近年、地球温暖化や環境問題への対応がますます重要視されており、企業や国家レベルで再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取り組みが進められています。再生可能エネルギーは、地球上に豊富に存在する自然のエネルギー源を利用して発電し、化石燃料の使用を削減するエコフレンドリーな方法です。その普及は、持続可能な社会の構築とエネルギー安全保障の確保につながります。

また、再生可能エネルギーの普及は、単なる環境への配慮だけでなく、ビジネスにおける競争力の強化や企業のブランド価値向上にもつながる重要な要素となっています。本記事では、再生可能エネルギーの概要、再生可能エネルギーの種類、S+3E、エネルギーミックス、2030年度目標について解説します。

再生可能エネルギーとは

再生可能エネルギーとは、地球上に無尽蔵に存在する自然のエネルギー源を利用して得られる持続可能なエネルギーのことを指します。これは化石燃料に代わるエネルギー供給源として、地球温暖化や気候変動といった環境問題への対応が急務となる現代社会において、ますます重要視されています。ここでは、再生可能エネルギーが持つ5つの特徴について解説します。

持続可能性

再生可能エネルギーは枯渇の心配がなく、地球上に豊富に存在する風や太陽、水などの自然の力を利用します。これに対して、化石燃料は有限の資源であり、その枯渇が懸念されています。

地球環境への負荷軽減

再生可能エネルギーの利用は、二酸化炭素(CO2)やその他の温室効果ガスの排出を削減します。これにより、地球温暖化や気候変動による影響を緩和し、環境への負荷を軽減します。

エネルギー安全保障の確保

再生可能エネルギーは地域の自給自足を促進し、エネルギーの供給安定性を高めることができます。これにより、外部のエネルギー供給に依存するリスクを低減します。

雇用創出と経済成長

再生可能エネルギー産業の成長は、新たな雇用を生み出し、地域経済の活性化に寄与します。研究開発や技術革新の促進により、ビジネスチャンスが拡大します。

地域社会との連携

再生可能エネルギーは、地域社会との協力によってより効果的に実施されます。地元住民の参画や共同プロジェクトの推進により、再生可能エネルギーの受け入れや普及が進みやすくなります。

再生可能エネルギーの種類

ここでは、5つの再生可能エネルギーについて解説します。

太陽光発電

太陽光発電とは、太陽の光エネルギーを直接電力に変換する方法です。この発電方式は、太陽光パネル(ソーラーパネル)を用いて、太陽光を受け取り、光子のエネルギーを電子に変換することで発電します。

具体的には、太陽光パネルの表面にあるシリコンなどの半導体素材が、太陽光を受けることで電子を放出します。これにより、直流の電力が生成されます。その後、インバーターを使用して直流を交流に変換し、家庭や企業の電力需要に供給します。太陽光発電の特徴やメリットについて以下に解説します。

①再生可能性
太陽光は枯渇の心配がなく、地球上に豊富に存在するため、持続可能なエネルギー源として高い評価を受けています。環境への負荷軽減: 太陽光発電は二酸化炭素やその他の有害なガスの排出をほとんど行わないため、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減に貢献します。

②分散型発電
太陽光発電は個々の家庭やビルに設置することができ、分散型の発電が可能です。これにより、送電損失を減らし、地域のエネルギーセキュリティを向上させます。

③長寿命とメンテナンスの簡便性
太陽光パネルは長期間の使用が可能であり、定期的なメンテナンスが必要ないことから、運用コストが低いという利点があります。

風力発電

風力発電は、風の力を利用して発電する方法であり、特に風が豊富な地域では効果的な再生可能エネルギーの一つです。風力発電は、風車(ウィンドタービン)を用いて風のエネルギーを回転エネルギーに変換し、それを発電機で電力に変換します。

具体的には、風車のブレードが風を捉え、回転エネルギーを発生させます。この回転エネルギーを発電機に伝達し、回転エネルギーを電力に変換します。発電機は発電所の中心に設置されており、複数の風車が集まって一つの発電所を構成することが一般的です。以下が風力発電の主な特徴とメリットです。

