地域脱炭素融資促進利子補給事業は、金融機関を対象とした補助金事業です。
10億円までの融資に係る利子を補助金として交付します。
今回の記事では地域脱炭素融資促進利子補給事業の概要に加え、9つの事項を解説します。
- メリット・デメリット
- 対象事業者
- 事業アイデアの出し方
- 全体の流れ
- 提出書類と申請方法
- 審査基準と採択のコツ
- 補助金交付後の義務
- 採択の事例
- 申請時の失敗例
本記事を通じて、地域脱炭素融資促進利子補給の申請や採択されやすくなる方法を理解できます。
交付後の義務も説明しているため、安心して申請を行えるでしょう。
地域脱炭素融資促進利子補給事業とは?
2023年4月より、一般社団法人環境パートナーシップ会議(EPC)が地域脱炭素融資促進利子補給事業を開始しました。
事業では地球温暖化対策に沿った省エネ・再エネ設備投資に向けた金融機関が提供する10億円までの融資に対し、利子の一部を補給します。
ESG金融の拡大と地域脱炭素への投資を促進し、CO2排出削減がねらいです。
事業には「TCFD型」と「ESG融資目標設定型」があります。
TCFD型は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が推奨する気候変動に関するリスクや機会の情報開示を行っている金融機関を支援します。
一方、ESG融資目標設定型はESG融資に関する目標を定め、目標を組織方針として明確にしている金融機関が補助対象です。
ESG金融とは、環境保護、社会的責任、企業統治の良さを考慮した投資や金融活動のことです。
利益の追求だけでなく、環境保護や地域社会との関わりなども重要視しています。
参照:令和5年度 地域脱炭素融資促進利子補給事業に係る指定金融機関の公募
地域脱炭素融資促進利子補給事業のメリット
環境対策を行う企業自体を支援するのではなく、融資を行う金融機関を支援する地域脱炭素融資促進利子補給事業には、以下3つのメリットがあります。
環境対策の推進
地域脱炭素融資促進利子補給事業は、地球温暖化対策に貢献する省エネルギーと再生可能エネルギー設備の導入を支援します。
事業者は太陽光発電やバイオマス発電、省エネ機器などの投資に対して融資を行います。
一般社団法人環境パートナーシップ会議(EPC)が融資に係る利子の一部を補給することで、事業者の経済的な負担を軽減するのです。
事業者は投資する設備のCO2排出量を算定し、削減効果を評価しなければなりません。
評価により気候変動リスクへの対応力が高まり、将来的な環境変化に対する事業者の準備が促進されます。
結果として、地域単位で環境保全の開発が進み、環境保護に貢献する企業文化の形成が可能です。
地域脱炭素融資促進利子補給により、環境に優しい設備更新の融資に係る利子を補助することで、地域社会における環境対策の推進できます。
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.1
融資負担の軽減
地域脱炭素融資促進利子補給事業を活用すると、融資負担を軽減できます。
事業では地球温暖化対策に貢献する省エネ・再エネ設備への投資を行う事業者に対して、融資の利率に応じて利子の一部を補給するためです。
融資の利率が一定の範囲内にある場合、特定の割合を差し引いた額が利子補給利率として設定されます。
例えば、融資の利率が1.3%以上の場合の補給利率は1.0%です。
事業者が支払う利息の実質的な負担が減り、経済的な負担が軽減されます。
利子負担の軽減により、特に資金調達に制約を持つ中小企業やスタートアップ企業にとって、環境対策関連の設備投資が実現しやすくなります。
結果として、環境への投資が促進され、持続可能な経済活動への転換が促進されるのです。
融資負担の軽減は、地域の環境対策の推進と経済的持続可能性を同時に促進する重要な役割を果たしています。
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.1, 8
地域の活性化
地域脱炭素融資促進利子補給事業における「融資負担の軽減」というメリットは、事業者が地域の環境対策に関連するプロジェクトへの投資を行う際、その経済的な負担を軽減する点にあります。
この事業は、特に省エネルギーや再生可能エネルギー設備の投資に対して、融資の利子の一部を補給することで、事業者の支払う利息の実質的な負担を減少させます。
具体的には、融資の利率に応じて、事業者が支払う利子が削減されます。
たとえば、融資利率が1.3%以上であれば、利子補給利率は1.0%と設定されるため、事業者の負担する利子が低減されます。
