近年、地球温暖化の影響を受け、カーボンニュートラルが世界的な目標となっています。
そのため、多くの企業が環境にやさしい電気自動車(EV)への切り替えを進めています。

電気自動車は、ガソリンやディーゼルを必要とせず、CO2排出量がほぼゼロだと言われているからです。
しかし、電気自動車の導入にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。

本記事では、企業が電気自動車を導入する際のメリットとデメリットを詳しく解説します。
また、カーボンニュートラルの実現に向けて、どの電気自動車がおすすめなのか?についても解説します。

企業が電気自動車にするメリット

企業が電気自動車にするメリットは、主に次の4つが考えられます。

  • CO2排出量の削減
  • コストの削減
  • エコカー補助金の活用
  • 緊急時の電源供給が可能

それぞれ順番に解説していきます。

CO2排出量の削減

電気自動車は、化石燃料を燃焼させないため、CO2などの温室効果ガスの排出がほぼゼロです。
これは、電気自動車が持つ最大のメリットだといえるでしょう。

つまり、電気自動車を導入するだけで、カーボンニュートラル実現に大きく前進します。

また、環境にやさしい電気自動車を利用することは、企業の環境保護への取り組みとみなされます。
そのため、外部から高い評価を得るなど、企業のイメージアップにもつながるでしょう。

コストの削減

電気自動車を導入することで、コストの削減が期待できます。
これは、電気自動車がガソリン車やディーゼル車に比べてエネルギー効率が優れているためです。

また、電気自動車は燃料として電気を使用します。
そのため、ガソリンやディーゼル燃料の購入が不要となるので、長期的に見ると大幅な燃料費の削減が可能です。

例えば、月間の走行距離が800kmで、車の燃費が1リットルあたり20km、ガソリンの単価が166円の場合を考えてみましょう。
この条件で、ガソリン車と電気自動車の運転コストを比較すると、ガソリン車の場合、月間のコストは6,640円で、年間では約79,680円の出費となります。

一方、電気自動車の場合、月間コストは2,044円、年間コストは24,533円です。
この数値を比較すると、月間のコスト差額は4,596円、年間で見ると55,147円もの差が出ることがわかります。

参照:ガソリン代 vs 電気代 コスト比較シミュレーター

さらに、電気自動車は構造がシンプルで、エンジンオイルの交換など、ガソリン車に比べて必要なメンテナンスが少ないです。
これによって、定期的なメンテナンスコストも抑えられます。

エコカー補助金の活用

企業が電気自動車を導入する際には、政府や地方自治体から出ている補助金を使用できます。
例えば、経済産業省は「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」という補助金を提供しています。
これは、電気自動車を含む、環境にやさしい車種の購入を支援するために設けられています。

この補助金の対象となるのは、電気自動車、小型電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池自動車など、特定のエコカーです。

また、補助金を受けることができるのは、これらの車両を購入する個人や法人、地方公共団体で、新車を自家用として登録する場合に限ります。
具体的な補助金の額は、車両の種類によって異なります。

例えば、電気自動車の場合、基本の補助額は上限65万円ですが、特定の条件を満たすと上限85万円に増額されます。
補助金の詳細については、下記の経済産業省のホームページよりご覧ください。

参照:令和4年度補正予算・令和5年度当初予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」 (METI/経済産業省)

緊急時の電源供給が可能

電気自動車は、天災などで電源供給が途絶えたときに、電源として利用できます。

電源として使用可能な期間は、電気自動車によって異なりますが、4~5日間は生活ができると言われています。
この日数は、電気自動車のバッテリー容量が60kWhで、1日の電力消費を12kWhに仮定した場合の値です。

