FIT制度とFIP制度の違いは?それぞれのメリット・デメリットも解説

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突然ですが、「FIT制度」と「FIP制度」をご存知でしょうか。どちらの制度も日本で再生可能エネルギーを普及させるための政策の1つです。具体的に、FIT制度は、再生可能エネルギーで発電された電力を政府が高値で買い取る制度です。一方、FIP制度は、再生可能エネルギーで発電された電力にプレミアムと呼ばれる料金を上乗せして売電する制度です。どちらも、再生可能エネルギーを利用した発電事業者が得をするシステムになっています。

しかし、これだけ聞いても、「結局のところ、FIT制度とFIP制度の違いは何なの?」と疑問に感じる方も多いはずです。そこで、この記事では、FIT制度とFIP制度の違いについてさらに詳しく解説をします。それに加えて、それぞれのメリット・デメリットについても分かりやすく紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

FIT制度とは?

FIT制度は、”Feed-in Tariff”(フィード・イン・タリフ)という英語の略称です。日本語では、「固定価格買取制度」と呼ばれています。FIT制度の目的は、再生可能エネルギーの普及を促進することです。多くの人々や企業が、太陽光発電、風力発電、水力発電などの再生可能エネルギーを取り入れやすくするために導入されました。

このFIT制度のもとでは、政府が再生可能エネルギーで発電された電力に対して一定期間、事前に決められた価格での買取を保証します。この買取期間は、発電施設の規模によって異なります。最小で10年間、最長で20年間です。これにより、再生可能エネルギー事業に投資する側は、将来的な収益がある程度は保証されるため、リスクを減らして投資ができます。

たとえば、企業が太陽光発電を導入する場合、初期投資で高額な費用がかかることが多いです。しかし、FIT制度があれば、その発電した電力が一定期間、高い価格で買い取られる保証があるため、企業は安心して投資を決定できます。このようにして、再生可能エネルギーの導入が進んでいくと考えられています。

参照:制度の概要

FIP制度とは?

FIP制度は、”Feed-in Premium”(フィードインプレミアム)という英語の頭文字を取ったもので、再生可能エネルギーの普及を促進するための新しい方策です。この制度は、2022年4月からスタートし、従来のFIT制度(固定価格買取制度)とは異なるアプローチを採っています。

FIT制度は、発電量に対して固定の価格を設定し、その価格で電力会社が買い取るという方式でした。一方、FIP制度では、再生可能エネルギーを発電した事業者は、卸電力取引市場で自由にそのエネルギーを売ることができます。そして、その市場での売電価格(参照価格)に「プレミアム」と呼ばれる追加額を加算します。このプレミアムが発電事業者の収益となります。

さらに詳しく解説すると、FIP制度では「基準価格」という長期的に固定される価格が設定されており、その上にプレミアムが加算される形になります。プレミアムは一定の期間(例えば1ヶ月)で見直されるため、市場の変動に柔軟に対応することができます。これにより、事業者は市場価格の変動リスクを減らし、一方で、電気がどれくらい売れそうか、さらにはどれくらい儲かるかが見えやすくなります。

また、市場での売電価格である「参照価格」は、卸電力市場の価格と非化石価値取引市場の価格を元に計算され、さらにバランシングコストが引かれて決定されます。

FIT制度とFIP制度の違いとは?

FIT制度とFIP制度は、いずれも再生可能エネルギーの普及を促進するための日本の政策ですが、いくつか重要な違いがあります。FIT制度は2012年から開始され、この制度では政府が発電量に対する固定価格を設定しています。電力会社がその固定価格でエネルギーを買い取るため、価格競争が生じることはありません。また、電力会社だけが購入するため、市場を介さず、直接買い取る形態がとられています。

一方で、FIP制度は2022年から開始され、こちらは市場価格を基にした売買が行われます。この場合、事業者は卸電力市場で自由に売買でき、その上で一定の「プレミアム」が加算されます。この制度では、市場価格の変動によって収益が変わる可能性がありますが、事業者はその変動に柔軟に対応できるようになっています。

FIT制度とFIP制度を比較すると、FIT制度は安定した収益が約束されます。一方、FIP制度は市場の動きによって収益が変わる可能性があります。なお、「どちらがより優れているのか?」という質問に答えるのは難しいです。市場の状況や事業者の規模、リスク許容度などによって、どちらの制度が有利かは異なるからです。

FIT・FIP制度のメリットは?