これにより、特に資金繰りに課題を持つ小規模事業者や新興企業も、環境保護関連の設備投資をより容易に行うことができます。
このような支援は、地域の環境保全活動の推進だけでなく、地域経済の活性化にも寄与します。
地域における環境対策関連のプロジェクトは、新たなビジネス機会を生み出し、雇用を創出することが期待されます。
さらに、ESG金融の枠組みを通じて、事業者の社会的責任の強化と持続可能な経済発展が促進されることになります。
参照:令和5年度 地域脱炭素融資促進利子補給事業に係る指定金融機関の公募
地域脱炭素融資促進利子補給事業のデメリット
地域脱炭素融資促進利子補給事業のメリットだけではなく、以下3つのデメリットにも注目すべきです。
複雑な申請手続き
地域脱炭素融資促進利子補給事業におけるデメリットの1つとして、申請手続きの複雑さが挙げられます。
事業者や金融機関は融資・利子補給金の申請を行う際に、環境対策に関連する詳細な計画書やCO2排出量の算定に必要な書類を作成・提出しなければなりません。
具体的な設備投資計画や環境への影響評価、将来のCO2削減見込みなどの記載も必要です。
小規模事業者や割ける人材が限られている組織にとって、詳細な情報提供は時間的・人的な負担となるかもしれません。
計画書の作成には専門的な知識が必要であり、場合によっては外部のコンサルタントや専門家の支援を必要とすることもあります。
融資の審査も複雑であるため、申請から承認までに時間がかかることも考えられます。
事業計画の実行が遅れると、市場の変化に対応する機会を逃すかもしれません。
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.1~6
監査と報告の責任
地域脱炭素融資促進利子補給事業には、監査と報告の責任があります。
事業者は投資したプロジェクトの進行状況や、CO2排出量の削減効果を定期的に報告しなければなりません。
報告には進捗状況の詳細な記録や排出量削減の計測と評価、結果を報告するための書類作成が必要になります。
報告義務は事業者にとって業務の増加を意味し、人手不足の組織にとっては負担になるかもしれません。
監査では、環境対策の実施状況や排出量削減の実効性を確認するために外部からの検証が行われることもあります。
検証の際は事業者が外部の監査機関に対して報告書を提出し、場合によっては現場検査を受けなければなりません。
規定されている監査と報告の義務は、事業者にとって時間と労働の負担増につながるのです。
報告の正確性や適時性を確保するためには、適切な管理体制や専門知識が必要となるため、事業の運営において注意深い計画と資源の配分が求められます。
地域脱炭素融資促進利子補給を利用する前に、補助金交付後の義務を果たせるかどうかを検討しましょう。
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.3~6
補助金返還のリスク
地域脱炭素融資促進利子補給事業は、場合によって補助金返還のリスクがあります。
事業者が融資の交付決定時に規定された条件を遵守しなかった場合、または計画通りにプロジェクトを進行できなかった場合に補助金の返還が要求される可能性があるのです。
資金繰りに困難を抱えている中小企業にとって、財務的負担となります。
補助金の返還は、プロジェクトの失敗や計画の変更が発生した際の重要な財政的リスクです。
事業者は融資を申請する前に返還のリスクを十分に理解し、計画の実行可能性を慎重に評価する必要があります。
リスク軽減のためには計画の実行に向けた明確な戦略と、進捗状況を定期的に評価する体制の整備が求められます。
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.3~6
地域脱炭素融資促進利子補給事業の対象企業
地域脱炭素融資促進利子補給事業の対象となるのは、以下の条件を満たした金融機関です。
型名 | 条件 | 特記事項 |
TCFD型 | 以下いずれかの条件を満たす金融機関気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が推奨する気候変動に関するリスク及び機会の情報開示を行っているか情報開示を行う時期を明確にしている全国地方銀行協会・第二地方銀行協会に加盟する銀行・埼玉りそな銀行 | TCFDの11項目に基づく情報開示が必要 |
ESG融資目標設定型 | 自らのESG融資に係る目標の設定等を行い、組織方針として明確化している信用金庫・信用金庫連合会・信用共同組合・信用協同組合連合会 | ESG融資目標を自社のホームページ等で公表すること |
