再生可能エネルギーと水素の関係性は?水素エネルギーのメリット・デメリットも解説

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再生可能エネルギーは、環境にやさしく、二酸化炭素を排出しないという特性から多くの注目を集めています。実は水素も再生可能エネルギー同様、二酸化炭素を排出せずにエネルギーを生み出すことができるエネルギー源であることはご存じでしょうか。この記事では、水素の基本的な説明から、水素の利用がもたらすメリット・デメリットについて、詳しく解説していきます。

目次

水素とは?

水素の概要

水素は、水素原子が2つ結合したものの名称で、化学式だと「H2」と表されます。水素原子は、水や化石燃料などの化合物に結合して存在しています。そのため、さまざまな資源から水素を作り出すことができます。代表的なものは、水(H2O)に電気を通す方法です。水が電気によって、水素(H2)と酸素(O2)に分解されます。これを「水の電気分解」と呼びます。このように、水素は多様なプロセスを通じて作り出され、地球上のさまざまな物質と結合して存在します。

7種類の水素

水素は、その製造方法や環境への影響に基づいて7種類に分類されています。それぞれ「グレー水素」、「ブルー水素」、「グリーン水素」、「ターコイズ水素」、「イエロー水素」、「ブラウン水素」、「ホワイト水素」です。詳しく解説していきます。

グレー水素

グレー水素は、主に天然ガスから作られます。具体的には、天然ガスの成分であるメタン(CH4)や石油製品であるナフサを水蒸気と反応させ、水素と一酸化炭素(CO)に分解します。そして、一酸化炭素を水蒸気と反応させることで、水素を得ることができます。

この製法は「化石燃料改質」と呼ばれています。大規模な製造が比較的容易でコストも低いため、世界の95%の水素はこの製法で生み出されています。ただし、グレー水素の製造過程では大量の二酸化炭素のが発生するというデメリットがあります。そのため、環境にやさしい水素製造方法とは言えません。

ブルー水素

ブルー水素は、グレー水素と製造過程は同じです。しかし、その過程で発生する二酸化炭素の排出を大幅に抑えています。二酸化炭素の排出を防ぐために、「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」という技術が利用されます。CCSとは、二酸化炭素を回収し、貯留、固定、または再利用するという技術のことです。

ブルー水素は、二酸化炭素を排出しない水素製造方法として大きな期待が寄せられています。しかし、この製法はまだ開発途上であり、商用化までにはまだまだ時間がかかると思われます。

参照:知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」

グリーン水素

グリーン水素は、再生可能エネルギーから生成される電力を用いて、水を電気分解して取り出される水素のことです。再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、バイオマスなどが自然の力をエネルギー源として利用しています。そのため、エネルギー生成の過程で二酸化炭素を排出することは、ほとんどありません。

グリーン水素も、ブルー水素同様に二酸化炭素を排出しない水素の製造方法として注目を集めています。特に、グリーン水素は、再生可能エネルギーを利用することから、脱炭素の取り組みに最も適した方法とされています。

しかし、グリーン水素の製造には大量の再生可能エネルギーが必要です。そのため、まずは再生可能エネルギーの普及が進められなければなりません。現状、日本の再生可能エネルギーの使用率は約22%ほどです(2022年)。グリーン水素が主な水素製造方法となるまでには、長い年月がかかると考えられています。

関連記事はこちら:カーボンニュートラルと脱炭素の違いとは?

関連記事はこちら:日本の再生可能エネルギーの割合は?世界と比較しながら解説

ターコイズ水素

ターコイズ水素は、天然ガスの主要成分であるメタンを熱分解することにより生成される水素です。この製造方法は、CO₂の排出がないことで注目されています。また、グリーン水素やブルー水素と比べて、水素の生産コストが非常に安いという大きな利点があります。

しかし、この製法で使用する天然ガス自体は、環境にやさしい資源ではないという問題があります。さらに、熱分解の過程で生成される固定炭素は廃棄物や燃料として利用される可能性があります。このような特性から、ブルー水素とグリーン水素の中間に位置する製造方法だと考えられ、青緑色を表す「ターコイズ水素」という名称がつけられました。

イエロー水素

「イエロー水素」は、原子力発電で生成される電力を利用して、水を電気分解して生み出された水素のことです。このイエローは、原子力発電の燃料として利用されるイエローケーキが由来となっています。イエロー水素の生成には、二酸化炭素が排出されません。しかし、原子力発電自体が放射性廃棄物を生み出すという問題を抱えています。これは、原子力発電の大きなデメリットとなり、その管理や処分には注意が必要です。

