脱炭素経営の最終目標は、2050年のCO2排出量100%削減であることは、これまでも度々お伝えしてきました。しかしながら、ロードマップを作成する際に、この目標は出来る限り前倒しで計画できるのが理想です。本記事では、CO2排出量100%削減を実現する時期について、少し深堀って考えていきたいと思います。
余裕を持って目標達成を目指そう
脱炭素経営のひとつのゴールである、CO2排出量100%削減は、その実現に長い年月がかかることは言うまでもなく、日本政府がカーボンニュートラル実現の期限として宣言した、2050年を目標にするのが、一般的な目標期限となっています。しかし、脱炭素経営のロードマップを作成する際に、とりあえず2050年を達成期限に置くのではなく、前倒しでの計画を立てられないか、一度検討してみることが重要です。例えば2045年を達成期限にするような、2050年に対して余裕を持った計画の立案が出来ると理想的です。
余裕を持った計画を立てる理由
では、なぜCO2排出量100%削減の達成時期に、余裕を持たせることが理想的かというと、まず、計画というものは、往々にして予定通り進まないものです。事業を継続してれば、外部環境や内部環境に予想していないような変化が起きるものです。その影響で、計画が進捗しないという事は十分に想定できますが、その都度計画を後ろ倒しすれば、目標達成時期は2055年、2060年とどんどん遅くなってしまいます。計画に余裕を持たせることで、計画に遅れが出ても、2050年には達成可能になる可能性が高まります。
また、ポジティブな理由としても、余裕を持った計画を立てるメリットは存在します。CO2排出量0の事業は、当然、イノベーションと高い技術力を有した、生産性の高い事業である可能性が高いです。その為、そのような事業を、他社に先駆けて作り上げることができれば、ビジネスにおいて強い競争力を持つことになります。一方で、他社の後追いになってしまうと、どうしても苦しい戦いをせざるを得ない状況になってしまいます。
脱炭素経営は事業承継に関わる問題
また、目標達成を前倒しで計画したほうがよい理由には、事業承継の問題も絡んできます。脱炭素経営は、これから国内の多くの中小企業に発生する、事業承継に大きく関わってくるからです。今、国内の多くの中小企業で、企業の後継者問題が深刻化していますが、どれだけ黒字経営の企業であっても、事業そのものや企業体質に魅力がなければ、後継者探しに苦労します。そういった意味では、この脱炭素の取り組みがどれだけされているかは、その企業や事業の将来性という観点で、ポジティブにもネガティブにも働きます。
脱炭素の取り組みを先送りしていると、事業承継の問題が発生した際に、課題となって立ちふさがるリスクがあることを、認識しておきましょう。
2050年に目指す姿とは
2050年の達成目標を、前倒しで計画するメリットについてお話してきましたが、改めて、2050年に企業が目指すべき姿とは何かを、再確認しましょう。まず、CO2排出量100%削減を達成している事が、脱炭素経営のゴールであることは言うまでもありません。その上で、企業として高い生産性と付加価値を有している状況でなければ、2050年に企業として存続する事は難しいでしょう。また、事業継続の観点からみても、CO2排出量削減だけでなく、枯渇リスクのある資源に依存しない状況も作り上げておく必要があります。また、忘れてはいけないのが、社会にもしっかりと貢献し、世の中から選ばれる事業であることです。
どうしてもこれらの姿をロードマップで描けない時は、事業整理も検討しなければいけないでしょう。脱炭素経営は足し算だけでなく、引き算の経営でもあり、将来性のある事業を見極める目も求められるのです。
まとめ
以上、ここまで、CO2排出量100%削減を実現する時期について、少し深堀って解説してきました。大事なことは、脱炭素の取り組みを先送りせずに、今の世代の問題として、積極的に取り組む姿勢です。遠い未来のようで、何もしていないとあっという間に来てしまう2050年に向けて、今から出来ることを計画立てて取り組んでいきましょう。
著者のプロフィール
- タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。