IT導入補助金(通常枠)とは?流れについて解説

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企業のデジタル化や生産性の向上を支援するIT導入補助金を知っていますでしょうか。業務の効率化や自動化を図れるソフトウェアに最大450万円の補助金が提供されます。

今回の記事では、IT導入補助金の通常枠に関する以下の事項を解説します。

  • 事業の概要
  • メリット・デメリット
  • 対象事業者
  • 全体の流れ
  • 提出書類と申請方法
  • 審査基準と採択のコツ
  • 補助金交付後の義務
  • 採択の事例
  • 申請時の失敗例

本記事を通じてIT導入補助金のメリット・デメリットを把握し、どのようにすれば効果的に補助金を活用できるのかを理解しましょう。

脱炭素経営の基本形であるGHG可視化ツールの導入はIT導入補助金通常枠です。ご興味のある方はぜひ弊社にお問い合わせください。

目次

IT導入補助金(通常枠)とは?

IT導入補助金は、2017年に開始された中小企業庁が監督する事業です。中小企業や小規模事業者のIT導入を支援することで、デジタル化の推進を図っています。補助金には、以下3つの枠があります。

枠名型名概要補助金額補助率
通常枠A類型業務の効率化や売上アップのために必要なITツールの導入を支援5万以上~150万円未満2分の1以内
B類型150万以上~450万円以下
セキュリティ対策推進枠特記事項なし不正アクセスなどのリスクを回避するために必要なサービス利用料を支援5万以上~100万円以下
デジタル化基盤導入枠デジタル化基盤導入類型会計ソフトや受発注ソフト導入を支援し、デジタル化を推進~350万円以下2分の1~3分の4以内
商流一括インボイス対応類型労働生産性の向上やインボイス制度への対応が目的2分の1~3分の2以内
複数社連携IT導入類型地域DXや生産性の向上させる取り組みを支援~3,000万円以下2分の1~4分の3以内

参照:IT導入補助金とは | IT導入補助金2023(後期事務局)

今回の記事で解説する通常枠には「A類型」と「B類型」があります。詳細は、以下の表を確認してください。

項目A類型B類型
必要な業務プロセスの種類顧客対応・販売支援決済・債権債務・資金回収供給・在庫・物流会計・財務・経営総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス業種特化型プロセス上記のうち1種類以上を保有するソフトウェア顧客対応・販売支援決済・債権債務・資金回収供給・在庫・物流会計・財務・経営総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス業種特化型プロセス汎用・自動化・分析ツール上記のうち4種類以上を保有するソフトウェア
対象経費の範囲大分類Ⅰ「ソフトウェア」大分類Ⅱ「オプション(機能拡張・データ連携ツール・セキュリティ)」大分類Ⅲ「役務(導入コンサルティング・導入設定・マニュアル作成・導入研修・保守サポート)」
補助額5万円以上~150万円未満150万円以上~450万円以下
補助対象経費の条件特記事項なし補助対象経費の2分の1以内が150万円を下回る場合はA類型として申請
自主的な補助額申請B類型の要件を満たす場合でも、A類型の補助額の範囲内での申請が可能
事業実施効果報告3年間

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.15~17

IT導入補助金(通常枠)のメリット

IT導入補助金(通常枠)には業務の効率化や経費の削減、重複申請が可能といったメリットがあります。

業務の効率化

IT導入補助金(通常枠)を利用することで、企業は自社のニーズに合ったITツールを導入し、業務の自動化や効率化を図れます。例えば、繰り返し作業やデータ管理の自動化を実現するITツールを導入することで、従業員の作業時間や人為的ミスの削減が可能です。捻出した時間を活用し、従業員は他の作業に取り掛かれるため全体の業務効率が向上します。

作業効率の上昇は顧客サービスの質の向上にも繋がり、顧客満足度を高めることも可能です。IT導入補助金は企業の生産性向上だけでなく、競争力の強化にも寄与すると言えるでしょう。

IT導入補助金は中小企業や小規模事業者が直面する業務上の課題を解決し、業務の効率化を支援します。日々の業務における負担を軽減し、従業員が優先度の高い業務に専念できる環境づくりが可能となります。

経費の一部補助

IT導入補助金(通常枠)は経費の一部を補助するため、資金面で制約がある事業者がITツールを導入する際の初期投資の負担を軽減できます。補助金はソフトウェアの購入費やクラウドサービスの利用料、関連する設定や研修費用などを含む幅広い経費に対して適用されます。事業者は経済的な負担を抑えつつ、業務の効率化や生産性の向上を図れるのです。