ブラウン水素

ブラウン水素は、石炭、特に褐炭(ブラウンコール)を原料として製造される水素の一種です。この名前は、使用される褐炭が茶色(ブラウン)であることから来ています。具体的には、石炭や褐炭を燃焼させることで水素を得ます。このブラウン水素も、生成時に二酸化炭素を排出することから、環境にやさしい資源とは言い切れません。

ホワイト水素

「ホワイト水素」は、他の製品を作る過程で生成される水素のことです。例えば、苛性ソーダの生産や石油精製の工程で、ホワイト水素が生成されます。ホワイト水素は、生成する企業は特定の利用目的を持っていることが多いです。そのため、市場に売り出される量は限られています。

また、苛性ソーダの製造過程で生成される副産物の水素は、純度が高く高品質な水素となるため、さまざまな用途に利用することが可能です。具体的には、定置用の燃料電池や燃料電池車に利用できます。

参照:水素の“色”について 

再生可能エネルギーと水素の関係性とは?

再生可能エネルギーと水素は、強い関係性を持っています。なぜなら、再生可能エネルギーを利用して水素を生成することができるからです。このように、水素をエネルギーとして利用したものを「水素エネルギー」と呼びます。

水素エネルギーとは?

水素エネルギーとは、水素を使って生成されたエネルギーのことです。日本は、この水素エネルギーを利用することを早い段階で採用しました。しかし、なぜそのような決断に至ったのでしょうか。そのきっかけとなったのが、東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故です。

日本は、原子力発電に代わる新たなエネルギー源を探すために、エネルギー政策を見直しました。見直しの結果、2017年に日本は「水素基本戦略」を発表し、水素を新たなエネルギーソースとして利用する道を開いたのです。当時、水素を含むエネルギー戦略を打ち出した国は日本だけでした。

2020年には、当時の菅首相が「2050年カーボンニュートラル」を達成すると宣言しました。これを達成するための具体策として「グリーン成長戦略」が立てられました。この戦略では、経済成長とエネルギー政策を両立させるために、14の重要な分野が選ばれました。その重要分野の一つが水素です。

水素は電力供給の脱炭素化を進めるだけでなく、余った電力を水素に変換し、後で使うために保存することもできます。これにより、再生可能エネルギーの問題点である発電量の不安定さを補うことが可能になります。

参照:【日本のエネルギー、150年の歴史⑥】 震災と原発事故をのりこえ、エネルギーの未来に向けて

水素エネルギーの利用方法

では、どのように水素をエネルギーとして利用しているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

熱エネルギーとして利用

水素は、燃やすことで熱エネルギーとして利用することができます。液化水素ロケットは、この活用例の一つです。水素は、このロケットの燃料として使われています。また、水素発電も注目を集めています。これは、水素を燃やして得られる熱エネルギーを使って、タービンやピストンを動かすことで、電力を生成する方法です。石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料を燃やして発電するのが主流ですが、この方法だと、二酸化炭素が大量に発生してしまいます。

しかし、水素を燃やしても二酸化炭素は一切排出されません。そのため、水素は二酸化炭素の排出がない脱炭素社会に最適なエネルギー源だと考えられています。

電気エネルギーとして利用

水素は、電気エネルギーとしても利用可能です。特に注目集めているのが、水素と酸素の化学反応から電気エネルギーを取り出す燃料電池です。燃料電池の大きな特徴は、高い発電効率です。燃料を直接電気エネルギーに変換するため、他の装置のように何度もエネルギー変換を行う必要がないので、効率よく電気エネルギーを生成できます。

現在、燃料電池は自動車やバス、そして大型の発電機のエネルギー源として幅広く利用されています。燃料電池車や燃料電池バスは、水素を電気に変換して動いています。そのため、二酸化炭素の排出量を大きく抑えることが可能です。また、工業用のフォークリフトでも水素は使われ始めています。

水素エネルギーのメリットとは?

二酸化炭素排出量の削減

水素エネルギーの最も大きなメリットは、二酸化炭素排出量の削減にあります。地球温暖化問題の主要な原因は、二酸化炭素です。二酸化炭素は、化石燃料を使った発電や自動車、産業活動などで大量に排出されています。

これらの分野に水素を導入することで、二酸化炭素の排出量を大幅に減らせると考えられます。深刻な環境問題を一気に改善することができる水素は、日本が目指す脱炭素社会に向けた大きな希望となっています。

エネルギー自給率の向上

水素エネルギーは、日本のエネルギー自給率を向上させる可能性を秘めています。以下は、資源エネルギー庁が、2021年度における世界各国のエネルギー自給率まとめた表です。

引用:激動するエネルギーの「今」を知る!「これから」を考える!「エネルギー白書2023」

この表から、日本のエネルギー自給率は13%であることが分かります(2021年度)。この数値は、他の先進国に比べて低いです。なぜここまで低いのかと言うと、エネルギー源となる化石燃料のほとんどを中東地域からの輸入に依存しているからです。

水素は、さまざまな方法で生成できます。そのため、低いエネルギー自給率を向上させることが可能です。例えば、水だけでなく、農業、林業、漁業の副産物や食品廃棄物、下水汚泥、家畜の排泄物、廃プラスチックから水素を作り出すことができます。

参照:「水素」ってどんなエネルギー?