①再生可能性
風は地球上のあらゆる地域で発生する再生可能なエネルギー源であり、風力発電は持続可能な電力供給を実現します。

②環境への負荷軽減
発電過程において化石燃料を使用しないため、二酸化炭素やその他の汚染物質の排出を大幅に削減します。

③スケーラビリティ
風力発電は発電所の規模を容易に拡張できるため、需要に応じて柔軟に対応することができます。

④地域経済の活性化
風力発電所の建設や運用に伴い、地域経済の活性化と雇用機会の増加が期待されます。

地熱発電

地熱発電は、地球の地熱エネルギーを利用して発電を行う再生可能エネルギーの一つです。地熱エネルギーは地下に蓄えられた熱を利用しており、特に地熱が豊富な地域で有効な発電方法となっています。地下深くにある高温の地熱水や蒸気を地上に汲み上げ、蒸気をタービンに導きます。この蒸気のエネルギーによってタービンが回転し、発電機によって電力に変換されます。地熱発電の特徴とメリットは以下の通りです。

①持続可能性
地熱エネルギーは地球の内部に無尽蔵に存在し、再生可能なエネルギー源として長期間にわたり利用が可能です。

②安定した発電
天候に左右されないため、風力発電や太陽光発電のような気象条件に左右されず、安定した電力供給が可能です。

③熱利用
地熱発電プラントでは、発電過程で余剰となる熱を利用して地域の暖房や温泉施設の供給にも活用することができます。

水力発電

水力発電は、水の流れを利用して発電する再生可能エネルギーの代表的な形態です。特に河川やダムなど水の豊富な場所では、安定した発電が可能です。水力発電所では、水を高所から低所へと導くことで、そのエネルギーを利用してタービンを回転させます。水のエネルギーによって回転したタービンは発電機を駆動し、電力を生成します。水の流れを調整することで発電量を制御することができます。水力発電の特徴とメリットは以下の通りです。

①再生可能性
水は自然のサイクルで常に再生されるため、水力発電は無限に利用が可能な再生可能エネルギー源です。

②安定した発電
水の供給が安定している場合、気象条件に左右されず、連続して安定した電力供給が可能です。

③調整可能性
水流量の調整により発電量を調整できるため、電力需要に応じた柔軟な発電が可能です

バイオマス発電

バイオマス発電は、植物のバイオマスや廃棄物などの有機物を燃料として利用して発電する再生可能エネルギーの一つです。廃棄物の再利用やエネルギーの確保に貢献しています。バイオマス発電所では、木材や農業廃棄物、家畜の排泄物などのバイオマスを燃料として燃焼させ、それによって発生する熱を利用して蒸気を発生させます。この蒸気をタービンに導き、回転エネルギーを発電機で電力に変換します。バイオマス発電の特徴とメリットは以下の通りです。

①再生可能性
バイオマスは自然の循環によって再生されるため、再生可能なエネルギー源です。

②創出されるバイオマスの再利用
農業や林業の副産物や廃棄物を利用することで、廃棄物の処理にかかるコストを削減し、環境への負荷を軽減します。

③二酸化炭素の中和
バイオマス発電によって排出される二酸化炭素は、植物の成長によって吸収されるため、燃焼による二酸化炭素の中和効果があります。

④エネルギーの地産地消
バイオマスは地域内で生産・供給が可能なため、エネルギーの地産地消が促進されます。

エネルギーミックスとは

エネルギーミックスとは、複数の発電方法を効率的に組み合わせ、社会に必要な電力を供給する考え方です。電力供給の安定性、経済的効率性、環境への適合、そしてエネルギーの安全性を同時に追求することが目指されています。

エネルギーミックスが日本で強く意識されるようになった背景は、1973年の第1次オイルショック(石油危機)にあります。このショックは、第4次中東戦争が原因で、急激な原油価格の高騰と世界経済の混乱をもたらしました。日本でもインフレが発生し、石油に頼るエネルギー政策の脆弱性が浮き彫りとなりました。

当時の日本のエネルギー構成では、石油が80%近くを占めるほど主要なエネルギー源でした。この状況により、エネルギー政策の多様化とエネルギーミックスが重要視されるようになりました。1973年に打ち出された政策には、石油の戦略的備蓄、省エネルギー技術開発(ムーンライト計画)、再生可能エネルギー技術開発(サンシャイン計画)、そして電源種の多様化(エネルギーミックス)が含まれていました。