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.1~2
地域脱炭素融資促進利子補給事業の事業アイデア
金融機関が地域脱炭素融資促進利子補給事業のアイデアを考えるうえで重要なのは、融資対象となる事業が地域の環境に配慮したものであるかどうかです。
再生可能エネルギーの利用促進や省エネルギー技術の導入、環境負荷の低い運送手段への転換などが考えられます。
具体的には地域固有の条件を活かした再生可能エネルギー事業への投資、例えば太陽光や風力発電設備の設置を支援すると良いでしょう。
地域の産業構造に応じた省エネルギー型の機械や設備への更新支援も重要です。
運送業界における低炭素車両への転換支援も、環境に配慮しつつ地域経済に貢献する手段となります。
再生可能エネルギーや省エネルギー設備、低酸素車両に関する事業投資により、金融機関は地域の環境保全と経済成長を支援し、社会的責任を果たせます。
地域脱炭素融資促進利子補給事業の流れについて
地域脱炭素融資促進利子補給事業の流れを表にまとめると、以下のようになります。
流れ | 実行者 |
前年度のCO2排出データ、脱炭素設備投資計画を金融機関に提出 | 融資先事業者 |
融資先事業者への削減効果の確認・助言 | 指定金融機関 |
交付申請書を事務所に提出 | |
交付申請書の審査、交付決定 | 事務所 |
融資先事業者と融資契約、融資実行 | 指定金融機関 |
脱炭素設備投資・工事実施、元本返済利払 | 融資先事業者 |
概算払請求書を事務局に提出 | 指定金融機関 |
利子補給金を指定金融機関に交付 | 事務局 |
利子補給金を融資先事業者に振り込む | 指定金融機関 |
省エネ等の実施、CO2削減実績報告 | 融資先事業者 |
利子補給金実績報告書を事務局に提出 | 指定金融機関 |
金額の確定通知を指定金融機関に実施 | 事務局 |
事業状況報告書を提出 | 指定金融機関 |
地域脱炭素融資促進利子補給事業の交付額は、以下の式で算定されます。
A×(B÷365)×C
項目 | 説明 |
A | 単位期間における融資契約に係る貸付残高 |
B | 単位期間における貸付残高の存する日数 |
C | 利子補給利率(最大1%、実質融資利率が0.3%未満にならないよう調整) |
単位期間 | 例:令和5年3月11日〜9月10日、9月11日〜翌年3月10日 |
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.2
申請手続きの事前準備と必要書類
申請手続きの事前準備として、マニュアルを読み込むことが重要です。
マニュアルを通じて書類の記入方法や記載事項を確認し、理解しましょう。
申請に必要なのは、以下の書類です。
交付規定のp.11以降に様式の掲載があります。
- 設備投資事業計画書(様式第1 別紙1)
- 利子補給金交付請求予定一覧表(様式第1 別紙2)
- 二酸化炭素排出抑制計画表(様式第1 別紙3)
- 融資先事業者に係る前年度の二酸化炭素排出量を示す書類
- 融資先事業者の会社概要
- その他、EPCが必要と認める書類
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.2~3
申請前に確認すべき補助金の審査基準
交付申請を行う前に審査基準を、以下の表で確認しましょう。
審査における「基礎点」は条件を満たしていれば満点、満たしていなければ0点です。
「加点」は4段階評価(優・良・可・不可)で、係数をかけて点数を算出します。
採択の基準点は75点ですが、基礎点に0点がある場合は不採択となりますので注意が必要です。
TCFD型
評価項目 | 詳細 | 得点配分 (基礎点+加点) | 採点基準 |
地域脱炭素に資するESG融資の実施 | 取組意欲 | 20 (15 + 5) | ESG融資に対する動機、目的の明確化、組織的な推進、対外的開示の積極性 |
TCFD開示 | 50 (40 + 10) | TCFDの11項目に沿った情報開示、温室効果ガス排出量の情報公開 | |
事業者の脱炭素事業に対する支援体制 | 脱炭素事業の支援体制 | 10 (5 + 5) | CO2排出量削減の評価方法、助言・支援体制、体制の充実 |
融資資金の使途及び工事完了の確認 | 確認方法・体制 | 10 (10 + 0) | 融資資金の使途、工事完了の確認方法や体制の整備 |
その他 | その他 | 10 (0 + 10) | 地域脱炭素に資するESG融資の推進実績、具体策 |
ESG融資目標設定型