参照:電気自動車(EV)は非常電源にも使える?電気自動車の活用方法を解説|自動車保険のアクサダイレクト

ただし、こうした非常時の電源として電気自動車のエネルギーを利用するためには、特定の装置やシステムが必要となります。

車に搭載されたコンセントを利用するか、「V2H」という、自動車から家庭へエネルギーを供給するシステムを導入することで、電源として利用できるようになります。

企業が電気自動車にするデメリット

ここまで、電気自動車を導入するメリットを紹介してきましたが、デメリットも存在します。
今回は、次の4つのデメリットについて解説します。

  • 初期費用の高さ
  • 高額な保険料
  • 充電の問題
  • 航続距離の不足

それぞれ順番に解説していきます。

初期費用の高さ

電気自動車のデメリットは、やはり初期費用の高さです。
ガソリン車に比べて購入価格が高い傾向にあります。
電気自動車の購入費に加えて、充電設備の導入にもコストがかかる場合もあります。

しかし、電気自動車の販売価格は年々低下していることに加え、最大85万円の補助金も提供されています。

これらを上手く活用すれば、初期費用を抑えつつ、維持費の安い電気自動車を導入することは十分に可能です。

高額な保険料

電気自動車は、ガソリン車よりも保険料が高くなりがちです。
車の保険には、加入義務のある「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」と、加入が任意の「任意保険」の2種類あります。
電気自動車の保険料が高くなる要因は、任意保険にあります。

任意保険は、「任意」という名の通り、加入は自由です。
しかし、実際は多くの人がこの保険に加入しています。

なぜなら、自賠責保険の補償範囲は対人賠償のみに限定されており、物的損害や同乗者への補償が含まれていないからです。

任意保険の保険料は、車の型式や事故発生の状況などを基に、損害保険料率算出機構が定める「型式別料率クラス」に従って設定されます。
このため、同一クラスで比較すると、価格が高い電気自動車の方が保険料も高額になってしまうのです。

ただし、多くの保険会社では、電気自動車に対して「エコカー割引」などの特典を設けているので、3%割引や1000円割引などの恩恵を受けられます。

参照:電気自動車(EV)の維持費は年間いくら? ガソリン車と比較して安いの?|東京電力エナジーパートナー

充電の問題

電気自動車には、充電の問題があります。
特に、充電インフラの不足は深刻です。

地方では、利用可能な充電スポットが十分に設置されていないため、電気自動車で遠出する場合は計画的に移動しなければなりません。

さらに、電気自動車の充電時間は、ガソリン車の給油時間よりも長いです。
急な出張や移動が必要になったときに電気自動車の充電が不足していたら、充電をしなければなりません。

十分な距離を走行するために必要な充電時間は、約30分から数時間だと言われています。
この待機時間は会社から動けないため、仕事に影響を及ぼしてしまう可能性があります。

このような事態を避けるためにも、充電量が常に80%はあるように調整しながら使うといいでしょう。

参照:電気自動車の充電時間はどのくらい?普通充電・急速充電の目安を解説 | 東京電力エナジーパートナー

航続距離の不足

電気自動車は一度の充電で走行できる距離が限られているため、長距離を移動する際には注意が必要です。
後ほど紹介する電機自動車の走行距離は約180㎞です。
そのため、それ以上の移動が必要となる場合は、途中で充電をする必要があります。

電気自動車の種類

電気自動車(EV)には、いくつかの種類が存在します。
一般的に「EV」と呼ばれるとき、主に電気を動力として利用する車を指します。

つまり、電気とガソリンの両方を利用する車両もEVに含まれます。
そのため、電気だけを使う車は「BEV」と呼ばれることもあります。

EVには、他にも3種類あります。

  • HV(ハイブリッド車)
  • PHV(プラグインハイブリッド)
  • FCV(燃料電池車)

詳細について解説していきます。

HV(ハイブリッド車)

HV(ハイブリッド車)は、電気とガソリンを組み合わせて走行する車です。

そのため、燃費の効率がいいのが特徴です。

しかし、外部から充電できないというデメリットがあります。

PHV(プラグインハイブリッド)