業務の効率化や生産性の向上は企業の競争力を強化し、長期的な成長に貢献します。IT導入補助金による経済的支援は、財務面での制約が大きい事業者の成長を促すのです。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.15~17

重複申請が可能

IT導入補助金(通常枠)は「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型・商流一括インボイス対応類型)」と「セキュリティ対策推進枠」の重複申請が可能です。概要は、以下の表を確認してください。

枠名型名概要
セキュリティ対策推進枠特記事項なし不正アクセスなどのリスクを回避するために必要なサービス利用料を支援
デジタル化基盤導入枠デジタル化基盤導入類型会計ソフトや受発注ソフト導入を支援し、デジタル化を推進
商流一括インボイス対応類型労働生産性の向上やインボイス制度への対応が目的

参照:IT導入補助金とは | IT導入補助金2023(後期事務局)

例えば、企業がインボイス対応に向けて会計ソフトの導入を考えている場合、デジタル化基盤導入類型を活用して導入の補助を受けられます。同時に、通常枠を利用して会計ソフトの運営に必要なクラウドサービスなどの補助も申請できるのです。

補助金における複数の枠を上手く活用できれば、企業のデジタル化を大きく推進できるうえに、全体的な業務効率の向上やコスト削減を実現できます。しかし、1つのシステムに対して異なる類型の補助金を重複して申請はできません。補助対象となるITツールの選定は慎重に進め、必要に応じてIT導入支援事業者との協議や確認を実施しましょう。

IT導入補助金を通常枠とデジタル化基盤導入類型などと重複申請することで、事業者はより効果的にデジタル化を進められます。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.21

IT導入補助金(通常枠)のデメリット

IT導入補助金の活用を通じて、企業は業務の効率化やデジタル化の推進が可能となりますが、デメリットも考慮すべきです。具体的には、以下3つのデメリットが考えられます。

厳格な条件と手続き

IT導入補助金(通常枠)の利用には、複雑で厳格な条件と手続きが伴います。事業者は、申請前に補助金の対象となるITツールを登録しなければなりません。ツールを選ぶためには、時間をかけて複数のツールを調査する必要があり、事業者に負担を与える可能性があります。

申請には補助事業ホームページや公募要領の熟読、IT導入支援事業者の選定、gBizIDプライムアカウントの取得、申請マイページの開設、事業計画の確認などが含まれます。さらに補助金が交付された後も事業実績報告を提出する必要があるため、事業実施の定義に沿った厳密な手続きが必要です。

厳格な条件と手続きは、特に資源や人員が限られている中小企業や小規模事業者にとって、大きな負担となる可能性があります。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.19

補助金の返還リスク

IT導入補助金(通常枠)の利用にあたり、事業計画や賃上げ目標が達成されない場合は補助金の全額または一部の返還が必要となる可能性があります。補助金は事業者が提案した計画に基づいて交付され、計画の達成状況は厳密に評価されます。

例えば、補助事業者が期間内に報告を行わなかったり、報告内容が申請要件を満たしていなかったりすると補助金の返還を求められる場合があるのです。補助事業の途中でITツールの解約や事業の中止が発生した場合も、補助金の返還が必要です。場合によっては、加算金や延滞金の支払いも含まれることもあります。

事業実態がないかITツールが導入されていないと事務局が判断した場合には、補助金の交付決定が取り消されることもあります。補助金の利用には計画達成の義務が伴い、達成できなかった場合には返還しなければなりません。そのため、補助金を利用する際には、計画の実現可能性を慎重に評価し、適切な管理と報告が求められます。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.28~29

資金の前払いの必要性

IT導入補助金(通常枠)は事業が完了した後に支払われるため、事業者はITツールの導入や関連費用を自己資金で先に支払う必要があります。資金繰りに課題を抱える中小企業や小規模事業者にとって、負担となるかもしれません。

事業計画の実施にはITツールの購入費やクラウド利用料、導入に関わるコンサルティング費用など、多額の初期投資が必要です。補助金が支払われるまでの間、事業者は必要な経費を自力で賄う必要があり、その間の資金繰りが企業経営に影響を与える場合があります。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.15, 26

