多くの中小企業が脱炭素化への取り組みを模索しています。Shift事業を活用することで、脱炭素化の取り組みに伴う費用負担を軽減が可能です。
ただし、Shift事業の詳細や補助金の条件などがわからず、困っている中小企業者も多いでしょう。
Shift事業では定期的にセミナーを開催しており、制度の概要や補助金の条件、スケジュールなどについて説明しています。すでに多くの中小企業者がこれらのセミナーに参加しており、理解を深めています。
本記事では、Shift事業の特徴やセミナーの開催概要、申し込み方法などについて詳しく解説します。Shift事業のセミナーについて理解することで、脱炭素化へ向けた取り組みがより具体的になるでしょう。
Shift事業での脱炭素化への取り組み
環境省のShift事業は、脱炭素化促進計画の策定や高効率機器への設備更新などに対して補助金を交付します。
以下では、Shift事業の炭素削減の目標やエネルギー効率改善施策、導入企業の事例などについて説明します。
炭素削減の目標設定方法
Shift事業の省CO₂型設備更新支援で補助金を受けるには、定められたCO₂排出量の削減目標を達成する必要があります。具体的な削減目標は以下のとおりです。
事業 | 削減目標・条件 |
標準事業※①②のいずれかの事業 | ①工場・事業場単位:年間のCO₂排出量の削減目標15%以上②主要なシステム系統:年間のCO₂排出量の削減目標30%以上 |
大規模電化・燃料転換事業※①〜③のすべてを満たす事業 | ①電化・燃料転換②CO₂排出量を1年で4,000t-CO₂以上削減③CO₂排出量を30%以上削減 |
中小企業事業※①②のうち低い金額を補助 | ①年間CO₂削減量×法定耐用年数×7,700円②補助対象経費の1/2 |
省CO₂型設備更新支援での補助金を希望する場合は、これらの削減目標をクリアするための対策を立てる必要があります。またCO₂削減計画策定支援については、CO₂排出量が年間50t以上3000t未満の工場などを保有している必要があります。
エネルギー効率改善施策の具体例
エネルギー効率の向上策として、高効率または低炭素化された産業設備機器や業務用設備機器、生産設備の導入が挙げられます。また低炭素燃料供給設備や再生可能エネルギー発電設備、太陽熱供給設備などの導入によりエネルギー効率の向上が期待されます。
エネルギー効率が改善されることで、電力消費量の削減やCO₂排出量の軽減が可能です。さらに、設備の更新により生産性や品質の向上にも寄与する可能性があります。
CO₂排出削減を促進する政策と法人支援制度
Shift事業は、CO₂排出の削減を促進する政策の一環であり、補助金を通じて脱炭素化に取り組む企業を支援します。
令和5年度のShift事業には、CO₂削減計画策定支援と省CO₂型設備更新支援の二つの支援があります。それぞれの補助率と補助金の上限額は以下のとおりです
補助率 | 補助上限額 | |
CO₂削減計画策定支援 | 3/4 | 50万〜100万円 |
省CO₂型設備更新支援 | 標準事業:1/3大規模電化・燃料転換事業:1/3中小企業事業:CO₂削減量に比例 | 標準事業:1億円大規模電化・燃料転換事業:5億円中小企業事業:0.5億円 |
Shift事業を活用することで、脱炭素化にかかる費用負担を軽減できます。
導入企業の事例紹介
Shift事業の主な事例は、以下のとおりです。
業種 | 課題 | 対策と期待する効果 |
医療業 | ・30年以上経過した空調設備は故障率が高い・吸収式冷凍機が蒸気ボイラーでA重油を使用していてCO₂排出量が多い | ・高効率なパッケージエアコンとヒートポンプを導入・2024年までに事業場全体でCO₂排出量を7.6%、主要システム系統で46.5%削減 |
社会保険・社会福祉・介護事業 | ・給湯機や空調などの設備はエネルギー効率が低い。投資金額が大きく自己負担での更新は難しい | ・高効率なマルチエアコンとヒートポンプ給湯機への更新・2023年までに事業場全体でCO₂排出量の29.6%削減 |
宿泊業 | ・A重油焚き温水ボイラーや吸収式冷温水機の更新時期が近づいていて、CO₂排出量とランニングコストが過剰な状態 | ・給湯、加温システムのハイブリッド化などへの更新・2023年までに事業場全体でCO₂排出量を27.2%、主要システム系統で54.1%削減 |
セミナーの開催概要と参加方法
Shift事業セミナーの開催概要と参加方法を事前に理解しておくことが重要です。令和5年度に開催されたShift事業セミナーの概要、参加費用と申し込み方法、そしてオンラインセミナーの参加環境設定について説明します。
令和5年度SHIFT事業セミナーのお知らせ
令和5年度に開催された環境省のShift事業セミナーの概要は、以下のとおりです。
実施日 | セミナー | 概要 |
3月 | グリーンリカバリー事業の実施結果 | ・令和3年度(第1次補正予算)グリーンリカバリー事業(GR事業)の実施結果 |
