ビジネスにおいて、環境負荷の軽減と持続可能な未来への貢献はますます重要視されています。その中でも、RE100という取り組みが注目を浴びています。RE100は、企業が100%再生可能エネルギーによる電力を利用することを目指す取り組みです。このRE100に参加するには「15年目標」と呼ばれる技術要件の1つを深く理解しておく必要があります。本記事では、RE100とは、15年目標とは、再生可能エネルギー使用のメリット・デメリットについて解説します。

RE100とは

RE100は、企業が自社の電力需要を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指すグローバルなイニシアチブです。2014年にThe Climate GroupとC40 Cities Climate Leadership Groupによって共同で立ち上げられました。これにより、企業は従来の化石燃料に依存する電力供給から脱却し、地球温暖化や気候変動といった環境問題に対する積極的な取り組みを示すことができます。参加企業は、自社の電力需要に対して再生可能エネルギーを使用するための具体的なアクションプランを策定し、その実現に向けて取り組んでいます。

15年目標とは

15年目標とはRE100参加企業に「運転開始から15年以内の発電設備から電力や証書を購入すること」を技術要件で求められたことを指します。以下に、詳しく解説をします。

2022年10月24日にRE100は「技術要件(Technical Criteria)」を改定しました。技術要件とは、参加企業が調達する自然エネルギーの電力を規定する要件のことです。この新しい技術要件をRE100に参加している企業は2024年1月以降に調達する電力に適用しなければなりません。ただし、2024年1月よりも前に締結した契約は例外として扱われます。

この改定の中で最も重要とされるのが「15年目標」と呼ばれる項目です。RE100は、自然エネルギーの電力調達方法を5つの区分に分け、二酸化炭素の排出削減に効果がある調達方法を選択するように求めました。コーポレートPPAのように新設の発電設備から調達すること、もしくはこれが困難な場合は運転開始から15年以内の発電設備から電力や証書を購入することが規定されました。

RE100が定めた電力調達方法

前述した通り、RE100は再生可能エネルギーの電力調達方法を5つに分けました。ここでは、それぞれの調達方法について解説します。

自家発電

1つ目の調達方法は、需要家が発電設備を所有する「自家発電」です。ここでの自家発電には一つだけ条件があります。それは需要家がエネルギー属性を保持することです。また、この自家発電は形態を問いません。オンサイト・オフサイト、自家消費・売電、系統接続・非接続のいずれも可能です。

直接調達

2つ目の調達方法は、特定の発電設備と直接契約をする「直接調達」です。この直接調達には2種類の形態があります。

①フィジカルPPA:長期契約が一般的で、需要家と発電事業者が再生可能エネルギーの電力を契約する形態が「フィジカルPPA」です。オンサイト、自営線経由、送配電網経由があります。自営ケイ線経由と送配電網経由はオフサイトに含まれます。また、小売事業者が介在する契約もできます。

②フィナンシャルPPA:発電事業者が需要家の敷地外に発電設備を設置し、そこで生まれた環境価値だけを提供する形態です。発電所で作られた電気は売却され、実際に電力の取引を行わないことから「バーチャルPPA」と呼ばれることもあります。

電力サプライヤーとの契約

3つ目の調達方法は、小売事業者からエネルギー属性とセットで再生可能エネルギーの電力を購入する「電力サプライヤーとの契約」です。この調達方法にも2種類の形態があります。

①発電設備特定供給:小売事業者が需要家の代わりに特定の発電設備から電力を調達する方法を「発電設備特定供給」と呼びます。発電設備特定供給のメリットは、需要家が購入対象の発電設備を常時、把握できることにあります。そのため、比較的、長期の契約が多いです。

②小売供給:小売事業者が一般に販売する再生可能エネルギーの電力を「小売供給」と呼びます。月間の電力使用量に基づいて追加料金を支払うのが通例です。エネルギー属性の特定がしにくいので、発電特定供給と違い、短期の契約が多いです。ただ、対象になる発電設備が多種多様なのはメリットと言えます。

EACsの調達

需要家がEACs(エネルギー属性証書)を購入する場合にも新規技術要件は適用されます。日本国内では、トラッキング付FIT非化石証書、グリーン電力証書、J-クレジットが対象となります。また、これらは運転開始から15年以内の発電設備の証書にのみ適用されます。