IT導入補助金(通常枠)の対象企業

中小企業あるいは小規模事業者に該当する事業者であり、以下の要件も満たす者がIT導入補助金(通常枠)の対象企業となります。中小企業と小規模事業者については、後ほど説明します。

要件の概要
日本国内で法人登記されていて、国税庁の法人番号公表サイトに公表されている法人または個人であること
申請者が営む事業場内の最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であること
gBizIDプライムアカウントを取得していること
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」または「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行い、IPAとの情報共有に同意すること
必要な情報を入力し、必要な添付資料を提出すること
1人の申請者につき、自身が管理する1つの携帯電話番号を登録し、事務局からの連絡に応じること
国や中小機構の他の補助金と重複しない事業であること
労働生産性の伸び率の向上目標を設定し、計画を作成すること(特定の既存補助金受給者には強化された要件あり)
IT導入支援事業者と協議後、生産性向上に関する情報を事務局に報告すること
事務局に提出した情報の利用に同意すること
事例の調査協力に応じること
申請マイページを使用し、ログインID・パスワードを適切に管理すること
補助事業の遂行に支障をきたす問題を抱えていないこと
補助事業での不正行為に関与していないこと
事務局および中小機構の立入調査への協力をすること
「申請の対象外となる事業者」に該当しないこと※1
提供された情報の利用に同意すること
みらデジ経営チェック」を行っていること
B類型申請者は、特定の賃金引上げ計画※2を策定・実行すること(特定の事業者は適用外)

※1. 申請の対象外となる事業者の表を確認

※2. 給与支給総額平均1.5%以上の増加、地域別最低賃金30円以上の増加

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.7~10

※1. 申請の対象外となる事業者

対象外となる事業者概要
大企業所有の中小企業発行済株式の総数・出資価格の半分以上が大企業によって所有されている中小企業
大企業の影響下の中小企業発行済株式の総数・出資価格の2/3以上を大企業が所有している中小企業
大企業の役員が多数を占める事業者役員の半数以上が大企業の役員、または職員である中小企業
関連会社が所有する中小企業大企業所有の中小企業・大企業の影響下の中小企業・大企業の役員が多数を占める事業者に該当する中小企業が所有している他の中小企業
関連会社の役員が全てを占める大企業所有の中小企業・大企業の影響下の中小企業・大企業の役員が多数を占める事業者に該当する中小企業の役員・職員が別の中小企業の役員総数を全て占めている場合
課税所得が15億円超の中小企業直近3年間の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業
IT導入支援事業者IT導入補助金2023で登録済み、または登録予定のIT導入支援事業者
指定停止措置を受けた事業者経済産業省や中小機構から補助金等指定停止措置や指名停止措置を受けている事業者
風俗営業を営む事業者風俗営業、性風俗関連特殊営業、接客業務受託営業を行う事業者(一部例外あり)
労働関係法令違反の事業者過去1年以内に労働関係法令違反で送検処分を受けた事業者
反社会的勢力関連事業者暴力団等の反社会的勢力に関連する事業者
宗教法人宗教活動を主目的とする法人
法人格のない任意団体同窓会、PTA、サークルなど法人格を持たない任意団体
その他不適切と判断される者本事業の目的・趣旨から適切でないと判断される事業者

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.14~15

中小企業

IT導入補助金(通常枠)の対象となる中小企業とは、以下のいずれかの条件を満たしている事業者のことです。

業種資本金または出資の総額常時使用する従業員数
製造業、建設業、運輸業3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)5,000万円以下
小売業50人以下
ゴム製品製造業(特定業種を除く)3億円以下900人以下
ソフトウェア業、情報処理サービス業300人以下
旅館業5,000万円以下200人以下
その他業種3億円以下300人以下
医療法人、社会福祉法人特記事項なし
学校法人
商工会・都道府県連合会及び商工会議所100人以下
中小企業団体(中小企業支援法定義)事業の業種に基づく従業員数以下
特別法による組合・連合会
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益)
特定非営利活動法人

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.6

小規模事業者

IT導入補助金(通常枠)の対象事業者である小規模事業者の定義を、以下の表にまとめています。

業種常時使用する従業員数
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)5人以下
サービス業(宿泊業・娯楽業)20人以下
製造業その他

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.7

IT導入補助金(通常枠)の事業アイデア

IT導入補助金(通常枠)のアイデアを出すには自社の強みと弱みを分析し、どの業務プロセスが生産性の向上に役立ちそうかを特定することが重要です。事業目的に従って、製品・サービスの生産や提供に関連する業務を効率化できるITツールを選定しましょう。