1月 | SHIFT事業セミナー | ・令和5年度 環境省事業のご紹介・令和4年度 SHIFT事業等の概要・脱炭素化支援事例1 GR事業・脱炭素化支援事例2 SHIFT事業・脱炭素化支援事例3 SHIFT事業・今後のスケジュール |
※2023年12月7日時点
Shift事業セミナーは、Zoomを使用したライブ配信形式で行われています。なお、令和4年以前にも「SHIFT事業セミナー」や「CO₂削減ポテンシャル診断セミナー」などが開催されています。
セミナー参加費用と申し込み方法
環境省主催のShift事業セミナーへの参加費用は無料です。セミナーへの申し込み手続きは以下の3つのステップで行います。※下記は、オンラインセミナーの場合になります。
- 専用フォームからの申し込み
最初に、Shift事業セミナーの専用フォームから申し込みを行います。該当の専用フォームはセミナー案内に記載されています。
- Zoom招待メールの受信
セミナー開催前日までには、Zoomの招待メールが届きますので、名前とメールアドレスを登録します。
- セミナー参加URLからのログイン
登録が完了すると、セミナー参加用のURLが記載されたメールが届きます。セミナー当日に参加用URLからログインし、セミナーを視聴できます。
Zoomの招待メールが届かない場合は、迷惑メールフォルダを確認してみてください。
また、Shiftセミナーが終了した後、1〜2週間ほどで録画配信が開始されます。
録画配信を視聴するには、ステップ1の専用フォームからの申し込みが必要です。セミナーの問い合わせ先は、以下のとおりです。
問い合わせ先 | 一般社団法人 省エネルギーセンター SHIFT事業セミナー事務局 |
メールアドレス | mailto:shiftseminar@eccj.or.jp |
参照:
オンライン開催時の参加環境設定
オンラインのShift事業セミナーは、Zoomを用いて開催されます。Zoomを利用するためには、以下の環境が必要です。
- Zoomアプリのインストール
- IDの取得
- パソコンまたはタブレット(カメラ・マイク付き)
- インターネット接続環境
Zoomアプリのインストールが必要ですが、Google Chromeなどのブラウザからも参加できます。ただし、ブラウザからの参加には主催者側の設定が必要です。
オンラインセミナーへの参加に必要なミーティングIDは、主催者から通知されます。セミナーを視聴する際は、カメラやマイクが搭載されたパソコンやタブレットの使用が推奨されます。マイクがあれば、質問も可能です。
スマホでもZoomを利用できますが、画面の大きさからパソコンまたはタブレットの使用がおすすめです。
エネルギーソリューションジャパンのサービス案内
株式会社エネルギーソリューションジャパンは、主に中小企業を対象として脱炭素化をサポートしている企業です。Shift事業やカーボンニュートラルに関するセミナーも開催しています。
エネルギーソリューションジャパンで特に注目されているのが、脱炭素化診断と脱炭素・省エネ補助金の申請支援のサービスです。
以下では、エネルギーソリューションジャパンのサービス内容や対象、技術・効果などについて説明します。
参照:Press|<2023年>環境省SHIFT事業でカーボンニュートラルを 始めよう!無料オンラインセミナー
脱炭素化のためのエネルギー診断・補助金申請支援サービス
エネルギーソリューションジャパンは、脱炭素化診断や脱炭素・省エネ補助金の申請支援などの事業・サービスを提供しています。これらの事業・サービスの概要は、以下のとおりです。
事業・サービス | 内容 |
脱炭素診断 | エネルギー管理士などの有資格者による簡易的な診断から各種センサーを駆使した専門的な診断まで対応可能です。最短2〜3ヶ月で診断結果が得られ、脱炭素化への自社の取り組み状況や対策が明確になり、ロードマップの策定が可能となります。 |
脱炭素・省エネ補助金申請支援 | 補助金に関する情報提供を行っており、素早く情報を入手することで入念な準備と計画的な申請作業が可能となります。過去の採択状況を考慮して申請内容を検討・見直すことで、補助金の申請が採択されやすくなります。また申請書類の作成代行もしており、申請業務の手間軽減が可能です。 |
参照:
株式会社エネルギーソリューションジャパン|脱炭素・省エネ補助金申請支援
サービス対象となる中小企業と産業
脱炭素診断や脱炭素・省エネ補助金申請支援などのサービスは、以下のような中小企業が対象となります。
- 脱炭素化への具体的な取り組みが定まっていない企業
- 自社に適した脱炭素化のロードマップを策定したい企業
- 現状のCO₂排出状況や問題点を把握できていない企業
- CO₂削減やコスト削減の有効な対策がまとまっていない企業
- 脱炭素化において補助金を利用したい企業
- 脱炭素・省エネ補助金の採択率を向上し、申請プロセスの手間を軽減したい企業
Shift事業は、工場や事業場での脱炭素化のモデルとなる取り組みをサポートする事業です。エネルギーソリューションジャパンのサービスは、特定の産業に限らず、脱炭素化に関心を持つ多岐にわたる中小企業を支援しています。