受動的調達

5つ目の調達方法は、需要家が標準の電力を購入する「受動的調達」です。この調達方法には2種類あります。

①証書を償却:小売事業者の標準メニューに含まれる自然エネルギーの電力です。電源構成の比率で小売事業者が需要家のためにエネルギー属性を償却します。需要家は証明に必要な情報を小売事業者から取得することになります。アメリカ合衆国やオーストラリアなどがこちらに当たります。

②自然エネルギー95%以上:電力の95%以上が自然エネルギーで供給されている国や地域で、需要家が標準メニューしか購入できない場合はこちらに該当します。ウルグアイ、エチオピア、パラグアイがこの条件に合致します。

再生可能エネルギーを使うメリット

RE100に参加するには自社の使用電力を100%再生可能エネルギーに変えることを目指さなければいけません。前述の通り、条件が多くあり、中には非常に困難なものもあります。それでも、再生可能エネルギーを使うメリットはあります。ここではそのメリットを3つ紹介します。

環境への貢献

1つ目のメリットは「環境への貢献」ができることにあります。再生可能エネルギーは、自然の環境に対する負荷を最小限に抑えながらエネルギーを生成することができます。再生可能エネルギーを使用することで4方向から環境への貢献ができます。

①温室効果ガスの削減:再生可能エネルギーは、化石燃料の燃焼に伴う二酸化炭素(CO2)やその他の温室効果ガスの排出を大幅に削減します。太陽光や風力などの再生可能エネルギー源は、ほとんどまたはまったく排出ガスを生み出さず、気候変動の原因となる温室効果ガスの量を抑制することができます。

②大気汚染の低減:再生可能エネルギーの利用により、化石燃料による大気汚染も軽減されます。化石燃料の燃焼による大気中への微小粒子や有害物質の放出が減るため、大気品質が改善され、公衆の健康への影響が軽減されます。再生可能エネルギーは、特に都市部などの密集した地域での利用において、健康へのプラスの影響をもたらします。

③水質保護:再生可能エネルギーの一部として、水力発電は重要な役割を果たしています。水力発電所は大量の水を利用しますが、その運営においては水質を保護するための慎重な管理が行われます。一方、化石燃料の抽出や使用に伴う水質汚染のリスクは高く、水源や生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。再生可能エネルギーの利用は、水質保護に貢献します。

④音響汚染の軽減:再生可能エネルギーの設備、特に太陽光や風力の発電所は、一般的に静かであり、音響汚染を最小限に抑えます。これに対して、化石燃料の採掘や燃焼によるエネルギー生成は、騒音や振動を伴い、近隣の住民や動物にとって不快な状況を引き起こすことがあります。再生可能エネルギーは、環境に配慮しつつもエネルギーを供給する効果的な手段となります。

エネルギーセキュリティ

エネルギーセキュリティは、持続的な経済成長と社会の安定にとって重要な要素です。化石燃料への依存度が高い場合、供給の不安定性や価格の変動、地政学的なリスクなどが生じる可能性があります。再生可能エネルギーの利用は、エネルギーセキュリティを向上させる上で重要な役割を果たします。ここでは、再生可能エネルギーの使用とエネルギーセキュリティの関わりについて、3種類紹介します。

①多様性と分散化:再生可能エネルギーの利用は、エネルギー供給の多様化と分散化を実現します。太陽光や風力、水力、地熱などの再生可能エネルギー源は、地理的に広く分布しています。このため、異なる地域や国で多様な再生可能エネルギー技術を活用することで、エネルギー供給のリスクを分散させることができます。一つの地域での供給の中断や価格の急激な変動があっても、他の地域からの再生可能エネルギーの供給により、エネルギーセキュリティを確保することができます。

②安定した価格:再生可能エネルギーの価格は、化石燃料に比べて比較的安定しています。化石燃料の価格は市場の変動や地政学的な要因に影響を受けやすく、予測困難な変動が生じることがあります。再生可能エネルギーは、自然の資源(太陽光や風)を利用するため、その供給は安定しており、価格の予測性が高い特徴があります。これにより、エネルギーセキュリティを向上させるだけでなく、経済的な安定性をもたらすことができます。

③供給の信頼性:再生可能エネルギーは、持続可能な自然のエネルギー源に依存しており、その供給は事実上無限です。太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、自然の力によって提供されるため、枯渇することはありません。これに対して、化石燃料は有限な資源であり、抽出や輸送の困難さにより供給の不安定性が生じることがあります。再生可能エネルギーの利用は、持続的なエネルギー供給を確保し、エネルギーセキュリティを高める効果があります。

