脱炭素経営は、エネルギーや燃料の使用量を把握するところから始まります。
エネルギーの使用量を把握していなければ、脱炭素経営の結果、何%CO2の排出量を削減できたかがわからないからです。
本記事では、エネルギー使用量や化石燃料の使用量を見える化する方法から、CO2排出量の計算方法まで、分かりやすく解説していきます。
エネルギー使用量・化石燃料使用量の見える化がまずは重要
脱炭素経営に取り組むにあたり、事業にかかるコストを正確に把握する必要がある点を、下記の記事で解説しました。
その作業の中で、しっかりと把握すべき特に重要な項目が、エネルギーや化石燃料の使用量です。
これらの把握は、企業のCO2排出削減という視点だけでなく、事業存続のための燃料枯渇対策という視点においても、重要な意味を持ちます。それぞれポイントを解説していきます。
CO2排出削減の視点
CO2排出削減の視点では、CO2排出に繋がる化石燃料の使用量を把握することが重要になります。
化石燃料の使用量を把握するには、使用する石油(重油、軽油、灯油など)や石炭、ガスに関して、購入時の明細やガス会社の請求書などをきちんと保管し、そこから使用量を把握していきます。
これは使用電力についても同様に行います。
契約している電力会社からくる請求書や明細書の中に、電気使用量が記載されているので、それらを保管し、使用量の把握に役立てることができます。
こうして化石燃料の使用量が把握できれば、次はその使用量を元に、CO2排出量を計算してみましょう。
CO2排出量は、化石燃料の使用量に各排出係数を乗じることで算出できます。
排出係数とは?
CO2排出係数とは、一定のエネルギー使用量あたりのCO2排出量のことで、エネルギーの種類によってそれぞれ決められた排出係数があります。
例えば、軽油のCO2排出係数は0.0187tC/GJですが、ガソリンは0.0183tC/GJで、液化天然ガスは0.0135tC/GJです。
エネルギーごとの固有の排出係数は、環境省のホームページなどで調べる事が出来ます。
また、電力についても、各電気事業者ごとに排出係数が決まっていますので、契約している電気事業者のホームページで確認する事が出来ます。
日本で作られ供給されている電気の多くは、天然ガスや石炭などの、化石燃料を使用する火力発電によるものであり、それらを使用しているという事は、間接的にCO2を排出したことになります。
そのため、電力使用量に応じて、CO2排出量を計算する必要があるのです。
燃料枯渇対策の視点
エネルギー使用量の把握について、もうひとつの視点である、燃料枯渇対策を視点にして行う場合は、化石燃料の使用量の把握だけでなく、あらゆるエネルギー使用量を把握する必要があります。
例えば、CO2排出削減の視点だけであれば、使用している再生可能エネルギーの使用量を把握する必要はそこまで重要ではありません。
なぜならCO2排出がないからです。
一方で、燃料枯渇対策を視点に置いた場合は、供給量に限りがあり枯渇リスクのある再生可能エネルギーの使用量も、正確に把握しておく必要があります。
他にも、化石燃料の枯渇により、価格や供給量に大きな影響をうけるプラスチックなどの原材料の使用量も、把握しておかなければなりません。
化石燃料 | プラスチック | エネルギー全体 | 原材料全体 | |
CO2排出削減 | ✔ | ― | ― | ― |
燃料枯渇対策 | ✔ | ✔ | ✔ | ✔ |
使用量を把握する時のポイント
エネルギー使用量を把握する際に、ポイントとなる点が2つあります。
1点目が、こまめに記録を行う点で、2点目が原単位での使用量の把握を行う点です。
それぞれ詳しく解説していきます。
少なくとも月に1回は使用量を記録する
エネルギー使用量は、こまめに記録する事が重要で、少なくとも月に1回は社内のエネルギー使用量を記録していく事をオススメします。
年間でまとめてチェックすると非常に手間がかかりますし、ミスも起きやすくなります。
エネルギー使用量は正確に把握しなければ、まったく意味がないものになります。
また、細かく測定するメリットとしては、1年間におけるエネルギー使用量の増減を可視化できる点があります。
エネルギーの使用量の増減が季節要因なのか、他に原因があるのか、使用量を細かく測定し記録することで、検証が可能になります。
また、24時間稼働している工場等の場合、特に電力などは日中と夜間の使用状況が可視化できれば、削減に向けた有効な対策が検討出来るため、毎日や毎時間といった細かい頻度で、使用量を測定できるのが理想です。
原単位での使用量を把握する
エネルギー使用量は原単位での把握も重要です。
原単位とは、エネルギー使用量を生産数量などで割って算出される値です。
例えば、前年の電力使用量が1000だった会社が、今年は使用量が2000に増えていた場合は、使用量だけを見ると、取り組みの成果があがっていないように見えます。
しかし、前年は生産量が100だったのに対し、今年は400の生産量があったのであれば、原単位としては、前年は10、今年は5と、原単位あたりの電力使用量では半分になっている事がわかります。
このように、原単位での使用量の把握ができれば、より削減の効果を正確に検証することが可能になります。
まとめ
ここまで、エネルギーや化石燃料の使用量を見える化する方法から、CO2排出量の計算方法までご紹介してきました。
これまでエネルギー使用量をチェックしたことがない企業にとっては、エネルギー使用量の把握は、脱炭素経営への大きな一歩になります。
本記事を参考に、まずは社内でどれくらいのエネルギーや化石燃料を使用しているか、把握するところから始めてみましょう。
著者のプロフィール
- タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。