固定価格買取(FIT)制度は終了した?卒FITや終了後の活用事例も解説

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結論:FIT制度は終了していません

「FIT制度は終了したって聞いたけど……」という方もいらっしゃるかもしれませんが、結論から言うと、FIT制度は終了していません。正しくは、2019年から買取期間が終了するケースが出てくるということです。

特に、2009年11月にスタートした住宅用太陽光発電の余剰電力買取制度(FIT制度になる前の制度)は、10年間の買取期間が設けられていたので、2019年11月以降、その10年間が満了していく場合が出てきます。

この状況は「FITから卒業する」という意味で、「卒FIT」と呼ばれてます。

参照(経済産業省):よくあるご質問

FIT制度は、2009年から「余剰電力買取制度」としてスタートし、2012年には現在の「固定価格買取(FIT)制度」となりました。

この制度では、再生可能エネルギーを利用して発電された電力を最低でも10年間、高めに設定された固定価格で電力会社が買い取ることを保証しています。

しかし、

「すでにFIT制度の買取期間の10年間が過ぎてしまった」
「もうすぐにFIT制度の買取期間が満了を迎えてしまう」

という方々が多く出てくる時期だと思います。

そこで、この記事では、FIT制度の概要や導入された背景に加え、FIT制度が終了したあと、あるいは期間が満了した場合にどのように再エネルギーを活用できるのかについて詳しく解説をしていきます。

さらに、新しく導入されたFIP制度についても分かりやすく説明しています。


FIT制度による買取期間が過ぎている、または近づいている方や、これから再生可能エネルギーを導入しようと検討している方には、特に読んでいただきたい記事となっています。

FIT制度とは?

日本政府は、2012年に再生可能エネルギーの導入と普及を促すために固定価格買取(FIT)制度を開始しました。

FIT制度は「太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス」などの再生可能エネルギーで生み出された電力を、国が定めた一定の価格で電力会社に買い取らせる仕組みです。

参照(経済産業省):制度の概要

FIT制度が導入された背景

FIT制度が導入された背景には、いくつかの要素があります。

1つ目は、日本のエネルギー自給率が非常に低いという現実です。こちらの画像をご覧ください。

引用:安定供給|主要国の一次エネルギー自給率比較(2019年)

OECD諸国中でもワースト2位に位置する自給率の低さ(2019年時)は、国内でのエネルギー生産を高める必要性を示しています。

現在のような化石燃料の輸入に依存する状況は、国際的な政治的変動や価格変動の影響を受けやすく、それがエネルギー供給の不安定性につながる可能性があります。

しかし、どのようにしてエネルギー自給率を高めればいいのでしょうか。

そこで、注目を集めたのが再生可能エネルギーです。

太陽光、風力、水力といった再生可能エネルギーは、さまざまな地域で豊富に利用できる場合が多く、その導入によってエネルギー供給の安定性が高まるとともに、環境への負荷も低く抑えられます。

さらに、2011年の東日本大震災は日本のエネルギー政策に大きな影響を与えました。

それまでのエネルギー戦略では、2030年までに原子力が大きなシェアを占めるとされていましたが、福島第一原発事故を受けて計画が大きく見直されました。

その結果、「第6次エネルギー基本計画」では、原発による電力の生成は可能な限り低減しつつ、2030年に再生可能エネルギーが36~38%を占めるように取り組みを進めていくことが公言されました。

参照:第6次エネルギー基本計画

また、国際的にも温暖化対策が進められており、日本も「パリ協定」に基づき、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする(カーボンニュートラル)という目標を掲げています。

このような背景もあり、再生可能エネルギーの導入と普及は、ますます重要な課題となっています。

FIT制度の課題

それでも、再生可能エネルギーの導入には大きな障壁が存在します。

再生可能エネルギーの普及を支える「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(再エネ賦課金)がその1つです。この賦課金は、電気を使用する人々の毎月の電気料金に上乗せされています。

