現代のビジネスにおいて、環境への配慮と持続可能性がますます重要視されるようになっています。その中でも、再生可能エネルギーの活用は、環境への負荷を軽減し、エネルギーの安定供給を図るための重要な手段となっています。日本において、再生可能エネルギーの普及を促進するために導入された制度が「固定価格買取制度」です。通称、FIT制度と呼ばれます。

FIT制度は、再生可能エネルギーの発電施設を導入した事業者に対して、一定期間にわたり固定された価格で発電した電力を買い取る仕組みを指します。この制度は、再生可能エネルギーの導入を奨励し、既存の化石燃料に依存するエネルギー構造からの転換を目指すものとして、日本国内のエネルギー政策に大きな影響を与えています。本記事では、再生可能エネルギー、FITとは、FITのメリット・デメリット、FIT終了について詳しく解説します。

再生可能エネルギーとは

再生可能エネルギーは、地球上に存在する自然の資源を利用して持続可能なエネルギーを生み出す方法です。主要な再生可能エネルギーの種類を以下に4つ紹介します。

太陽光エネルギー

太陽光エネルギーは、太陽から放射される光を利用して電力を生み出す再生可能エネルギー源です。太陽光発電システムを使用して、太陽光を直接受け取り、光エネルギーを電気に変換します。太陽光発電は屋根に設置された太陽光パネルや、大規模な太陽光発電所によって実現されます。特に日照の豊富な地域では非常に効率的で、電力供給の安定化に貢献します。

太陽光発電のメリットは、再生可能な資源であるため地球環境への負荷が少なく、発電中に二酸化炭素を排出しないことです。また、太陽光の普遍的な性質から、広範囲にわたって利用が可能で、分散型のエネルギー供給に適しています。一方で、天候による発電量の変動や初期投資の費用などが課題として挙げられます。

風力エネルギー

風力エネルギーは、風車や風力タービンを使用して風の運動エネルギーを電力に変換する再生可能エネルギー源です。風力発電は特に風の強い地域に適しており、風力発電所が設置されています。風車は回転し、発電機を駆動して電気を生成します。

風力発電の最大の利点は、再生可能なエネルギー源であることと、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しないことです。また、風の強い地域を有効活用することで、持続的な電力供給を実現します。風力発電は他の再生可能エネルギーと同様に、地球温暖化防止に寄与する重要な手段となっています。ただし、風の安定性による発電量の変動や、風力発電所の設置における景観への影響が課題とされています。

水力エネルギー

水力エネルギーは、水の流れや高低差を利用して水車や水力タービンを回し、発電する再生可能エネルギー源です。水力発電所は、主にダムを建設して水を貯め、その水の落差を利用して発電します。日本では多くの水力発電所が稼働しており、再生可能エネルギーの中で最も古くから普及している分野の一つです。

水力発電の大きな利点は、水の流れを利用して持続的に発電できることです。また、二酸化炭素を排出せず、エネルギーの安定供給が可能です。特に豪雪地帯など、豊富な水資源を有する地域で有効なエネルギー源として活用されています。ただし、ダム建設による環境への影響や、土地利用の制約が問題となることもあります。

バイオマスエネルギー

バイオマスエネルギーは、植物や動物の残渣、家畜のふん尿などの有機物から得られる再生可能エネルギーです。これらの有機物を燃焼させることで発電や熱供給を行います。また、有機物を発酵させてバイオガスを生成する技術もあります。

バイオマスエネルギーの利点は、廃棄物や農産物の残渣を有効活用できる点や、二酸化炭素の再吸収による温室効果ガスの削減が挙げられます。地域ごとの資源を活用し、エネルギーの自給自足を目指すことができる点が重要です。しかし、バイオマスエネルギーの供給には季節や収穫の影響を受けることや、競合する用途(食料生産など)との兼ね合いが課題となる場合があります。

