脱炭素化を実現させるエネルギー源として、世界各国で導入されている再生可能エネルギーですが、日本では、その普及はあまり進んでいません。普及が進んでいないと聞いて、

「日本で再生可能エネルギーの普及が遅れている理由とは?」

「再生可能エネルギー普及の遅れを取り戻すために、どんな取り組みが行われているの?」と疑問に思う方も多いでしょう。

そこでこの記事では、日本の再生可能エネルギーの割合や、その普及が遅れている原因と対策について分かりやすく解説をしています。この記事が、再生可能エネルギー導入の参考になれば幸いです。

再生可能エネルギーとは?

再生可能エネルギーとは、太陽光や風力など、自然から取り組むことのできるエネルギーのことを指します。再生可能エネルギーは、主に電気を起こすために利用されます。再生可能エネルギーの大きな特徴は、主に2つあります。1つは電気を起こすときに二酸化炭素を排出しない点、もう1つは資源としての枯渇を心配する必要がない点です。

再生可能エネルギーの中でも特に注目されているのが、太陽光発電、風力発電、地熱発電、水力発電、バイオマス発電の5つです。

太陽光発電

太陽光発電は、名前の通り太陽の光を電気に変換します。その手法は、光電効果(光を吸収することで電子がエネルギーを得て、物質から飛び出す現象のこと)を使ったもので、太陽の光を太陽電池の内部にある半導体に当てることで電子が飛び出し、その動きを電気として取り出す方法です。

風力発電

風力発電は、風の力を使います。風車が風によって回転し、そのエネルギーを増速機が発電機に伝え、電気を生成します。

地熱発電

地熱発電は、地下に存在するマグマを利用します。マグマが雨水を熱することで、水蒸気を発生させます。その水蒸気を利用してタービンを回すことで、発電を行います。

水力発電

水力発電は、水が高い場所から低い場所へ流れ落ちる力を利用します。特にダムを利用した発電方法は安定して大量の電力を生み出すことが可能です。また、海の波を利用した波力発電も存在します。

バイオマス発電

バイオマス発電は、生活の中で出る廃棄物や植物を燃焼させて電気を生成します。バイオマス発電は二酸化炭素を排出しますが、その量は原料となる植物が生長する過程で吸収した二酸化炭素と同じ量で、結果として地球温暖化には影響を与えないと考えられています。

日本の再生可能エネルギーの割合とは?

ここでは、日本の再生可能エネルギーの割合がどのように推移してきたのか、世界と比較すると再生可能エネルギーの割合は、どの程度のものなのかを分かりやすい説明します。

日本の再生可能エネルギーの割合の推移

再生可能エネルギーの割合の推移を見てみると、その割合は年々増加していることが分かります。2016年度はわずか14.7%だったのが、2022年度には22.7%まで上昇させることに成功しています。しかし、22.7%という割合は、世界各国と比較するとかなり低いです。

日本の電力消費量に占めるエネルギーの割合

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
再エネ 14.7% 16.1% 17.4% 18.5% 20.8% 22.4% 22.7%
参照:2022年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)

関連記事はこちら:日本の再生可能エネルギーの割合は?世界と比較しながら解説

世界の再生可能エネルギーの割合

2022年度の18か国における再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス)の割合をまとめた表を作成しました。いくつかの国では再生可能エネルギーが全消費電力の半分以上を占めており、特に、南米や北欧の国々ではその割合が特に高いです。一方で、日本と他の多くの国との間には、再生可能エネルギーの割合に大きな差が見られます。

詳しくは、以下の表をご覧ください。

2022年度の世界18カ国における再生可能エネルギーの割合

太陽光 風力 地熱 水力 バイオマス 合計
ブラジル 4% 13% 0% 66% 8% 91%
スウェーデン 2% 23% 0% 52% 9% 86%
デンマーク 6% 55% 0% 0% 20% 81%
カナダ 1% 6% 0% 67% 2% 76%
チリ 17% 11% 0% 27% 7% 56%
ポルトガル 6% 23% 0% 15% 7% 51%
ドイツ 11% 24% 0% 4% 9% 48%
スペイン 12% 23% 0% 8% 3% 46%
イギリス 5% 26% 0% 2% 11% 44%
アイルランド 0% 35% 0% 3% 3% 41%
オーストラリア 15% 12% 0% 7% 1% 35%
イタリア 8% 6% 3% 9% 6% 32%
中国 5% 9% 0% 15% 2% 31%
フランス 4% 8% 0% 2% 11% 25%
インド 6% 5% 0% 1% 11% 23%
アメリカ 4% 10% 1% 1% 6% 22%
日本 10% 1% 0% 7% 4% 22%
韓国 5% 1% 0% 1% 2% 9%
参照:統計|国際エネルギー

日本の再生可能エネルギーの普及が遅れている理由とは?