ここからは、FIT・FIP制度のメリットを分かりやすく解説していきます。

FIT制度のメリット

まずは、FIT制度のメリットから解説します。FIT制度にはさまざまなメリットがありますが、主に下記の3つが考えられます。

  • 再生可能エネルギーの普及
  • 地球温暖化の抑制
  • 地域社会への貢献

1つずつ見ていきましょう。

再生可能エネルギーの普及

FIT制度は、日本での再生可能エネルギーの普及を促進しています。FIT制度において、再生可能エネルギー由来の電気は、高い買取価格が保証されるため、多くの人々や企業が安心して太陽光、風力、水力といった再生可能エネルギーを導入できます。その結果、再生可能エネルギーを利用した発電所が増加し、それに伴って、国内でのエネルギー生産量も増えていきます。

現在、日本ではエネルギーを生み出すために化石燃料を主に利用していますが、その入手は輸入に依存しています。しかし、国内でのエネルギー生産が増えることで、この輸入に依存するリスクが大きく減るのです。つまり、化石燃料価格の高騰などの国際情勢に左右されることなく、安定したエネルギー供給が可能となるわけです。

関連記事はこちら:再生可能エネルギーを普及させるには?現状と解決策を解説

地球温暖化の抑制

FIT制度は、地球温暖化の抑制にもつながります。FIT制度を通じて再生可能エネルギーの導入が進んでいきますが、再生可能エネルギーは、地球温暖化の最も大きな原因である二酸化炭素の排出が非常に少ない、もしくはゼロです。また、二酸化炭素排出の主な原因は、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料の使用によるものだと言われています。これらの化石燃料を再生可能エネルギーに変えていくことで、二酸化炭素の排出量を抑えられます。そのため、FIT制度により再生可能エネルギーの導入を促進することは、地球温暖化対策になるのです。

参照:気候変動の原因

地域社会への貢献

さらにFIT制度は、地域社会への貢献も果たします。太陽光や風力、地熱などの地域資源を活用したエネルギー生産は、新たな雇用を生み出し、地域経済を活性化させることが可能です。さらに、地域で生産されたエネルギーは、そのまま地域で使われることが多いので、エネルギー供給の安定性も高まります。

関連記事はこちら:FIT制度のメリットとデメリットをわかりやすく解説

FIP制度のメリット

続いては、FIP制度のメリットについて解説します。FIP制度には、主に2つのメリットがあります

  • より効率的な再生可能エネルギーの普及
  • より多くの収益につながる可能性

それぞれ説明していきます。

より効率的な再生可能エネルギーの普及

FIP制度が持つメリットはいくつかありますが、その中でも特に注目すべき点は、FIP制度が再生可能エネルギーの導入をより効率的に行えるように設計されていることです。従来の固定価格買取制度(FIT制度)は非常に単純でわかりやすいものでしたが、その短所は、コストが最終的に電気の消費者である国民に負担される形になっていた点です。

FIP制度では、市場価格に基づく売買が可能なので、価格の自然な変動に柔軟に対応できます。これにより、国民は最終的に安い価格で再生可能エネルギーを利用できると言われています。

より多くの収益につながる可能性

FIP制度は、FIT制度よりも多くの収益につながる可能性があります。FIP制度では、市場価格に基づいて電力が買い取られますが、その市場価格に「プレミアム」が加算されるのです。これは、市場価格が高くなったときには、その恩恵を直接受けられるということを意味します。つまり、高価格で電力を販売できるチャンスが増えるわけです。

一方で、FIT制度では、政府が設定した固定の買取価格でしか電力を販売できません。これは安定性はあるものの、市場価格が上がった場合にその利益を得られないことを意味します。たとえば、一時的に電力需要が高まった場合や、他のエネルギー資源が高騰して電力市場全体の価格が上がったときなど、FIP制度ならばその市場価格の上昇を収益に直接反映できる可能性があります。さらに、その上でプレミアムが加算されるので、FIT制度に比べて収益性が高くなることが期待できます。

このように、FIP制度は市場の動きに柔軟に対応しながら、発電事業者がより多くの収益を上げるチャンスを提供しています。そのため、再生可能エネルギー事業に新しく参入する企業や既存の事業者にとっても、大きなメリットとなるでしょう。

FIT・FIP制度のデメリットは?