評価項目 | 詳細 | 得点配分 (基礎点+加点) | 採点基準 |
ESG融資の実施 | 取組意欲 | 20 (15 + 5) | 組織方針の明確化、トップの意思表明、対外的開示の積極性 |
ESG融資目標 | 20 (15 + 5) | ホームページでの公表、目標設定の具体性、前年度目標の継続性 | |
体制及び評価方法 | 20 (15 + 5) | 体制の整備、人材育成、評価基準と方法の工夫 | |
実績 | 5 (5 + 0) | ESG融資の過去実績 | |
事業者の脱炭素事業に対する支援体制 | 脱炭素事業の支援体制 | 20 (10 + 10) | CO2排出量削減効果の評価方法の設定、助言・支援体制の整備、評価・チェックの工夫、人材育成体制の充実 |
融資資金の使途及び工事完了の確認 | 確認方法・体制 | 10 (10 + 0) | 使途・工事完了の確認方法や体制の整備 |
その他 | その他 | 5 (0 + 5) | ESG融資推進の具体策や実績 |
窓口またはオンライン申請の方法
地域脱炭素融資促進利子補給事業の申請は、応募様式・添付資料をPDFファイルなどの電子形式で準備し、電子メールで行います。
メールの件名は「地域脱炭素融資促進利子補給事業応募」とし、提出先は一般社団法人環境パートナーシップ会議の地域脱炭素融資促進利子補給事業事務局です。
メールアドレスは「info.fund@epc.or.jp」で、連絡先の電話番号は03-5468-6753です。不明点があれば「よくある質問と回答」を確認したうえで、メールで問い合わせてください。
金融機関からの問い合わせは、一箇所の窓口を通じて行う必要があります。
参照:令和5年度 地域脱炭素融資促進利子補給事業に係る指定金融機関の公募 | 地域脱炭素融資促進利子補給事業 | 一般社団法人 環境パートナーシップ会議 (epc)
地域脱炭素融資促進利子補給事業の受け取り方法
地域脱炭素融資促進利子補給事業の補助金は、指定金融機関への振込を通じて行われます。
指定金融機関は、規定の期間が満了した際に実績報告書と利子補給金額一覧表を一般社団法人環境パートナーシップ会議(EPC)に提出します。
報告は融資の実施状況に関するもので、所定の様式に従って行ってください。
提出された報告書に基づき、EPCは内容を審査し、交付すべき利子補給金の額を確定します。
交付額の決定後は確定通知が事業者に送付されるため、確認できたら利子補給金の交付請求書をEPCに提出しましょう。
利子補給金交付請求額一覧表や振込先情報が交付請求書に該当します。
EPCは提出された交付請求書を受けて、請求された利子補給金の額を管理台帳と照合し、問題がなければ指定金融機関に利子補給金を振り込みます。
振込は通常、交付対象融資の各単位期間の満了日に行われる予定です。
受け取った利子補給金は原則として、交付対象融資の利子に充当する必要があります。
指定金融機関が利子補給金を受け取るには、複数の書類をEPCに提出しなければなりません。
書類に不備がなければ、補助金が交付されます。
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.3~4
地域脱炭素融資促進利子補給事業の補助金交付後について
地域脱炭素融資促進利子補給事業で補助金の交付を受けた後、指定金融機関は複数の義務を果たさなければなりません。
規定された単位期間の終了後、指定金融機関は融資の実施状況に関する実績報告書と利子補給金額一覧表をEPCに提出する必要があります。
利子補給期間中には、各年度における融資の実施状況と利子補給金の充当状況に関する報告も欠かせません。
報告にはCO2排出抑制状況表やその他EPCが必要と認める書類の添付が求められます。
ESG融資目標設定型の場合、ESG融資目標に対する結果報告書も提出しなければなりません。
利子補給期間の最後には事業効果報告書として、CO2排出抑制結果表や利子補給金交付充当実績一覧表を提出する必要があります。
目標達成に失敗した場合は、事由の説明が求められます。
交付決定の一部または全部が取り消されたら、指定金融機関は利子補給金の返還を行い、必要に応じて加算金を納付しなければなりません。
指定金融機関は利子補給金の経理を他の経理と区分し、関連書類を5年間保管し、EPCからの調査に協力する責任もあります。
補助金の交付を受けた指定金融機関は、事業の状況や成果を詳細に報告する義務があるのです。
怠ると補助金の返還が求められる場合もあります。
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.3~6