S+3Eとは

現在のエネルギー政策の基本理念は、「S+3E」と呼ばれています。これは、エネルギー政策の立案や実施において重要な要素を示す概念です。具体的には以下のような意味があります。

安全性 (Safety)

エネルギーの供給が安定していることは社会にとって極めて重要です。日本のように国産資源に乏しい国では、エネルギー資源のほとんどを海外から輸入しています。エネルギーミックスにおいては、エネルギー自給率を向上させることが安全性の観点から意識されています。また、原子力発電所などの高リスク施設においても、安全性の確保が最優先されます。

安定供給 (Energy Security)

エネルギーミックスは、エネルギーの供給を安定させるためにも重要です。一つのエネルギー源に過度に依存することなく、複数の発電方法を組み合わせることで、供給リスクを分散し、安定した電力供給を実現します。

経済効率性 (Economic Efficiency)

エネルギーの供給コストは経済に大きな影響を及ぼします。エネルギーミックスでは、発電コストを十分に考慮することが必要です。効率的なエネルギー利用により、電気料金の上昇を抑え、国民生活への影響を最小限に抑えることが目指されています。

環境への適合 (Environment)

現在の地球温暖化や気候変動の課題に直面する中、エネルギーミックスは環境への適合性を重視します。再生可能エネルギーや低炭素発電など、地球環境に負荷をかけない発電方法へのシフトが求められています。これにより、二酸化炭素の排出削減や脱炭素社会の実現に寄与します。

2030年度目標とは

2021年10月22日、岸田文雄内閣は「第6次エネルギー基本計画」を閣議決定し、日本のエネルギー政策に新たな方向性を打ち出しました。この計画では、菅義偉前首相による「2050年カーボンニュートラル宣言」を再確認し、より具体的な取り組みとして2030年度に向けた目標を掲げています。

その中心となる目標は、2030年度までにCO2排出量を2013年度比で46%削減することです。さらに、50%削減を目指す高みを目標に掲げ、持続的な未来を築くための挑戦を続けることが明示されています。また、2030年度のエネルギーミックスに関して、以下のような見通しを立てています。

①再生可能エネルギーの導入拡大
再生可能エネルギーの導入を積極的に推進することが目指されています。太陽光発電や風力発電、地熱発電、水力発電、バイオマス発電など、地球温暖化に対する影響が少なく、持続可能なエネルギー源として高く評価されている再生可能エネルギーのシェアを拡大することで、CO2排出の削減に貢献します。

②原子力発電の維持と安全性確保
原子力発電は長年にわたって日本の電力供給に重要な役割を果たしてきました。2030年度においても、原子力発電の一定のシェアを維持し、エネルギーミックスの安定性を確保することが考慮されています。ただし、原子力発電所の安全性を向上させることが不可欠であり、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けての教訓を生かし、厳格な安全対策が実施されます。

③脱石炭への移行
石炭火力発電はCO2排出量の多い発電方法として課題となっています。エネルギーミックスの見直しにより、脱石炭への移行が進められ、低炭素社会の実現に向けた取り組みが進むことが期待されています。

④エネルギー効率の向上
エネルギー効率の向上はエネルギーミックスにおいて重要な要素です。省エネルギー技術の導入やエネルギー使用の最適化により、電力の消費を削減し、効率的なエネルギー利用を図ります。

⑤社会全体の意識啓発
エネルギーミックスの見直しには、社会全体の意識啓発が欠かせません。持続可能なエネルギーの重要性や個人・企業のエネルギー使用に対する責任についての理解を深めるための情報発信と啓発活動が展開されます。

まとめ

本記事では、再生可能エネルギーの種類、エネルギーミックス、S+3E、2030年度目標について解説しました。2030年度目標を達成するためには多くの課題がありますが、エネルギーミックスやS+3Eが非常に有効な考えとなってきます。また、日本の再生可能エネルギー事情については日々変わっていくので、最新の情報を常時取り入れることが重要です。

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著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。