労働生産性の伸び率の目標を設定し、実現可能かつ合理的な計画を策定することも重要です。求められている水準は1年後に3%以上、3年後に9%以上の伸び率です。すでにIT導入補助金を利用した経験がある事業者は、水準をさらに高める必要があります。

補助対象となるITツールは、事務局に登録されたものから選ばなければならない点にも注意しましょう。登録外のITツールは補助金の対象となりません。どの業務の効率化を狙えば、求められる労働生産性の向上を達成できるかを考え、必要なITツールを選定するのが事業アイデアを出す鍵となります。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.6~8, 15~17

IT導入補助金(通常枠)の流れについて

IT導入補助金(通常枠)における全体の流れは、以下の通りです。

  1. 補助事業に関する相談等(gBizIDの取得)
  2. ITツールの選定・商談、見積依頼等
  3. 申請マイページの招待通知を受領
  4. 申請マイページの開設
  5. 交付申請の作成・提出
  6. 交付決定
  7. ITツール契約、導入、代金支払い(事業の実施)
  8. 事業実績報告の作成・提出
  9. 補助金確定通知、補助金の交付
  10. ITツール導入後のアフターフォロー
  11. 事業実施効果報告の作成・提出

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.18

補助金申請手続きの事前準備と必要書類

IT導入補助金(通常枠)の申請前には、補助事業の内容理解が欠かせません。ホームページ公募要領を通じて理解を深め、ITツールやIT導入支援事業者を選びます。

T導入支援事業者とは中小企業や小規模事業者がITツールを導入し、生産性を向上させるサポートを行う専門の事業者です。具体的には、以下のサポートを提供します。

  • ITツールの説明
  • 導入の支援
  • 運用の相談
  • 申請のサポート

申請に必要な「gBizID」の取得も必要です。IDの取得後「SECURITY ACTION」において「★一つ星」あるいは「★★二つ星」の宣言と「みらデジ経営チェック」を行いましょう。

申請に必要な書類は、以下の表の通りです。記入例を参照しつつ、書類の記載を進めてください。

書類の種類法人個人事業主注意点
実在証明書履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内)不要特記事項なし
本人確認書類不要運転免許証、運転経歴証明書、または住民票(発行から3ヶ月以内)
事業実態確認書類1(納税証明書)法人税の納税証明書(その1またはその2)所得税の納税証明書(その1またはその2)納税証明書は領収書ではなく、税務署が発行したもの直近の法人税または所得税についての証明書であること
事業実態確認書類2(確定申告書の控え)不要税務署が受領した直近分の確定申告書の控え最新のものが基準だが、昨年度分の提出も可能受領が確認できることが必要(収受日付印、受付番号と日時の印字、受信通知の添付等)税理士の印のみの書類は不可必要に応じて納税証明書(その2所得金額用)の提出も可能

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.19~20

申請前に確認すべき補助金の審査基準

最初に交付申請内容の審査が行われます。事務局が不備を指摘した場合、事業者は速やかに訂正し再提出しましょう。再提出があっても即座に採否が公表されるわけではなく、次回の締切まで採否の発表が遅れる可能性があります。

その後、事業面と政策面から審査が実施されます。事業面では経営課題の理解、ITツールの導入効果と自社の課題との整合性、常務の高度化や効率化に対する取り組みが評価基準です。

政策面では生産性の向上、働き方改革への取り組み、国が推進するセキュリティサービスの選定、賃上げへの取り組みなどが重要な審査基準となります。提出された書類に基づき審査が行われるため、提出前は書類を慎重に見直しましょう。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.22

以下の項目に該当する場合は、加点評価を受けられます。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.23~25

窓口またはオンライン申請の方法

IT導入補助金(通常枠)の申請は、すべてオンラインで行います。事業者がIT導入支援事業者とITツールを選定し、見積もりを取得することから始まります。他にもgBizIDプライムアカウントの取得、SECURITY ACTIONの宣言、みらデジ経営チェックなどの手続きを行い、必要な書類や情報を準備しましょう。

その後、IT導入支援事業者が事業者を申請マイページに招待します。招待後は事業者宛てに通知が届くため、通知に従って申請マイページを開設し、基本情報、財務情報、経営情報を入力し、必要書類を添付します。続けてIT導入支援事業者の情報や計画数値、導入予定のITツール情報も入力しましょう。