地域脱炭素融資促進利子補給事業の審査を通りやすくするコツ
いくつかの重要なポイントを抑えることで、地域脱炭素融資促進利子補給事業の審査を通過しやすくなります。
取り組み意欲の観点では、ESG融資に対する明確な目的と積極的な姿勢を示すことが重要です。
経営陣からの強い意思表明や経営計画へのESG融資の位置付け、対外的な開示への取り組みを記載できると高得点が狙えます。
TCFD開示項目の観点では、気候変動に関連するリスクや機会に関する情報開示が重視されます。
組織のガバナンスや戦略、リスク管理、指標と目標に関する明確な情報提供が求められ、特に温室効果ガス排出量に関するデータの公開が重要です。
事業者の脱炭素事業に対する支援体制では、二酸化炭素排出量削減効果の評価方法と助言・支援体制の整備がポイントです。
具体的な評価やチェックに対するさまざまな工夫と、人材育成を含む体制の充実に関する記載をしましょう。
融資資金の使途及び工事完了の確認の観点からは、資金の適正な使用と工事の進捗状況をきちんと監視する体制の整備が重要となります。
その他の項目では、ESG融資を推進してきた実績や具体的な推進策を提示してください。
各要素を適切に満たすことで審査基準の得点を最大化し、採用される可能性を高められます。
地域脱炭素融資促進利子補給事業の補助金を受け取るポイントや注意点
地域脱炭素融資促進利子補給事業において補助金を受け取る際、一般社団法人環境パートナーシップ会議(EPC)の指示に従うことが重要です。
EPCは以下の状況に陥った際に、補助金の交付決定を取り消す権限を持っています。
- 指定金融機関が規定や指示に従わない
- 利子補給金を不正利用する
- 不適当な行為をする
- 天災地変など予期せぬ事情で融資が不可能になる
交付決定が取り消されると、交付決定取消通知書が指定金融機関に送られます。
交付決定の内容が変更される、または条件が付された場合には交付決定内容変更通知書が発行されます。
EPCに補助金の取り消しや一部返還が命じられた場合、指定金融機関は利子補給金返還命令書に従って返還しなければなりません。
返還には、年利10.95%の加算金が発生します。
返還命令から20日以内に返還や納付が行われない場合、延滞金の支払いが必要です。厳格な規定は、補助金の適切な使用と責任ある管理を保証するために設けられています。
指定金融機関は補助金を受け取るためにも、EPCの定めた規定に従いましょう。
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.5
地域脱炭素融資促進利子補給事業の事例紹介
地域脱炭素融資促進利子補給事業の補助を受けた金融機関の事例を3つ紹介します。
四国銀行
四国銀行は地域脱炭素融資促進利子補給事業の一環として、製造業に属する事業者に融資を実施しました。
融資により工場の屋上に太陽光発電設備を設置し、生成された電力を自家消費することを目的としています。
事業は年間205トンのCO2排出抑制が見込まれ、排出抑制効果は17%に達すると評価されています。
総事業費5,200万円のうち4,500万円が融資金額であり、利子補給の対象です。
融資期間は10年で、3年間の利子補給金額は116万円です。
四国銀行は融資先事業者との事前ヒアリングや資料の整理、事務局との確認を徹底し、本部と営業店間で密接な連携を図ることで、交付申請を円滑に進めました。
平塚信用金庫
平塚信用金庫は、サービス業界に属する自動車整備業者に融資を実施しました。
融資の目的は、省エネ型の自動車整備用リフト「洗車ファンタス」の増設を通じて、車両整備の作業効率を向上させることでCO2排出量の削減を図ることでした。
事業によるCO2排出抑制量は0.12トン、排出抑制効果は0.04%と見積もられています。
融資の詳細として、総事業費は490万円であり、そのうち340万円が融資金額です。
融資は10年間行われ、利子補給の対象金額は340万円とされています。
3年間の利子補給金額は、約8.6万円です。
平塚信用金庫にとって、地域脱炭素融資促進利子補給は初案件であり、CO2排出量の算出などで苦労しました。
しかし、一般社団法人環境パートナーシップ会議(EPC)からのアドバイスや支援を受けながら、申請の採択に成功しました。
EPCから提供される利子補給額の算出フォーマットや、CO2排出量の計算フォーマットが苦労の解消に役立ちました。
平塚信用金庫は、申請手続きの時間や必要書類の準備に関して事前に適切な助言を受けることで、申請を円滑に進めたのです。
株式会社北都銀行
株式会社北都銀行は地域脱炭素融資促進利子補給事業を通じて、電気事業者に融資を行いました。