参照:
株式会社エネルギーソリューションジャパン|脱炭素・省エネ補助金申請支援
省エネルギー・CO₂削減の最新技術・設備紹介
エネルギーソリューションジャパンでは、現地で2週間にわたるデータ計測を実施し、収集されたデータを解析して問題点を明確にします。データに基づく100以上の対策プランから、効果が高いものを選別して提案するため、CO₂やコストの有効な削減が可能です。
また診断の前には、専門の診断員が現地調査を行い、サーモグラフィーや電流データロガーを使用して稼働状況などを確認します。
省エネの徹底や燃料転換、電化、再エネ導入、生産設備の合理化などへの取り組みにより、30〜50%の削減効果が期待されます。さらに、水素や排出権取引などを活用することで、より多くの削減効果が期待できます。
参照:
その他の関連情報・資料
環境省は、Shift事業における脱炭素化の推進や補助金の活用に関する有益な情報を提供しています。以下で紹介するサイトや資料を確認することで、対策や補助金などに関する役立つ情報が得られ、より適切な対応が可能になります。
環境省からのお知らせや推進策の詳細
環境省のShift事業の公式サイトでは、事業の概要や公募情報に加えて、CO₂削減対策に役立つ事例集などが掲載されています。
飲食小売業や老人ホーム、電気機械器具製造工場など、さまざまな分野における具体的な取り組みを把握できます。
また「脱炭素化事業支援情報サイト(エネ特ポータル)」には、脱炭素化をサポートする補助や委託に関する有益な情報が満載です。
これらのサイトには、環境省からのお知らせや推進策、新たな取り組みなどの情報も掲載されます。そのため定期的に確認することをおすすめします。
参照:
Shift事業セミナー過去開催の講演資料
Shift事業セミナーの過去の講演資料は、公式サイトから入手できます。閲覧およびダウンロードが可能なセミナーの資料は、以下のとおりです。
開催時期 | セミナー |
令和5年3月 | グリーンリカバリー事業の実施結果 |
令和4年2月、令和5年1月 | SHIFT事業セミナー |
令和元年12月、令和2年1月 | CO₂削減ポテンシャル診断セミナー |
平成30年12月、平成31年1月 | CO₂ポテンシャル診断セミナー |
平成28年2月 | CO₂削減ポテンシャル診断セミナー2016 |
平成26年3月 | CO₂削減・節電ポテンシャル診断セミナー2014 |
平成25年2月 | CO₂削減・節電ポテンシャル診断セミナー2013 |
平成24年5月 | CO₂削減ポテンシャル診断事業 報告会 |
平成24年3月 | CO₂削減・節電ポテンシャル診断セミナー2012 |
※2023年12月7日時点
参照:
よくある質問
Shift事業セミナーに関して、よくある質問は以下の2点です。
脱炭素化促進計画とは何ですか?
脱炭素化促進計画は、省エネの実施計画書です。Shift事業に応募する際に策定が必要となります。脱炭素化促進計画には、対策スケジュールや排出削減量の算出根拠、収支計画などの情報が掲載されます。
Asset事業とは?
Asset事業とは、先進的な設備導入や運用改善を促進し、CO₂排出量の大幅な削減を目指す事業です。Asset事業は令和2年度に新規募集を終了し、その後継としてShift事業がスタートしました。
参照:
日本能率協会 地球温暖化対策センター|ASSET/SHIFT事業
まとめ
Shift事業を活用することで、脱炭素化の取り組みに伴う費用負担を軽減可能です。脱炭素化の取り組みにより、CO₂排出量を削減し、同時に企業の信頼性向上にも寄与します。Shift事業のセミナーは定期的に開催され、事業の概要や事例、スケジュールなどに関する情報を入手できます。
セミナーのスケジュールはShift事業の公式サイトで随時公表されますので、定期的な確認がおすすめです。
この機会に、脱炭素化への取り組みを一層進めていきましょう。
関連記事:SHIFT事業(工場・事業場における脱炭素化取組推進事業)とは?流れについて解説
Shift事業セミナーに関する重要用語
項目 | 説明 |
Shift事業 | 工場・事業場での脱炭素化のロールモデルとなる取り組みを支援する事業です。要件をクリアする事業者に対し、補助金を交付します。 参照:環境省|SHIFT事業とは |
2030年度温室効果ガス削減目標 | 2030年までに、2013年度比で温室効果ガスを46%削減することを目標としています。この目標は、2021年に閣議決定された地球温暖化対策計画に基づいています。 参照:環境省|地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定) |
カーボンニュートラル | 温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることです。日本は2050年までに、排出量の削減と吸収・除去量を含め、合計してゼロとなる状態を目指しています。 参照:環境省|カーボンニュートラルとは |