FITとは

FITとは、「Feed-in Tariff(フィードイン・タリフ)」の略称であり、再生可能エネルギーの固定価格買取制度のことを指します。再生可能エネルギーの普及を促進し、持続可能なエネルギー社会の実現を目指すために、日本など世界各国で導入されている重要な政策の一つです。

FIT制度は、再生可能エネルギーを導入した事業者が発電した電力を、政府や電力会社が一定期間にわたり固定された価格で買い取る仕組みです。これにより、再生可能エネルギーの導入における事業者のリスクを低減し、投資意欲を高めることが狙いとされています。

FITの仕組み

ここでは、FITの仕組みを4つのステップに分けて解説します。

①固定価格での買取保証
FIT制度では、再生可能エネルギーの発電事業者に対して、事前に政府や電力会社が発電した電力の価格を固定して保証します。この価格は一定期間(多くは20年程度)にわたって変更されず、安定した価格で電力を買い取ることが約束されます。これにより、再生可能エネルギーの導入において投資リスクを軽減し、収益の見通しを明確化する効果があります。

②買取価格の算定
FIT制度において、再生可能エネルギーの発電施設から得られた電力の買取価格は、各国のエネルギー政策や技術の進化に応じて定期的に見直されます。一般的に、導入初期は高めの価格設定が行われ、技術の成熟と共に徐々に下がる傾向が見られます。これによって、新しい技術の導入を促進し、競争力のある再生可能エネルギーの普及を支援しています。

③供給優先権の保証
FIT制度では、再生可能エネルギー発電所が発電した電力は優先的に電力網に供給されることが保証されます。これにより、再生可能エネルギーの発電施設が優先的に電力を供給することができ、他の発電施設よりも安定的に売電収入を確保できるメリットがあります。

④FIT制度の運営
FIT制度は、政府やエネルギー機関が担当する場合が多いですが、地域によっては民間の発電事業者と連携して運営するケースもあります。制度の運営においては、再生可能エネルギーの導入促進や電力供給の安定化を考慮し、適切な価格設定や制度の見直しが行われます。

FITのメリット

FIT制度の導入には、再生可能エネルギーの普及を加速させる多くのメリットがあります。以下にそれを「再生可能エネルギー普及の加速」「環境へのプラス」「グリーンビジネスの成長」「エネルギー供給の安定化」の4つに分けて詳しく解説します。

再生可能エネルギー普及の加速

FIT制度は、再生可能エネルギーの導入を促進し、普及を加速させる効果があります。発電事業者が一定期間にわたり固定された価格で電力を売却できることから、投資リスクが低減します。これにより、新たな再生可能エネルギーのプロジェクトが着手されやすくなります。また、FIT制度によって再生可能エネルギーの導入が盛んになると、技術の進化やコストの削減が促進され、より効率的なエネルギーの利用が進むことが期待されます。

環境へのプラス

FIT制度の最大のメリットは、再生可能エネルギーの利用による環境へのプラスです。再生可能エネルギーは、化石燃料を使用しないため、二酸化炭素やその他の温室効果ガスの排出がほとんどありません。これにより、地球温暖化や気候変動などの環境問題への対応に大きく貢献します。また、化石燃料の利用が減少することで、酸性雨や大気汚染など、地球環境に対する負荷を軽減する効果も期待されます。

グリーンビジネスの成長

FIT制度の導入により、再生可能エネルギーを活用したグリーンビジネスが成長します。再生可能エネルギーの導入は新たな産業を生み出し、雇用の創出を促進します。例えば、太陽光発電や風力発電の設置や運用には技術者やメンテナンススタッフが必要となり、地域経済に波及する効果が期待されます。また、再生可能エネルギー技術の進化により、これらの発電施設の建設・運営におけるコストが低減することで、さらなる成長が期待されます。

エネルギー供給の安定化

再生可能エネルギーは、自然の資源に基づいて発電するため、地球上に豊富に存在し、無限に利用が可能です。化石燃料のように枯渇する心配がないため、エネルギー供給の安定化に寄与します。また、再生可能エネルギーの発電は分散型であるため、複数の発電施設が地域に点在することで、大規模な停電リスクを低減する効果もあります。災害時などには非常に重要なエネルギー供給源となります。

