持続可能性と環境への配慮がビジネスの重要な要素となっている現代のビジネス環境において、中小企業が再生可能エネルギーを採用することは、多くのメリットをもたらします。再エネ100宣言RE Actionという取り組みは、中小企業が再生可能エネルギーの活用に向けた具体的な行動をとるための枠組みです。この記事では、中小企業が再生可能エネルギーを導入することのメリットと、RE ActionとRE100との違いについて詳しく説明します。

RE100とは

RE100は、企業が再生可能エネルギーのみを使用することを目指す国際的なイニシアチブです。RE100に参加する企業は、特定の期間内に100%の再生可能エネルギーの利用を達成することを目標に掲げます。これにより、企業は自社のエネルギー消費において化石燃料の使用を減らし、地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出削減に貢献します。

RE100の目的は、再生可能エネルギーの普及促進とグリーンエネルギーへの移行を加速することです。参加企業は、再生可能エネルギーの導入に向けた計画策定や実施を行い、自社のエネルギーミックスを持続可能なものに変革することを求められます。RE100に参加することで、企業は環境への取り組みを示し、持続可能性に関するリーダーシップを発揮することができます。

RE100への参加条件

RE100に参加するためには3つの要件があります。そのうちの2つ「使用電力の100%再生エネ化に向け目標を設定すること」「グループ全体での参加及び再エネ化にコミットすること」は厳しい要件ではありません。しかし、残り1つの要件によって多くの企業がRE100への参加を見送ることが多いのが現状です。ここで紹介するいずれかの条件を満たすことで、この要件を満たしたことになります。

認知度・信頼度の高さ

グローバルまたは国内での認知度や信頼度が高いとRE100事務局に認められた場合、要件を満たしたことになる場合があります。ただし、この認知度・信頼度の高さの判断はRE100事務局が行うので、明確な基準があるとは言えません。

年間の電力消費量

年間の電力消費量が100GWh以上の企業はこの要件を満たしたことになります。前述の条件と違い、これは明確な数字が示されており、わかりやすい基準と言えます。また、日本企業は特例でこの値が50GWhまで引き下げられています。

フォーチュン1000かそれに相当する多国籍企業

年間の電力消費量が100GWh未満でも、フォーチュン1000に掲載されている企業はこの要件を満たす可能性が高いです。フォーチュン1000とは、アメリカのビジネス誌Fortuneがまとめた、収益でランク付けされた1,000の米国企業です。フォーチュン1000に相当する多国籍企業も要件を満たすことになる可能性が高いです。

RE100の目的に寄与できる特徴や影響力

前述の条件を満たしていなくても、RE100事務局が「RE100の目的に寄与できる特徴や影響力」があると判断した場合、例外的に本要件を満たすことになる場合があります。例えば、RE100事務局が重視している地域・業種における主要な事業者であること、RE100事務局が重視している地域において政策提⾔に参加する意思があることなどが挙げれられます。

中小企業が再生可能エネルギーを使用するメリット

中小企業は、持続可能なエネルギー戦略の採用によって多くのメリットを享受できます。ここでは、中小企業が再生可能エネルギーを使用するメリットを3つ紹介します。

柔軟性と迅速な決定

中小企業は再生可能エネルギーを使用することで、「柔軟性と迅速な決定」の両面で重要な利点を得られます。中小企業は市場の需要変動や競争環境の変化に迅速に対応する必要があります。再生可能エネルギーの利用は、その柔軟性と迅速な決定を支援します。例えば、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーシステムを導入することで、電力供給を内部で制御し、需要ピーク時には自家消費することができます。

これにより、電力料金を削減するだけでなく、外部のエネルギープロバイダーに依存する必要がなくなります。さらに、需要の低い時には余剰電力をグリッドに売電することで収入を得ることも可能です。このような柔軟性によって、中小企業は需要変動に対して迅速かつ効果的に対応し、ビジネスの安定性と競争力を高めることができます。

地域との連携

再生可能エネルギーの採用は、「地域との連携」を促進します。中小企業は、地域の再生可能エネルギーインフラと連携することで相互の利益を最大化することができます。例えば、地域の太陽光発電施設や風力発電所とのパートナーシップを築くことで、中小企業は安定した電力供給を確保することができます。

また、地域の再生可能エネルギープロジェクトに参加することで、地域との協力関係を構築し、地域社会における信頼と支持を得ることも可能です。さらに、地域の再生可能エネルギー政策や補助金制度に積極的に参加することで、中小企業は経済的なメリットを享受し、地域との連携を強化することができます。

市場展開の拡大

再生可能エネルギーの導入は、中小企業の「市場展開の拡大」につながります。近年、環境に配慮した製品やサービスに対する需要が増加しています。中小企業が再生可能エネルギーを活用することで、環境に優しいビジネスモデルを提供し、市場での競争力を強化することができます。

また、再生可能エネルギーの利用は、企業のイメージ向上とブランド価値の向上にもつながります。消費者は環境に対する意識が高まっており、環境に配慮した企業に対して支持を示す傾向があります。中小企業が再生可能エネルギーを積極的に採用し、その取り組みを広くアピールすることで、顧客の信頼を得ることができ、新たな市場への進出や顧客基盤の拡大が可能となります。