日本の再生可能エネルギーの電力消費に占める割合は22.7%です。この割合は、世界各国と比較すると、かなり低いことが分かりました。しかし、なぜ日本はこれほどの遅れを撮ってしまったのでしょうか。ここからは、日本の再生可能エネルギーの普及が遅れている理由について解説していきます。

コスト

再生可能エネルギーの導入が日本で遅れている要因の一つとして、コストの高さが挙げられます。資源エネルギー庁のデータによれば、日本の再生可能エネルギー設備、例えば太陽光パネルや風力発電機の購入費用は海外に比べて約1.5倍となっており、さらに工事費も約1.5倍から2倍ものコストがかかると言われています。

参照:資源エネルギー庁がお答えします!~再エネについてよくある3つの質問

また、発電コストも世界各国と比較すると高い傾向にあります。こちらは、資源エネルギー庁が公表している、日本と欧州の太陽光発電のコスト比較の結果です。日本は28.9万円/kWなのに対し、欧州は15.5万/kWです。欧州の発電コストは、日本のコストよりも13.4万円/kWも低いことが分かります。

引用:再エネのコストを考える 日欧の太陽光発電(非住宅)システム費用比較

続いて、化石燃料と再生可能エネルギーの発電コストを比較してみましょう。化石燃料の発電コストが最大で1kWhあたり12.5円なのに対し、再生可能エネルギーは最大で1kWhあたり30.0円もかかることが分かります。つまり、再生可能エネルギーの発電コストは、化石燃料の発電コストよりも最大で2.4倍もかかるということです。

発電方法 コスト
火力発電(石炭) 12.5円/kWh
火力発電(天然ガス) 10.7円/kWh
太陽光発電(在宅) 17.7円/kWh
太陽光発電(事業用) 12.9円/kWh
風力発電(洋上) 30.0円/kWh
風力発電(陸上) 19.8円/kWh
地熱発電 16.7円/kWh
小水力発電 25.3円/kWh
中水力発電 10.9円/kWh
バイオマス発電(専焼) 29.8円/kWh
参照:電気をつくるには、どんなコストがかかる?

天候

日本の天候は、再生可能エネルギー、特に太陽光発電の普及に悪影響を与えています。例えば、日本の年間日照時間は約1,916時間となっていますが、これは太陽光発電が盛んなオーストラリア、スペイン、チリと比べてみると、かなり短い時間です。オーストラリアは約2,636時間、スペインは約2,744時間、そしてチリはなんと約3,926時間の日照時間があります。

さらに、日本では頻繁に台風が上陸します。年間平均で25回もの台風が日本に到来し、その間は、日照は遮られてしまうため、太陽光発電は電力を生み出すことはできません。さらに、台風対策を発電施設に施したり、破損した場合は修理したりなど、高額な費用が必要となります。これらの条件が、日本における太陽光発電の普及を難しくしています。

参照:台風の発生数

地理・地形

日本における再生可能エネルギーの普及を難しくしている要素の1つは、地形です。日本は南北に長く広がっており、地域によって気候の特徴が大きく異なります。日照時間や風の強さ、頻度が場所によって大きく変わるため、発電量の予測が困難です。そのため、必要な電力を補えないリスクがあります。

さらに、日本は地震が多い国であり、その影響も無視できません。これは、日本が複数のプレート上に位置しているからです。日本では年間で1000回から2000回の地震が発生しており、これは世界第2位の頻度です。地震は発電施設の破損リスクを高め、その修理には高額なコストが発生します。このため、地震も日本における再生可能エネルギーの普及を妨げる一因となっています。

参照:日本全国での年別の地震発生回数一覧

再生可能エネルギー普及の遅れを取り戻すための取り組みとは?

