地球温暖化などの気候変動について、様々な情報や解釈がありますが、みなさんは実際に地球上で何が起きているかを正しく理解されているでしょうか?
脱炭素経営にブレずに取り組むためには、気候変動について正しく理解する必要があります。
本記事では、地球上で今どのような気候変動が実際に起きているのか?をわかりやすく解説していきます。
気候変動は事実なのか?
気候変動というと、実際にはそんなものは起きておらず「人類の営みとは関係なく進んでいる」「地球の周期的な変化からくるものである」と唱える人もいます。
それでは気候変動は、本当に起きているのでしょうか。
地球温暖化を例に見てみると、地球の気温は約10万年周期で激しく変動しています。
その原因は地球の軌道の変化とされており、CO2が直接的な原因ではないとされています。
地球の長い歴史で見たときに、直近ではおよそ1万年前の急激な気温上昇が氷河期を終わらせ、本来は徐々に寒冷化に向かう局面でした。
その寒冷化の速度は、1000年で約0.1℃です。
ところが、産業革命以降、寒冷化に向かうはずの気温は再び急上昇に転じています。
実際に地球の気温はどれだけあがっているのか
IPCC第6次評価報告書(2021)によると、世界平均気温は産業革命以前と比べて、2011~2020で1.09℃上昇しています。
特に最近30年の各10年間の世界平均気温は、1850年以降のどの10年間よりも高温となっています。
中でも1998年は、世界平均気温が最も高かった年でした。
2013年には、2番目に高かった年を記録しています。
そして、向こう数10年の間にCO2及び、その他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に上昇幅は1.5℃及び2℃を超えるとし、今世紀末に3.3~5.7℃上昇すると予測しています。
上記の報告からも、産業革命により化石燃料の使用が増えております。
その結果、大気中のCO2の濃度が増加したことが原因となり、地球温暖化という人為的な要因による気候変動が起きている可能性が十分に示唆されるのです。
地球温暖化のメカニズム
現在、地球の平均気温は14℃前後といわれています。
もし大気中に水蒸気やCO2、メタン等の温室効果ガスがなければ、マイナス19℃程になると考えられています。
太陽から地球に降り注ぐ太陽光は、地球の大気を通り地面をあたためています。
その地表から放射される熱を温室効果ガスが吸収し、大気をあたためているからです。
産業革命以降、化石燃料の使用が大幅に増えたことで、CO2をはじめとする「メタンやフロン類」などの温室効果ガスが大量に排出され、大気中の温室効果ガス濃度が高まりました。
それに伴い、地表からの熱の吸収も増加したことで、気温が上昇していったというのが地球温暖化のメカニズムです。
海水の温度、海面上昇が進んでいる
温度があがっているのは、大気だけではありません。
世界中で「海水温」が上昇しています。
海水は大気と比較して熱容量が1000倍あり、その数10年の温暖化エネルギーの90%が海洋に吸収されたと言われています。
つまり、海は熱を吸収しやすく、今まで大気に代わって地球温暖化を陰ながら引き受けてきたのが海というわけです。
そんな海もとうとう「湯たんぽ」にかわっていっているのです。
日本近海における、2022年までのおよそ100年間にわたる海域平均海面水温の上昇率は、+1.24℃/100年です。
この海水温の上昇は、日本各地で業種や漁獲高に変化を引き起こしています。
また、世界全体で平均した海面水温の上昇率も+0.60℃/100年と上昇しています。
海水温度の上昇による海面上昇も深刻化
海水温度の上昇が引き起こすもう一つの問題は、海面上昇です。
20世紀の間で、海面はおよそ19cm上昇したとされています。
今後、海水温度の上昇による熱膨張と氷河が溶けることによって、海面上昇はさらに進むと予想されています。
2013年に発表されたIPCC第5次評価報告書によると、21世紀(1986〜2005年平均から2081〜2100年平均まで)の海面上昇の値は26〜82センチメートルとされています。
海面上昇によって、海岸浸食や高潮・高波・異常潮位などの沿岸災害の増加、沿岸湿地喪失などによる生態系への被害が予測されています。
また特に深刻な問題は、フィジー諸島共和国のような海抜の低い島国などは島自体が海に沈んでしまう可能性もあり、海面上昇への対策は一刻の猶予もない状況になっています。
異常気象の発生
近年、世界各地で異常気象が発生しています。
世界気象機関(WMO)によると、暴風雨や洪水、干ばつといった気象災害の発生件数が1970年から2019年の50年間で5倍近くに増加していると報告されています。
これらの異常気象の発生も、地球温暖化が要因となっていると考えられています。
海水温度が上昇すると大気の対流が活発になり、同時に海面からの水蒸気も増えるため、ハリケーンや豪雨による大規模な洪水などの被害が発生しやすくなります。
また大気の温度上昇は激しい干ばつや熱波、広範囲な山火事の原因にもなります。
これらの異常気象は人々の住環境や食糧生産に深刻な被害を与えており、世界中の企業が事業活動に大きな損害を受けています。
避けるべき気候暴走の発生
このような人為的な気候変動の中で、もっとも危惧しなければいけないのが気候暴走の発生です。
気温上昇があるレベルを超えると、気温の自発的上昇が止まらなくなると考えられており、それが気候暴走とよばれる状態です。
例えば「気温上昇が極地の永久凍土を溶かす」⇒「地中のメタンが解放される」⇒「そのメタンがさらに気温を上昇させる」
といったフィードバック現象が起きるためです。
パリ協定においては、世界の気温上昇を1.5℃以内にするよう努めるとされていますが、すでに1℃温暖化は進んでおり、北極の大規模な※凍土融解が始まっています。
もし気候暴走が始まってしまうと、どれだけ人類によるCO2排出が止まっても気温が上昇し続けてしまう懸念があるのです。
※凍土融解とは:北極など、寒い国の氷が溶け始めること
脱炭素経営と気候変動の関係
では、このような「気候変動」と「脱炭素経営」との間にはどのような関係性があるのでしょうか?
近年世界的な企業を中心に脱炭素経営が重視されていった背景には、気候変動が大きく関係しています。
気候変動を要因とする異常気象によって、世界的な企業はその事業活動に大きな損害を受けました。
例えば、ハリケーンや豪雨による洪水被害によって、各地の物流網が寸断され、製品や原料が手に入らないという事態が、世界中の企業で発生しました。
また、現地の工業や倉庫が直接洪水の被害を受け、稼働できない状態になった企業もあり、事業存続の危機的状況に陥ったといえます。
地球温暖化による異常気象を止めなければ、持続的な事業活動そのものが成り立たなくなることを学んだ企業が脱炭素経営の重要さを痛感し、自発的に経営に取り入れ始めたのです。
まとめ
ここまで脱炭素経営の背景にある「気候変動」について解説をしてきました。
脱炭素経営に取り組むにあたり、地球上ではどのような事がおき、私たちの生活に影響を与えているかを正しく理解することが大切になります。
その理解があれば、脱炭素経営に取り組む意義や重要性を強くもつことが可能になるのです。
著者のプロフィール
- タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。