融資の目的は、秋田市沿岸地域の国有地に発電容量6,800KWの風力発電設備を設置し、固定価格買取制度(FIT制度)を利用して電力会社に売電することです。
固定価格買取制度(FIT制度)とは、再生可能エネルギー由来の電気を電力会社が一定期間、定められた価格で買い取る制度です。
参照:制度の概要|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー
事業によって11,036トンのCO2排出量が抑制され、抑制効果は152,210%に達すると算出されています。
総事業費は214億4,000万円で、そのうち融資金額は100億円です。
100億円が利子補給の対象となり、3年間の利子補給金額は約2億7,660万円になります。
交付申請の際、北都銀行は事業者に必要書類をあらかじめ通知し、準備を促すことで申請を円滑に進めました。
事業計画の策定段階から利子補給額を計算し、事業採算性を正確に判断するための計画に組み込んだことも採択された理由の1つだと言えます。
地域脱炭素融資促進利子補給事業の補助金が受け取れない失敗例
実施要領への違反や不適切な行為を行うと補助金は受け取れなくなるため、注意しましょう。
実施要領への違反
指定金融機関が融資の際、地域脱炭素融資促進利子補給事業の法令や実施要領に違反した場合は補助金が受け取れなくなります。
例えば、金融機関が利子補給金を交付対象融資以外の目的における使用です。
補助金の目的外の使用は一般社団法人環境パートナーシップ会議(EPC)の規定に違反するため、EPCは交付決定を取り消せます。
交付決定が取り消された場合、指定金融機関は交付決定取消通知書を受け取り、交付された利子補給金の全額または一部を返還しなければなりません。
返還には年利10.95%の加算金が課され、20日以内に返還や納付が行われなければ、延滞金の支払いが必要となります。
指定金融機関の規則違反は、補助金の取り消しや経済的な負担を招く可能性があるため、注意が必要です。
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.5
不適切な行為
指定金融機関が、交付対象融資に関して不正や怠慢などの不適切な行為を行った場合も補助金は交付されません。
例えば、金融機関が融資の審査過程で不正行為を行い、不適切な事業者に融資を行ったとします。
このような場合、一般社団法人環境パートナーシップ会議(EPC)は、交付の決定を一部または全部を取り消すことが可能です。
交付決定の取り消しに伴い、金融機関は交付決定取消通知書を受け取り、不適切な行為により交付された利子補給金を返還する義務が生じます。
返還金には年利10.95%の加算金が発生し、返還命令から20日以内に返還しない場合は延滞金が課されます。
金融機関の不適切な行為は補助金の返還や追加の経済負担に繋がるため、責任ある行動と運用が重要となります。
参照:令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 (環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域脱炭素融資促進利子補給事業))交付規程 p.5
まとめ
地域脱炭素融資促進利子補給事業とは、一般社団法人環境パートナーシップ会議(EPC)が省エネ・再エネ設備に融資する金融機関に対して、利子の一部を補給するものです。
総額200億を超える事業に融資を行い、3年間の利子補給で約2億7,660万円を受け取った事例もあります。
事業の活用にあたり、申請や管理のデメリットも考慮すべきです。
事業の大まかな流れは、以下の通りです。工程が多く、書類作成等に時間を要する場合があります。
- 融資先事業者から前年度のCO2排出データ、脱炭素設備投資計画を受領
- 融資先事業者への削減効果の確認・助言
- 交付申請書の提出
- 融資先事業者と融資契約・実行
- 概算払請求書の提出
- 補助金の受領・融資先事業者への振込
- 実績報告書・事業状況報告書を提出
補助金交付後の義務として書類の管理や融資の実施状況、CO2削減効果の報告が求められています。
怠ると補助金の返還が求められる場合があり、返還金には年利10.95%の加算金が発生し、変換が遅れると延滞金が課されます。
地域脱炭素融資促進利子補給のメリット・デメリットを踏まえたうえで、活用すべきかどうかを判断しましょう。
著者のプロフィール
- タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。