、効率的な発電方法が実現されています。

風力発電の仕組みを理解する際には、原理だけでなく風力発電の形式やシステムも重要です。風力発電では、風を受ける方法と場所が発電効率に大きく影響します。風は運動エネルギーを風車の受ける面積に比例し、風速の3乗に比例して増大します。つまり、風速が2倍になると風力エネルギーはその3乗の8倍、風速が3倍になると風力エネルギーはその3乗の27倍になるという性質があります。このため、風力発電設備は風の強い場所に設置し、大きな翼で効率よく風を受けることが必要です。

風力発電の形式

風力発電の形式としては、主に2つのタイプがあります。ひとつは従来の風車である「水平軸型」で、回転軸が地面に対して水平にあり、プロペラのような翼を持っています。もうひとつは「垂直軸型」で、回転軸が地面に対して垂直にあり、長方形などの翼が風を受けて回転します。これらの形式にはそれぞれ特長があり、効率的に風を利用するためのシステムが開発されています。

風力発電所は通常、風の条件が良好な場所に設置されます。海岸線や丘陵地帯、広大な平野など風の強い地域が選ばれることが一般的です。また、風力発電所は一つだけでなく、複数の風力タービンを設置して風の特性を補完することで、より安定した電力供給を実現しています。風力発電の技術は進化を続けており、より効率的な発電方法や新たな風力タービンの開発が進められています。これにより、再生可能エネルギーの一翼を担う風力発電が、持続可能なエネルギー社会の実現に貢献していくことが期待されています。

風力発電のメリット

風力発電は、再生可能エネルギーの一つとして、多くのメリットを持ちます。これらのメリットは、環境に配慮したエネルギー源としての利点だけでなく、経済的な側面でも大きな利益をもたらします。以下では、風力発電の主なメリットについて、「高い変換効率」「一日中稼働できる」「陸上・洋上に設置が可能」「環境負荷が小さい」の4つに分けて詳しく解説します。

高い変換効率

風力発電は、風の運動エネルギーを風力タービンによって効率よく回転エネルギーに変換します。現代の風力タービンは、先端技術の導入により高い変換効率を達成しています。風のエネルギーを効率的に電気エネルギーに変換することで、多くの発電量を得ることができます。特に風の速度が一定の範囲内であれば、変換効率は安定して高く保たれます。

一日中稼働できる

風は一日中不規則に吹きますが、地球上のどこかでは常に風が吹いています。これにより、風力発電所は一日中稼働することが可能です。他の再生可能エネルギー源である太陽光発電が夜間に発電量が低下するのに対し、風力発電は風が吹いている限り電力を生み出すことができます。この連続した発電性は、電力の安定供給に大きく寄与します。

陸上・洋上に設置が可能

風力発電所は陸上と洋上の両方に設置が可能です。陸上に設置される風力発電所は一般的であり、特に丘陵地帯や広大な平野など風の強い地域に適しています。一方、洋上風力発電は海上の風を利用するため、風の強さがより一定しており、より高い発電効率が期待できます。洋上設置の場合、景観への影響が少なく、発電所の面積を占有しないため、土地利用面での制約も少なくなります。

環境負荷が小さい

風力発電は再生可能エネルギー源であり、燃料の消費や化石燃料の燃焼による二酸化炭素などの温室効果ガスの排出がないため、環境負荷が非常に小さいです。これにより、地球温暖化や大気汚染の抑制に寄与します。また、発電所の運転中に発生する騒音や振動などの影響も比較的少なく、周辺環境への影響を最小限に抑えることができます。

風力発電のデメリット

風力発電は多くのメリットを持つ再生可能エネルギーですが、一方でいくつかのデメリットも存在します。これらのデメリットは、風力発電の普及や運用において考慮すべき課題となっています。以下では、「高い初期費用」「メンテナンスにかかるコスト」「発電量が不安定」「ブレードによる騒音」の4つに分けて、風力発電のデメリットを詳しく解説します。

高い初期費用

風力発電所を設置するには、膨大な初期費用がかかります。風力タービンや発電機、ファウンデーション(基礎)の建設など、大規模な設備を整備する必要があります。また、適切な風の条件を持つ場所を選定し、土地の取得や開発にも多額の費用が必要です。これらの初期投資は膨大な規模になることがあるため、導入コストの面で課題となっています。

メンテナンスにかかるコスト

風力発電所は、機械や機器の設置が必要なため、定期的なメンテナンスが欠かせません。風力タービンの羽根や回転軸、発電機、制御システムなどの点検や修理が必要であり、これにはコストがかかります。特に洋上風力発電の場合、設備の保守点検が困難であることから、コストが高騰する可能性があります。メンテナンスにおける適切な管理が求められます。

発電量が不安定

風力発電の最大の課題の一つは、風の吹き具合によって発電量が大きく変動することです。風が強い時には多くの電力が得られる一方で、風が弱い時には発電量が低下します。また、風速の変化により発電量が不規則になるため、電力の供給が安定しないという問題もあります。このような発電量の不安定性は、電力グリッドに対する影響を及ぼす可能性があるため、エネルギー貯蔵技術の導入や他の再生可能エネルギーとの統合が求められます。