申請完了後は再度申請マイページにログインし、申請要件の確認、賃金情報の入力、申請内容の最終確認を行います。最終確認後はSMS認証を通じて本人確認を行い、交付申請を事務局に提出します。

参照:交付申請の手引き 通常枠(A・B類型)・セキュリティ対策推進枠 デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)共通 p.7~14

IT導入補助金(通常枠)の受け取り方法

IT導入補助金(通常枠)を受け取るために、事業実施は交付決定後に始めてください。具体的にはITツールの契約や発注、導入などが事業実施に該当します。契約に関しては、内容や金額に矛盾がないかの確認が欠かせません。

問題がなければITツールの納品と導入を行い、納品日や内容に誤りがないかを確認します。誤りがないことを確認できたら、ITツールの代金を支払いましょう。請求書や支払完了の証憑は適切に保管し、事業実績報告時に提出する必要があります。報告に必要な書類は、以下の表の通りです。

書類の種類提出書類注意点
請求に係る書類IT導入支援事業者から発行された請求書、請求明細書請求内容が一式表記で不明な場合は、請求明細書も提出が必要
支払いに係る書類(銀行振込)振込明細書、振込受付書、利用明細書、ネットバンキングの取引完了画面、通帳の表紙と取引該当ページ支払元口座情報として「口座名義人」を明確にする必要あり補助事業者側の書類のみ認められる支払日、金融機関名、口座番号、口座名義人等、支払先名、支払金額 ・振込完了・利用した金融機関の記載が必要
支払いに係る書類(クレジットカード払い)クレジットカード会社発行の利用明細支払日、支払元名、支払先名、支払金額、利用内容、引き落とし口座情報が必要
補助金の交付を受ける口座情報通帳の表紙+表紙裏面、インターネットバンキングの必要情報が確認できるページ日本国内の口座に限るキャッシュカードの提出は不可
ITツールの利用を証する資料導入ITツールのソフトウェア名がわかるキャプチャ、ITツールの利用者が補助事業者であることが分かる画面のキャプチャ確認できない場合は別途書類の提出を求められることがある

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.27~28

支払い方法は、原則として銀行振込またはクレジットカードの一回払いのみが認められています。銀行振込の場合、補助事業者の金融機関口座からIT導入支援事業者の口座への振込が必要で、現金払いは不可とされています。クレジットカード払いは一括払いであり、法人の場合は法人名義、個人事業主の場合は個人事業主本人名義のカードを使用してください。

手続きを正確に行い、事業実績報告を提出することで、補助金を受け取れます。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.26~27

IT導入補助金(通常枠)の交付後について

IT導入補助金(通常枠)の交付後、補助を受けた事業に関わる経理を補助金以外の経理と区別し、会計帳簿に収支状況を記録することが必要です。事務局や中小機構、会計検査院が経理の検査を実施することがあります。補助対象事業に関するすべての書類や情報は、事業完了後5年間保管し、必要に応じて提出できる準備が求められます。

事業終了後は、生産性向上に関連する数値目標(営業利益、人件費、減価償却費など)を含む効果報告を期間内に提出することが必要です。報告には賃上げ要件がある場合、賃金台帳などの証憑書類の提出が求められることがあります。

事業の辞退やITツールの解約、廃業などが発生した場合は、補助金の一部または全額の返還が必要な場合があります。賃上げ目標が必須のB類型では効果報告前に辞退したり、目標達成が確認できなかった場合には、補助金の全額返還が求められるため注意しましょう。

事業実施効果報告が提出されない、あるいは計画値に未達の場合も、補助金の返還が必要となります。事業実態が確認できない場合は事務局が確認を行い、補助事業が遂行されていないことが判明した場合、補助金の返還や是正措置が取られることもあります。

厳しい規定は補助金が適切に使用されていることを保証し、公平な事業運営を確保するためのものです。補助金交付後の義務を正しく理解し、適切に対応することが事業者には求められます。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.28~30

IT導入補助金(通常枠)の審査を通りやすくするコツ

IT導入補助金(通常枠)の申請が通りやすくするためには、自社の経営課題を深く理解することが欠かせません。自社の現状や課題分析、将来計画を考慮し、導入するITツールが直面している課題にどのように対応し効果をもたらすかを具体的に示す必要があるためです。

内部プロセスの高度化や効率化、データ連携を通じた社内での横断的なデータ共有・分析の導入が、継続的な生産性向上と事業成長にどう貢献するかを明示することも求められます。

