脱炭素経営において、ロードマップは様々な場面で活用されますが、特に関係者とのコミュニケーションツールとして優れた効果を発揮します。
本記事では、ロードマップをコミュニケーションツールとして、正しく活用するためのポイントをわかりやすく解説していきます。
ロードマップを共有する
脱炭素経営において、ロードマップを作成する重要性は前回の記事でご紹介しました。
折角ロードマップを作成しても、社内の一部の人間だけで共有し、他の社員に共有しないでいると、その効果が半減してしまいます。
ロードマップは、企業が目指す「目標・行動指針」を全社的に共有するための、コミュニケーションツールとして活用していきましょう。
そのためには、全社員はもちろんのこと、取引先や消費者(サービスを購入するお客様)にも内容を公開し、簡単にアクセスできるようにしておくことが大切です。
よくある失敗として、社内に公開しているものの、従業員に周知徹底が出来ておらず、誰もその内容を知らなかったりするケースです。
認知してもらうためにも、定期的にロードマップを見つめ直すことが大切です。
状況変化に応じて更新する
ロードマップは、定期的に更新して変更していきましょう。
ロードマップのような、何十年先の計画を落とし込んだものは、世の中の情勢の変化や技術革新によって、その意味や効果、難易度などが大きく変わってしまうことがあります。
そのため、定期的な見直しを行い、市場や経済、世の中の状況変化に合わせて更新を行うようにしましょう。
特に以下のような状況変化が起きた場合は、ロードマップの更新が必要になってきます。
「ロードマップの更新が必要なとき」
・当初の想定よりも環境変化(自然環境や社会環境)が早かった
・革新的なイノベーションが起きた
・関心が高まり広範囲な知見が集まるようになった
・当初の想定以上に活動の効果があった、または効果がなかった
2030年目標・2050年目標でマイルストーンを作る
ロードマップを作成する際には、2030年と2050年の目標を設定することから、優先して取り組みましょう。
それぞれの目標が決まれば、目標達成のために、取り組まなければならない課題が明らかになります。
あとは課題に対して、どのタイミングで取り組む必要があるのかを落とし込めば、ロードマップは自然と出来上がります。
日本が目指す2050年のカーボンニュートラルの実現は、極めて困難な目標ですが、2030年の目標は2050年に向けた通過点として、重要な意味を持ちます。
2030年と2050年までに、どうなっているべきなのか、具体的な姿をイメージし目標に落とし込むことで、自分たちが目指す目標を明確にしていきましょう。
ロードマップとPLを連携する
ロードマップをより実践的で、具体性があるものにするための工夫として、ロードマップと損益計算書(Profit and Loss Statement、通称PL)を連携して考えることを意識しましょう。
PLは、企業が事業により生み出した価値とコストを把握できるため、企業の生産性を推し量る最適なツールです。
脱炭素経営は「生産性向上によるエネルギー使用量の削減=CO2排出量の削減」が主な活動となるため、PLの数値をロードマップに落とし込むことで、脱炭素経営をより具体的な目標で進める事が可能になります。
現在のPLはどうなっており、2030年のPLはどうなっている事が望ましいのか?
さらには、2050年にはどのようなPLになっているべきなのかを、ロードマップに落とし込んでいきましょう。
環境と経済を両立する新しいPLのフォーマットが必要
PLは燃料費や材料費などのコストの内訳を、細かく読み取ることはできないものがほとんどです。
これは損益計算書が、CO2排出に関わるコストの細かな把握を目的としているものではなく、利益を把握することを目的としているものだったからです。
これからは、事業コストが正しくわかる、新しいPLのフォーマットが必要になってきます。
従来のPLと比較して、以下のようなポイントを盛り込んだ、新しいPLのフォーマットを確率しましょう。
従来のP/Lの問題点 | 新しいP/Lのポイント |
---|---|
変動費と固定費がバラバラ | 変動費と固定費を分離して計上 |
コストの総額や内訳が不明瞭 | コストの総額や内訳が明確に |
コストが社内で分断されている | サプライチェーン全体でコストを一体化 |
付加価値が読み取りずらい | 付加価値が一目でわかる計上方法 |
まとめ
ここまで、ロードマップをコミュニケーションツールとして正しく活用するためのポイントをご紹介してきました。
ロードマップは作成して終わりではありません。
まずは関係者に共有し、社内外の有用なコミュニケーションツールとしての活用を積極的に行っていきましょう。
著者のプロフィール
- タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。