具体的な賦課金の金額は、初めて導入された2012年には0.22円/kWhで始まりました。
そして、2022年には3.45円/kWhにまで高騰し、2023年度には1.40円/kWhに大幅に減少しました。

この変動は、一言で説明すると、電力の市場価格が上昇したためです。
この価格変動なども含め、こちらの記事で再エネ賦課金について詳細に解説しています。

さらに、初期投資の高さも課題の1つです。
新しい発電設備の導入は初期費用が高いため、その投資が元を取るまでには時間と労力が必要です。

特に日本においては、太陽光発電などの設備投資が欧州と比較しても高額であり、それが普及の妨げになっています。
こうした状況を解消するためにFIT制度が導入されました。

しかし、なぜFIT制度が再生可能エネルギーの導入と普及を促せるのでしょうか?
それは、FIT制度が、電力会社が10年から20年もの間、高価格で再生可能エネルギー由来の電力を購入するからです。

これにより、再生可能エネルギーの投資家や事業者は安定した収益を見込めます。
一方、発電された電気はすべて買い取らなければならないため、電力の需要と供給を均衡させるのが難しいという問題も出てきました。

要約すると、日本の低いエネルギー自給率、再生可能エネルギーに対する高まる期待、そして環境とエネルギー安全性への配慮が、FIT制度導入の背景にあったといえます。

卒FITとは?

「卒FIT」は、固定価格買取(FIT)制度の買取期間が終了した後に発生する状況のことです。
日本では、特に太陽光発電を中心にFIT制度が導入されており、多くの発電設備がこの制度に基づいて電力を供給しています。

しかし、この制度には一定の買取期間が定められていて、その期間が満了すると「卒FIT」となります。

この買取期間が満了してしまうと、一体何が起きるのでしょうか。

卒FIT後の選択肢

ここからは、卒FIT後の選択肢を3つご紹介します。

  • 蓄電池を導入して自家消費
  • 新たに売電契約を締結
  • 無償で引き渡し

それぞれ分かりやすく解説します。

自家消費(蓄電池の導入)

卒FIT後の選択肢として人気があるのは、蓄電池を導入することで余剰電力を蓄電し、自家消費を行うことです。
特に、太陽光発電と蓄電池を組み合わせることは、電力が無駄になることがないため、非常に有用な手段だといえます。

蓄電池の導入による最大のメリットは、蓄電池に電力を蓄えておくことで、夜間や天候が悪いときでも自家消費が可能になることです。これにより、電力会社から電力を購入する必要が減少し、結果として電気代の削減にもつながります。

さらに、電気自動車を所有している場合は、車のバッテリーも蓄電池として活用できます。
ただし、家庭内でこの電力を使うにはV2H(Vehicle to Home)システムが必要になる点は注意が必要です。

また、日本は地震や台風などの自然災害が多い国です。
緊急時に備えて、蓄電池があれば非常用電源としても役立ちます。

照明や冷蔵庫、通信手段としてのスマートフォンの充電など、最低限生活に必要な電力を確保できます。太陽光発電の余剰電力を蓄電池に保存することは、電気代の削減、非常時の備え、そして環境に優しい生活を実現するための賢い選択といえるでしょう。

また、蓄電池の導入には、補助金制度が活用できる場合もあります。

新たに売電契約を締結

FIT制度の買取期間が終了した後でも、契約が自動で継続される場合は、新しい単価で買取が続きます。

もし自動継続をしない場合は、発電者は新たに売電契約を締結できます。
ただし、この新たな契約の買取価格は、以前の契約よりも低くなってしまう可能性が高いです。

理由としては、FIT制度の買取価格は高めに設定されていたからです。
卒FIT後、売電価格をできるだけ高く設定するためには、大手電力会社との契約を検討しましょう。

新たな売電契約を締結することには、確かにメリットがあります。
自分が希望する条件で、売電収入を得るチャンスがあるためです。

しかし、デメリットも無視できません。
たとえば、売電先の検討にはかなりの時間がかかります。これは、電力会社ごとに売電価格が異なるため、その比較が不可欠だからです。