ここからは、FIT・FIP制度のデメリットを紹介します。

FIT制度のデメリット

FIT制度は再生可能エネルギーの普及に非常に役立っていますが、その一方でいくつかのデメリットも指摘されています。具体的には、下記の2つです。

  • 国民のコスト負担が増加
  • 未稼働の発電設備が増加

それぞれ分かりやすく解説します。

国民のコスト負担が増加

まず、最もよく指摘されるのは国民のコスト負担が増加する点です。FIT制度では、電力会社が一定の価格で再生可能エネルギーの電力を買い取るわけですが、その料金の一部を国民が「再生可能エネルギー賦課金」という形で負担しています。つまり、買取価格が高すぎると、結局その費用は国民が支払う電気代が高くなってしまうのです。

関連記事はこちら:再生可能エネルギー賦課金とは?特徴や金額も解説

未稼働の発電設備が増加

FIT制度のデメリットの一例として、未稼働の発電設備が増加することも挙げられています。この制度が始まった当初、政府が高い価格で再生可能エネルギーを買い取ると約束したことで、多くの発電事業者が再生可能エネルギーの発電設備、特に太陽光発電設備の建設に乗り出しました。その結果、一時期は事業用の太陽光発電設備が急速に増えました。

しかし、この状況には問題がありました。それは、設備が完成しても運転を始めない、つまり稼働しない発電設備が増えてしまったことです。「高く買い取ってもらえるから、できるだけ早く発電を始めた方がいいのでは?」と思った方も多いでしょう。しかし、年数を重ねるごとに技術開発が進み、発電施設の建設にかかる費用はだんだんと安くなるため、さらなる収益が得られてしまうのです。

このような未稼働の発電設備は、制度の目的である再生可能エネルギーの普及を妨げる要素ともなっています。この問題に対処するため、日本のFIT法では改正が行われ、未稼働の発電設備には契約が破棄されるなどの罰則が課せられるようになりました。

参照:太陽光発電の「未稼働案件」問題をクリアする、新たな対応が決定

FIP制度のデメリット

FIP制度には確かに多くのメリットがありますが、一方でデメリットも無視できません。特に、次の2つは大きなデメリットだと言えます。

  • 収益の不安定性
  • 事業計画の立てにくさ

それぞれ見ていきましょう。

収益の不安定性

FIP制度の最大のデメリットは、収益の不安定性です。FIP制度は、市場価格に連動する形式で運営が行われています。そのため、市場価格が発電事業者の予想よりも低くなると、思ったよりも少ない収益しか得られない可能性があります。つまり、FIT制度のように固定価格で買い取られるわけではないので、市場の変動によっては収益が不安定になるということです。

事業計画の立てにくさ

さらに、FIP制度では毎月の参照価格が見直されるため、事業計画を立てにくい側面もあります。以前のFIT制度では、一度、年度の価格が設定されると、契約期間である10~20年間はその価格での買取が保証されていました。これにより、発電事業者は収益の予測がしやすく、長期的な事業計画も立てやすかったのです。

しかし、FIP制度では、市場価格が下落した場合、その影響を受けて参照価格も下がる可能性があります。これが長期にわたると、事業者は収益の予測が難しくなり、事業計画の拡大などに慎重になるかもしれません。

まとめ

FIT制度とFIP制度は、日本の再生可能エネルギー普及のための主要な政策ですが、それぞれに独自のメリットとデメリットがあります。2012年から導入されたFIT制度は、発電事業者に対して、固定価格での電力買取を保証し、安定した収益を生むことで再生可能エネルギーの導入の促しています。その一方で、FIT制度がもたらすコストは、国民が負担するものであり、さらに未稼働の発電設備が増加するリスクもあります。

対照的に、2022年から始まったFIP制度は、市場価格に基づいて電力を売買する方式を採用しています。発電事業者は、卸電力市場で自由に取引ができ、さらに一定の「プレミアム」が収益に加算されるため、より高い利益を期待することができます。しかし、この柔軟性は、収益の不安定性事業計画の策定が困難となるデメリットにもつながります。

FIT・FIP制度を通じて、再生可能エネルギーの導入を積極的に進めようとしています。この背景には、二酸化炭素の排出量を抑えることで、地球温暖化を防ごうという想いが隠されています。環境を守るためには、より多くの人々や企業の協力が必要です。

そうは言っても、再生可能エネルギーをいきなり導入するのは難しいかもしれません。そこで、二酸化炭素を削減するために、まずは自社の二酸化炭素の排出量を調べてみるのかいかがでしょうか。こちらのリンクから排出量の計算が無料で行えます。よろしければ、ご活用ください。

参照:タンソチェック【公式】 – CO2排出量測定削減サービス

著者のプロフィール

川田 幸寛
小学校教員として、カーボンニュートラルや脱炭素に関する授業を行った経験がある。子どもたちが理解できるように、専門用語を分かりやすく、かみ砕いて説明することを心がけた。この経験を活かし、脱炭素化の重要性を広く伝えるために、誰にとっても理解しやすい記事を作成している。

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総編集長
福元 惇二(フクモト ジュンジ)

タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。

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