RE100の中小企業版「再エネ100宣言 RE Action」とは

前述の通り、RE100は主に大企業を対象としています。そのため、中小企業はRE100への参加にはハードルが高い場合があります。そこで、中小企業向けにRE100の理念を基にした新たな取り組みが生まれました。それが「再エネ100宣言RE Action(以下、RE Action)」です。RE Actionは2019年に日本で設立された団体で、中小企業が自身の状況に合わせた再生可能エネルギーの導入に向けた具体的な行動をとることを支援するための枠組みです。RE100にも推奨されている団体で2023年6月末日現在、328団体が参加しています。

RE100と「再エネ100宣言 RE Action」の違い

参加企業・団体は、使用する電力を100%再エネ化するという共通点を持っているRE100とRE Actionですが、明確な違いがあります。それは参加要件の一つです。RE Actionには前述のRE100にある要件の一つがありません。そのため、中小企業や自治体でも参加することが可能となっています。

「再エネ100宣言 RE Action」への参加要件

ここでは、具体的にRE Actionへの参加要件について解説します。要件は大きく分けて3つあります。

2050年までに使用電力を100%再エネに転換する目標の設定

1つ目の要件は、「遅くとも2050年までに使用電力を100%再エネに転換する目標を設定し、対外的に公表すること」です。参加団体自身のWebサイトへ宣言内容を掲載する必要があります。RE Actionはプレスリリース等の実施を推奨しています。

また、RE100と同じく中間目標の設定が推奨されています。加えて、「使用電力が再エネ100%になっていなくても参加可能」とRE ActionのWebサイトには明記されています。

再エネ推進に関連した政策エンゲージメントの実施

2つ目の要件は。「再エネ推進に関する政策エンゲージメントの実施」です。RE Action参加企業は再生可能エネルギーの普及に関する政策提言への賛同が求められます。協議会構成団体などが支援する予定とされています。

消費電力量を毎年報告すること

3つ目の要件は、「消費電力量、再エネ率等の進捗を毎年報告すること」です。ここでの再エネの定義は、RE100運営団体The Climate Groupが定めている基準に準じます。例えば、太陽光発電の電力を自家消費している場合はカウントできますが、固定価格買取制度(FIT)などで売電したものはカウントできません。使用電力に環境価値があるかをよく確かめる必要があります。

RE Action参加団体からの報告は、年次報告書などに記載されます。記載内容は、消費電力量の全団体集計値や各団体の再エネ率などです。

「再エネ100宣言 RE Action」への参加特典

RE Action参加団体にはいくつかの特典があります。それらを活用することで企業・団体に大きなメリットをもたらすことができます。

ロゴの利用

RE Action参加団体はWebサイトや名刺、看板、などにRE Actionのロゴを使用することができます。ただし、商品への添付など営業目的での使用は認められていません。RE Actionロゴの使用は、再生可能エネルギーの普及に取り組んでいることの明確な目印となります。特に企業においては、環境への取り組みをアピールし、企業の信頼性や競争力を高めるための重要な手段となり得ます。ここでは企業が具体的にどのようなメリットを得られるのか4つ紹介します。

①環境リーダーシップの発揮:再生可能エネルギーの普及は、地球温暖化や気候変動といった環境問題に対する解決策の一つです。対外的に再生可能エネルギーに積極的に取り組んでいると示すことで、弊団体は環境リーダーシップを発揮している姿勢をアピールすることができます。これにより、弊団体の環境への取り組みに共感するステークホルダーや顧客の信頼を獲得し、企業価値の向上につなげることができます。

②持続可能性への取り組みの証明:再生可能エネルギーの普及は、長期的な持続可能性に向けた取り組みの一環です。弊団体が再生可能エネルギーに積極的に取り組んでいることを示すことで、環境への負荷を軽減し、社会的な利益を追求する企業としての姿勢を証明することができます。これにより、投資家や金融機関からの支援や資金調達の機会を増やすことができる他、CSR(企業の社会的責任)やESG(環境・社会・ガバナンス)への適合性を示すことも可能です。

③競争力の向上:再生可能エネルギーは、ビジネスにおいて競争力を向上させる要素となります。対外的に再生可能エネルギーの普及に積極的に取り組んでいることを示すことで、環境に配慮した製品やサービスを提供しているというイメージを構築し、顧客の支持を得ることができます。また、再生可能エネルギーの利用は、エネルギーコストの削減や安定した電力供給をもたらすため、企業の運営効率を向上させることもできます。

④政府や地域社会との連携強化:再生可能エネルギーの普及には、政府や地域社会との連携が重要です。対外的に再生可能エネルギーへの積極的な取り組みを示すことで、地域社会や関係機関とのパートナーシップを構築しやすくなります。地域の再生可能エネルギー政策や補助金制度に参加し、協力関係を築くことで、さらなるビジネスチャンスや支援を受けることができます。

ウェブコンソーシアムへの参加権

RE Action参加特典の2つ目は、ウェブコンソーシアムへの参加権を得られることです。RE Actionでは過去に何度か参加団体を対象としたコンソーシアムが行われています。このコンソーシアムに参加することで、再生可能エネルギーに関する新たな知見を得たり、ビジネスチャンスにつなげたりなどが期待できます。

まとめ

本記事では、RE100への参加要件、RE Actionへの参加要件、それぞれの違い、中小企業が再生可能エネルギーを使用することのメリットについて詳しく解説しました。RE100はハードルが高いという中小企業や自治体はRE Actionに参加することでRE100に参加するのと近しいメリットを得ることができます。

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著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。