政策面からの審査では生産性の向上と働き方改革を目指し、国が推進する関連事業やセキュリティサービスの選定にどのように取り組んでいるかを示すことが大切です。賃上げへの取り組みも審査の重要な要素なため、具体的な目標とともに計画に盛り込みましょう。

各要素を書類に反映させ、内容に相違や不足がないかを確認することが申請を通りやすくする鍵となります。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.22

IT導入補助金(通常枠)を受け取るポイントや注意点

IT導入補助金(通常枠)を受け取る際、交付申請内容に不備があった場合は事務局からの訂正指示に迅速に対応し再提出しましょう。対応を怠ると申請は受理されません。

補助金の交付後に導入したITツールを解約するなど事業を辞退する場合は、補助金の全部または一部を返還する必要が生じるため注意しましょう。賃上げ目標が必須のB類型において、事業計画の目標を達成できなかった場合も補助金の全額返還が必要になることがあります。

事業実施効果報告が未提出、または計画値に未達の場合も補助金の返還が求められます。事業実態の確認を行い、ITツールが実際に導入されているかを証明することが不可欠です。交付決定前に契約や発注、納品、支払いなどを行った申請は補助金の対象外となるため、交付決定後に行ってください。

IT導入補助金(通常枠)を受け取るには事務局が定める規定を守り、事業者として適切な対応を取る必要があります。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.22, 28, 30

IT導入補助金(通常枠)の事例紹介

実際にIT導入補助金(通常枠)の交付を受けた3社を紹介します。

株式会社ズイカインターナショナル

株式会社ズイカインターナショナルは、長野県奥志賀高原に位置する「ホテルグランフェニックス 奥志賀」を運営しています。同社はマウンテンリゾートを元気にすることを目指し、2020年にIT導入補助金(A類型)を活用して経営力の向上と事業拡大に取り組みました。

直面していた課題は、遠隔地からの空室管理やデータ分析です。従来のオンプレミス型ホテル管理システムで困難であるうえに、規模に合わないシステムのカスタマイズも難しい状況でした。オンプレミスとは、サーバーやソフトウェアを自社運営する手法のことです。

参照:オンプレミスとは?意味やクラウドとの比較までわかりやすく解説|サービス|法人のお客さま|NTT東日本

課題解決のため、同社はクラウド型の旅館・ホテル管理システム「陣屋コネクト」を導入しました。フレキシブルな対応能力と、宿泊施設運営に特化した機能が豊富である点が導入の理由です。

導入後はリアルタイムでの空室状況把握や部門別売上分析が可能になり、運営効率が向上しました。結果として、コロナ禍にもかかわらず2021年夏の売上が2019年を上回り、ランニングコストの削減も実現させたのです。

しかし、ホテルと旅館の運営形態の違いから、陣屋コネクトでは対応しきれない部分も出てきており、現在もカスタマイズを続けています。株式会社ズイカインターナショナルの取り組みはITツールの導入による経営改善のよい事例であり、他の宿泊施設運営会社にも参考になるでしょう。

参照:株式会社ズイカインターナショナル/IT導入補助金2020活用事例

有限会社天女山

有限会社天女山は、山梨県北杜市の八ヶ岳南麓で林業を営む企業です。同社は林業特有の経営上の課題とIT投資への躊躇に直面していましたが、2020年にIT導入補助金(A類型)を活用して、森林のデジタル化に着手しました。

導入したのは3D GISツール「ScanSurvey Z Pro」で、ドローンを利用した森林解析を可能にするものです。ツールはGISとしても機能し、点群データの解析や作業道の自動設計が可能で、林業に必要な業務を網羅しています。GISとは、位置情報を電子地図上で扱う情報システム技術のことです。

参照:国土情報:GISとは – 国土交通省

ツール導入の結果、森林調査の効率が向上しました。従来は森林内を歩いて木々を調査し、事務所で集計作業を行っていました。しかし、ITツールの導入によりドローンで空撮した後に解析を行うことで調査時間を短縮できたのです。

作業道のルートもITツールを用いてほぼ確定し、現地での作業は最終確認のみとなりました。その結果、調査人員を大幅に削減し、調査コストの削減も実現しました。調査人員は約10名から2名に減少し、林業経営の効率化を推進しました。