さらに、売電先を変更する場合には新たな契約手続きを行わなければなりませんので、それに要する期間も考慮する必要があります。

また、特定のサービスに加入する必要があるか、買取の条件が設けられている可能性もありますので、注意が必要です。

卒FIT後に新たな売電契約を結ぶ場合は、多角的にリサーチを行い、条件をしっかりと比較することが重要です。
FIT制度のもとで行われていた買取価格よりは下がってしまうと思われますが、このような手法で、納得のできる売電先を選ぶことができるでしょう。

無償で引き渡し

もし新たな買取契約を結ばない、または他の処置を取らない場合、余剰電力は、一般送配電事業者に無償で引き渡すことになります。

ただし、これは買取などの契約がまったくない場合の一時的・例外的な措置です。
そのため、買取期間が終了する前に次のステップをしっかりと計画することをおすすめします。

「買い手がいない場合、一般送配電事業者が無償で余剰電力を引き取ることは不当な利益につながるのではないか?」という疑問が生じるかもしれません。

しかし、この無償で引き取るという措置は、繰り返しになりますが、一時的・例外的な「受け皿」として存在しているものです。実際、一般送配電事業者にとって、買い手がいない余剰電力は、むしろ運営上の負担となる場合が多いといわれています。

参照(経済産業省):よくあるご質問

FIT制度後に導入されたFIP制度とは?

FIP制度は、FIT制度の課題を解決し、再生可能エネルギーをさらに促進するための新しい制度として2022年4月に導入されました。

FIT制度は再生可能エネルギーの普及に大きく貢献したものの、その結果として国民負担の再エネ賦課金が増加したり、電力の需要と供給の均衡が困難になったりなどの問題点が明らかになりました。

FIP制度は、これらの問題に対処するため、より市場に適応した方式を採っています。

具体的には、再生可能エネルギーを使用した発電事業者は、市場で自由に売電できるようになりました。
さらに、その売電価格に「プレミアム」と呼ばれるお金も追加されるため、さらなる収益が見込める可能性があるのです。

これから再エネルギーを導入する事業者、特に太陽光発電や中小水力などを検討している方々にとって、FIP制度は新しい選択肢として非常に注目されています。

しかし、FIT制度も終了したわけではありませんので、どちらの制度が自分の事業に適しているのかを慎重に考慮することが大切です。

まとめ

固定価格買取(FIT)制度は、再生可能エネルギー由来の電力を長期間、高価格で買い取ることを保証する制度で、再生可能エネルギーの導入を促進する重要な手段とされています。

この制度は、余剰電力買取制度として2009年に開始されたため、2019年11月から次第に買取期間が満了するケースが出ています。

この期限後の状況は「卒FIT」と呼ばれており、その後の余剰電力を利用する選択肢として、蓄電池の導入、新たな売電契約、あるいは無償での引き渡しが考えられます。

さらに、FIT制度の問題点である再エネ賦課金による負担増加や電力需要の均衡に対処するためにFIP制度が新たに導入されました。FIP制度のもとでは、発電事業者が市場で自由に電力を売ることができるため、さらなる収益も見込めます。

これらの制度を通じて、再生可能エネルギーの導入は進められていますが、国が目指している目標にはまだ届いていません。ぜひ、あなたの企業でも再生可能エネルギーの導入を検討しましょう。

しかし、初期投資リスクなどの問題よって、簡単には導入できないのが現実です。
その場合、「自社における二酸化炭素の排出量を算出する」という簡単な環境対策から始めてみることをおすすめします。

著者のプロフィール

川田 幸寛
小学校教員として、カーボンニュートラルや脱炭素に関する授業を行った経験がある。子どもたちが理解できるように、専門用語を分かりやすく、かみ砕いて説明することを心がけた。この経験を活かし、脱炭素化の重要性を広く伝えるために、誰にとっても理解しやすい記事を作成している。

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総編集長
福元 惇二(フクモト ジュンジ)

タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。

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