現代のビジネス環境では、環境への負荷を最小限に抑える持続可能なエネルギー源への移行が喫緊の課題となっています。地球温暖化や化石燃料の枯渇などの問題に対処するため、再生可能エネルギーの利用拡大はますます重要となっています。日本においても、再生可能エネルギーの普及促進を目指し、政府は「再エネ特措法」を制定しました。本記事では、再生可能エネルギーとは、再エネ特措法が制定された背景・目的、再エネ特措法の詳しい内容について解説します。

再生可能エネルギーとは

再生可能エネルギーは、地球上の自然なプロセスによって持続的に生成されるエネルギー源の総称です。これらのエネルギー源は化石燃料とは異なり、使用量に応じて再生・再生産されるため、枯渇の心配がありません。また、再生可能エネルギーの利用により、二酸化炭素や他の温室効果ガスの排出が少なく、地球温暖化や気候変動といった環境への悪影響を軽減することが期待されています。

再生可能エネルギー源は、持続可能なエネルギー供給を実現し、従来の化石燃料に依存するエネルギーシステムからの転換に向けて重要な役割を果たしています。再生可能エネルギーの導入には、技術革新、導入コストの低減、インフラ整備、規制や政策の整備などさまざまな課題がありますが、これらの課題に取り組むための枠組みとして、「再エネ特措法」が日本政府によって制定されました。

再生可能エネルギーに関する法律「再エネ特措法」とは

「再エネ特措法」とは、正式名称を「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」といい、日本において再生可能エネルギー電気の固定価格買い取りを定めた法律です。この法律は2012年7月1日に施行され、略称として「再生エネルギー特別措置法」や「FIT法」とも呼ばれます。

以前に施行されていた「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」の後継として、再生可能エネルギー全体に適用される固定価格買い取り制度を義務化したものであり、2022年4月1日に改正され、「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」となりました。

「再エネ特措法」が制定された背景

2003年に施行された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」は、再生可能エネルギーの利用拡大に一定の効果をもたらしましたが、他国と比較して普及速度はあまり進まなかったのが実情でした。そのため、より効果的な再生可能エネルギーの導入を求める声が高まり、2009年11月から自家用太陽光発電の余剰電力買取制度が開始され、これを再生可能エネルギー全体に適用するために「再エネ特措法」が策定されました。

また、背景には2011年3月11日の東日本大震災があります。震災以前に考案された時点で、主要化石エネルギー源の価格変動や政治的リスクを緩和するためのエネルギー安定供給、地球温暖化対策としての温室効果ガス排出量削減、そして世界的に拡大している環境産業の育成(再生可能エネルギー特有の分散型電源導入に伴うスマートグリッド産業も含む)という3つの主要な目的が掲げられました。これらの目的を達成するため、再エネ特措法の制定が行われました。

さらに、震災後には福島第一原子力発電所事故により、日本の原子力発電所の安全性問題が浮上し、原子力利用の是非について社会的な議論が起こりました。同時に、震災による発電施設の被害と原発稼働率の低下によって電力危機が発生し、エネルギーを取り巻く環境が大きく変わりました。これらの事態への対応として、エネルギー基本計画の変更が行われる場合には再エネ特措法の制度も再検討されることが規定されました。

「再エネ特措法」の目的

「再エネ特措法」の目的は、第一条に明記されています。ここでは、その目的を分かりやすく言い換えます。この法律の目的は、再生可能エネルギーの利用を促進し、国際競争力の向上や産業の振興、地域の活性化、そして国民経済の健全な発展に寄与することです。そのために、電気事業者が再生可能エネルギー電気を適正価格で長期間にわたって調達できるよう特別な措置を講じます。

対象の再生可能エネルギー源

ここでは、再エネ特措法が対象としている再生可能エネルギー源について詳しく解説します。その主なエネルギー源は5つあります。

太陽光

太陽光発電は、太陽から放射される光を直接電力に変換する技術です。太陽光パネルは、光子が電子を励起させる光起電効果を利用して直流電力を生成します。直流電力は変換装置を通して交流電力に変換され、一般の家庭や企業で使用する電力に供給されます。日照条件による影響を受けるため、日照の豊富な地域や屋根面積を利用して太陽光発電が広く導入されています。

風力

風力発電は、風車や風力タービンを利用して風のエネルギーを回転エネルギーに変換し、発電機を駆動して電力を生み出します。風の強さによって発電量が変動することがありますが、風が吹く限り持続的な電力供給が可能であり、特に風の豊富な沿岸地域や高地においては効果的な再生可能エネルギーとして活用されています。

水力

水力発電は、水の流れを利用して発電する方式であり、川やダム、潮流などを活用してエネルギーを取り出します。大規模な水力発電所から小規模な水力発電まで、さまざまな規模で導入されています。水力発電は再生可能エネルギーの中でも最も古くから利用されており、エネルギーの安定供給に貢献しています。ただし、再エネ特措法の対象は3万kW未満の水力となっています。

地熱

地熱エネルギーは地球の内部に蓄えられた熱を利用して発電する手法です。地下深くの高温地帯から湧き出る蒸気や温水を利用してタービンを回し、発電を行います。地熱エネルギーは地熱発電所だけでなく、地熱ヒートポンプを用いた暖房や冷房にも利用されており、エネルギーの効率的な利用が可能です。

バイオマス

バイオマスエネルギーは、植物や動物の有機物をバイオマスとして利用して発電や暖房に使うエネルギー源です。廃棄物や農業副産物をエネルギーとして有効活用することで、再生可能なエネルギー源としてのポテンシャルがあります。バイオマス発電やバイオエタノールなど、さまざまな技術が開発されています。ただし、再エネ特措法での対象は、動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるものとしています。つまり、原油や石油ガス、可燃性天然ガス、石炭とこれらから作られている製品は対象外です。