経済効果

再生可能エネルギーの使用は、単なる環境への貢献だけでなく、経済にも多くの利益をもたらします。ここではどのような経済効果がもたらされるのか3つ解説します。

①新たな雇用創出:再生可能エネルギーの産業は、多くの雇用機会を生み出します。再生可能エネルギー技術の開発、建設、運営、メンテナンスなど、さまざまな分野で専門知識や技術を持つ労働力が必要とされます。特に太陽光や風力発電などの分野では、大規模なプロジェクトが進行しており、現地のコミュニティにおいて雇用の創出が期待されています。再生可能エネルギーへの投資は、地域経済の活性化や持続的な雇用創出につながる重要な要素です。

②産業の成長と競争力:再生可能エネルギーは、新たな産業の成長と競争力を促進します。再生可能エネルギー技術の開発や設備の建設には、多くの企業や研究機関が関与しています。これにより、新たな産業が形成され、関連産業やサービス業の発展を促進します。さらに、再生可能エネルギーのコストの低下や技術の進歩により、競争力のあるエネルギーソリューションが提供されることで、経済全体の競争力を高めることができます。

③エネルギーコストの安定化:再生可能エネルギーの利用は、エネルギーコストの安定化に寄与します。化石燃料の価格は市場の変動や地政学的なリスクに左右されるため、エネルギーコストの予測が困難です。一方、再生可能エネルギーは自然の資源に基づいており、供給は安定しています。これにより、再生可能エネルギーの利用は企業や個人のエネルギーコストを安定化させ、予測可能性を向上させる効果があります。安定したエネルギーコストは、企業の生産性や家計の負担を軽減し、経済の健全な成長を支える要素となります。

再生可能エネルギーを使うデメリット

再生可能エネルギーは持続可能なエネルギー供給の未来を築く上で重要な役割を果たしますが、その利用にはいくつかのデメリットも存在します。本記事では、再生可能エネルギーのデメリットとして挙げられるインフラとの整合性、初期費用とコスト、発電量の変動について詳しく解説します。

インフラとの整合性

再生可能エネルギーの導入には、既存のエネルギーインフラとの整合性の課題が存在します。再生可能エネルギー源(太陽光や風力)の特性により、発電のタイミングや場所が制約されることがあります。太陽光発電は日照の影響を受け、風力発電は風の変動に依存します。そのため、電力需要と再生可能エネルギーの供給が常に一致するわけではありません。この調整には、エネルギーストレージ技術や電力網の改善などのインフラ投資が必要です。

初期費用とコスト

再生可能エネルギーの導入には、初期費用がかかることがあります。太陽光や風力の発電所、水力発電所、地熱エネルギーの開発や設備の建設には高い費用がかかる場合があります。また、再生可能エネルギー技術の導入には、特定の地域の風や太陽の資源を考慮した設計や設備のカスタマイズが必要です。これらの初期費用とカスタマイズによるコスト増加は、導入を妨げる要因となることがあります。ただし、技術の進歩や規模の拡大により、再生可能エネルギーのコストは徐々に低下しています。

発電量の変動

再生可能エネルギーの発電量は、天候や季節、時間帯によって変動します。太陽光や風力などの発電は、天候条件に左右されるため、安定した供給が難しい場合があります。一時的な発電量の変動は、電力網の安定性に影響を与える可能性があります。この問題を解決するために、エネルギーストレージシステムやバックアップ発電システムの導入が必要となります。これにより、再生可能エネルギーの発電量の変動を吸収し、需要と供給のバランスを維持することが可能になります。

まとめ

本記事ではRE100の技術要件の1つである「15年目標」と再生可能エネルギー使用におけるメリット・デメリットについて詳しく解説しました。少し複雑な要件ですが、一つ一つ丁寧に読むことで、自社に合った要件の満たし方を見つけられます。また、この記事は2023年6月に書かれたので、最新の情報と相違点がないかは、RE100のWebサイトで確認するようにお願いします。

また、無料のタンソチェックツールでは、自社で発生するCO2排出量を測定することが可能です。簡単なアカウント登録でご利用いただけますので、併せてご活用下さい。

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著者のプロフィール

福元 惇二
福元 惇二
タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。