ブレードによる騒音

風力タービンの回転時に、風を受けるブレードと塔の構造が風によって振動し、騒音を発生する場合があります。特に風速が強いときや風の向きが特定の角度だったときに、ブレードが空気を切り裂く音が周辺に響くことがあります。この騒音は、風力発電所の周辺住民への影響や景観への影響が懸念されています。近年では騒音対策技術の進化により、騒音の軽減が進められていますが、未だ解決が待たれる課題と言えます。

陸上風力発電と洋上風力発電の違い

風力発電は、陸上だけでなく洋上でも行われています。それぞれの発電方法には特徴や利点があり、適切な設置場所に応じて利用されています。ここでは、陸上風力発電と洋上風力発電の主な違いについて、仕組みや設置場所、利点などを詳しく解説します。

陸上風力発電

陸上風力発電は、一般的に「陸上ウィンドファーム」と呼ばれ、山岳地や丘陵地帯などの風の強い場所に風力タービンが設置されます。陸上風力発電所は、複数の風力タービンが一帯に設置されており、風を受けて発電しています。代表的な陸上風力発電所には、新出雲風力発電所や新青山高原風力発電所などがあります。

陸上風力発電の仕組みは、風力タービンで発電された電気が直流で生成されます。この直流電気は地中の送電線や通信ケーブルを通って運転監視施設と陸上変電所に送られ、交流に変換されます。そして、変換された電気は電力系統を介して一般家庭や企業に供給されます。陸上風力発電所は、地上に設置されるため、設備の建設やメンテナンスが比較的容易であり、初期費用を抑えることができる利点があります。

洋上風力発電

一方、洋上風力発電は、海上に風力タービンを設置して発電する方法です。洋上風力発電所は沿岸近くに設置されることが一般的で、強い海風を受けて効率的に発電を行います。洋上風力発電の設置場所は、陸上風力発電よりも風が安定しているため、より高い発電効率が期待されます。

洋上風力発電の仕組みは、海底に海底送電線や通信ケーブルを敷設し、洋上の風力タービンが発電した直流電気を陸上変電所に送る方法が一般的です。洋上変電所を通過した後、交流に変換された電気は港湾施設にある運転監視施設と陸上変電所を経由して一般家庭や企業に供給されます。洋上風力発電所は、海上に設置されるため、陸上風力発電と比べて建設やメンテナンスに高いコストがかかる一方で、景観への影響が少なく、風の安定性が高い利点があります。

陸上風力発電と洋上風力発電は、設置場所や発電効率などにおいて異なる特性を持ちますが、両者とも再生可能エネルギーとして地球環境への負荷を低減するために重要な役割を果たしています。技術の進歩により、より効率的で持続可能な風力発電の実現に向けて、さらなる発展が期待されています。

まとめ

本記事では、風力発電の基本的な仕組みとそのメリット・デメリット、陸上風力発電と洋上風力発電の違いについて解説しました。風力発電は、風の運動エネルギーを風力タービンによって回転エネルギーに変換し、それを発電機に伝送して電気エネルギーに変換する仕組みです。この再生可能エネルギーは、二酸化炭素を排出しないことから環境に配慮したエネルギー源として注目されています。また、風力発電は太陽光発電とは異なり、一日中の稼働が可能であり、持続的な電力供給に貢献しています。

風力発電のメリットには、高い変換効率、一日中稼働できる、陸上と洋上に設置が可能、環境負荷が小さいという点が挙げられます。特に、風の強い場所に設置することでより多くの電力を得られる利点があります。さらに、洋上風力発電は海上の風を利用するため、風の安定性が高く、景観への影響が少ない点が魅力です。これらのメリットにより、風力発電はエネルギーの安定供給と地球環境の保護に寄与しています。

一方で、風力発電にはいくつかのデメリットも存在します。高い初期費用やメンテナンスにかかるコストが課題となります。また、風の吹き具合によって発電量が変動するため、発電量の安定性が問題視されます。さらに、風力タービンの回転による騒音が周辺住民への影響や景観への懸念となります。これらの課題に対しては、技術の進化や効率的な運用が求められています。

陸上風力発電と洋上風力発電の違いについては、設置場所や発電効率などに差があります。陸上風力発電は山岳地や丘陵地帯などに設置され、洋上風力発電は海上に風力タービンが設置されます。両者とも再生可能エネルギーの一環として地球環境への負荷を軽減するために重要な役割を果たしています。

結論として、風力発電は再生可能エネルギーの一つとして、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて重要な役割を果たしています。その高い変換効率や一日中の稼働可能性、環境への負荷の小ささなどが魅力ですが、初期費用やメンテナンスコスト、発電量の不安定性、騒音といった課題もあります。技術の進歩と効果的な運用により、風力発電の更なる発展が期待されます。

また、無料のタンソチェックツールでは、自社で発生するCO2排出量を測定することが可能です。簡単なアカウント登録でご利用いただけますので、併せてご活用下さい。

無料で調べてみたい方はこちら

無料アカウントの作成はこちら

著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。