また、日本の再生可能エネルギーの利用率について、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

関連記事はこちら:日本の再生可能エネルギーの割合は?世界と比較しながら解説

水素エネルギーのデメリットとは?

水素の生成が必要

水素エネルギーを利用するためには、水素の生成が必要です。水素は、自然界から直接手に入れることができないからです。化石燃料や再生可能エネルギーは、自然界から直接入手できるため、変換加工せずに利用できます。このようなエネルギーを1次エネルギーと呼びます。

しかし、水素エネルギーは異なります。エネルギー源となる水素を手に入れるためには、1次エネルギーを使用し、水素を生成しなければなりません。このようなエネルギーを2次エネルギーと呼びます。日本の場合、1次エネルギーの自給率が非常に低いです。つまり、水素エネルギーを十分に活用するには、1次エネルギーの自給率を向上させる必要があるということです。

水素の製造過程における二酸化炭素の排出

水素エネルギーの最大のメリットは、熱や電気に変換するときに二酸化炭素をまったく排出しないことです。しかし、水素を製造する過程で二酸化炭素が排出される方法もあります。これでは、脱炭素社会を実現することはできません。しかし、水を分解して作る方法や再生可能エネルギーを利用して作る方法では、二酸化炭素を排出せずに水素を製造することができます。このように、二酸化炭素の排出を抑えながら水素を製造する方法を見つけることが重要となっています。

高いコストの削減

水素エネルギーを本格的に導入するためには、高いコストの削減が欠かせません。特に、水素の輸送には高いコストがかかります。水素のエネルギー密度は、ガソリンの3000分の1しかないためです。言い換えると、同じ体積のガソリンと水素を比較した場合、水素から得られるエネルギーはガソリンの3000分の1しかないということです。

例えば、求めているエネルギー量を得るために1ガロンのガソリンが必要だとすると、そのエネルギー量を水素で補うためには3000ガロンもの水素が必要になります。つまり、必要なエネルギー量を得るためには大量の水素を輸送する必要があり、それが高いコストにつながるのです。

また、水素を利用して電力を得る燃料電池の製造には、高価なプラチナが必要です。これも、水素エネルギーの高いコストの要因の1つです。しかし、東京工業大学などの研究グループが、プラチナの代わりに加工した鉄を燃料電池に利用する新たな技術を開発しました。この成功は、燃料電池の製造コストを大幅に下げる可能性を持っています。

参照:水素エネルギーは何がどのようにすごいのか?

関連記事はこちら:カーボンニュートラルでは水素が重要?水素社会や技術、国内事例も解説

まとめ

水素はその製造方法や環境への影響により、7種類に分けられます。中でも、ブルー水素やグリーン水素のように二酸化炭素排出がない水素が注目を集めています。これらの水素をエネルギーとして使用することにより、二酸化炭素を排出しない脱炭素社会や日本のエネルギー自給率の向上を実現することができるでしょう。

しかし、水素エネルギーの導入にはいくつかのデメリットがあります。水素が2次エネルギーとして生成されるため、まずは再生可能エネルギーなどの1次エネルギーの供給体制を確立すること、また、水素の生成過程で二酸化炭素が排出されること、そして水素の取り扱いにかかるコストが高いこと挙げられます。

これらの問題を解決するためには、政府や公共団体、大企業だけではなく、中小企業の協力も欠かせません。ぜひあなたの会社でも、脱炭素社会に向けた行動を起こしましょう。まずは、自社の二酸化炭素排出量を調べることをおすすめします。下記リンクから、無料で二酸化炭素の排出量を計算することができます。無料で使用できますので、ぜひ一度お試しください。

参照:タンソチェック【公式】 – CO2排出量測定削減サービス

著者のプロフィール

川田 幸寛
小学校教員として、カーボンニュートラルや脱炭素に関する授業を行った経験がある。子どもたちが理解できるように、専門用語を分かりやすく、かみ砕いて説明することを心がけた。この経験を活かし、脱炭素化の重要性を広く伝えるために、誰にとっても理解しやすい記事を作成している。

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総編集長
福元 惇二(フクモト ジュンジ)

タンソーマンプロジェクト発起人であり、タンソチェック開発を行うmedidas株式会社の代表。タンソーマンメディアでは、総編集長を務め、記事も執筆を行う。

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