日本は世界各国と比較すると、再生可能エネルギーの普及が遅れています。しかし、その遅れを取り戻すためにさまざまな取り組みが行われています。

FIT・FIP制度

FIT(Feed-in Tariff)制度は、電力会社が再生可能エネルギーで発電された電気を一定の期間、固定価格で買い取るというものです。この固定価格は高めに設定されているため、電力を売るために再生可能エネルギーを導入する企業や個人が増えると考えられています。ちなみに、固定価格で買い取る際に支払われるコストの一部は、再生可能エネルギー発電促進賦課金として全国民から徴収されています。

一方で、FIP(Feed-in Premium)制度は、再生可能エネルギーの普及を推進するもう一つの方法です。これは電力供給者が売電する際、補助金(Premium)を売値に上乗せすることで、より高い価格で電力を販売できるようにする制度です。このFIP制度は、再生可能エネルギーの利用が進んでいる欧州などですでに取り入れられています。

賦課金

賦課金は、税金や公共料金などの負担を全員が公平に分担するために、対象者から集められるお金のことを指します。再生可能エネルギー発電促進賦課金は、この賦課金の一例で、再生可能エネルギーの普及を後押しするために設けられています。具体的には、FIT制度で再生可能エネルギー由来の電力を買い取るための費用として利用されています。

再生可能エネルギーを生み出す発電コストは、化石燃料に比べて一般的に高く、場合によっては化石燃料の2倍以上もの費用がかかることもあります。そこでこの賦課金が、このコストを国民全体で分散させることで、再生可能エネルギーの利用と普及を促進しています。

賦課金の推移、具体的なコスト、その他詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

関連記事はこちら:再生可能エネルギー賦課金とは?特徴や金額も解説

補助金

日本は、再生可能エネルギーをサポートするための補助金を提供することで、再生可能エネルギーの普及を進める取り組みも行っています。補助金にはさまざまな種類がありますが、現在(2023年7月末)に利用可能な補助金は次の9つです。

  1. 地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業
  2. 再生可能エネルギー資源発掘・創生のための情報提供システム整備事業
  3. 地域共生型地熱利活用に向けた方策等検討事業
  4. 「脱炭素×復興まちづくり」推進事業
  5. 廃棄物処理施設を核とした地域循環共生圏構築促進事業
  6. 地域の公共交通×脱炭素化移行促進事業(国土交通省連携事業)
  7. 潮流発電による地域の脱炭素化モデル構築事業
  8. 離島における再エネ主力化・レジリエンス強化実証事業(防衛省連携事業)
  9. 脱炭素移行支援関連拠出・分担金

参照:令和5年度予算 及び 令和4年度補正予算 脱炭素化事業一覧

関連記事はこちら:2023年度 脱炭素化の補助金は?一覧で解説

まとめ

日本は、世界各国と比べて再生可能エネルギーの導入に遅れを取っています。その主な理由は、コストの高さや天候、地理・地形です。特に、日本の再生可能エネルギーにおける発電コストは、海外の1.5倍から2倍もかかっている事実があります。

しかし、再生可能エネルギーを普及させるための取り組みを積極的に行われています。FIT・FIP制度や賦課金の利用、補助金の提供は、その取り組みの代表例です。これらの制度や補助金を利用することで、コストを抑えて再生可能エネルギーの導入を行うことが可能です。

このように日本は、脱炭素社会に向けた取り組みを積極的に支援しています。ぜひ支援を受けながら、脱炭素社会に向けた第一歩を踏み出しましょう。まずは、自社の二酸化炭素排出量を計算する必要があります。下記リンクから、お金をかけずに二酸化炭素の排出量を計算が可能です。ぜひ一度、お試しください。


参照:タンソチェック【公式】 – CO2排出量測定削減サービス

著者のプロフィール

川田 幸寛
小学校教員として、カーボンニュートラルや脱炭素に関する授業を行った経験がある。子どもたちが理解できるように、専門用語を分かりやすく、かみ砕いて説明することを心がけた。この経験を活かし、脱炭素化の重要性を広く伝えるために、誰にとっても理解しやすい記事を作成している。