PHV(プラグインハイブリッド車)は、外部の電源からバッテリーを充電できるハイブリッド車です。

なお、バッテリーが切れた場合は、通常のハイブリッド車と同様にガソリンを使用して走行できます。

FCV(燃料電池車)

FCV(燃料電池車)は、水素を使用して電気を起こし、車を動かします。
そのため、走行中に電気と水しか排出しません。

CO2を一切排出しないのが、FCVの大きな特徴です。

企業向けにおすすめの電気自動車3選

ここからは「企業向けにおすすめの電気自動車」を3つご紹介いたします。
主におすすめな電気自動車は、下記になります。

  • 日産:サクラ
  • 日産:リーフ
  • 三菱:eKクロス EV

理由についても、詳しく解説していきます。

日産:サクラ

日産サクラは、ブランド初の軽EVとして2022年6月に登場しました。
この車には、2つのグレード、「X」と「G」があり、どちらも一充電で180kmを走行可能です。

Xグレードは価格が254万8700円で、Gグレードは304万400円です。

いずれもガソリン車の軽自動車よりはやや高めですが、EVとしては非常にお手頃な価格といえるでしょう。

参照:日産:サクラ [ SAKURA ] 軽自動車|価格・グレード

日産:リーフ


日産リーフは、2010年のデビュー以来、国産EVの先駆けとして多くの人々に親しまれています。
現行モデルは2代目となっており、長い実績と信頼性の高さが大きな魅力となっています。

2022年の価格改定後は、408万1000円から購入可能となりました。
日産サクラよりも高額なのは、航続距離が長いためです。

日産リーフは一充電で、なんと400kmも航続可能です。
航続距離が短いEVのデメリットを気にさせないのが、日産リーフの強みです。

参照:日産:リーフ [ LEAF ] | 価格・グレード

三菱:eKクロス EV

三菱のeKクロス EVは、2つのグレード、「G」と「P」を展開しています。Gグレードの価格は254万6500円で、Pグレードの価格が308万1100円です。どちらも航続距離が180kmで、日産サクラと同じです。これは、三菱のeKクロスと日産サクラが共同開発されたため、同じメカニズムを持っているからです。

参照:eKクロス EV|G|グレード・価格|三菱自動車
参照:eKクロス EV|P|グレード・価格|三菱自動車

また、eKクロス EVは、日産サクラと共に、軽自動車としては史上初の日本カーオブザイヤーに輝きました。さらに、充電インフラの利用においては、三菱の「電動車両サポート」が利用可能です。月額料金や利用料金が日産の「ZESP3」に比べてリーズナブルな価格になっています。詳しい料金については、下記の公式サイトよりご覧ください。

参照:三菱自動車 電動車両サポート | 三菱自動車 電動車両サポート
参照:日産:日産電気自動車 充電について | zesp3

まとめ

企業が電気自動車の導入を検討する際、以下のメリット・デメリットを考慮する必要があります。

メリットデメリット
CO2排出量の削減初期費用の高さ
コストの削減高額な保険料
エコカー補助金の活用充電の問題
緊急時の電源供給が可能航続距離の不足

また、おすすめの電気自動車も3つご紹介しました。

  • 日産:サクラ
  • 日産:リーフ
  • 三菱:eKクロス EV

どの車種も電気自動車としては、お手頃な価格になっています。
コストや走行距離など、使用状況に合ったものを購入しましょう。

電気自動車の使用は、CO2の大幅な削減につながります。具体的に、CO2をどのくらい削減できたのかは、弊社の排出量測定サービスを活用するとわかりやすいです。
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著者のプロフィール

川田 幸寛
小学校教員として、カーボンニュートラルや脱炭素に関する授業を行った経験がある。子どもたちが理解できるように、専門用語を分かりやすく、かみ砕いて説明することを心がけた。この経験を活かし、脱炭素化の重要性を広く伝えるために、誰にとっても理解しやすい記事を作成している。