FITのデメリット・課題

FITには前述の通り、多くのメリットがあります。しかしながら、反対にデメリットやまだ解決されていない多くの課題があるのも事実です。ここでは、それらのデメリットや課題に関して解説します。

再生可能エネルギー発電促進賦課金

再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下再エネ賦課金)は、FIT制度や固定価格買取制度において、再生可能エネルギー発電事業者が保証された価格で電力を売却する際に発生する費用を賄うための仕組みです。再エネ賦課金は、電力会社の電気料金に含まれており、使用者である一般の電力消費者がこの負担を背負います。つまり、電力会社が再生可能エネルギーの電力を買い取る費用を国民が負担する制度となります。

再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの導入を促進する一方で、電気料金の上昇という課題を浮き彫りにしています。FIT制度の普及が進むにつれて、再エネ賦課金の負担も増大するため、電気料金が上昇する可能性があります。一部の再生可能エネルギーの導入が急速に進んだ地域では、電気料金の増加が一般の家庭や企業に影響を及ぼすこともあります。そのため、再エネ賦課金の適切な設計と運営が重要とされています。

また、再エネ賦課金はFIT制度によって支払われる電力価格との差額を補填するための仕組みでもあります。FIT制度では、一定期間にわたって再生可能エネルギーの電力価格が固定されていますが、再生可能エネルギーの導入による電力コストが高い場合や、電力市場価格との差が生じた場合には、再エネ賦課金を通じてその差額を補填することが行われます。

再エネ賦課金の課題としては、FIT制度の導入拡大や新たな再生可能エネルギー技術の導入に伴い、負担額が増加する可能性がある点が挙げられます。また、再エネ賦課金によって賄われる費用は電気料金に含まれるため、再生可能エネルギーを利用しない家庭や企業もその負担を抱えることになります。これらの課題に対応するためには、再エネ賦課金の適切な設定や運用、電力供給の均衡化などが検討され、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた取り組みが求められています。

買取期間満了後の課題

FIT制度は、一定期間の買取保証を提供するものであり、買取期間満了後には買取価格が大幅に下がることが課題となります。この期間満了後に、再生可能エネルギー発電事業者が収益を確保するためには、新たな収入源やビジネスモデルの構築が必要となります。再エネ賦課金を活用したり、自家消費やエネルギー貯蔵技術の導入などが検討されています。

予算と財政面の課題

FIT制度の運営には膨大な費用が必要であり、政府の予算や財政に負担をかけることがあります。再生可能エネルギーの普及を促進するためには、FIT制度の継続的な予算確保が必要ですが、それによる財政的な課題も存在します。適切な予算配分と財政管理が求められる一方で、FIT制度の長期的な継続を確保するためには、財政的な持続性を考慮した施策の立案が必要です。

不均衡な技術発展

FIT制度の導入により、一部の再生可能エネルギー技術が優遇され、その他の技術が後回しにされる可能性があります。例えば、太陽光発電や風力発電は比較的導入が進んでいる一方で、地熱発電やバイオマス発電などの技術は導入が遅れている場合があります。技術の多様性を考慮し、均衡の取れた技術発展を促進することが重要です。

資源と土地の制約

再生可能エネルギーの普及には、一部の再生可能エネルギー資源や適地が限られていることが課題となります。特に地熱発電や海洋エネルギーなどは特定の地域に限られた資源を必要とするため、全国規模での普及には制約が生じます。また、再生可能エネルギー発電所の設置には広大な土地が必要となることがあり、土地の利用に関する課題も浮上しています。

まとめ

本記事では、再生可能エネルギー、FITとは、FITのメリット・デメリット、FIT終了について詳しく解説しました。FITを導入する際は、デメリットや課題に関しても十分に把握しておくことが重要です。

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著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。