その他

先述のエネルギー源以外では、政令で指定されたエネルギー源以外の、電気のエネルギー源として永続的に利用可能なものも対象となります。これには原油、石油ガス、可燃性天然ガス、石炭、およびそれらから製造される製品は含まれません。

「再エネ特措法」の内容

ここでは、「再エネ特措法」の詳しい内容について解説します。

調達価格と調達期間

調達価格と調達期間に関しては、第三条に書かれています。経済産業大臣が、毎年度の開始前に再生可能エネルギー電気の調達に関して、電気事業者が行う調達価格と調達期間を定めます。これは再生可能エネルギー発電設備の区分、設置の形態、規模ごとに1キロワット時当たりの価格(調達価格)と調達期間を指定するものです。ただし、供給量や費用の変動を考慮して、必要に応じて半期ごとに調達価格と調達期間を再評価することができます。

調達価格は、再生可能エネルギー電気の供給を効率的に実施するために必要な費用と見込まれる供給量に基づいて定められます。特定供給者が受けるべき適正な利潤や、既存の供給者がかかる費用なども考慮されます。

調達期間は、再生可能エネルギー発電設備の供給開始から、重要な部分の更新が行われるまでの通常の期間を基準に定められます。経済産業大臣は、賦課金の負担が電気の使用者に過重にならないように留意しつつ、調達価格と調達期間を定める際に関連する省庁と協議し、調達価格等算定委員会の意見も尊重して通知します。また、告示後は速やかに調達価格等の内容や算定方法を国会に報告します。経済産業大臣は、物価や経済事情に大きな変動がある場合に改定することも可能です。

特定契約の申込み

調達価格と調達期間に関しては、第四条に書かれています。電気事業者は、特定供給者から再生可能エネルギー電気を特定期間(当該再生可能エネルギー電気が他の電気事業者に既に供給されていた場合や、経済産業省令で定める場合は、省令で指定された期間)にわたり供給する契約(特定契約)の申込みを受けることがあります。ただし、特定契約が電気事業者の利益に不当に害を及ぼすおそれがある場合や、経済産業省令で定められた正当な理由がある場合を除いては、電気事業者は特定契約の締結を拒むことはできません。

また、経済産業大臣は、電気事業者が円滑に特定契約を締結できるように必要な指導や助言を行うことがあります。さらに、経済産業大臣は、正当な理由がないのに特定契約を拒む電気事業者に対して、特定契約の締結を行うよう勧告することができます。加えて、経済産業大臣は、前項の勧告を受けた電気事業者が正当な理由なく勧告に従わなかった場合、その電気事業者に対して勧告に従うように命じることができます。

接続の請求

接続の請求に関しては、第五条に書かれています。特定規模電気事業者を除く電気事業者は、特定供給者から特定契約を申し込もうとする際に、特定供給者の認定発電設備と電気事業者が使用する変電用、送電用、または配電用の電気工作物とを電気的に接続する要求を受けた場合、その接続を拒否してはいけません。ただし、拒否できる場合がいくつかあります。

①特定供給者が接続に必要な費用を負担しない場合。

②電気事業者の電気供給に支障が生じるおそれがある場合。

③上記以外で、経済産業省令で定める正当な理由がある場合。

また、これに関して、経済産業大臣は、電気事業者に対して円滑な接続が行われるように必要な指導や助言を行うことがあります。さらに、経済産業大臣は、正当な理由がないのに第一項で規定する接続を行わない電気事業者に対して、接続を行うよう勧告することができます。加えて、経済産業大臣は、勧告を受けた電気事業者が、正当な理由がないのに勧告に従わなかった場合、その電気事業者に対して勧告に従うように命じることが可能です。

再生可能エネルギー発電設備を用いた発電の認定

再生可能エネルギー発電設備を用いた発電の認定に関しては、第六条に書かれています。再生可能エネルギー発電設備を用いて発電する場合、経済産業大臣の認定を受ける必要があります。認定を受けるためには、以下の2つの条件に適合していることが求められます。

①再生可能エネルギー発電設備が、調達期間内に安定的かつ効率的に再生可能エネルギー電気を発電することが可能であり、他の経済産業省令で定める基準にも適合していること。

②発電の方法が経済産業省令で定める基準に適合していること。

経済産業大臣は、認定の申請が上記各号に適合していると判断した場合に、認定を行います。なお、バイオマスを電気に変換する発電については、あらかじめ農林水産大臣、国土交通大臣、または環境大臣と協議する必要があります。

発電の変更を行いたい場合は、経済産業省令で定められる範囲を超えない限り、経済産業大臣の再度の認定を受ける必要があります。軽微な変更については、特別の手続きは不要ですが、経済産業大臣に遅滞なく届け出る必要があります。また、関連する経済産業省令(バイオマスに係る部分)を定める場合、または変更する場合は、あらかじめ農林水産大臣、国土交通大臣、および環境大臣に協議する必要があります。

罰則

罰則に関しては第四十五条に書かれています。電気事業者は、正当な理由なく、特定供給者との特定契約の締結や電気的接続を拒否した場合に、百万円以下の罰金に処されます。

まとめ

本記事では、再生可能エネルギーとは、再エネ特措法が制定された背景・目的、再エネ特措法の詳しい内容について解説しました。再エネ特措法について、より詳しく正確に知りたい方は、ネット上で公開されている原文を読むことをお勧めします。

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著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。