参照:有限会社天女山/IT導入補助金2020活用事例

株式会社宝寿園

株式会社宝寿園は、東京都新宿区で食品製造・販売業と飲食業を営んでおり、自然健康食品「野草十八茶 宝寿茶」の製造・販売を行っています。同社は2021年にIT導入補助金(B類型)を活用し、通販管理業務の受注処理から伝票発行、販売管理までのデジタル変革(DX化)を行いました。

宝寿園が抱えていた課題は、約5万件に及ぶ販売管理業務を自社システムで運用する限界です。実際、システムの動作遅延やサービス低下などの問題が発生していました。富士フィルムビジネスイノベーションジャパンコンソーシアムの提案を受けて「PCA商魂DX」と「伝助」の2つのITツールを導入しました。選定理由は、定期購入の自動化ができるためです。

ツールの導入後は受注業務の処理スピードの上昇し、顧客サービスの質も向上しました。定期購入のデータ管理も自動化され、伝票発行業務の効率化により、従来は12時間かかっていた作業が2時間で完了できるようになったのです。

経営面では受注数や売上データをリアルタイムで確認できるようになり、経営状況の把握が容易になりました。結果として顧客数を2割、売上を1割増加させることに成功しました。業務を効率化し、売上改善を実現させた宝寿園の取り組みは、IT導入補助金のモデル事業と言えるでしょう。

参照:株式会社宝寿園/IT導入補助金2021活用事例

IT導入補助金(通常枠)が受け取れない失敗例

IT導入補助金(通常枠)が受け取れない失敗例として考えられるのは、賃上げの未達成です。給与総額と最低賃金の両面で、賃上げを行う必要があります。

給与支給総額の増加の未達成

IT導入補助金を受け取れない失敗例の1つに、給与支給総額の増加目標の未達成があります。補助を受ける事業にとって、給与支給総額の年率平均1.5%以上の増加は必須要件です。事業計画終了時に目標が達成されていなければ、補助金全額の返還が求められます。

付加価値額の増加率が目標に達していない場合、給与支給総額の目標達成は難しくなるため、補助金の返還要求は免除される例外もあります。給与支給総額の年率増加率が付加価値額の年率増加率の平均の半分を超えている場合や、天災などの特別な事情がある場合も返還は不要です。

給与総額を一定以上の増加が出来ない場合、IT導入補助金の受け取りが不可能になります。重要なのは、事業計画に基づいた明確な目標設定と、目標を達成するための効果的な取り組みです。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.10

事業場内の最低賃金の不十分な増加

IT導入補助金の受け取れない失敗例として、事業場内の最低賃金を十分に引き上げられない事例があります。目標を達成できない場合、補助金の返還が求められることがあります。

最低賃金の増加目標が第1年度目で達成できなければ、補助金の全額を返還しなければなりません。第2年度目で目標を達成できない場合は補助金の3分の2を、第3年度目で未達の場合は3分の1を返還することになります。

ただし付加価値額の増加率が年率1.5%に達しない場合や、天災など不可抗力による事業の影響がある場合は、補助金の返還は必要ありません。例外を除いて、事業場内の最低賃金を一定水準以上、増加させないと補助金は受け取れないため注意しましょう。

参照:IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型) p.11

まとめ

IT導入補助金(通常枠)の大まか流れは、以下の通りです。正式に採択の通知を受けてから事業を実施するようにしてください。通知前の実施は、補助の対象外となります。

  1. 補助事業に関する相談等
  2. ITツールの選定・商談、見積依頼等
  3. 申請マイページの設定
  4. 交付申請
  5. 事業の実施
  6. 事業実績報告の提出
  7. 補助金の交付
  8. 事業実施効果報告の提出

提出書類は法人と個人で異なりますが、以下の4種類です。記入例はこちらから確認できます。

  • 実在証明書
  • 本人確認書類
  • 事業実態確認書類1(納税証明書)
  • 事業実態確認書類2(確定申告書の控え)

IT導入補助金(通常枠)は「セキュリティ対策推進枠」と「デジタル化基盤導入枠」の重複申請も認められているため、複数の申請手続きや事業管理が可能な事業者は積極的に活用するとよいでしょう。

補助金を活用した企業にはITツールの導入により12時間かかっていた作業を2時間まで短縮し、顧客数を2割、売上を1割増加させた事例もあります。補助金をうまく活用し、企業の生産性や売上を向上させましょう。

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総編集長
福元 惇二(フクモト ジュンジ)

タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。

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